幼女戦車   作:半角半猫(旧フランケン)

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第3話 海に浮かぶ学校

 どうやら園から母に、私が他の子と遊ばずに心配だという電話があったらしい。

私としたことが失敗だった。孤児院ではそうして過ごしても問題はない、むしろ手間のかからない子としてよかったのだが、幼稚園は社会性を身につける場所。一人で絵本を読むというのは、いささか反社会的ともいえるか。少なくとも、世に言う理想的な幼稚園児というものではないことは確かだ。

 明日からは、一人で行動するのは避けなければ。なかなか面倒だが、不良園児と見られるのはごめんだ。

 

 

 

そう私は考えたが、母は違ったらしい。

 

 

 

 前世のゼートゥーア閣下との即応大隊についての意見交換や、その他の時も痛感したが、どうやら私は同じことを話しているはずなのに、目の前の相手と全く違う結論に至ることが多いらしい。

 

 この母親殿は私が、天才かあるいは何らかの才能を有していて、そのせいで一人だと考えているらしい。親に共通の思考、というやつか。ノイマンやケーニッヒも職場に写真を持ってきては、「もしかするとうちの子には〇〇の才能が」「うちの子は将来〇〇になるかも」などと言っていたのを思い出す。

 しかし、私は天才ではない。それは私自身がよく知っている。前々世や前世で出会った天才たち、一部マッドとしか呼べない連中もいたが、彼らと私は本質的に違う。越えられない壁がある。二度の人生でそれは痛感した。

ご期待にそえず申し訳ないが、私は凡才なのである。

 明日からは行動に気をつけることだし、きっと母もいずれ分かるだろう。それまでは少しくらい付き合うとするか。そもそも3歳児には決定権などないがな。

 

 

 

 翌朝、私は車に乗っていた。

 後部座席のチャイルドシートに乗せられている。

 待て、待て、待て、待て。

 幼稚園はどうしたんだ! 今日は木曜日だぞ。幼稚園のある日だぞ!

 昨日の今日で休んでしまっては大問題ではないか?

 私の心の叫びも虚しく、父の運転する車は高速に入った。

 私の隣に座る母が私のヨダレを拭きながらいった。

「今日はパパのお仕事見てー、スポーツも見に行きますよー。ママもやってたスポーツなの」

 スポーツには興味がないんだがな。しかし、公務員の仕事には興味がある。将来は公務員もいいかもしれない。安定した出世街道を、それこそ為すべきを為せば、歩けそうだ。倒産の心配もない。それに……

 

 

 つらつらと将来設計について考え込んでいると、防音壁が途切れ、車窓から海と港と、そしておかしなものが見えた。一見すると船、空母に見えるが、その大きさがおかしい。私の知る世界最大の艦船、ニミッツ級やノック・ネヴィス号の300m400mとは全くサイズ、というよりかはスケールが違う。

 総全長は確実に5kmを超え、海面から甲板までが何十、何百mもあるように見える。もはや、海上要塞か。

 しかも、それが2隻、入港している。平和な世界かと思っていたがそうでもないらしい。あんなものを作って防衛体制を築かなければならないほど、この世界は科学技術が発達し、国際的な緊張感が走っているのか。しかし、あの大きさ、どんな船渠なら作れるんだ?

 父と話していた母も、船に気がついたらしい。

「あら、もう学園艦が見えるわ。碧、みえる?」

 

 

 

 ガクエンカン? あの海上要塞はそう呼ばれているのか。どういう意味だ?

 

 すると、母はさらに爆弾を投下した。

「学校のための船で、学校とそこに通う人のための街が丸々乗っているのよー」

「ママ、碧に言ってもわからないんじゃないか?」

「そんなことないわよ。ねー碧」

 

 

 

 たかが学校のためにあんな巨大船を!?

 移動都市や海上都市ならまだ分かる。だが、学校を中心とした船だと。一体、どうしたら学校を海に浮かべて、街も作ろうという発想になるんだ。

 

 

 高速をおり、駐車場に車を停めると、父と母に連れられ学園艦に向かった。近くで見ると、さらに大きく感じる。さながら城塞のようだ。

 そのあと、父と離れ、母と共に学園艦の甲板へ案内された。甲板に出ると目の前に広がるのは、ごく普通の……やけにアメリカンちっくな街並み。ニューヨークかテキサスかロサンゼルスかはわからないが、とても賑わいのある街だ。

 この船の上で、母のいう「昔やっていたスポーツ」の大会があるらしい。サンダース大学付属校、この船の学校と知波単学園という学校が戦うらしいが、すごい熱気だ。学園艦全体でお祭り騒ぎとは驚きだ。そこまで娯楽が少ないのか……

 ところどころで交通整理が行われている。大会の観戦客のためかと思ったが様子が違う。「立ち入り禁止」「発砲可能区域」?

 発砲?! 戦争でもするのか?! スポーツじゃないのか?!

 おちつけ、おそらく学園艦以上に驚くことはないはずだ。

 

 

 

 そう、ないはずだ。

 

 

 




紳士・淑女の諸君、御機嫌よう。
突然で申し訳ないのですが、あなたの立つ常識はほんとうに常識ですか?実は全く違っていたなのんてことはありませんか?
申し遅れました、谷野碧3歳です。
私は現在進行形で体験中です。ごく普通の日本だと思っていたのですが、違うのならば致し方なし。
ローマに入ったのならばローマ人のように行動しなくてはならないとは言いますが、しかし、一体誰が学校を海に浮かべ、戦車をスポーツにしようと考えたのか、気になるところでもあります。
では、また戦場で。
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