捏造ばかりなのでカンタビレファンの皆様、お詫び申し上げます。
暴走した空蝉が集めた分、その後囲まれて、各個撃破した分。
それらすべてを集めても、五十枚には届かなかった。
彼らがこれまで手にしたバッジはないかと探ってみるも、そちらの戦果はなし。
「──うん、ないですね」
「そいつは残念だったねえ」
渡されたズタ袋に集めたバッジを放り込み、空蝉がため息をつく。
案の定、カンタビレは悪口雑言を叩いてきた。
「にしても、よく死体からモノを剥ぎ取ろうなんて考えるね」
そうあることが必須であることは、おそらく彼女もよく分かっている。
何かしらにつけてねちねちとスィンのことを貶めにかかるカンタビレの中傷を右から左に流して、スカートの裾を軽く絞った。
じわりと滲み出た雫は、ぽたぽたと滴り落ちる。
身動きをするたびに漂う霧の水分をしっかり吸収したスカート、のみならず無駄に布を使ったワンピースは確実にスィンの体を冷やしていた。
おそらく水着を着せられたのはこれが理由だと思われる。
風邪を引く前にカタをつけるか、あるいは長期戦を見込んで霧の発生源を見つけて破壊するか。
どっちが早いか甲乙つけがたいまま移動を始めたスィンの耳にふと、聞き流せない一文が残る。
「──かのフランシス・ダアトがユリアを裏切ったみたいにさ!」
「フランがしたことは確かに裏切りですが、感情のまま罵倒できることでもありません。お母さんを引き合いに出されてはねー」
それまで何を言っても反応を返さなかったスィンに内心苛立っていたカンタビレであったが、そんな饒舌な返しにただ、聞き返すしかなかった。
「……はぁ?」
「フランは大変お母さん思いの好青年でしたが、お母様は長年の苦労が祟ってお体が健やかではなかったそうです。食うや食わずの苦しい生活を彼が支えていた。どうにか助けてあげたい、楽をさせてあげたいという思いを利用されて、あのようなことを」
そういえばこの霧、けして狭くない演習場いっぱいに立ち込めているが、どうやって発生させているのだろう。
「……!?」
「二国の要請に協力した報酬として、イスパニアとフランクの支援で教団を設立し、お母様をお迎えに上がったまではよかったのですが。裏切り者ダアトの母と後ろ指を指されることに耐えられず、身投げをしたそうですよ。『お前を生んだ我が身が恥ずかしい』そう遺して」
音機関を用いた
ただ、それを見かけたのは譜業技術の最先端を行くシェリダン、あるいは大々的な催しの演出としてバチカルで使用されたくらいだ。
譜術で勝るが譜業で劣るマルクトに存在くらいはするだろうが、死刑囚をまとめて葬るだけのことにわざわざ使いはしないだろう。
となれば、そういった譜術を使用していると考えるべきか。
「フランはすべてを懺悔してから逝きました。フロート計画にかかりきりで弟子の事情を汲むことも疎かにしていた人間が責められることでは」
「ま、待ちなよ。あんたさっきから何言ってんだ!?」
それらしい譜陣を見つけて破壊することを視野に入れたほうがいいかもしれない。
しかし霧を発生させる譜陣は、譜術を弱体化させる結界とやらに影響されないんだろうか。
風邪を引かないための対策を練っていたスィンは、カンタビレの狼狽に気づいて空蝉に瞬きをひとつさせた。
多少は驚いているように見えるだろう。
「何って。ダアトがユリアを裏切ったのはちゃんとした理由ありきだというお話です。買収云々は教団設立のための資金、つまり後付け的な理由だったという解釈を」
「金で裏切ったりしてないだろうね、って話はもうどうでもいい! あんたまさか噂通りユリアの再来──生まれ変わりで、当時のこと覚えてるってのかい!?」
人の口に戸板は立てられぬ。壁にミミーあり窓にはメアリー。
くだらない言葉遊びを脳裏に浮かべることで、受けた衝撃からどうにか回復したスィンは、空蝉に長々とため息をつかせた。
