以前より格段に文章量は少ないですが、何とか書き上がったので投稿しました。
それと遅ればせながら誤字報告ありがとうございます!
西暦2065年
8月31日 澄んだ蒼穹がより綺麗に見えた晴天
1人で居られる場所はないかチャックに聞いたら、ラグナ支部の屋上に案内された。
チャックに礼を言って暫くそこに居座っていたが、中々居心地も良くて嗅ぎ馴れた潮の香りが仄かに混ざったそよ風を感じながら“マッカン擬き”*1を飲み、時間を忘れて悠々自適に過ごすことが出来た。
あぁ、これが本物のマッカンだったら至福の一時を過ごすことがて来たのにな………。
この惑星には練乳が輸入されていないために、自分で作らなくてはいけない。試行錯誤しながら練乳を作り、それを砂糖入りのコーヒーに混ぜてマッカン擬きの完成。しかし当然ながらあの究極の味を再現することは到底叶わない。このれコ○・コー○レシピ教えてくださいお願いします(血涙)。
よし。明日は非番だから、町に行って材料の買い足しに行こう。うん、そうしよう。
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9月1日 朝露の中で小さく光る粒は眩しかった晴れ
買い足しが終わったその帰り道。今の時代には珍しいと言われる紙媒体の本を置いた書店を見つけた。
気になって中に入ると、意外にも内装が綺麗で埃一つ落ちてなく、良く手入れされていた。店主も気前が良くて幾つか小説を紹介してくれて、あらすじだけ読んでもかなり面白かったので、ついつい購入してしまった。
今日は残りのマッカン擬きを飲みながら
挨拶を交わして何処に行くのかマキナに聞けば、「これから三人でショッピングに行くんだぁ!」と生き生きと話すもんだから俺の中のニュータイプが
マキナに抱き寄せられて「私と初めて会った時もそうだけど、あんまり胸ばっかり見ちゃダメだよ。おんにゃの子は視線に敏感なんだから♪」と耳元で囁く彼女の声に冷や汗が流れた。
スゲーなおんにゃの子、ボッチの俺を凌駕する観察眼を持ってるなんt………噓ですマジすんませんでした。
こうして俺はマキナから O☆NE☆GA☆I されて彼女たちの警護をすることになった。だがメッサー教官の
街中でマキナとレイナが顔バレした途端、
更には、これまたオサレな店でランチしているところに複数人パパラッチが突撃してきてミラージュと共にこれを撃退し、取り押さえたパパラッチを警察に届けてゲーセンに行って休憩がてら、取った景品の荷物持ちにされる。というマキナたちに振り回される1日を過ごしてきたんだが………、
チ"カ"レ"タ"、オ"ソ"ト"コ"ワ"ィ"。
と以前の俺なら答えていただろう。いや、今も言うか…。
休憩ついでにクレーンゲームの景品を眺めていた時の事。
既にこの時、疲労困憊してた俺の前にミラージュが一台のクレーンゲームに張り付いていた。中学生の頃に培った神テクでその台の景品であるウミネコ*2のぬいぐるみを取って渡すと、お礼を言いながら慎重に受け取ったぬいぐるみを嬉しそうに抱きしめるミラージュの姿を見て驚いた。
何時ものような堅物で真っ直ぐな姿勢は何処にもなく、ただ好きなものを好きと言えるミラージュ・ファリーナ・ジーナス自身が持つ“本物”だと物語っていた。
それがどうにも、今の俺には遠く感じてしまう。
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9月4日 曇りだと思ったけどやっぱり晴れ
ミラージュとチャックの2人を誘って始めた模擬戦の最中に不思議な事が起きた。
勝ち抜き制でいこうと話し合ったはずなのに、いつの間にかチャックとミラージュに追われて2対1の状況で戦う羽目になっていた。粘りに粘って何とか耐えていたが、ミラージュに隙を突かれてしまいあと数メートルでペイント弾が迫ってきたその瞬間。意識が遠退き、視界が暗転してオペレーターから名前を呼ばれて気が付くと、2人は撃墜されていたのだ。
訓練後に2人から状況を聞くとメッサー教官との模擬戦で見せた変則飛行に翻弄され、敢え無く撃墜されたのだとか。
勿論そんな記憶もなく、2人にその時の記憶が抜け落ちていることを伝えると何故か引かれた。解せぬ。
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9月6日 外は晴れだけど室内は吹雪
いつもの面子*3に無理やり食堂へ連れて行かれた。
