再召喚勇者は平穏を望む! ~前回魔王と相討ちになって死んだので、今回は勇者とか絶対にお断りです!~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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22 名探偵

「じょ、冗談キツイですよー……。第一、ファントムブレイブが現れた時に僕は街の防衛に就いてたんですよ? レイさんは酔って変な事を言ってるんです。今お水を……」

「確信に至った根拠はいくつかある」

 

 はぐらかそうとしたけど、レイさんは酔っぱらいとは思えないキリッとした顔で推理を語り始めてしまった。

 

「まず一つ目。私がファントムブレイブ様のファッションを話題に出した何回目かの時、君は小声で言ったな。『あれはちょっとどうかと思いますけどね……』と! それを耳敏くキャッチし、私はこう返した。『どこがだ!? 言え! 言ってみろ!』とな」

 

 あ、あー。

 確かにあったよ、そんな会話。

 会話がループし過ぎて、もう何度目かわからないくらいあの中二ファッションを過剰に持ち上げられて、思わず声が出ちゃったんだ。

 そういえば、レイさんはあの時、やたらしつこく問い質してきたような……。

 酔っぱらいの絡み酒だと思ってたけど、まさか……!?

 

「それに対して君は全力で目を泳がせながらこう言った。『黒仮面に黒マントの全身黒ずくめに黄金の剣とか、中二臭くてちょっと……』と。おかしいなぁ。私は具体的なファントムブレイブ様の格好なんて口にしていないぞ?」

「ほ、他の人に聞いたんですよ」

「確か、君は戦いが終わってすぐに帰ったんだったな。ならば、ダンジョンから帰って来た者達の会話は聞いていない筈だ。そうなると、私がいきなりファントムブレイブ様などと言い出して『なんですかそれは!?』というツッコミがないのもおかしい」

「うっ……!」

 

 しまった!

 ハメられた!

 

「そもそも、戦いが終わってすぐに帰ったというのも妙な話だ。君の性格を考えれば、どんなに疲れていても、私達の無事を確認するまでは帰らない。そうだろう?」

「……僕はそんなに優しくないですよ?」

「いや、それはないな。ないない」

「断言された!?」

 

 しかも、ないを三回くらい言われた!

 なんで!?

 僕、そんなに優しそうなイメージあるの!?

 

「優しくない奴は、自分の秘密がバレる事を覚悟で誰かの為に力を使ったりしないだろう。パワードコングの時もそうだ。あれは駆け出し冒険者が対峙して逃げ切れるような甘い相手ではない。あの時は決定的な証拠がなかったからこそ、単純なハナ以外は全員が訝しみつつも見逃したが、冷静に考えれば明らかにおかしい。こうして他の証拠が出てくれば疑われるくらいにな」

 

 あー……やっぱり、あれは結構致命的だったのか。

 でも、あそこで駆け出し三人組を見捨ててればよかったとは思わない。

 それは優しさ云々以前に、人として当然の事だ。

 

「君はパワードコングの時、君は明らかに力を隠していた。これが二つ目の根拠だな。そして三つ目。決定的な証拠がある」

「そ、それは……?」

「それは……」

 

 レイさんが溜めを作る。

 今の僕は、名探偵に目の前でトリックを暴かれる犯人の気分だ。

 

「あの時、ファントムブレイブ様は小声で言ったのだ。『あの時とは逆ですね』と」

 

 あ、あああああ!?

 聞かれてたのか!?

 

「あの時とはどの時か。不思議に思ったが、記憶を辿ればすぐに思い至った。私がパワードコングから君を守った時だ。言われてみれば、ファントムブレイブ様が私を守ってくれた状況は、パワードコングから君を守った状況と酷似している。立ち位置も、倒し方でさえもな」

 

 そ、そういえば、僕がジュラゾーマを倒した方法。

 相手の拳を最初の一振りで消し飛ばして、次の一撃で真っ二つっていうのは、レイさんがパワードコングを倒した時と同じだ。

 いや偶然!