「諸説諸々ありますが、私は今しがたの説を押している、ということで。何がユリアの再来ですか、あほらし。稀代の天才譜術士ユリア・ジュエに失礼ですよ」
受け答えをするにが本人ではないにつき、動揺が表に出るわけもないのだが。
何故か、何故なのか。
「その滝汗はなんだい」
「霧が肌に付着して水滴化しているだけです」
空蝉の額には玉の汗が浮かんでいる。
指摘を受けてそう訂正し、軽く拭って再び歩みを再開した。
しかしカンタビレの追及はやまない。
「だんまりでいけ好かないと思ったらいきなりペラペラしゃべりだして……そういや話し方はどうした。思い切り素が出てるよ」
「フリングス少将見て思い出したのですが、シア・ブリュンヒルドの名で連行されている以上は、そちらで振舞うのが筋かと」
実際は空蝉の暴走による弊害だが、ここで戻しても更に怪しまれるだけである。
スィンは開き直ることにした。
「じゃあ普段のあんたは何だって言うんだい」
ここでスィンとシアの違いを彼女に理解してもらったところで何にもならない。
詳細は話さず、適当に言いくるめようとして……大変な事態に陥った。
「普段は普段ですよ。先程あなたが気色悪がったあちらの話し方。あっちが素で、こっちは言うなれば仮面でしょうか」
猫をかぶっている、が実際のところだが。
カンタビレは独自の解釈を行っていた。
「ああ、なるほど。ギャップ、ってやつかい」
全然違うが誤魔化せそうだからよしとしよう。
と思って、話を変えようとした矢先のこと。
「それでディストの奴をたらしこんだね、忌々しい!」
何故彼奴の名が出る。どうしてそういう話になる。なんであれをたらしこまないといけないんだ。
色々言いたいことはある。それらをぐっと押さえて、まず反論した。
「彼はギャップ萌えではありません。音機関または譜業フェチです」
「知ってるよそんなこと!」
しかし、どうしてまたそんな話になるのか。
やはり噂は真のものだったのか。
「カンタビレ。教団に在籍中、あなたがかの死神にぞっこんラブだと、根も葉もないデマを耳にしましたが、まさか……」
「ぞっこんラブってなんだっ! ちょっと憧れてただけだ!」
惚れてるんじゃねーか、変人。
一体アレのどこに憧れるような要素があるんだと、口に出すことを必死に耐える。
だが、まあ。あの噂が事実なら、彼女が初めから喧嘩腰だったことも、説明がつく。
「在籍中顔を合わせたことは幾度か、ロクに言葉を交わしたこともなかったあなたがこんなにつっかかってきたのは、それが理由でしたか」
「ああそうだよ! あたしはあんたが、主席総長の情婦があいつをつまみぐいして袖にした挙句、捨てたのが気に食わないのさ!」
威勢よく放たれただけの言葉なら、何か裏があると勘ぐるところだが。彼女は哀れさを覚えるほど顔を赤らめており、これが演技なら素直に賞賛するべき表情を浮かべている。
怒りか羞恥か、判別できないところがミソだが。
この不名誉で大いなる誤解を解くために、スィンは弁解した。
「それは悪質なデマです。私は彼を捨てる前に袖にしてないし、袖にする前につまみぐいしてません。そもそもそういった対象では」
「何がデマだい。あいつは『シアがいないなら死神を名乗る意味はない。採魂の女神とおそろいだから名乗っていたのに』って二つ名変えるとか喚いていたんだからね!」
確かに、いつだったか、薔薇がどうだのこうだの言っていた気がする。
しかし。
「あなたが耳にした噂がどんな下世話なものか知らないし、知りたくもありません。それで、その歪んだ妄言を頑なに信じる理由はなんですか」
「とぼけるんじゃないよ。それまで誰も自分の研究室にいれたことなかったのに、あんなに頻繁に出入りして! まるまる一昼夜、あいつの研究室に入り浸って出てこなかった日だってあるじゃないかっ!」
