幼女戦車   作:半角半猫(旧フランケン)

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第6話 邂逅

 戦車道の大会を観戦した翌日からは、いつもと同じく幼稚園に通った。もちろん、社会性のない幼稚園児から不良園児にならないよう、なんとか女子園児のグループに潜り込んだが、本当におままごとが好きだとは。てっきり幼稚園児はおままごとが好き、というのは都市伝説か何かだと思っていた。

 一方で家での生活もまた、大きく変わった。

 戦車道の英才教育。そういえば聞こえはいいが、実情は試合のビデオの垂れ流しと、休日に直接、試合を見にいくことを繰り返した。おかげで、国内の強豪校の名前や戦車の知識は得られたが、世間とはずれた毎日を送っている。

 国内の強豪校は主に、イギリス系の聖グロリアーナ女学院、ソ連系のプラウダ高校、最初に観戦したサンダース大学付属高校、そしてドイツ系の黒森峰女学園。この4校が高校生の戦車道大会の上位常連だそうだ。特徴としては、聖グロはバランスのとれた戦車と戦術、プラウダは縦深防御による誘い込みと包囲殲滅、サンダースは一時的な数の利の演出、黒森峰は西住流の影響が強いこともあり重戦車の装甲と火力を生かした硬い戦術を好むらしい。撃てば必中、守りは固く、進む姿に乱れなし、とはよく言ったものだ。

 しかし、一番恐れるべきは聖グロだと私は考えている。別に連合王国との因縁からなどではなく、その戦車の保有、使用状況が他校と少し違うのだ。

 さて、戦争では、なぜ歩兵、砲兵、機甲、工兵、航空兵など多種多様な兵科がいるのだろうか。

 答えは簡単である。それぞれにできることとできないことがあり、組み合わせることで作戦の幅が広がるからだ。機甲兵力だけでは敵の突破はできても占領はできず、歩兵がいても砲兵がいなければ自軍の屍の山が築き上げられるだろう。もちろん、工兵がいなければ防衛もおぼつかない。航空魔導師は浸透力にこそ優れていたが、相手を徹底的に叩く以外では継続しての制空維持は不可能だった。そのため、突破と占領の両方をこなすために兵科の複合運用を目指したサラマンダー戦闘団が組織されたのだが。

 話を戻すと、聖グロは特性の違う戦車を併用している。歩兵戦車であるマチルダとチャーチル、そして快速な巡航戦車クルセイダー。戦車の出場可能台数が少ない時には歩兵戦車を使用しての浸透強襲戦術を取ることが多いが、台数が多くなるとクルセイダーを利用しての陽動、挟撃、急襲など幅広い戦術を取れる。予算の都合もあるだろうが、クロムウェル巡航戦車なども揃えられれば、より幅広い戦術を取れるに違いない。

 黒森峰、サンダース、プラウダも複数種の戦車を使うことはあるが、ドクトリンが固定されているためか、役割分担をしている様子は見られない。もっとも、今後どうなるかはわからないが。

 

 

 

 光陰矢の如しとはよく言ったものだ。私も気がつけば年長、幼稚園の最終学年となり、地元の戦車道の子どもチームにセミメンバーとして参加できるようになった。安全上の配慮から、小学生にならないと戦車に乗れないそうだが、満6歳、つまり年長からチームに参加して間近で戦車を見たり、動かし方や戦術について学べるそうだ。母も随分とこれを楽しみにしていたらしく、セミメンバーのパンツァージャケットが届いた時には写真を随分と撮られた。こんなにも写真を撮られたのは帝国のプロパガンダ以来だったが、やはり精神的に疲れる。とはいえ、戦車道チーム加入に多額のお金を投入したことは確かであろうから、この程度は受け入れねばならんな。

 そして、初めて戦車道子どもチームの建物につき、受付で母と別れる。

 案内されたのはグラウンド。中央には2号戦車が鎮座しており、先に来ていた子供達が群がっている。

 いや、一人だけ離れているな。

 その人物に顔を向けると、妙な既視感を感じた。そして、それは確信に変わった。

 

 

 まさか、そんなバカなことがあってたまるか。

 

 

 相手も視線に気がついたのか、こちらを振り返ると、驚きを目に浮かべながら、ポツリと呟いた。

 

 

 

「デグレチャフ社長?」

 

 

 

 動揺を隠しつつ、私もなんとか言葉を絞り出した。

 

 

 

「久しぶりだな、セレブリャコーフ」

 

 

 

 




世の中、ありえないことはないと言いますが、さすがこれに出来過ぎている。
どうも、谷野碧5歳です。
かつての副官であり、秘書でもあったヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフとの再開は思いがけないものでした。ええ、それこそ存在Xの意思が介入しているのではないかと疑いたくなるくらいには。
なにはともあれ、これからいろいろと忙しくなりそうです。
ではまた戦場で。
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