再召喚勇者は平穏を望む! ~前回魔王と相討ちになって死んだので、今回は勇者とか絶対にお断りです!~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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 あ、危なかったぁ!

 ギリギリ間に合ったけど、滅茶苦茶焦ったぁ!

 だって、僕がマッハイーグル狩りでほんの5分くらい目を離した隙に、レイさん達が大ピンチに陥ってるんだもん!

 焦るよそりゃ!

 焦って思わず中二チックな名前を名乗っちゃうくらい焦ったよ!

 何『勇者の幻影(ファントムブレイブ)』って!?

 黒歴史確定なんですけど!?

 

「ふぁ、ファントムブレ……長いわ! 俺はお前を黒マスクと呼ぶ!」

 

 ほらぁ!

 中二過ぎて敵にまでツッコミ入れられちゃったじゃないか!

 恥ずかしい!

 

「だが、黒マスク! お前相当強ぇだろ! 俺ワクワクしてきたぞ!」

 

 どこの野菜星人ですか?

 今の装備に加えて、鑑定妨害リングの情報を一時的に白紙にする事で、強者特有の気配とかは完璧に隠蔽してるんだけどな。

 まあ、明らかに強そうなこいつの拳をサラッと受け止めてるんだから、気配をいくら隠しても無駄か。

 

 ちなみに、今装備してるマントとマスクのは便利グッズシリーズの一つだ。

 テレレッテレー、『宵闇マント』と『宵闇マスク』~。

 見ている人の認識を阻害し、まるで夜の闇に紛れるように正体を隠してくれる装備です。

 どっちも黒単色の装備だから、僕の日本人らしい黒髪と相まって、今の僕は黒ずくめの不審者にしか見えないと思う。

 ファントムブレイブを名乗る不審者……。

 通報されないといいな。

 

 そんな黒ずくめルックの中で異彩を放つのは、右手に構えた光輝く黄金の剣。

 SS級ダンジョンの奥地で手に入れた最高峰の武器『黄金剣ガラハッド』だ。

 僕の見てきた武器ランキングでは、聖剣に次いで堂々の二位。

 これくらいの武器じゃないと、レベルカンスト勇者の本気には耐えられない。

 ちなみに、武器ランキング二位は同率で何個かあるんだけど、僕の戦闘スタイルに一番合ってるのがガラハットだった。

 こんな派手な見た目に反して、効果はひたすら頑丈で切れ味が良くて、魔力の伝導率も高いっていうシンプルなものだし。

 

 でも、そんな武器を持ち出さなきゃいけない程、目の前の相手は強い。

 濃密な強者の気配に加えて、レイさん達がたった5分で壊滅させられた事からも、それは明らかだ。

 

━━━

 

 グレーターデビル Lv70

 名前 ジュラゾーマ

 

 HP 18444/20000

 MP 0/0

 

 攻撃 15000

 防御 20000

 魔力 0

 抵抗 18000

 速度 5500

 

 スキル

 

『超高速回復:Lv8』

 

━━━

 

「そう言うお前も中々に強そうだな」

 

 強ぇ奴にワクワクしてると宣ったジュラゾーマという魔物にそう返す。

 なお、正体を隠す為に口調は変えております。

 

「おうとも! 俺の名はジュラゾーマ! 魔王軍幹部十二天魔序列十一位『不死身』のジュラゾーマだ! よろしくな!」

 

 ああ、やっぱりこいつが十二天魔なんだ。

 道理で強い訳だよ。

 昔の魔王軍幹部と比べても、かなり上の方と言えるくらいに強い。

 上の中……いや鈍足な上に魔法系ステータスが0な事を考えると上の下くらいか。

 ただし、その代わりに『超高速回復』なんてスキルを持ってる。

 人間のスキルが技術なのに対して、魔物のスキルは特殊能力や身体機能だ。

 偏ったステータスも含めて、ここまで防御力に特化した魔物は珍しい。

 有効打を持たない格下相手なら無双できるタイプ。

 これで序列が下から二番目なんだから、当代魔王軍も侮れないな。

 

 でも、最悪の想像は外れてて良かった。

 いや、ちょっと思ってたんだよね。

 十二天魔なんて、まるで四天王みたいな名前名乗ってるから、下手したら全員昔の四天王に匹敵する化け物集団なんじゃないかって。

 いくら戦力飽和時代とはいえ、そんな化け物集団とぶつかってたらもっと人類が追い詰められてる筈だし、ないとは思ったけども。

 

 実際、その通りで助かった。

 ジュラゾーマは確かに強いけど、昔の四天王には到底及ばない。

 あいつら、一番弱い奴でも全ステータス三万オーバーとかいうふざけた化け物だったし。

 当時のレベルがまだカンストしてなかった僕じゃ、伝説の武器なしだと倒せなかったからね。

 レベルカンストした今だって、伝説の武器なしだと確実に勝てる自信はない。

 そもそも、今の僕は本格的な戦いから遠ざかって鈍ってるし。

 なら、目の前のジュラゾーマに負ける可能性だってある。

 気を引き締めていこう。

 とはいえ……

 