まるで彼女自らが見張っていたかのような言動だが、そんなことはどうでもいい。
ディストの研究室に頻繁な出入りがあったかどうか。確かに、彼女の言葉に間違いはない。
「そりゃまあ、持病の件でお世話になりましたから。専門家に紹介していただいたお礼に研究に協力したり、実験台を調達してきたり。その代わり研究資料を拝借したりで間違いなく出入りは頻繁でしたが仕事以外では……一昼夜詰めていたのは確か、どうしても目玉をくりぬいて解剖したいと駄々をこねてきた時のことですね」
それまでにも、常軌を逸した要望がなかったわけではなかった。その都度どうにか言いくるめてきたが、これはいくらなんでも頷けない。
穏便に、遠まわしに、直接断っても食い下がる彼に辟易して、面倒くさくなった当時のスィンは短絡的に彼の後頭部を殴打して逃走を目論んだ。
が、ディストにはディストなりに企みがあったようで、扉は開かないよう固定されたまま。扉自体も分厚く防音処置が施され、助けも呼べない。
自力脱出を諦めたスィンは、引き出しの中に隠されていた手錠でディストの身動きを封じたあと、彼が眼を覚ますか外部から救出が来るまで、置かれていた研究資料を片っ端から読み倒した記憶がある。
コンタミネーションも空蝉も、古代秘譜術さえも。このとき読破した資料及び理論を参考に構築したものだ。
もちろん、その一度ですべてが理解できるほど、スィンのおつむは出来がよくない。
故に、彼がいようがいまいが許可も得ず研究室へは頻繁に出入りした。そこは否定できない。
「持病?」
「よかった。そちらはご存知ないのですね。もっとも、死に物狂いで隠していたことです。知られていたら道化もいいところですが」
ここは素直に胸を撫でおろしておく。
腑に落ちない顔をしていたカンタビレは、それでも気を取り直したように追及を再開した。
「そもそも、何でディストと仲良くする必要があったのさ。専門家とやらを紹介してもらった恩義かい? あんたがそこまで義理堅いとは知らなかったよ」
「仲良くした覚えがありませんね。恩義は多少ありましたが、明かされては困る秘密を握られていたもので」
入団時、これまでの宮仕えとは違うのだから持病を本格的に治療しろと、ヴァンから仰せつかって。ベルケンドの第一研究所に所属する医師を紹介してもらうにあたり、条件が出された。
この件に関して、ヴァンの仲介は受け付けない。所長たるディストと患者──スィン本人とサシで話をつけさせろとの要望で、まず研究室へ呼び出された。
多分ディストも、珍しい眼を持つ人間がヴァンの子飼いとして入団してきたことを聞き及んでいたのだろう。そして、紹介状と引き換えに好き勝手するか、ヴァンの弱みでも握るつもりでスィンに接触を図ってきた。
それから、医師を紹介する条件として誰も知らない秘密を打ち明けるか、でなければ……なんだったか。とてもではないが受け入れかねる交換条件を突きつけられた気がする。
ヴァンもガイも、ペールすらも知らないような秘密はひとつしかなかったスィンは、一番当たり障りない事柄を選んだつもりだったのだが。
「秘密……」
「ええ。何ならあなたのスリーサイズでもかまいませんよ」
「制服の支給に必要だと言うので伝えました。なので」
この女性が自分の母だと、ロケットペンダントの中を見せたところ。彼の態度は一変した。
非常につまらなさそうな目でちらり、と視線をよこしてきたのが、ロケットペンダントを奪う勢いで迫ってきたのだ。
何をするんだと抗議したところで、ああまさかこんなところに先生の縁がとか、これは運命がどうだとか、わけのわからないポエムを紡いだ後、上機嫌で彼は紹介状をスィンにくれた。
ディストとの奇妙な付き合いが始まったのは、そこからだ。
「私を特別扱いしていたのは、私の母が彼の恩師だったから、です。彼は私の中に、大好きな先生の面影を見出していたに過ぎません」
「恩師……」