俺は基本孤高のボッチなので、家族以外の誰かと食卓を囲む事に馴れていない。誕生日会で沢山の人に祝われるのは確かに悪くないとは言ったが、今までのスタイルを変えることは出来ない。なのでさっさとサンドイッチを食って持ち場に戻ろうと立ち上がった。
そして事件は起きた。去り際にレイナが俺の服の袖をそっと摘まんで、「待って、
その場の空気が凍りつき、当然近くにいたチャックやミラージュ、整備スタッフたちは動揺やざわめきといった反応を見せた。マキナに至っては「わ、わた、私の………私のレイレイがハチハチに取られたぁ"あ"あ"───!」とこの世の終わりみたいな様で叫ぶもんだから余計人の視線を集めた。
一方、周りの反応と自分の行いに気づいて慌てて誤解を解こうとするレイナを見て、俺は何故か1人で歓喜していた。
久々に聞いた『兄』という単語。レイナに兄と呼ぶよう言ったわけでもないのに、間違えて呼ばれただけなのに、これ程歓喜したのはいつ以来だろう。もしかしたら最終試験に受かったときよりも喜んでいたかもしれない(尊死)。
このあとすぐ、レイナの言い間違いであったと誤解は解けて大事にはならなかったものの、誤解が解けるまでの間はミラージュの説教をレイナと一緒に受けた。
あれ? 俺、悪くなくない?
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9月8日 曇りのち雨だった
今朝方から胸に違和感を感じる。
負担を掛けすぎた覚えはないが、以前のように知らず知らずの内に疲れが溜まっているのかもしれない。この際に少し溜まってた有給を消費して休むのもいいだろうな。
うん、そうしようそうするべきだよな。
べ、べつに本格的にマッカン作りに専念しようとか (そんな不純な理由は考えて) ないです。
ホントダヨ? ハチマンウソツカナイ。
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9月10日 曇りと言ったな、あれは嘘だ(快晴です)
一昨日から不定期に訪れる胸の違和感に苛立って夜風に当ろうと街道を歩いていると遠くの方の浜辺で美雲さんが見えた。
こんな夜更けに出歩くのは流石に見過ごせないと柄にもなく駆け出して後を追った。何とか追いつき、乱れた息を整えて波打ち際に裸足を浸す美雲さんを呼び止めようと手を伸ばすが、自然とその手を止まった。
紫紺色の髪が海風に揺れ動いて色取り取りに煌めく星空と清漣の音を背景に悠然と佇むその姿は、
聞き惚れた。あの時、あの瞬間に俺が感じてたこの気持ちを表現するならこれだろう。
歌い終えた彼女は俺の方に振り返って無言で手を差し出してきた。俺は考え無しにその手を取ってしまったのだ。
その結果。思い切り手を引かれて情けない声を上げながら海へ投げ出された。
浅瀬で体を起こして口に入った海水と砂を吐き出しながら美雲と名前を呼んで文句を言おうとしたら、唇を人差し指で押し止められて「やっと呼び捨てで呼んでくれたわね。でも女神の歌を断りもなく聴いた罰よ」と言葉を残して何処かへ去っていった。その立ち去り際に見せた表情は、歌っていた姿とは違って何処か子どものように見えた。
こうして悲惨で刺激的な夜の一時を過ごしている中で、胸の違和感は消えていた。
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9月12日 絶好の快晴なのに、心は曇り
ここ数日続いていた胸の違和感が収まったと一安心したと思ったら今度は体に異変が起きた。
最初は操縦桿が手に馴染まないだけだったが、訓練中に胸の辺りが熱くなって思う通り操縦できなくなり、仕舞いには宙域訓練でアステロイドに接触することがあった。
今回の訓練で起きたことは俺の操縦ミスという無理くりの誤魔化しで何とかなったが、その後でアラドさんだけには違和感と異変について話しておいた。
その時アラドさんが浮かない顔をしていたのは気になったが、今日はもう遅いし疲れた。
それに明日はメッサー教官直々の訓練があるからこの辺にしておこう。下手に寝坊して訓練に遅刻すると地獄を見る事になる。
いや比喩じゃないからなコレ。
♪それ俺裏話♪
Δ小隊メンバーから八幡の事を「ハチマン」仮名で呼ぶが、ワルキューレメンバーはそれぞれで愛称があるッ!
ワルキューレside
レイナ → ハチ(又は兄さん)
マキナ → ハチハチ
カナメ → ハチマンくん
美雲 → ハチマン
フレイア → ハチさん
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