「行くぞぉ!」

 

 ジュラゾーマがわざわざ宣言してから突撃してくる。

 その正々堂々の精神は嫌いじゃないけど、今の僕はそれに付き合ってる余裕がないんだ。

 さっきまで全速力で飛び回りながらマッハイーグル狩りをし、その間中、というか今もずっと空間魔法と土魔法を発動し続けて、身代わりゴーレムの操作を行ってる。

 身代わりゴーレムの方にも遂にスタンピードの魔物達が到達したから、結構大変だ。

 何せ、身代わりゴーレムの所には目が届かないし。

 目隠ししながら、気配だけを頼りにゲームのキャラを操作してる感覚。

 しかも、偽装ステータスに合わせた稚拙な動きを心掛けないといけないというオマケ付きで。

 ぶっちゃけ、キツイ。

 そろそろ、一番キツイ空間魔法だけでも解除したい。

 

 だから、━━悪いけど、早く終わらせる。

 

 ジュラゾーマが拳を振りかぶる。

 野性味溢れる、大雑把で稚拙な動き。

 ただし、その力は技術なんて必要ない程の剛力。

 その姿が、つい最近戦った魔物と被って見えた。

 あのゴリラ、パワードコングと。

 そんな考えが頭に浮かんだ瞬間、今の状況に思う所が生まれる。

 

「……あの時とは逆ですね」

 

 ふと、そんな事を小声で呟いていた。

 あの時は、力を隠したかった僕を後ろに庇いながら、駆けつけたレイさんがゴリラを瞬殺してくれた。

 そして、今はそのレイさんが僕の後ろにいる。

 あの時とは逆。

 なら、これは恩返しの絶好のチャンスだ。

 

 下から上に振り上げるように剣を振るう。

 聖剣術のスキルにより、聖なる光を纏った黄金の剣を。

 それによってジュラゾーマの拳を迎撃し、その右腕ごと消し飛ばした。

 

「……は?」

 

 唖然とするジュラゾーマ。

 動揺から立ち直る前に、さっき上に振り上げた剣を構え直す。

 大上段に構えた剣を両手でしっかりと握る。

 そして、振り下ろした。

 

「《ライトスラッシュ》」

 

 今度は、上から下へ振り下ろしの斬撃。

 一閃。

 それは、咄嗟に防御に回そうとしたジュラゾーマの左腕を斬り裂き、━━左腕ごと体を縦に引き裂いた。

 

「な……あ……!?」

 

 真っ二つとなったジュラゾーマが驚愕の表情で僕を見る。

 魔物だけあって即死はしてないけど、大抵の魔物は体を引き裂き、脳を破壊すれば死ぬ。

 それは悪魔も例外じゃない。

 『不死身』を自称していたジュラゾーマだけど、それは異様に高い防御力と凄まじい再生能力を持つが故。

 再生するよりも早くHPを削り切られたら、回復よりも早く死んだら、当然復活する事はない。

 

「《ストーム・ライトスラッシュ》」

 

 でも、一応念の為に嵐のような光の連撃によって、体を細切れにしておいた。

 そこまですれば当然、ジュラゾーマのHPは急速な勢いで0となり……不死身を自称した悪魔は、一瞬にして死を与えられた。

 ジュラゾーマの体が光の粒子となって消滅していく。

 

「い、一瞬で……!」

 

 後ろからそんな声が聞こえた。

 レイさんの声だ。

 チラッと振り返ってみると、凄いキラキラした目で僕の事を見てた。

 ヒーローショーを見にきた子供のような……。

 あ、そこはかとなく嫌な予感が。

 考えないようにしとこう。

 とりあえず、今すべき事は、

 

「《エリア・エクストラヒール》」

 

 この場にいる人達全員を対象に広範囲の回復魔法を使う。

 神癒魔法を除けば地味に最高位の回復魔法を、僕の三万近い魔力のステータスで発動した訳だし、これで大体の人は全快したと思う。

 気配の数的に死んだ人もいないっぽい。

 ジュラゾーマに壊滅させられそうになってるの見た時はヒヤッとしたけど、なんとか戦死者0の目的は達成できそうだ。

 良かった。

 

「後はお前達でどうにかしろ」

 

 キャラ付けの尊大な口調でそう告げ、僕はテレポートを発動。

 街とダンジョンの間にある待機地点に戻った。

 やっと普通に身代わりゴーレムの気配が感知できるようになったので、空間魔法を解除。

 後は大どんでん返しがないように注意して最後まで見守るだけだ。

 

 

 その後、懸念した大どんでん返しなんて起きる事なく、街の戦いもダンジョンの戦いも無事に完全勝利を納め、一件落着と相成った。

 僕はダンジョンの戦いが終わったのを見届けてから、しれっと身代わりゴーレムと入れ替わり、そのまま街に帰還。

 こうして、スタンピードの戦いは終わりを告げた。

 疲れた……。

 受付嬢さんに無事を報告したら、早く帰って寝よう。

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