東亜連邦召喚※この作品は未完のまま更新停止しました   作:東亜連邦

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遅くなりました。


ジン・ハーク攻略 後篇

ーーー夕方 王都ジン・ハーク 緊急会議室ーーー

 

 日が暮れ、あたりが薄暗くなり始める夕方。城壁では、夜に備えて松明を各所で焚いている。

 

 松明の赤い光は、兵士たちの暗い顔を照らしていた。

 

 壊滅。国の命運をかけた戦いも、圧倒的な強さを誇る敵を前にして失敗した。

 

 今回の戦いで分かったこと、それは、敵が異常に強いこと、ただそれだけだ。

 

 どう足掻いても勝てない。そのことに、皆絶望する。

 

 緊急会議室では、パタジンが皆を集めて会議を行っていた。

 

「敵はまだ攻めてこないな。いつ攻撃を仕掛けてくるのだろうか」

 

 魔導師が答える。

 

「昼間あれ程の攻撃をしたとなれば、魔力が尽きかけているのかもしれません。一旦休んでいるのではないでしょうか」

 

 その発言に軍師が反応する。

 

「あれが敵の全軍とも限りません。増援を呼んで再び攻撃を仕掛けてくるやも…」

 

 彼らにできることは何も無い。虚しい会議が続いた。

 

 

ーーー同刻 第22師隊陣地ーーー

 

 そろそろハーク・ロウリア捕縛部隊から連絡があるはずだが、何も連絡が無い。

 

「まだか…」

 

 師隊長が苛立たしげに呟いた。

 

「師隊長、連絡が入りました」

 

 通信員が報告する。

 

「そうか、何と?」

 

「捕縛部隊は地元民とのいざこざで出発が遅れ、作戦実行は深夜に延期とのことです」

 

「何だと?」

 

 驚きを隠せない師隊長が舌打ちをする。

 

「クソ…部隊の弾薬はあとどれほど残っている?」

 

 師隊長が参謀に聞く。

 

「昼間のペースで消費すると、あと一時間ほどしか持ちません」

 

「なんてこった…」

 

 ぼやく師隊長。

 

 昼間の敵の攻撃で、意外に弾を消費してしまった、1000年前の、銃を持たない兵士といえど、弾の切れた現代兵にとっては脅威となる。昼間の規模の攻撃を再びされると、被害が出る可能性もある。

 

 作戦の遅れは戦争の遅れだ。もし作戦に失敗したら、戦争が長期化するおそれもある。

 

 この作戦は絶対に成功させなければならない。失敗してはならないのだ。 

 

 

 ーーー夜 王都ジン・ハーク 緊急会議室ーーー

 

 夜。圧倒的な敵の存在を前にして、結論の出ない会議はまだ続いていた。

 

「将軍」

 

 その中で、おもむろに手を挙げる者がいた。

 

 ロウリア王国拡大期の名将、カルシオである。カルシオは優秀な武将で、数多くの敵を打ち破ってきた実績があった。

 

「私の配下の部隊を出しましょう」

 

 カルシオの部隊は南の城門付近で待機していたため、昼間の攻撃には参加していない。まともな戦力が残る、数少ない部隊の一つであった。

 

「しかし昼間の敵の攻撃を見ただろう。それに敵の数もおそらく1万弱はある。いくら君でも、それは無謀というものだ」

 

「しかし敵がいくら強くとも休みは必要です。夜に休まないはずがない。私の部隊は夜目がききますし、機会があるとすれば今夜しかないのです」

 

「だが…」

 

 不安を拭えないパタジン。しかし、カルシオは続ける。

 

「この機を逃せば部隊を残したとしてもどのみち敵の総攻撃によって壊滅するのは目に見えています。攻撃しても守ってもやられる。ならば、今攻撃をかけたほうが利益が大きい。そうではないですか」

 

 名将であるカルシオを失えば、ロウリア王国にとって大きな損失となる。しかし、他に打開策もない。悩んだ末、パタジンは結論を出した。

 

「カルシオ…行ってくれるか」

 

「はっ」

 

 敵が夜間の警戒をしっかり行っていた場合、貴重な武将を失うことになる。

 

「敵に見つかったらすぐに撤退せよ」

 

