幼女戦車   作:半角半猫(旧フランケン)

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第7話 最強の二人の始動

 なぜ、セレブリャコーフが、他人の空似でもなく本人が、ここにいる?!

 まさか、存在Xの介入か?

 いや、邪推をしても仕方あるまい。まず、すべきことは……

「あー、泣くな。ほら、ハンカチだ」

「うぐっ、すいません、社長」

 突然の再会だったからか、駆け寄ったかと思うとしがみつき、泣き出したセレブリャコーフをあやすことだった。全く、初日から悪目立ちするのは勘弁だ。今のところ、早くに来ていた子供らは2号戦車に釘付けだからいいが、私の後からくる子に見つかるのは避けたい。

「落ち着いたか、セレブリャコーフ」

「すいません、社長」

 どうやら、少しは落ち浮いたようだが、ハンカチで強くこすったせいか目元が赤い。

「目元が赤い、少し木陰に移動するぞ」

「ご迷惑をおかけします」

 確か、13時30分から開始だったな。まだ、話すくらいの時間はあるはずだ。

 

 木の陰からも子供達が2号戦車を囲んでいるのがよく見えた。中には、登ろうと試みている子供もいる。元気なものだな。

 一方のセレブリャコーフは先ほど泣いたことが恥ずかしかったのか、俯きつつ黙っている。

「セレブリャコーフ……」

「は、はい!」

「そう固くならんでいい。さっきのことは気にしとらん」

「いえ、急に抱きついしまって、ハンカチまで貸していただいて」

 それぐらいは、別に構わんのだがな。

「正直、また会えるとは思ってもいなかった」

「私もです。でも、こうしてまたお会いできて本当に嬉しいです」

 なかなか嬉しいことを言う。さてと、本題に入るか。

「ところで、その……死んだ時と生まれ変わった時の間に誰かと、もしくは何かと遭遇したか?」

「すいません、社長。おっしゃられていることの意味が……」

「あー、つまりだ。生まれ変わりの際、神もしくは悪魔を僭称する輩と遭遇したか?」

「神や悪魔ですか……」

 あまり、直接的な言葉は使いたくはなかったのだが。セレブリャコーフも顎に手を当てつつ考え込んでいる。突然過ぎたか?

「私は、ちょっとチョコを食べて、そしてベットに入って寝たのが最後の記憶です。正直死んだのかもわかりません。目がさめると赤ちゃんになっていて、最初は夢だと思ったのですが……」

 なるほど、気がついたら、か。たしかに寝ている最中に寿命を迎え、生まれ変わったのならば、余計に死を受け入れられないだろう。ただ、存在X、もしくはそれに類する存在にあっていないようで、安心した。

「社長は、その……」

「ああ、私も会っていない」

「やっぱりですね」

 やっぱりとはなんだ、やっぱりとは。結構気を使って、普通の生活を送っていたのだぞ。

 私の不満な空気を感じたのか。セレブリャコーフが慌てて話し始めた。

「いや、あの、社長って、今思い返すとですよ!? ライヒでご一緒していた時から神様とか嫌いそうだったじゃないですか。だから、そのー」

「別に責めているわけではない。確かに、神などというものは信じていないしな」

 セレブリャコーフはホッと胸をなでおろしたのが横目に見えた。元とはいえ仮にも上司の前でやるとは、全く変わってないな。

「そういえば、社長」

「どうした?」

「面白い言い回しをされましたね」

「面白い言い回しだと?」

 何か、変なことを言っただろうか。

「『生まれ変わり』って、いやなんとなく意味はわかるんですが、ここまでぴったりな言葉があるんだなーと」

 少し、まずいか? 確かにライヒや合州国では転生なんて考え方は無かった。当然だ。死ねば、善人は天国に、悪人は地獄に。多少は違えど、基本的にはキリスト教と同じだ。

 魂が別の肉体に宿り、もう一度人生をやり直す、なんて考えは余程の異端か、狂気的なカルトぐらいでしかなかったからな。どう返したものか。

 そういえば、確かあの国も同じような考えを持っていたか。

「昔、秋津洲の人間と会った時にそんなことを言われてな。死んだら魂は神様のもとで善悪に応じて別の肉体で再生する。その肉体は人間とは限らず、虫かもしれない、とな。我々は運がいいぞ?もしかしたら人間ではなく、虫になっていたかもしれんからな」

「ひぃ、社長。脅かさないでくださいよ〜。でも、虫になっていたかもしれなかったんですか。また、人間でよかったです」

「まあ、その秋津洲の話も本当かどうかはわからんがな」

 納得したか。流石に「実は2回目ですー。実は人生2回目の元サラリーマンが部隊を率いていましたー」などとバレて、信用を失うのはごめんだ。

 かつては、優秀すぎると評価した部下だが、こうしてまた会えたのだ。

「よろしく頼むぞ、セレブリャコーフ」

「はい、喜んで。それと」

 セレブリャコーフは息を吸い込むと、右手を差し出しながら言った。

「私の名前は武石八千代、よろしくお願いします!」

 ああ、確かにそうだったな。しかし、ブイシヤチヨか。私は呼ばなかったが、グランツあたりから呼ばれていた愛称があった。

 もはや上司部下の関係ではない。これからは良き友人として付き合っていくことになるからな。愛称で呼ぶのはいいかもしれん。

 私は彼女の手を握り返しながら言った。

「私の名前は谷野碧だ、これからもよろしく頼むぞ、ヴィーシャ」

「えっ、あっ、はいっ!」

 さすがに、慣れ慣れすぎたか。

「あー、気に入らなかったのなら訂正する、よろしく頼むぞ武石」

「いえっ、社長っ、じゃなかった谷野さん、ヴィーシャとよんでください!」

 手の力を強めながらヴィーシャはまくし立てた。少し、力が強くないか?

「そ、そうか。では、改めてこれからも頼むぞ、ヴィーシャ」

「はい!ターニャ」

 ん? ターニャ?

「タニヤってターニャに似て、ませんか?」

 不安そうにヴィーシャが見つめてくる。ええい、多少気恥ずかしいが、こちらからヴィーシャと呼んだ手前、断れん。それならば、互いに愛称で呼び合うのは友好の印だ。

「いや、いいネーミングだ」

「ありがとうございます!」

 さてと、もうそろそろ時間か。併設されたガレージから指導員と思われる女性が数人、2号戦車の方にむかっている。

「さて、戻るぞ。ヴィーシャ」

「はい、ターニャ」

 

 

 

 前世では考えられなかった関係だが、案外悪いものではないな。

 




新しく物事を始めるとき、知っている人、特に親しい人がいれば、人間は安心を覚える生き物です。
どうも、谷野碧、いえ、やはり馴染み深い、ターニャと名乗らせていただきましょうか。
かつての右腕、今は友人である武石八千代、ヴィーシャとともに戦車道に参加することになりました。まずは、存在Xの介入がなさそうなことに一安心。あの凝り固まった自尊心の塊が転生時に姿を表さないなどあり得ませんからね。
これで、心置きなくヴィーシャと戦車道をやれそうです。
では、また戦場で。
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