幼女戦車   作:半角半猫(旧フランケン)

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すいません、名倉先生と重見先生のくだりですが、削除しました。
あまり、良い展開ではなかったですね。
改めて、こんど二人を取り上げたいと思います。


第9話 小学1年生

 セミメンバーとしての1年は、些細なトラブルこそあれど、幼年学校のそれより極めて充実したものだった。週一回、ライフルを持って走り回ることもなければ、朝から晩まで行進の練習をさせられることもない。週一回、空調の効いた部屋で座学や映像資料の鑑賞。多少、周囲が騒がしいこともあるが、未だに騒々しく、おままごと以外にすることのない幼稚園と比べれば、楽園のようだった。

 座学では古今東西の戦争を取り上げた。もっとも、政治的や歴史的な情勢、背景は抜きにして、平易な言葉で作戦や戦術、推移をさらうのみだったが。

 古代ギリシャにおけるファランクスやハンニバルの包囲殲滅とローマの対応、ナポレオンのロシア遠征失敗、島津の釣り野伏せ、そして戦車戦であるヴィレル・ボカージュの戦いにバルジ作戦、ナルヴァの戦い。兵科が戦車のみともなれば、古い事例からも学べることもあるとは驚きだ。実際に公式戦、非公式戦で使われた映像も見たが、相変わらずデタラメな操縦技術を駆使して、騎馬武者のごとく走り回り、敵を撃破する。機動戦から相手を同数で包囲した試合には驚いた。

 ここまで自由だったとは、戦車道。

 とはいえ、多少不自由さを感じさせる面もある。

 暗黙のルールというやつだ。ここだけ、無意味に伝統的というべきか。国際法や戦争法の目をかいくぐった身としては、窮屈に思える。

 あくまで、明文化されている規則・交戦規定をざっと読んだ限りだが、随分と大まかだ。

 例えば、対戦車用の携行武器。無論、連盟の許可なしに火薬を利用した火器は使用できないが、戦車に搭載される砲の弾頭ならば別だ。そして戦車の要員は全員が戦意を喪失し下車した場合は失格だそうだが、裏を返せば1人でも残っていれば失格にはならない。

 つまり、榴弾を使った即席の地雷を、目視と遠隔操作で爆破する、という方法だって取れるのである。

 あくまで、明文化されているルール内ではだが。

 先の例も、ルール、交戦規定上は問題ないが、暗黙のルールには反するため、試合が続行されて勝利できても、その後その選手やチームが戦車道内で、あまりよろしくないことになる可能性があるそうだ。

 戦術的に局所で勝って、戦略的に負ける。どこかで聞いた話だ。

 

 1年生になると、随分と環境が変わった。懐かしさよりも新鮮さを感じるのは、今となっては前々世の記憶が遠くなってしまったことの証拠だろうか。ヴィーシャは小学校自体が初めてのため、随分と戸惑っているようだ。

 幼稚園とは違い、ある程度の権限を持った教員、ルールのある生活、レベルが低いとはいえ文化的な生活。

 ああっ、素晴らしきかな、小学校!

 

 そう思っていた時期も、ありました。

 実態は、幼稚園の延長。中身が変わっていないのだから致し方ない。度々、授業は中断され、新任の教員は指導力不足。カリキュラムも、随分とゆるい。国語、数学、ではなかった算数はまだいいが、生活というのが全くわからない。さらに道徳に、なんと英語。一年生から英語をやるのか、と驚いたのも束の間で、歌ったり、ゲームでアルファベットすら取り上げない。

 一方で、図書室は良かった。広いわけではないが、資料はある程度揃っている。残念ながら中段より上にある本はまだ取れないが。それに、戦車関連の本が伝統・スポーツのコーナーにあるのは、当然とはいえやはり驚く。『戦車道入門』に『戦車道の歴史』、『戦車道名鑑』か。

「ターニャ、それは?」

「ああ、戦車道の有名な選手や試合を紹介しているようだ。日本では、西住と島田というのが大きな流派らしくてな」

 ページには、どこか怜悧さ感じさせる女性が二名写っている。

 西住しほと島田千代。

 プロフィールに書かれた戦績の数々がいかに2人が優れた選手であるかを窺わせる。

「へぇー、2人とも同年代なんですね。ライバル関係だったりしたんでしょうか?」

「両者とも背負っているものが大きい。負ければ自分の流派の名が落ちる。となれば、単純にそういう関係にはなりにくかったかもしれん。あくまで想像だがな」

「家元の家って大変ですね」

 プロフィールによれば、どちらとも既婚か。彼女らに娘がいるのならば、戦うことに……いや、気が早いな。

「ヴィーシャ、もうそろそろ時間だ。早く借りて戻るぞ」

「あっ、待ってくださいー」

 

 曜日は土曜日から日曜日に変わったが、まだ週一回のペースでサークルがある。変わったことは、正式なメンバーになったことと戦車に乗れるようになったことだが、

「先生、試合に出られないとはどういうことですか?」

「みんなに乗ってもらう戦車、2号戦車っていうんだけど、みんなでも操縦できるように特別な装置を取り付けているの。だから試合にはまだでられないんだ。大丈夫! みんなに力がついて、きちんと操縦できるようになったら試合にも出るれから!」

 特殊な装置、おそらくは自動車なんかに積まれているパワーアシストだと思うが、たしか1945年8月15日までにあったものでないと試合での搭載は許可されないのだから、出場できないのは当然だ。

 とはいえ、散々戦車道やら学園艦やら非常識なものがある世界なら、小学1年生の筋力でも動かせるのではないかとも思った。

 2号戦車は操縦手、装填手、車長兼砲手の3人乗りが基本だが、生徒2人と先生が監督役として乗るということになっており、生徒は操縦手と車長兼砲手を交互にやっていく。組み合わせは、協調性を育むためといってペアが毎回変わるため、面倒な奴、些細なトラブルの原因となった奴とも一緒に乗ることがある。険悪とまではいかないが、やりにくい。この先、どうなるのだろうか。

 いや、焦る必要はない。幼年学校で言えば、ようやく、演算宝珠を起動させたあたりだ。気長にやるとしよう。

 

 

 

 




ようやく戦車に乗れたと思ったら、ただ乗れるだけでした。
どうも、ターニャです。
試合に参加できるのはいつになることやら皆目見当もつきませんが、まず出来ることからやっていくしか他はなし。そして見極めなければなりません。為すべきことがなんなのかを。
ではまた戦場で。
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