 パタジンはかすかな望みをカルシオに託した。

 

 

 ーーーロウリア城外の平野ーー

 

 ガサ…ガサ…

 

 夜闇に紛れて多数の兵が進む。

 

「見つかってはいないようだな…」

 

 既に敵との相対距離は推定約2km。未だ敵陣に反応は無い。カルシオは勝ちを確信するのだった。

 

 

 ーーー第22師隊陣地ーーー

 

 静かに進んでいたカルシオ達。しかし、その姿は第22師隊に丸見えだった。

 

「日中の攻撃は困難と判断して夜襲ですか。予想通りですね」

 

 彼らは敵の動きを暗視装置で捕捉していた。

 

 いくら音を立てずに進もうとも、暗視装置は敵をしっかりと捉えている。

 

「弾薬の備蓄が厳しい。照明弾で威嚇する。迫撃砲を用意しろ」

 

「了解しました。『120mn迫撃砲用意!』」

 

 暗闇の中、自走120mm迫撃砲に照明弾が装填される。

 

 

 ーーーカルシオの部隊ーーー

 

「もう少しだな…」

 

 なおも近づいていくカルシオたち。緊張から、カルシオは冷や汗を流している。

 

 そんな中、カルシオの耳が自然のものとは違う、ごく小さな音を捉えた。

 

 次の瞬間。

 

 突如、夜空に複数の光が広がる。照明弾である。

 

 城壁からも見える程の強い光に照らされ、静かに進んでいたカルシオたちの位置が露呈する。

 

「くっ…」

 

 暗闇の中に突然現れた光によって、多くの兵の目が眩む。

 

「何が起こった!?」

 

 カルシオも目を覆いながら光源を見上げた。

 

「なっ…!」

 

 暗闇に輝く複数の明かりを見て、呆然と立ち尽くすカルシオ。

 

「まさか…まさか太陽を作ったのか…!」

 

 太陽を作り出す魔法なぞ聞いたことがない。しかし、月など比べ物にならない強い光を発するものといえば、太陽以外に思いつかなかった。

 

 さらに、立ち止まっているカルシオ達に向けて、サーチライトの光が照射される。

 

「はっ!いかん!」

 

 次の瞬間、自分が死と隣り合わせにあることを思い出したカルシオ。彼は撤退を命じた。

 

「撤退!撤退ーっ!!」

 

 撤退していく兵たち。

 

 そこに、第三歩兵大隊の車両から打ち出された重機関銃が浴びせられる。

 

 兵達は、機関銃弾を浴びて次々と倒れていく。

 

 昼間の攻撃のときよりも密度は薄かったが、威嚇効果は十分だった。

 

 部隊は大混乱となって撤退した。

 

 

 ーーーロウリア城壁上ーーー

 

 夜襲に失敗したことで、パタジンは打てる策が一つもないことを悟る。夜間でさえ攻撃を与えられないのであれば、何をやっても無駄だ。

 

 今できることは各方面からの援軍を待つことだけ。全ての部隊を集結させれば、15万を超える規模となる。それだけの兵を集めれば、敵の矢弾も切れるだろう。

 

 そんなことを考えながら、パタジンは会議室に戻っていった。

 

 

 ーーーーーー

 

 シュゥゥゥ…

 

 第22師隊の陣地から、密かに1発のミサイルが発射された。そのミサイルは、ロウリア城の城門に向かって一直線に飛翔していった。

 

ーーー会議室ーーー

 

「ーーというわけで、今後は籠城を主体として各方面からの援軍を待つ。何か反対意見は」

 

 そう言ってパタジンは周りを見回すが、手を挙げる者は誰もいない。他にできることもないから当然だが。

 

 しばしの沈黙。魔導師ヤミレイが、おもむろに口を開く。

 

「…なぜ、彼らのような国が突然現れたのでしょうか?あのような強大な魔法の数々など、見たこともない…」

 

 彼の呟きに答えられる者はいなかった。

 

 ダン!

