再召喚勇者は平穏を望む! ~前回魔王と相討ちになって死んだので、今回は勇者とか絶対にお断りです!~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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19 どこの世界でも、裏方は忙しい

「《エリア・ゴッド・オブ・フルブースト》!」

 

 開戦直後。

 聖女さんの使った全能力向上の魔法がダンジョン前に陣取る味方全員にかかり、大きく戦力を底上げした。

 凄いな、今の魔法。

 この距離じゃさすがに鑑定は使えないけど、気配の大きさ的に、全員の全ステータスが三千くらいは上がってるんじゃないかな?

 聖女さんのレベルはまだ50しかないのに、この上昇率は驚異的だ。

 これは、近い内に支援能力に関しては追い抜かれるかもしれない。

 

 だけど、それだけの魔法があっても苦戦する程に、今回の敵は強い。

 まずなんと言っても、数がこっちとは段違いだ。

 こっちのダンジョン前戦力が200人くらいなのに対して、向こうはざっと数えただけでも千を越えてる。

 しかも、次から次へとダンジョン内から増援が溢れてくるのだ。

 その殆どは雑魚っぽいけど、結構な割合で危険度Cを超えてそうなのが交ざってるし、中には危険度Aくらいの、強化されたレイさんとも互角に渡り合えそうな超大物の気配まである。

 

 それでも、こっちは一人一人が一騎当千ってくらいに強くなってるおかげで、誰かが死にかける事すらなく、今のところは優勢だ。

 ただ、レイさん達が十二天魔対策の為に本気を出せない都合上、大物の対処に手間取って、そこそこの数の雑魚が包囲網を抜けてる。

 まあ、包囲網の先には、事前に作られてたダンジョンをグルリと囲むような土魔法のバリケードがあるから、今は問題ない。

 それに、何匹かは逃がしても逃げた先の戦力で倒せるだろうし。

 でも、時間をかけてよじ登るなり、パワー型の魔物が突進するなりすれば、バリケードは破られる。

 そうなった時、この数が逃げると、近隣の村とかが甚大な被害を受けそう。

 どうにかしておいた方がいい。

 

「《クリエイトゴーレム》!」

 

 僕は遠隔で土魔法を使い、ダンジョン周辺の地面から無数のゴーレムを作り出した。

 その数、100体以上。

 一体一体は駆け出し冒険者程度のステータスしかない雑魚だけど、同じく雑魚を相手にするなら問題ない。

 それに、これなら僕の仕業どころか、謎の支援者の仕業とすら思われず、現地の誰かの魔法だと思ってくれる筈だ。

 

 ゴーレム達が雑魚狩りを担当し、他の人達が大物狩りに専念できるようになったおかげで、殲滅速度が目に見えて上がった。

 さすがに危険度Aの超大物はまだ倒せてないけど、危険度BやCの魔物は結構倒せてきてる。

 その裏で、僕はゴーレムの100体同時操作でヒーヒー言ってる訳だけど。

 これ、思ったより疲れるなぁ……。

 例えるなら、将棋の多面指しみたいだ。

 慣れてないと、とんでもない集中力を要求される。

 もし本格的に僕が戦う事態になったら、身代わりゴーレム以外のゴーレムを操作してる余裕はないかもしれない。

 

 そんな裏方作業だけで既に疲れてる情けない先代と違って、当代勇者の後輩くんは結構いい活躍してるよ。

 MPや体力の温存はしてるんだろうけど、それでも魔物を倒す速度がレイさん達と遜色ないくらいに早いし、危険度C以上の大物も後輩くん一人で何体も倒してる。

 これは、僕が思った以上に後輩くんの戦闘センスは高いのかもしれない。

 でも、恐らく九割は聖女さんの支援と聖剣のおかげだと思う。

 

 聖剣はチート武器だ。

 持ってるだけで全ステータスを三倍にし、勇者固有のスキルである『聖剣術』や『聖光魔法』の出力すら大幅に上げてくれる。

 しかも、魔王クラスの攻撃以外では破壊不能な程に頑強で、万が一破損しても安心な、凄まじい速度の自動修復機能まで完備。

 武器としてあれを上回る代物は、この世界に存在しないと断言できる。

 実際、僕が見てきた武器の中では、二位以下をぶっちぎって堂々の一位だ。

 

