諸事情で執筆する暇がなかったのと上手く内容を纏めるのに時間が掛かってしまい遅れました。
見直している暇もなく矛盾している点があるかもしれませんがご了承ください!!
最終試験当日。
パイロットスーツを着てロッカールームで待機しながら頭にタオルを被せてシミュレーション繰り返す。
戦術飛行でメッサーさんの後を追っても最後の一手が足りず撃墜される。
撃墜されては、もう一度、もう一度と繰り返し続けていく。
『ヒキガヤ候補生、ハンガーへ移動してください』
放送の指示を聞いて椅子から立ち上がり、一呼吸挟んでからロッカールームを出ていく。
結局、シミュレーションでは勝ち星を上げれなかったが、落ち込むな。
十全に準備してきた。気張ってけよ、俺。
「…………」
狭い通路を歩いて一枚の扉の前に立つと扉が開いていく。
開ききった扉を通ってハンガーを進んで行くと視線の先には青のVF-1EXとガイさんたちがいた。
「来たか。ハチマン」
「ガイさん、機体のチューンアップありがとうございます」
「良いってことよ。お前がこの二ヶ月、血反吐を吐くような思いして頑張ってたのはよく知ってる。胸張ってけよ」
「俺たち整備スタッフも応援してるっすよ。そうだよなお前らー!」
ハリーさんが後ろを向いて大声を上げると陰に隠れていた他の整備スタッフたちが出てきた。
「そうだぜあんちゃん、頑張れよ!」
「俺たちができるのはここまでだッ!」
「次はお前さんの番だよッ!」
「応援してるぞ、ルーキー!」
まさか俺が応援される日が来るなんて、ほんの少し前の俺なら考えられない光景だ。
ああ^~、ポンポン痛くなってきた………。
「行ってこい、ハチマン」
「…うすッ」
ガイさんたちの声援に背を押されながらVF-1EXへ搭乗した。
アビオニクスを操作してシステムを起動したのを確認したあとキャノピーを閉じていく。ヘルメットを被ると自動的にバイザーが降りて酸素が供給される。何回か深呼吸して肺を馴らしておくとヘルメットのインカムからオペレーターの声が聞こえてきた。
『ハチマン候補生。今回のオペレーターを務める“ミズキ”です。貴機のコールサインを“Δ5”と認証。チェック』
「………チェックOK。こちらΔ5。両翼、尾翼、エンジン共に問題なし。脱出システム、ARシステム。正常起動を確認」
『了解。Δ5、発進カタパルトに移動します』
ミズキオペレーターの指示と共に機体全体が上に押し出されるのを感じた。上を見上げれば、開き始めたのハッチから雲一つない空と燦々と降り注ぐ陽光が覗いていた。すると突然、操縦悍を握る右手とスロットルレバーを握る左手が震え出した。この期に及んで怖じ気づいたのか…。
あ、ヤバイ、足も震えだしてきた。
『…ハチマン』
別回線から聞こえてきた透き通るような声。それと同時にキャノピーのARモニターが作動して美雲さんが映し出された。
『負けたら、許さないわよ』
それだけ言って美雲さんが映るARモニターは閉じた。ホンっト、勝手な人だ。こっちの事情なんて考えてもいない。初めてあった時もだ。八幡的にポイント低いぞ、全く。
けど、まあ…。いい活をもらった。
気付けば手足の震えは止まり、アイテールの発進カタパルトまで上がりきった。右を向けば隣のカタパルトにメッサー教官が乗る黒のVF-1EXがいる。教官は此方を見ることもなく、ただ前を見続けていた。
機体後方に“
『発進準備完了。発艦を許可します、こ武運を』
「了解。………デルタ5、発進ッ!」
スロットルレバーを前に傾けてアフターバーナーの推力を上げるとカタパルトが起動して機体を力強く引いた。体が後ろへ引かれながらも進むに連れて操縦桿を手前に傾け、機体のピッチ角を上げていくとアイテールから空高く飛び上がった。
「Δ2、Δ5、発進しました」
「気流、天候共に問題なし。両機順調にポイント
「宜しい。引き続き報告を頼む」
「「了解!」」
マクロス・エリシオン指令室では艦長であるアーネストと各オペレーターが連携を取り指示を送っていた。その中でアラドとチャックはモニターに映し出される二機のVF-1EXに視線を向けた。
「隊長。ハチマンの奴、合格しますよね」
「…難しいだろうな」
「で、でも。メッサーもあんなに熱心に教えてましたし!」