「彼は今も昔も、過去へ向かって全力疾走していますよ。なくした恩師、変わってしまったお友達を取り戻すがため。そこに私が入る余地はないです」
恩師の血を引いているということで、多少粘着してきただけで。
カンタビレの様子から、そのあたりの事情は知らないように見える。
重要なのはスィンが
一方でカンタビレは、彼女なりに気になったことへの追及を続けていた。
「変わってしまった友達、ってのは」
「ジェイド・カーティス大佐のことです。正確には、バルフォア博士ですが」
「どういう関係なんだい?」
「……生き返らせようとしてたそうですよ。二人で、協力して。『不幸な事故』でお亡くなりになった恩師を」
鼓動が、うるさい。
彼女は事故で亡くなった。それが正しい認識のはずなのに。
平静でいられないのは、今尚スィンがそう思っていないから。
だって『不幸な事故』を起こしたのは、少年だったジェイドだから。
彼女は、ジェイドを庇って──ジェイドの代わりに──
「生き返らせるって、その死んだ先生を、かい!?」
「……それが
意図せず声が、空蝉に発させている声が震えた。
集中を保つため、会話に夢中にならないために空蝉の影に隠れたプチスィンが術を発動させる。
そのことにも気づいていないカンタビレが、
「ますます訳がわからなくなってきたよ。母親をダシにして荒唐無稽を企んだからかい? それでどうして大佐を殺そうとするのさ!」
「……あなたは、何も、ご存知ないのですよね。でも第三者からすれば、そういうことになりますか……」
「それとも何かい? そのことは全然関係なくて、自分になびかないから逆恨みでもしてるのかい?」
どうしよう。カンタビレを殺したくなってきた。
そう勘違いされることは好都合なのだから、事実無根の痴情のもつれによる逆恨みとでも思わせておけばいいはずなのに。
ただ、逆恨みといえばそうなのかもしれない。
彼が起こした事故とはいえ、客観的に見た状況からすれば彼女は逃げることができた。
少年が暴走させた
当時からジェイドが譜眼を所持していたことを考えると、彼が制御しようとした
それが暴走したのだから、彼女がどれだけ優秀な
彼女はジェイドを守って死んだ。咄嗟のこととはいえ、彼女はその選択に納得していただろう。
スィンが恨みに思うのは、自分と出会う前に彼女が死んだから。彼女を踏み台にして当たり前のように呼吸しているジェイドが憎い。
彼女の何もかも遺さず、遺させず消し去って、譜術レプリカを造って。そのレプリカに、
譜術による生物レプリカには、どうしても欠損してしまう
すべてはジェイドが、彼女を誕生させたから。生きているからには生きようとする。
造られた彼女に罪の意識などあるはずもない。だからといって全部が全部ジェイドの罪になるわけでもないのだが。
なんのことはない。
スィンは自分の母親が死んだ理由であるジェイドを恨んでいて、その身を守られ、今わの際に立会ったジェイドを妬んでいて、いつの間にか更正してしまったジェイドが憎たらしいだけだ。
未だ死者蘇生を企んで母親の情報を弄んでいたならば。スィンは何もかもを投げ捨てて仇を討っていたことだろう。
ディストは過去を追い求めて、ジェイドは過去から逃げ出した。
何とも滑稽な話だと思う。ケテルブルクの天才達は、結局その場から一歩も足を動かしてない。
たとえ彼女が許していたとしても、彼がどれだけ罪の意識に苛まれようと、それから逃れるために償おうとしても、スィンが赦すことはない。
ただ、ジェイドが欲しいのは当人の許しだから。スィンがどのように思っていても、彼には関係ないはずだ。
彼に危害を加えなければ、その感情さえ表に出さなければ。
そうすることで一番大事な人にも、害を及ぼすことはないのだから。
……そう。優先するべきは護るべき主人。彼のために、彼の歩むべき道のために。