 

 音を立てて、パタジンが机に拳を叩きつける。

 

「奴らは…一体何なんだ!全てが常識外れ、勝てるわけがない!」

 

 思わず、愚痴を漏らすパタジン。司令官にあるまじき発言だが、無理もないことだった。

 

 会議室には悲壮感が漂う。昼間、城壁を破壊した爆裂攻撃や、先日の飛行場を破壊した飛行物体に攻撃されれば、王都はすぐに破壊されるだろう。むしろ、攻撃してこないことが不可解だ。

 

「では、会議はこれで終了とする」

 

 そう言ってパタジンが会議を締めようとした時だった。

 

 ドオオォォン!

 

 城の北側から爆音が鳴り響く。何事かと皆がバルコニーに向かうと、北側城門付近が煙に包まれていた。

 

「まさか!」

 

 最悪の可能性に思い至ったパタジンは、予想が外れてほしいと願う。

 

 しかし、その思いはすぐに裏切られることになる。通信員が音を立てて走ってきた。

 

「報告いたします!北側城門が、敵の攻撃を受けて破壊されました!」

 

 東亜連邦の陣地から放たれた対戦車ミサイルが、城門を破壊したのだ。

 

「くそっ!やられた!」

 

 思わず叫ぶパタジン。敵が今夜で戦いを終わらせるつもりだということを悟り、全員に戦慄が広がる。

 

「直ちに城門付近に兵を集めよ!敵が攻めてくるぞ!」

 

 何か策を打たなければと、パタジンは兵の集結を命じた。

 

 

 ーーー数分後 王都上空ーーー

 

 パタパタパタ…

 

 静かな音を立てて数機のヘリコプターが王城へ侵入する。

 

『陽動は成功した。各員、降下用意』

 

 王宮広場上空まで移動したヘリは、ホバリングを始める。待ち構えていた第7・8近衛隊の兵士たちは、恐怖に慄いた。ヘリの銃手が射撃位置につき、機関銃を撃ち下ろす。

 

「退避!退避ーっ!」

 

 近衛隊の兵士たちが次々と銃弾を浴びて倒れる中、第8近衛隊の隊長が屋内への撤退を命じる。

 

 障害が排除できたことが確認されると、ヘリから第31旅隊の兵士たちが降下する。あっという間に空挺堡を確保し、王宮広場はあっさりと制圧された。

 

 

 ーーーーーー

 

 近衛大隊長ランドは、王宮広場に敵が降下するのを作戦指令室で見ていた。

 

「まずい…!」

 

 直ちに各近衛隊を迎撃に向かわせる。パタジンにも兵を王城へ戻すよう要請し、自身も王の間へ向かうのだった。

 

 

 ーーーーーー

 

 パタジンもまた、会議室から、王城に降下する兵を見ていた。空から兵を送り込むという今までにない発想。ワイバーンでは二人乗せるのがせいぜいで、空挺作戦という発想は生まれなかったのだ。

 

「空から送り込んでくるとは…っ!」

 

 ランドからの報告を受けた軍師が、パタジンに報告する。

 

「近衛大隊長から援軍要請です。敵は王を狙ってきているようです」

 

「くそ…っ!ここまで追い込まれるとは…っ!」

 

 ロウリア王国では、戦争のために重税を課してきたため、国民も諸侯も疲弊している。王を討たれれば、諸侯の反乱で国が分裂しかねない。

 

(間に合うといいが…)

 

 敵は今も進撃している。焦るパタジンだった。

 

 

 ーーー王城4階 王の間ーーー

 

 王の間で指揮を執るランド。次々報告が上がっていた。ランドの周りには、第零近衛隊の兵士たちと通信員数人が控えている。

 

「敵、1階会議室を制圧、第6近衛隊は通信途絶しました」

 

「敵は2階に上がってくる模様、大広間で第5・4・3近衛隊が迎え撃ちます」

 

「敵と交戦状態に入りました…敵は魔杖らしきもので攻撃してきます。鎧は効果がありません」

 

「第5・4・3近衛隊、通信途絶」

 

 敵は鬼神のような強さを誇り、異常な速度で進軍してくる。しかもわが方の攻撃が効いているという報告は一向に上がってこない。

 

「現在、敵は3階大臣会議室に進軍中。第2近衛隊が対応します」

 

 あまりに速い進軍。各近衛隊も次々と全滅していき、王の間には重い空気が広がる。

 

「進軍が速すぎる。敵は一体何なんだ?」

 

 ランドの呟きに、副官が答える。

 