「アイツが手心加えるような質に見えるか?」
その問いかけにチャックは言い返す事も出来ず苦い顔をするがアラドは気にせず続けて言った。
「それにな…。俺たちΔ小隊は、ワルキューレを守ることが仕事。それは常に死と隣り合わせだ。それを理解してながらもアイツは進んでこの道を選んだ。信じてやれ。アイツの意志を、覚悟を」
「……はい」
アラドの話を聞いてチャックは返事をするも、その顔は未だに不安を拭えずにいた。それを横目で見ていたアラドはため息を吐いた。
「各機、配置に着きました」
ミズキの報告を聞き、意識をそちらに向けたアラドは通信を手に取って説明を始めた。
「これより試験を説明する。制限時間は15分。一発でもメッサーに当たればハチマンの勝ちだ。そして
『『了解』』
通信機越しに聞こえた二人の声と共にモニターに映る二機のVF-1EXは各々左右に旋回して距離を離していった。
『距離5000……4000……』
距離を空けてもう一度旋回するとミズキオペレーターのカウントが始まった。
『3000……2000……』
バイザーの右下から【0/100】とARモニターが表示された。見据える先に黒のVF-1EXがいて、操縦悍を握る力が強くなる。
『1000……スタートッ!』
合図と同時に機体同士が擦れ違い、勝負の火蓋が切って落とされた。開幕早々インメルマンターン*1で切り返してメッサー教官の後ろへ付いた。
バイザーに表示されたターゲットスコープが
『この程度の攻撃で撃ち落とせると思われていたのなら、随分見くびられたものだな。上がガラ空きだ』
「ッ!!」
通信越しに聴こえてきた教官の声と共に上空からペイント弾が降ってきて右翼に被弾した。いつの間にか上空から急降下してきた教官の機体の後を急いで追う。
黒のVF-1EXは距離を開こう速度を上げるが、此方も逃がすものかとスロットルレバーを前に傾けて速度を上げる。パイロットスーツを越えて直に伝わってくるGを耐えながら操縦桿を操作していく。
「ッ!!」
『……この速度に着いて来れることは、素直に称賛しよう』
「ありがとう、ございますッ。教官ッ!」
蛇行飛行を繰り返していたメッサー教官の機体に狙いを定めて引き金を弾くが機体を大きく剃らされ、避けられてしまう。
『だがそれは少しと満たない付け焼き刃だ。戦場に出ても3秒と持たず死ぬだろう』
「そんなこと、自分が一番、理解してますッ!」
狙いを定めて追撃を試みるがやはり一筋縄ではいかなく避けられてしまう。
『ならば見せてみろ、今のお前に何ができるのか』
「こ…のッ!」
追い続けてるあまり失速している事に漸く気付いて機体を加速させるとメッサー教官はコブラ*2で背後に回り込まれると機内からロックオンアラートが鳴り響いてきた。
「まだ、だッ!」
『甘い!』
何度避けようとも百発百中で当ててくる。しかも両翼、エンジン、胴体と的確に射抜いてくる。意識が飛びそうなほど長く続いていく攻防戦はじわじわと俺の体力と精神を焦りへと変えていった。
「こん、ど、こそッ!!」
それでもメッサー教官の猛攻は止まることを知らない。いつの間にか背後に廻られて右にバレルロール*3して弾を回避しようとするが被弾してしまった。
(クソッ……なにか、何か策を練らないと)
バイザーの右下を確認するともう既に【22/100】と数を重ねていた。このとき俺の中で出てきた妙な焦りが心を乱していった。
ハチマンくんとメッサーくんのドッグファイトが行われている頃、
「4、1、2、3!4、1、2、3!4、1、2、3!」
リズムと合わせながら私たちはステップを刻み、一心になって体に覚え込ませている。ただ一人、美雲を除いて。
「…………」
他の三人が真剣にレッスン中に他のことを考えて練習に支障が出てしまっては元も個もないので私は一息吐いて脚を止めた。
「ここら辺で10分休憩をとりましょう」
私の声掛けにマキナとレイナは脚を止めると流した汗をタオルで拭い取りながら同じ部屋に設置してある休憩所に移動して寛ぎ出した。一方で美雲は長時間踊って汗をかいているにも関わらず、息切れの一つも見せない。しかしその顔は浮かない表情をしているがなにを考えているかは見当がつく。
