東亜連邦召喚※この作品は未完のまま更新停止しました 作:東亜連邦
ーーー中央暦1639年1月27日 クワ・トイネ公国 政治部会ーーー
政治部会。これは、東亜連邦で言えば閣議に相当するものである。それまでは政治部会が開かれる頻度はそこまで多くなかったが、近年隣国のロウリア王国が急速に軍備を拡張していることもあり、開かれる回数も増えてきた。
ロウリア王国はエルフやドワーフ、獣人といった亜人の殲滅を国是としており、国内に多数の亜人が住むここクワ・トイネ公国と隣のクイラ王国とは対立関係にある。
首相のカナタたちはいつも通り経済政策やロウリア王国の対策について話し合っていた。
「会議中失礼します!」
外交部の若手幹部が息を切らして飛び込んできた。明らかに緊急事態。政治部会の皆が身を固くする。
「何事か!」
外務卿が声を荒げる。
「報告します!本日朝、マイハーク北側海上に300m級の超大型船を伴う10隻の艦隊が出現。海軍が臨検したところ、東亜連邦という国の艦隊だと判明しました。
なお、300m級の超大型船には東亜連邦の外交官が搭乗しており、敵対の意思はないとのことです」
あまりにも突飛な内容に、誰もが驚く。そもそも東亜連邦などという国は聞いたこともない。若手幹部は続ける。
「彼ら、東亜連邦は、『突如この世界に転移し、元の世界との関係が断たれたため、付近の哨戒を行なっていた。その過程で、クワ・トイネ公国を発見した』と主張しています。また、クワ・トイネ公国との会談を希望しています」
政治部会の誰もが信じられないという顔だった。
国ごと転移など神話のことで、現実にはあり得ない話だが、300m級の超大型船を造る彼らの技術力は本物であろう。協議の結果、まずはその外交官に会ってみることになった。
ーーークワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ 首相官邸ーーー
クワ・トイネ公国首相、カナタは緊張していた。本来、国交締結をする場合、外務局の担当者同士で交渉・協議をし、根回しに根回しを重ねて、最後に両国の首脳が国交締結の宣言を行うのが慣例だ。
しかしながら、現在クワ・トイネ公国の隣のロウリア王国との緊張状態が高まっており、強国とは友好、(できれば同盟)の関係を持ちたいというのが本音であり、根回しに根回しなどとそんな悠長なことは言っていられないのが実情なのである。
友好とは言ったものの、経済力、軍事力など自国の持てる力すべてを投入して自国の利益をもぎ取りに行くのが外交の基本だ。
相手が覇権主義の国の場合などは最悪である。領土や奴隷、不平等条約などを要求されては友好関係を持つ以前の問題であろう。
超大型船を建造する力を持つ「東亜連邦」という国、相手は一外交官とはいえ慎重に対応しなければならない。
(…行くか)
カナタは応接室の扉を開けた。
中には先に通していた東亜連邦の外交官がいる。
「初めまして、東亜連邦外務省の
東亜連邦の外交官が立ち上がって礼をする。彼の横にはほかに二人の外交官がいる。
「ええ、よろしくお願いします」
対してこちら、クワ・トイネ側は首相のカナタ、外務卿のリンスイ、他五人の外務局員だ。
「司会進行を務める、クワ・トイネ公国外務卿のリンスイです。…早速ですが、東亜連邦の皆様の来訪の目的は何でしょうか」
前置きもそこそこに、いきなり本題を切り出すリンスイ。
「はい。それについては資料とともに説明させていただきたいと思います。こちらをご覧ください」
配られた紙を見るカナタ達だったが、皆困惑している。
「…?失礼ながら、書いてあることが全く読めないのですが…」
「こ…これは失礼しました。東亜語を話していらっしゃるのでてっきり…」
思いもよらないことを言われたかのような表情をする東亜連邦の外交官たち。
「東亜語…?我々からすると、あなた方が大陸共通語を話しているように聞こえるのですが…」
この辺りで主に使われている言語は、大陸共通語(第三文明圏共通語)である。東亜語など聞いたこともないし、カナタ達の耳には彼らも大陸共通語を話しているようにしか聞こえない。
「そういえば街中の看板も我々には全く読めませんでした。こんな不思議なことが起こるとは…。では、口頭で説明させていただきます。」
東亜連邦の外交官が資料を回収して説明を始める。
「我々は、この国の北東約一千kmにある東亜連邦という国から来ました。あぁ、単位は通じますでしょうか?」
「それはもちろん。だがお待ちを。あの辺りは群島があり、海流が乱れてる海域です。集落が集まって国を作ったということでしょうか?」
「いえ、我が国は約1000万平方k㎡の国土と約16億人の人口を有する
「…は?」
ここにいるクワ・トイネ側の者は皆こう思ったに違いない。
(こいつら…何を言っているんだ?)