 今の後輩くんの平均ステータスが2500くらいで、剣道三倍段ならぬ聖剣三倍システムで約7500。

 この時点でレイさんを超える。

 まあ、スキルレベルと実戦経験の差を考えれば、まだレイさんの方がギリギリ強いと思うけど。

 そこに聖女さんの支援が加わって、万を超えるステータスを発揮してるのか。

 僕がその領域に達するまでに、どれだけ死にかけたかわからないっていうのに……。

 ズルい。

 しかも、その気になれば、更にここから勇者固有のスキルでもう一段階上げられるっていうんだから、もうね。

 さすがにそれは、十二天魔対策で温存してるみたいだけど。

 

「あ!」

 

 とか呑気に後輩くんを観察してる内に、ダンジョンの方に動きがあった。

 強力な気配を持った一体の魔物が、凄い勢いでダンジョンを飛び出し、一直線に街に向かって空を飛んでる。

 ダンジョンと街の間に陣取ってた僕の所までもう来た。

 そして目視できる距離に来たという事は、鑑定が使えるという事だ。

 

━━━

 

 マッハイーグル Lv44

 

 HP 999/999

 MP 1500/1500

 

 攻撃 666

 防御 222

 魔力 1011

 抵抗 111

 速度 9888

 

 スキル

 

『超高速飛行:Lv5』

『風魔法:Lv3』

 

━━━

 

 尋常じゃなく片寄ったステータス。

 速度だけが異様に高い。

 多分、そのスピードで全ての攻撃を避けて、風魔法で遠距離から敵を仕留めるタイプの魔物だ。

 これは普通の人が倒すのは難しい。

 制空権を有するというだけで強いのに、遠距離攻撃なんて全て避けられるような速度を持ってるなんて、悪質極まりない。

 きっと、ここで倒せなければ、いくつもの村や街を襲撃して人を殺し、レベルを上げて更に凶悪になるだろう。

 絶対に逃がしちゃいけない魔物だ。

 

「《ホーリーランス》!」

「ピギャ!?」

 

 僕の狙撃するように放った魔法、聖なる光の槍が上空のマッハイーグルを捉え、一撃で絶命させる。

 危機は去った!

 と思ったら、似たような気配の持ち主が、またダンジョンから飛び出してきた。

 しかも、今度は八体。

 それぞれが別の方向に向かってる。

 

「ええ!?」

 

 なんて嫌みな戦法!?

 魔王以外のダンジョンコアに知性はない筈なのに、見事に僕の嫌がる事をしてくる!

 これが偶然だとしたら、僕の運勢はマイナス方向にカンストどころか、呪われてる事を疑うレベルで最悪だよ!

 

「うわ!?」

 

 しかも、ダンジョンから溢れる魔物の数も増し、ゴーレム達の包囲網を破ってバリケードに突進し始めた。

 その中で一番数の多い群れが、危険度Bくらいの魔物が破ったバリケードの穴を通って、真っ直ぐに街へ向かってる。

 マッハイーグルを追いかけるなら、僕はあれに対処できない。

 身代わりゴーレムを含めた、街の防衛担当の人達に任せるしかないだろう。

 幸い、その群れは先頭を走るバリケードを破った危険度Bの魔物以外雑魚ばっかりだから、なんとか対処できる筈だ。

 

「《ディメンジョンゲート》! 《エリア・ハイパー・フルブースト》!」

 

 念の為に、空間魔法を使って街の近くに繋がる小さな扉を作り、そこから手を突っ込んで、街の防衛担当の人達全員に支援魔法をかけておいた。

 魔法の格としては劣るけど、ステータスとスキルレベルの差によって、現時点の聖女さんの魔法以上にステータスを底上げしてくれる。

 支援魔法は重複しないから、ダンジョン前の人達にはかけられなかった、とっておき。

 これで問題ない筈だ。

 駆け出し三人組なんて「力が! 力が溢れてくる! これが俺達の秘められた力か!」とか大興奮してるし、その調子で大活躍してほしい。

 

「《プロテクション》!」

 

 そして、僕は聖光魔法で空中に光の板を出現させ、それをレベルカンスト勇者の脚力で思いっきり踏み込んで、空を駆けながら八方に散ったマッハイーグルを追いかけた。

 

 まさか、その絶妙なタイミングで、レイさん達に特大の危機が迫っているとは思わずに。

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