「そんなに彼が気になるの?」
「!!」
「はいはぁ~い!私はハチハチのドッグファイト見たいでーす!」
私の問いかけに明らかに反応する美雲。それに覆い被さるようにマキナが休憩所の手摺から身を乗り出しながら手を高々と挙げてきた。
「そうね。私も少し気になってたから見てみましょうか」
デバイスを操作してレッスンルームのAR機能を起動させた。部屋全体がスクリーンになって映し出されたのはハチマンくんがメッサーくんに追われている光景だった。
『───!!』
『もう終わりか』
『ハァ、ハァア、まだ終わって………ぐッ!!』
『………』
メッサーくんの猛攻に押され、逃げ惑いながらも反撃の糸口を探すハチマンくん。しかしそうはさせないと言わんばかりに、メッサーくんはその退路を絶ってじわじわと彼を追い詰めていく。
「ありゃりゃ、これは手酷くメサメサに扱われてますなあ」
「メッサー、容赦なし」
「当たり前でしょ。生半可な気持ちで戦場に出れば無駄に命を落とすだけ。私たちだって何度も経験した事でしょ?」
“ヴァールシンドローム”。
ある日、精神に変調をきたし暴徒と化す。
人々はいつ何処で起こるとも知れない惨劇に怯えることとなるがその驚異に立ち向かう者たちも現れた。
それが戦術音楽ユニット“ワルキューレ”。
私たちの持つ歌声がヴァールを鎮静していくがその分危険な目にも見舞われてきた。
そんな昔を思い出してか、乾いた笑みを溢すマキナとレイナ。
美雲は私たち三人を放って一心にハチマンくんの乗るVF-1EXを見続けていた。
「はあ……仕方ないわね」
美雲は自身のルベライト色の瞳をギラリと輝かせながら奥歯ををそっと噛み締める。デバイスを操作して天井に設置されているステレオから音楽を流し始める。
美雲は歌いながら膝をつくと徐にハチマンくんが乗る青のVF-1EXに手を伸ばした。
制限時間が三分を切った。
八幡は何度攻撃してもヒラリと避けられ背後に廻られて反撃をくらう。
八幡はフェイスモニターの右下には【95/100】と彼の被弾数がカウントされている。
度重なるハイマニューバによって体力の限界を向かえていた八幡は息が上がり視界もブレ始める。
「ハア、ハァ……」
『これで終わりだ、ハチマン候補生!』
通信機越しに聞こえるメッサーの声と共に放たれたペイント弾が後方から迫り来る。
避けなきゃいけないのに八幡の腕は限界を向かえ動かない。
八幡は静かに瞳を閉じ苦渋の表情を浮かべた。
誰しもが諦めて諦めかけたその時、八幡の耳に微かに歌が聞こえた。
八幡は瞳を力強く開き、AIサポートを切って操縦桿を強く握り手前に傾ける。
「…ッぐぉおおあ"あ"あ"あ"!!」
八幡の雄叫びと共にコブラを応用したマニューバで迫ってきたペイント弾を全て避けた。
『なにッ』
「まだ、勝負は着いてません!!」
再び背後を取った八幡はターゲットスコープにメッサーを捉えると引き金を弾いた。
それでもメッサーは負けじと弾を器用に避けて八幡の後方に移動する。
『いい加減観念しろ、ハチマン候補生』
「(まだだ。もう少し、あと少しッ)」
メッサーは少しずつ八幡との距離を詰めていきターゲットスコープでロックオンする。
「(今ッ!!!)」
ロックオンアラートの音が鳴り響くと八幡は先程と急減速をさせて機体を変形させる。
『二度は同じ手は食らわな───ッ!!』
同じようにメッサーはガウォーク形態に切り替えてを急減速させる。
しかし、それよりも前に、八幡は
メッサーは透かさずファイター形態に切り替えてハチマンの上方へ回避する。
その一瞬を八幡は見逃さない。
「うぉおあ"あ"あ"ーーー!!!!」
八幡の雄叫びはガンポッドの無数の弾と共に放たれ、メッサーの機体下面を青く染め上げていった。
『試験終了!』
「結果はッ、───っしッ!!」
オペレーターのアナウンスを聞いたハチマンはフェイスモニターの右下を覗く。
被弾数【98/100】で止まっており、八幡の勝利が確定した。
八幡左手をグッと力強く握った。
「………」
一方、八幡の乗る青のVF-1EXを見つめていたメッサーは、自身の乗る機体の翼まで飛び散っていた青いペイントに視線を移した。
先ほどの戦術飛行は、一歩間違えば、激突しかねない危険行為。
