再召喚勇者は平穏を望む! ~前回魔王と相討ちになって死んだので、今回は勇者とか絶対にお断りです!~ 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「ふぁぁ……」
目が覚めた時、窓の外はすっかり明るくなっており、僕の隣には裸のレイさんがスースーと寝息を立てながら眠っていた。
……昨晩はお楽しみでしたね。
いや、本当に。
レイさんはどっちかと言うと攻めだと思う。
後半は体力の差で逆転したけど。
……昨晩の記憶は鮮明に残ってる。
別にお酒とか飲んでた訳じゃないし、記憶が飛ぶような要素はない。
というか、あんな甘美な体験忘れられる訳がない。
お互い素人同時のぎこちない初体験だったけど、心の底からドロドロに溶けるかと思う程気持ちよかった。
多分、一生忘れないだろう。
でも、レイさんの方は覚えてるかちょっと心配だ。
若干お酒の匂いしてたし。
もしも記憶が飛んでて、「キャー! エッチ!」なんて事になったら、僕は警察に出頭するしかない。
「うぅん……」
そんな事を思ってる内に、レイさんが身動ぎして目を開けた。
起きたみたいだ。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
声をかけてみるとレイさんは……にへらって感じで笑った。
あ、これは覚えてるな。
よかった、警察沙汰は避けられそうだ。
というか、この油断しきった笑顔可愛い。
「ふふ、昨晩はお楽しみだったな」
「お互い様ですね」
そう言って、レイさんは僕の胸に飛び込んできた。
そっと背中に手を回して抱き締める。
昨晩の経験で学んだけど、どうやらレイさんはこうやって抱き締められるのが好きらしい。
……それはそれとして、こんなに押し付けられたら朝から元気になっちゃいそうで困るけど。
「あ、あの~、レイさん?」
「なんだ? どくつもりはないぞ?」
「いや、そうじゃなくてですね」
……これを言うには中々に勇気がいるな。
けど、ヤってしまった以上、言うしかないだろう。
覚悟を決めろ!
「その……せ、責任は取りますから!」
「……ふぇ?」
いや、「ふぇ?」じゃなくて!
「子供が出来るような事をしてしまった以上、男としてしっかり責任は取ります。……なので、レイさん」
硬直するレイさんの肩を持って少し離し、真剣な顔で正面から目を見ながら、僕は言った。
「結婚してください!」
「!?」
その言葉を告げた瞬間、レイさんの顔が一瞬で真っ赤に染まった。
そして、アワアワとし始める。
可愛いけど、今は返事が欲しい。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 結婚……いきなり結婚か!? お付き合いとかそういうのすっとばして!?」
「避妊してたんだったらそういうのもアリだったんでしょうけど……その、思いきっりヤっちゃいましたし」
正直、この一回で出来ててもおかしくないレベルで。
だったら、早急に責任を取るのが男というものだと思う。
「嫌、ですか?」
「そ、そんな事はない! むしろ、バッチコイだ! でも、その、心の準備がまだというか……!」
めっちゃ慌てるレイさんは可愛い。
セッ……肌を合わせたせいか、それとも正体ごと受け入れてくれたからか、さっきからやたらレイさんが可愛く見える。
これは多分、そういう事なんだろうなぁ。
我ながらチョロいと思うけど、男なんてそんなものなのかもしれない。
僕は慌てるレイさん頬っぺたに両手を添えて、正面からキスをした。
「!?」
なんか、レイさんから、ボンッ! って音が聞こえてきたような気がする。
そんな何かが爆発して真っ赤っ赤になったレイさんをもう一度胸に抱きながら、耳元で告げる。
「レイさん。多分、僕はもうあなたが好きです。そして、これからもっと好きになっていくと思います。だから……結婚してください」
「は、はひぃ……」
よし。
随分と茹だった返事だけど、言質は取った。
こんなに嬉しいのは久しぶり……いや、人生初かもしれない。
まったく、告白する時は秘密を打ち明ける覚悟をしなくちゃいけないと思ってたから、こんな穏やかな気持ちでプロポーズできる日が来るとは思ってなかったよ。
まさか、あんな強引に秘密を暴き出されて、告白するんじゃなくて告白されて、秘密ごと美味しくいただかれるとは思わなかった。
こんな形で覚悟が木っ端微塵にされるなんて。
人生何が起こるかわからない。
でも、僕は凄く幸せだ。
「これからよろしくお願いします、レイさん」
「あ、ああ、少年……勇者様……? なんて呼べばいい?」
「ふふ、そこは普通に名前でいいですよ」
「わ、わかった。名前、名前か……」
レイさんは僕の腕の中で少しモゴモゴしてから、
「ふ、不束者だが、よろしく頼む。ミユキ」
ゼロ距離からの上目遣いで、耳まで真っ赤にしながら、そんな台詞を言ってきた。
……色んな意味で凄まじい破壊力だった。
思わず食べちゃいたくなるくらいに。
「レイさん……すみません!」
「へ!?」
その後、朝一で昨日の続きが開催され、お昼頃にルドルフさんが訪ねて来るまでシッポリやってしまった。
慌ててお湯で体を拭いて着替えてから出迎えれば、ルドルフさんは全てを察した顔で「ウチの娘をよろしくお願いします」と言い、レイさんは再び真っ赤っ赤に。
それから、食堂に降りて他のメンバーにも報告を済ませた。
ハナさんは驚愕し、ミーナさんは意味ありげに目を細め、ボヴァンさんは凄く複雑そうな顔で祝福してくれた。
こうして、僕は可愛いお嫁さんを貰ったのだった。