 それは偶然だから!

 でも、その偶然がレイさんに確信を与えちゃったのか……。

 偶然怖い……。

 

「唯一、街とダンジョンで同時に目撃されている事が謎だが、それも空間魔法を使えばなんとかなる。加えて、鑑定や強者の気配を誤魔化す未知の手段を持っているのであれば、それくらいのアリバイ工作ができる手段も持ち合わせている可能性は大いにあるだろう。これが私の推理だ。反論はあるか?」

「…………………ハァァ」

 

 これは、もうダメだ。

 証拠は揃ってるし、それ以上に、レイさんは確信を持った上で話してる。

 仮にここではぐらかせたとしても、僕がボロを出す度に新しい証拠を持ってくるだろう。

 口封じなんて物騒な手段をレイさん相手に取る訳にもいかないんだし……ゲームオーバーだ。

 

「……参りました。降参です」

「では、認めるんだな?」

「はい。僕がファントムブレイブです」

 

 そう言うと同時に、僕は常闇シリーズをアイテムボックスから取り出して装備した。

 ここまで来たら、ある程度正直に話してから誠心誠意お願いして黙っててもらうしかない。

 まあ、そんな事しなくてもレイさんはこういうのを吹聴するタイプじゃないと思うけど、それが誠意というやつだ。

 

「おお!」

 

 ファントムブレイブ状態の僕を見たレイさんの目が光輝く。

 キラッキラしてる。

 ヒーローショーを見に来た少年のように。

 でも気のせいかな?

 僕の勘違いじゃなければ、目力に憧れ以外の感情が混ざってるような……

 

「や、やはり何度見てもカッコいいな。だが、目の前で変身したのにも関わらず、いまいち君だと認識できない。その衣装に何か仕掛けがあるのか?」

「ええ。常闇マントと常闇マスクと言いましてね。見てる人の認識を阻害する効果があります」

「ふむ。幻惑魔法みたいなものか。鑑定や強者の気配もそれの応用か何かで欺いていたのか?」

「いえ、それは別のアイテムの効果ですね。確かにこれにもそういう機能はあるんですけど、日常生活には向きませんから。こっちの鑑定妨害リングが普段使い用でして」

「ふむふむ。なるほどなるほど」

 

 頷きながら、実に自然な流れるような動作で常闇シリーズを脱がせ、鑑定妨害リングを外すレイさん。

 そのままどこからか何か丸い物を取り出し、それに僕の手を置かせた。

 あれ?

 あまりにも自然にやられたから流されちゃったけど、僕は今何をされてるんだろう?

 というか、この丸い物にはどこか見覚えが……って、待って待って待って!

 

「ああ……やっぱりぃ」

 

 レイさんの目がトロンと蕩けた。

 例えるなら、状態異常『魅了』みたいな感じだ。

 レイさんが僕に触らせたのは、水晶玉みたいな物体。

 鑑定水晶。

 僕は今、それを鑑定妨害アイテムなしで触らせられていた。

 鑑定水晶が空中に僕のステータスを映し出す。

 偽装されていない、僕本来のステータスを。

 つまり、種族『勇者』、名前『カンザキ・ミユキ』とガッツリ書かれたステータスを。

 

「やっぱり! 君が! 先代勇者様!」

「ちょ!? レイさん!?」

 

 レイさんがいきなり抱き着いてきた!

 む、胸が!?

 たわわな果実が!?

 ヤバイヤバイヤバイ!

 童貞の理性が飛ぶ!

 

「レイさん落ち着いてください!」

「そうじゃないかと思ってたんだ! あの強さもそうだし、先代勇者様の話をした時に何故か吹き出してたし! あぁ……ずっと、ずっと憧れてました!」

「それは嬉しいんですけど、とりあえず離れてください! 当たってる! 当たってますから!」

 

 しかも、なんか凄いいい匂いがする!

 脳が蕩けていくような魅力的な異性の香りというか……ハッ!