教官として厳しく指導しなければならないが、妙に心が落ち着いているのを感じた。
ハンデがあるとは言え、戦場を想定した最終試験。
その舞台でこれだけの覚悟を見せた八幡に対して、メッサーは敬意を表さずにいられなかった。
「やった!ハチマンがやりましたよ隊長!!」
「ああ、よく頑張ったなハチマン」
管制室では歓喜の声に包まれ、チャックは大声を上げて喜び、アラドも八幡の勝利を喜んだ。
「ガイさん!見ましたか今の!」
「ああ!よくやった坊主!!」
「ルーキーがメッサーの野郎から一本取ったぞ!!」
「流石期待の新人!見せてくれるじゃねーか!」
このドックファイトを見ていたガイたち整備スタッフは歓喜の声を上げてハンガーで賑わっていた。
「か、った………」
八幡は勝ち取った勝利を余韻に浸りながらコックピットから天を見上げるのだった。
「ええーーそれでは、ハチマンの勝利とΔ小隊に正式入隊を祝して、乾杯!」
『カンパーーーイ!!』
チャックは飲み物の入ったグラスを持ち上げて乾杯の音頭を皮切りに沢山のケイオス職員がグラスを持ち上げながら唱和した。
ドッグファイトを終えてΔ小隊への正式入隊の手続きも済ませた俺は現在、楽喰娘娘で開かれている祝勝会の主役としてに参加しています。
「か、乾杯…」
どうしてもやりたいとチャックが駄々を捏ねてアラド隊長に頼み込み、仕方なく了承されたそうだ。
参加メンバーの一部を抜粋して紹介すると、Δ小隊メンバーはもちろん、美雲さんを除いたワルキューレメンバー、ガイさんとハリーさんを含めた整備スタッフ、ブリッジオペレーターたち、アーネスト艦長も参加している。
名前を挙げるとキリがないが、他小隊のメンツなんかもちらほら見える。みんな俺の勝利を祝ってくれた。
運ばれてくる珍しい料理に舌鼓を打ちながら他の隊員たちと談笑した。
この世界ではお酒は18歳になってから飲めるそうで、アラドさんからお酒を薦められ、一口だけバナナ酒を飲まさせて貰った。
口当たりが良くてとても飲み易かった。
人との交流に積極的に関わろうとしなかった俺が、こうして仲間と呼べる人たちと飲んでいるのを小町が見たら感動するだろうな。
そう感傷に浸っているうちに時間は流れていき、祝勝会はお開きになった。
祝勝会が終了した後、場の空気の酔いを醒まそうと近場の砂浜まで赴き浜辺を歩いていると、ふと目に光が指して何かと思って海の方を見ると星空の光が海に反射していた。
空を見上げれば満天の星空が輝き、俺は魅了されながら姿勢を崩してその場に座わった。時間を忘れるほどいつまでも見ることが出来た。
「ふぅう……」
「お疲れみたいね」
「ひゃい!」
星空を眺め寛いでいると突然後ろから話しかけられ変な声が出てしまった。振り向くとそこには私服姿の美雲さんがいた。普段見ない私服姿に驚いてしまったが、気をしっかり持たねば。
「き、来てたんすか、美雲しゃん」
はい、緊張しすぎて噛みました……。
「ええ、少し星を眺めたくてね…。それと、正式入隊おめでとう」
「お、おう」
あらやだ、美雲さんが素直に祝ってくれるなんて。やっぱり美雲さんはいい人なんじゃ───。
「これでまた貴方を揶揄えるわね」
………ああ、知ってた、知ってましたとも。絶対に裏があるって分かってましたよ、俺は。
「フフッ、冗談よ」
「……さいですか」
美雲さんのイタズラめいた笑みを見て気恥ずかしさで顔を反らしてしまった。何か話題を変えようと考えていると出発前のコックピットでの出来事を思い出した。
「その、えっと、出発前のコックピットのあれ、ありがとう。おかげで気持ちが楽になった」
「そう、なら良かった」
美雲さんは星を眺めながら返事を返すと静かに微笑んだそれがどうしようもなく綺麗で儚い顔をしていた。
「人は何故、私は何故、歌を歌うのかしらね。その答えが分からないの。ねえ、貴方はどう思う?」
「え?」
不意に聞かれた事は摩訶不思議で単純な質問。俺はその質問を静かに揺れ動く波を眺めながら答えた。
「そりゃお前、“好き”だからじゃねーの?俺は、人前で歌うとか絶対に嫌だけど、一人カラオケとか好きだし」
「からおけ?それは何かしら?」
え、カラオケをご存知でない?
