東亜連邦召喚※この作品は未完のまま更新停止しました 作:東亜連邦
開戦
ーーー中央歴1639年3月22日 クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ 首相官邸ーーー
東亜連邦と国交を結んで2ヶ月が経とうとしていた。
この2ヶ月は、クワ・トイネ公国史上最も変化した2ヶ月であった。
クワ・トイネ公国とクイラ王国とでほぼ同時に国交を結んだ東亜連邦は、両国から大量の食料と天然資源を輸入していた。
膨大な食物の生産量を誇るクワ・トイネ公国は東亜連邦からの受注にほぼ対応していた。
隣国、クイラ王国では、元々鉄や銅、金銀なども一部で産出していたものの、土壌の多くは燃える水や燃える石、毒光を発する石などで覆われている不毛な土地であったが、東亜連邦によればこの燃える水や毒光を発する石などが燃料になるということで、東亜連邦からの技術導入を受けて大々的に採掘が始まっている。
東亜連邦は、これらの代わりにインフラを輸出してきた。
大都市の間を結ぶ、継ぎ目のない黒い道ーアスファルトと言うらしいーや、鉄道と呼ばれる大規模高速流通システム。さらにはいつでも清潔な水が飲める水道や、電気技術などである。
これらの我が国の生活を根底からひっくり返すような様々な技術によって、経済部からは今までとは比べ物にならないほどの発展を遂げられるだろうとの試算が上がっている。
さらには、彼ら自身のためでもあるようだが、東亜連邦の優れた灌漑・農業技術を各地で導入しており、食料生産量が劇的に向上している。
「東亜連邦…すごいものだ、彼の国は。明らかに文明圏を超えている。このままいけば、我が国も文明圏…いや、列強さえ超えられるかもしれぬ」
東亜連邦の数々の優れた技術はすべて「科学」という学問がもとになっているらしく、使節団のによって数々の資料が持ち帰られている。
隣国ロウリア王国との緊張が高まっていることもあり、軍事技術などの輸出も求めたが、それらは輸出してくれなかった。しかし、「火縄銃」や、「大砲」といった兵器のサンプルなどの輸出は許可され、技術部や鍛冶職人などで解析が進められている。
これらの兵器は文明国が保有していると伝え聞く「魔導砲」や「マスケット銃」などに酷似しているが、東亜連邦では1000年から600年ほど前の兵器なのだそうだ。
1000年前…彼ら東亜連邦にとっては、文明国でさえも600年もの技術格差がある後進国に過ぎないのだ。
「……」
カナタは、夕日の沈む地平線を見つめた。あの先には軍備拡大を進めるロウリア王国がある。上記の兵器もあくまでサンプル。前線で使えるほどの量もないし、その製造技術もクワ・トイネには無い。日に日に緊張が高まっており、この国の未来は不透明である。
複雑な気持ちで思いにふけるカナタであった。
ーーー翌日 早朝 クワ・トイネ公国 東亜連邦大使館ーーー
駐クワ・トイネ大使、
「お待たせしました」
扉を開けて挨拶をすると、ヤゴウが焦った顔で待っていた。
「早朝の急な訪問、お許しください。緊急の事態が発生しました」
立ち上がって深く頭を下げるヤゴウを制しつつ、「何でしょうか?」と聞く。
「実は、昨日の夜、ロウリアにいる我が国の密偵から情報が得られたのですが、ロウリア王国による我が国への侵攻が正式に決定されたようです。すでに国境の町、ギム付近に兵が集まっており、戦争が始まれば食料の輸出が困難になるでしょう」
食料の輸出が困難になれば、戦争の期間にもよるが東亜連邦で多くの餓死者が出るだろう。そんなことは絶対に避けなければならない。何しろクワ・トイネ一国で数億人分の食料を生産しているのだ。
「な…何とかならないのでしょうか?」
「ロウリア王国はロデニウス大陸で最大の軍事力を持っています。地の利を生かしたとしても、多くの土地を放棄しなければならないでしょう。そうなれば、今まで通りの食糧輸出は非常に難しくなると言わざるを得ません」
ちらりと崔を見るヤゴウ。
「現状の我が国の兵力では、完全な防衛の遂行は困難です。援軍を我が国に派遣していただくことはできないでしょうか…」
彼は使節団の一員として、東亜連邦に派遣されていた。その時に見た東亜連邦の兵器の力は、彼の脳裏にしっかりと焼き付いている。
「我が国は他国の戦争への介入は基本的に良しとしていません」
その言葉に、ヤゴウは肩を落とす。
「しかし、この場合、我が国の存亡、国民の生活に関わる戦争であるとされる可能性が高い。おそらくですが、集団的自衛権の適応が認められるのではないでしょうか」
「集団的自衛権?」
「つまり、貴国への援軍の派遣が可能になるということです」
ヤゴウの表情が明るくなる。
「それは…ぜひともそうなることを願っております」
後日、東亜連邦政府は、ロウリア王国とクワ・トイネ公国の間で武力衝突が発生した場合、集団的自衛権を発動することを決定した。
ーーー中央歴1639年4月22日 クワ・トイネ公国 政治部会ーーー
政治部会は、非常に暗い雰囲気に包まれていた。
「現状を報告せよ」
カナタの発言に、軍務卿が冷や汗をかいて答える。
「はい。4月12日にロウリア王国がギムに侵攻…その日のうちにギムは陥落しました。その後の侵攻によりギムより西はすべてロウリア王国の支配下に置かれました。
推定されるロウリア王国軍の総兵力は、兵50万、ワイバーン500騎です。さらに、先程4千隻の軍船が出港したとの情報が入りました」
このとてつもない大兵力を、クワ・トイネ公国は防ぐ術を持たない。しかも、前線からの情報によると、ロウリア軍は質でも我が国に勝っているようだ。
誰もが絶望し、会議室は静寂に包まれた。
その時、外務卿が手を挙げる。
「先ほど東亜連邦大使館から連絡がありまして…読み上げます。『東亜連邦政府は、独立国クワ・トイネ公国に対するロウリア王国の侵攻、そしてその非人道的な行為を見過ごすことはできない。東亜連邦は正式にロウリア王国に対する宣戦布告を宣言する。なお、クワ・トイネ公国政府からの要請があった場合、いつでも軍を派遣することができる』…とのことです」
クワ・トイネ公国の未来に、光が灯る。
政治部会参加者の目が輝きを取り戻す。
「よし!すぐに東亜連邦に対し援軍の派遣を要請せよ!また、食料はこちらで用意し、戦争の間、領土、領空、領海の通行の自由を認めるとも伝えよ!」
「はっ!了解しました!」
後日、東亜連邦はクワ・トイネ公国に援軍を派遣することを決定した。