 マズイマズイマズイ!

 理性がやられて変態みたいな思考が脳裏に浮かんだ!

 早く引き離さないと、今度は下半身の理性が飛びそうだ!

 そう思ってるのに、滅茶苦茶強くしがみついて離してくれない!

 

「あ……」

「い、いや、これはその……!」

 

 そして、遂に我慢の限界だよ!

 抱き着かれてるから、レイさんにはダイレクトにその事が伝わってしまう!

 

「ふふ、勇者様は私の事が好きか?」

「そ、そりゃ好きか嫌いかで言えば好きですけ、ど……!?」

 

 突然、唇に柔らかい感触が。

 更に、口の中に何かが侵入してくる感触。

 キ、キキキキキキキスされた!?

 しかも、結構ディープなやつ!

 

「ぷはぁ」

「レ、レイさん!? な、なななな何を!? こいうのは憧れとかじゃなくて、恋愛的な意味で好きな人としてください!」

「私は恋愛的な意味で君の事が好きだぞ」

「ッ! ……それは美化されて語られてる僕の幻影に恋してるだけですよ。僕はそこまで立派な人間じゃない」

 

 僕は、レイさんがイッちゃった目で語ってたような完璧超人なんかじゃ断じてない。

 全部後輩くんに押し付けて隠れてる卑怯者だ。

 残念だけど、レイさんの期待に応え切れる自信はない。

 絶対幻滅される。

 

「……確かに、そういう所がある事は否定しないし、むしろ私の愛情の結構な割合を占めてると思う」

 

 ほらね。

 やっぱり……

 

「でも、私は先代勇者様としての君だけじゃなく、この一ヶ月で見てきた君の事も結構好きだぞ」

「え?」

 

 そ、それは……

 

「力を隠してるくせに、酔ったボヴァンの前に躊躇なく立ち塞がり、疑われる事を承知でパワードコングと戦い、今回の戦いにも出てきてくれた。私がふて腐れて飛び出せば追いかけてきてくれたし、普段会った時の何気ない会話も楽しかった。……恋愛対象として見られるようになる前から、私は割と君にドキドキしてたんだぞ」

「ッ!?」

 

 何、その嬉しい言葉。

 しかも最後、ちょっと顔を赤くしながら言ってくるとか、滅茶苦茶あざと可愛い。

 

「理想を拗らせてた私が言うのもあれだと思うが……理想通りじゃなくてもいい。完璧じゃなくてもいい。ただ、初恋の人で、気になる男の子だった君に好きだって伝えて、お互いにこれから好きになっていけたら最高だと、今はそう思うよ」

「!」

 

 優しい笑顔と一緒に告げられた言葉。

 それは意固地になってた僕の心を解かすような力があって。

 心の壁を一枚一枚丁寧に剥がして、心に染みてくるような、そんな感覚がした。

 ああ……誰かにここまで想ってもらえるっていうのは、こんなに心にくるものなのか。

 何かこみ上げてくるものがある。

 よくわからないけど泣きそうだ。

 そんな僕の前でレイさんはパジャマをはだけさせて……

 

「って、何やってるんですか!?」

「いや、既成事実を作っておこうかと。ボヴァンも、少しでもチャンスがあれば全力で掴めって言ってたし」

「だからって!」

「……君は、私じゃ嫌か?」

「ッ!」

 

 ちょっと涙目になった、いじらしい姿のレイさんを見て……嫌だなんて言えると思いますか?

 

「…………嫌じゃ、ないです」

 

 むしろ、心臓をぶち抜かれる程可愛いと思ってしまいました。

 そんな僕に拒否権なんてあろう筈もなく……

 

「そ、それじゃあ……い、いただきます」

「あ、ちょ、待っ……!?」

 

 そうして、この日、僕はレイさんに美味しくいただかれてしまったのだった。

 でも、顰蹙を買うのを承知で言わせてほしい。

 

 滅茶苦茶気持ちよかったです。

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