「兵は練度によって強さが大きく変わりますが、ここまでの強さは聞いたことがありません。各部隊も詳細な報告を上げる前に通信途絶してしまっていますから、具体的なことは何もわかりませんし…」

 

 そんな話をしているうちに、さらに報告が入る。

 

「第2近衛隊、通信途絶しました」

 

「第1近衛隊が謁見の間で交戦します」

 

 通信員の声に震えが混ざる。謁見の間を突破されれば、残りは王の間しかない。この進軍速度ではここもすぐに突破されるだろう。

 

(どれだけ時間を稼げるか…)

 

 黙り込んで思案するランド。刻一刻と時間は迫っている。

 

「第1近衛隊、通信途絶」

 

 ランドはできる限りの時間稼ぎを試みることにした。

 

 

 ーーーハーク・ロウリア捕縛部隊ーーー

 

 捕縛部隊隊長の(Hong)は、奥にある緊急控室に向かって走っていた。途中には王の間がある。おそらくそこにも敵がいるだろう。洪は部下に命じて扉を開けさせた。

 

「…」

 

 開いた扉から中に入る。扉の先に視線を向けると、恐怖に震える2人のメイドがいた。

 

「皆さん、よくいらっしゃいました。近衛大隊長のランドと申します。少し話をしませんか?」

 

 薄暗い王の間の奥から、声が聞こえる。ぼんやりとした光の中、1人の男が現れた。

 

 洪は小銃を構えたまま対応する。

 

「お前と話している暇はない。すうに武器を捨てて伏せろ。さもなければ敵とみなす」

 

 しかし、笑みを浮かべてランドは手を挙げるだけで、武器を捨てる素振りはない。

 

 「ちっ…」

 

 洪はメイド2人を蹴り飛ばしてランドに銃を突きつけた。

 

「もう一度言う。武器を捨てて伏せ、投降しろ」

 

 しかし、やはりランドに動く気配はない。

 

「仕方ないな…突入!」

 

 洪の指示でロウリア王捕縛部隊の面々が王の間を走っていき、次々と銃声が響く。わずか1分ほどで銃声が止む。

 

「これが最後だ、武器を捨てて伏せ、投降しろ」

 

「くっ…」

 

 ランドの顔から笑みが消え、諦めた表情で剣を抜いて…洪に切りかかった。しかし洪はそれを受け流す。ランドは一歩引いたが、後ろから現れた洪の部下に後頭部を蹴られ、気絶した。

 

 

 ーーー緊急控室ーーー

 

 長年の悲願であったロデニウス大陸の統一。穀倉地帯であるクワ・トイネ公国や、鉄などの資源の存在が噂されているクイラ王国。これらを征服するために、服従と言ってもいいほどの厳しい条件を呑んで受けた、列強パーパルディア皇国からの支援。

 

 6年間に渡る列強式兵隊教育と技術の供与。さらに、この戦争のために借り受けたワイバーンや兵士の数々。国力を限界まで軍事に投じ、数十年にも渡る借金をして作り上げた軍。

 

 並の文明国相手ならば勝てる自信さえあった。

 

 しかし。

 

 東亜連邦とかいう異常に強い国家の参戦で、全てが覆された。

 

 初めは、ワイバーンのいない国と侮っていた。しかし蓋を開けてみればどうだ。ワイバーンなど必要としないほどの超技術を持った国家では無いか。明らかに列強をも超えているとしか思えない。

 

 相手の攻撃により、4400隻の海軍も、550騎のワイバーンも、全てを失った。後悔が押し寄せる。しかし、最早どうすることもできない。

 

 すぐ目の前の王の間でも戦闘が行われているようだ。聞き慣れない音、そして近衛兵の悲鳴が聞こえる。

 

 ギイ…

 

 音を立てて扉が開く。

 

「ヒッ…!」

 

 まだら模様の服を着た兵士たちが入ってきて、思わず恐怖の声をあげる。

 

 そのうちの一人が近づいて言った。

 

「ハーク・ロウリア34世ですか?東亜連邦国境警備隊の(ソン)と申します。あなたを大量殺戮指示の罪で捕縛させていただきます」

 

 ハーク・ロウリア34世の手に、手錠がかけられた。

 

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