意外だ。てっきり週に二回はカラオケに行ってるとばっかり思ってた。
というか
「カラオケはですね。一つの部屋を借りて自分の好きな曲を選んでからマイクに向かって歌う事ができるお店の事です」
ふふん、流石が俺。完璧な説明だ。
中学のときに一人カラオケ極めすぎて店員さんに「またコイツ一人で来たよ」って顔されるほど覚えられた甲斐があるってもんだぜ。
アレッ?可笑しいなぁ目から変な汁が出てきたぞ?
「好き………、好きって何?」
「え?…えーと、何かに夢中になれるほど心が惹きつけられる事だったり、とか?」
「………そう、ハチマンは好きの意味を知っているのね」
美雲さんは囁きながら抱えた膝に頬に置いてこちらを見てきた。
それは決してバカにしている表情ではないのに、何かが心の奥に引っ掛かった。
「なあ、今の質問──」
「もう寝るわ。おやすみなさい、ハチマン」
「あ、ちょ」
質問の意味を聞こうとするがそれを遮って美雲さんは町の方へと消えて行ってしまった。
「何だったんだ、今の………」
「あ!いた!」
楽喰娘娘のある方角からザックが大声を上げてこちらに向かってきた。
「ハチマンにぃちゃん、チャックにぃちゃんが探してたよ~!」
「おう、すぐ戻る。でも一人で来るのは危ないから次からは誰かと一緒に来ような。それと夜だからあまり大声を上げるなよ。約束だぞ?」
「うん!わかった!し~」
ザックは小声で俺の格好を真似るように人差し指を唇に当てて笑う。
もし弟がいたら、こんな風に面倒を見ていたのだろうか。
妹の小町にも、あんなに甘かったのだから、きっと弟にも甘いんだろうか。
きっと俺のことだから甘いんだろうな。
そう思い耽っているとザックが必死に俺の手を引っ張っているのが伝わり、徐に足を進め始めると満足げに引かれていった。
その後ろ姿は、幼い頃の小町と重なり、胸の奥が苦しくなった。
「──?ハチマンにぃちゃん、どうしたの?泣いてるよ?」
「ん?」
空いている手で目元をなぞると水滴が付いていた。
ホントに、いつからこんなに涙脆くなっちまったんだろうな。俺。
「すまん、潮が目に染みただけだ。何でもない」
「ホント?ハチマンにぃちゃんは泣き虫だあって、チャックにぃちゃん言ってたよ?」
「ホントホント。ハチマンウソツカナイ。心配してくれてありがとな」
お礼を言って頭を撫でると目を閉じて嬉しそうに笑う。
それからチャック、お前とは一度話す必要が出てきたようだな。
楽喰娘娘に戻ったらチャックを問い詰める決意を胸に再びザックに手を引かれていった。
たらればの話をしたところで、今の状況は何も変わらない。
だから、必ず戻って伝えるんだ。
勝手に居なくなって、ごめん。
ちゃんと相談できなくて、ごめん。
自分勝手な兄で、ごめん。
ただいま、って。
♪それ俺裏話♪
実は、メッサーは八幡が最初の時点でパイロットを辞めるとばかり思っていた。しかし予想を遥かに越える精神力で訓練を乗り越えた八幡をそこそこ見直していた。
次回 Mission 03 憤慨 ブルーティアーズ