己の感情を殺すことなど、これまで真意を誤魔化し続けてきたスィンには造作もないことで。
衝動的に浮かんだカンタビレへの殺意を消し、空蝉を操った。
「逆恨み……逆恨み、ね。そうなのかもしれません」
「! あんた、あの
「コナかけたなんてそんなちょっとホレちゃっただけですあんな色男なんだから多少色目使ったって不自然じゃないでしょう結局はねつけられちゃいましたけどっ」
だめだどうしても不自然になってしまう。とはいえ、すべてがすべて嘘ではない。
スィンの、正確には空蝉の態度にいぶかしむカンタビレが考え込む前にと、矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。
考えていなかったわけではないが、およそ実行に移す予定もない絵空事を。
「私が駄目でしたから早く現れてくださらないかなと思い悩んでいるところですっ」
「何をさ」
「大佐を虜に──いや、大佐を幸せにしてくださる方が」
名高い
それは彼にとっての幸福であるはずで、明確な弱点。
スィンの思惑に乗ってくれたカンタビレは、呆れたように眉根を寄せた。
「つまりあんた、自分に惚れさせて手ひどく捨てようとしたのかい?」
「そんなことしてもアレに傷つく心があるのかどうか……いや、まあ。そんな感じで」
いけない。ちょいちょい心の声が漏れている。
気を抜いているわけではない。その理由はきちんと把握していた。
迫り来る脅威を前に、雑談を終わらせるべく真面目な顔を作る。
「大佐を殺さない以上は、そういうことになりますよ。幸せの絶頂から突き落とす。もうそれくらいしか復讐できないじゃないですか」
「あ、あんたねえ……! 大佐じゃなくても、無関係な人間殺す気満々じゃないか!」
「殺さなくたって人は不幸になれますよ? 何もそんな、物騒な手段使わなくても、ねえ?」
「あんたのその笑顔はすでに物騒だよっ!」
意図せず浮かんでいた空蝉の邪悪な笑みは、頬を揉ませることで消させて。
話し終えて空蝉は、まるで意識を切り替えるように一息ついた。
「さてと。そろそろ頃合でしょう」
「頃合?」
「これで全員ですか? でしたら、私には好都合なのですが」
相変わらず濃霧に満たされた周囲を見回して、軽く目元を拭う。
唐突に尋ねられたカンタビレは、目を白黒させるばかりだ。有益な返答はない。
しかし、もうとぼけられたところで騙せはしない。騙されることもない。
「この期に及んでおとぼけはなしですよ。不意打ちもさせませんから」
「な、何を言ってるんだい」
「何って。雑談で私の気を引いて囲ませて、一斉に襲いかかるつもりだったでしょう」
事実、霧に隠れて見えないだけで前後左右からじりじりと武装した集団が迫りつつある。
空蝉の眼前を一羽の蝶が横切って、その後ろのプチスィンの後ろへと回り込み、消えた。
──カンタビレとの雑談に応じさせながらもう一体、空蝉を造るのは至難の業と思われたが、ソーサラーリングを装備しているせいか、非常にたやすく実行できた。
ミュウに様々な恩恵を与えた実績、意識集合体が契約の証にと望んだだけはある。ソーサラーリングはミュウの、ひいてはチーグルの長老のものだから、もう二度とできることではなかろうが。
蝶の視界を通して周囲を見て回ったところ、種々様々な武器を手にした囚人達が、カンタビレを含むスィン達へゆっくりと包囲網を狭めつつある。
中には、譜銃を手にしている輩もいた。
それが示すのは──いつ攻撃されてもおかしくない、ということ。
「あたしはそんな謀りごと……」
「じゃあ利用されたんですかね? タイミングが良すぎるから無関係の主張はいささか疑問に思いますが……真偽はどうでもいいです。流れ弾にだけ気をつけてくださいね」
スィンとて、何も考えずに囲まれてやったわけではない。そちらの方が好都合だからだ。
言い終わるか終わらないかの刹那。
銃声がこだました。