「あの…今なんと?」
「約1000万平方k㎡の国土を有する元大陸国家です、と申し上げました」
(あの群島にはとても16億人が住めるような面積は無いはず‥。そもそもあの辺りにそんな大きな島…いや小大陸があればとっくのとうに発見されているはずだ。ホラでも吹いているのか?まて、「元」大陸国家とはどういうことだ?)
「大変申し上げにくいのですが、我々は元居た星、地球から転移してしまったと考えています。原因はまだわかっていません」
などと発言する東亜連邦の外交官に対し、外務卿が噛みつく。
「たしかに政治部会でもそのような報告を受けましたが、国丸ごとの転移など、一体どれほどの魔力が必要なのか…想像もつきません。正直に言いますと、我々にはあなた方がホラを吹いているようにしか聞こえないのです」
東亜連邦の外交官は淡々と続ける。
「無理もないことです。我々も地球にいた頃、1000km先に国ごと転移してきました、などと言う者がいても相手にしなかったでしょう。そこで、貴国から我々の国に使節団を派遣していただきたいのです」
「しかし…」
外務卿が渋るのも無理はない。外交官は国にとって貴重な人材だ。それを得たいの知れない国に派遣したらどうなるか分かったものではない。
「外務卿」
カナタが割って入る。
「外務卿の気持ちもよくわかる。しかし、群島の集落が集まったところで、あのような巨船は作れはしないだろう。何より礼を弁えていられる。状況にもよるが、使節団の派遣を前向きに検討しても良いのではないか?」
カナタは崔に向き直ると言った。
「日本の方々よ。国交を締結するにあたって我が国に何を望む?観光に来たわけではあるまい」
「第一に食料。そして資源。また、私たちはこの世界についての知識を全く持っていません。この世界についての情報を、可能な限り教えていただきたいのです」
「ほう、食料!」
一瞬、なにか変なこと言ったかな、という顔をする東亜連邦の外交官達。
「はい。我が国の食料需要は膨大なものなので、もちろん貴国だけで対応可能とは思っておりませんが、出来る限りの食料をいただきたいのです。当然、対価も用意しています」
「なるほど。ちなみに、貴国の食料自給率は如何ほどか?」
「申し訳ありませんが、それについてはまだお答えできません」
やはりそう簡単に自国の情報を開示はしないようだ。この交渉、うまく行けば、彼らの技術が手に入るやも知れぬ。そう思ったカナタは、少し譲歩することにした。
「転移…と申されましたな。我が国が初めての接触ですかな?l
「はい。貴国との接触が初めてです」
「ふむ。帰国は運がいい。ご安心くだされ。我が国は大地の神に祝福されています。野菜や果物、穀物が特別手入れせずとも生えてくるのです。貴国の状況にもよりますが、多くの部分…まあ数億人ぐらいの量は応じられるでしょう」
東亜連邦外交官の顔に驚愕と安心が入り混じった表情が浮かぶ。実際、クワ・トイネ公国では大量の肥沃な土地がある。その量は凄まじく、『家畜、野良犬でさえも旨い飯を食える』と評されるほどだ。おかげで食文化の水準は高く、文明国にも勝るとも劣らないだろう、と自負している。
「では、我が国は、使節団の受け入れを早急に準備いたします。期日については改めて決定いたしましょう」
「わかりました。外務卿、出来る限り準備は早くしてさしあげなさい。大使にはそれなりの権限を持たせて派遣するように」
「了解しました」
この後、クワ・トイネ公国は東亜連邦に使節団を派遣。東亜連邦と国交を締結し、切っても切れない関係を築くことになる。