the abyss of despair   作:佐谷莢

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第十二唱——凍れる刻が生み出すもの

 

 

 

 

 

 尖った大岩の林立する先に、フーブラス川は穏やかな顔を見せている。

 

「ここを越えれば、すぐキムラスカ領なんだよな」

 

 どことなく嬉しそうに、誰ともなく聞いたルークに、ガイが説明役をかっていた。

 

「ああ。フーブラス川を渡って少し行くとカイツールっていう国境がある」

「早く帰りてぇ……もう色んなことがめんどくせー」

 

 だるそーに呟くルークに、ミュウが健気にも励ましをかける。

 

「ご主人様、頑張るですの。元気だすですの」

 

 しかし彼の話し方は、やっぱりルークの機嫌を損ねるのだった。

 

「おめーはうぜーからしゃべるなっつーの!」

 

 ぐしぐしと容赦なく踏んづけた後、とどめとばかりに蹴り飛ばす。「みゅう……」という可愛い呻きだけが残った。

 

「八つ当たりはやめて。ミュウが可哀想だわ」

「ルーク。面倒に巻き込んですみません」

 

 ミュウを弁護するティアに、彼の怒りの矛先をそらそうと謝るイオン。

 二人に挟まれて彼は軽く舌を打った。

 

「さあ、ルークのわがままも終わったようですし、行きましょうか」

 

 ほぼ恒例となったジェイドの仕切りなおしも、今回はルークの気に障ったようだった。

 

「わがままってなんだよ!」

 

 しかしジェイドはそれに答えることなく、さっさと先を進んでいる。

 

「無視すんな、こら!」

 

 事実であるために、誰も反応を見せようとはしなかった。

 例外は飛ばされたミュウを抱えて戻ってきたスィンである。

 

「さあさ、ルーク様。あと少しです。参りましょう」

 

 にこっ、と邪気のない笑顔を向けられ、ルークの怒りのやり場は完全に失われた。

 先を行く皆はもう川を渡り始めている。

 ティアはイオンを支えつつ、ジェイドとガイは警戒を見せながら。

 そして、残されたルーク、スィン、ミュウの三人は。

 

「靴が濡れるから、お前俺を背負って渡れ」

 

 彼は再びご無体を抜かした。スィンの代わりにミュウが抗議するものの、彼は毛筋ほどにも気にかけていない。

 

「ダメですのご主人様、スィンさんが潰れちゃうですの」

「お前がぶっ倒れてから何回か背負ってやったろ!?」

 

 対してスィンは、藍色だけの眼でルークの頭の先からつま先までとっくり眺めている。

 ふとその眼が、立ち止まる二人と一匹に気づいて戻ろうとするガイの姿を認めた。

 ──をわずらわせるわけにはいかない。

 口の中で譜を紡ぎ、ずずいとルークの眼前へ歩み寄る。

 

「な、なんだよ」

「では、失礼します」

「へ?」

 

 そしてスィンは、ルークに足払いをかけて体勢を崩させ、彼のひざ裏に腕を通して──横抱きにした。

 なお、この体勢はプリンセスホールド……通称姫抱っこ、とも呼ばれる。

 戻ろうとしたガイの眼が点になり、やれやれと振り返ったジェイドが指差して笑っているようだがスィンには痛くも痒くもない。

 しかし笑われたルークはそうもいかなかった。

 

「何しやがんだコラアァッ!」

「靴を濡らしたくないと仰せになったでしょう。嫌ならこうですよ」

 

 暴れるルークをものともせず、横抱きの状態から器用に肩へ担ぎ上げる。土左衛門抱っこ、あるいはお米様抱っこと呼ばれる形だ。

 胴体に腕を回しているため、彼の腹筋はスィンの細く肉付きの悪い肩に体重の分だけ食い込んでいる。

 

「てめ、おい、苦し……」

「大人しくしててくださいね──さあウンディーネ、手伝って」

 

 おろおろしているミュウをすくい上げてルークの上に載せ、スィンはためらいもなくフーブラス川へ足を踏み入れた。

 一同から遅れているため軽快に足を進めていく。

 川を横断するにあたり、聞こえるはずの水音が聞こえないことにいぶかったルークはスィンの足元を見て眼を見張った。

 足を踏み出す度に、彼女の足裏は水面より下に沈まない。

 まるで水から拒まれるかのように、まるで真下は地面であるかのように。

 水量が少ないとはいえ、スィンは一度たりとも水の流れに足をとられることなく、横断に成功した。

 対岸につくなり、大仰な吐息と共にルークを、ミュウを地面へ降ろす。

 玉のような汗を浮かべて膝をつく辺り、今の行為が代償なしにできることでないと語っていた。

 しかし、洞察力が鋭いとはいえないルークにそれが察せるわけもなく。

 

「一体どーなってんだ、この靴か?」

 

 膝をついて座り込むスィンの足首を掴んで自分の目線まで持ち上げる。

 彼もまたしゃがんでいるとはいえ、体勢が体勢だ。意図せず、彼女に大股開きを強要する形になっている。

 キムラスカの王城に出入りするメイドに等しく支給される革靴に、おかしな仕掛けはない。

 ただその靴裏にはぼんやりと、譜陣の名残が浮かんでいた。

 それをルークが見つけた直後、譜陣の名残が激しくブレる。

 まくれあがったスカートを大慌てで抑えるスィンが暴れたためだと彼が気づいたのは、直後のことだった。

 

「ルーク様! お戯れはやめてください」

「暴れるなっつーの。よく見えねー……」

「ルーク。あなたって最低だわ」

 

 譜陣の名残を確かめようとした手から、力が抜ける。

 彼の好奇心に歯止めをかけたのは、底冷えするようなティアの声音と冷たい視線だった。

 周囲を警戒するジェイド達こそ未だ横断中だが、ルーク達よりも先に行っていたティアとイオンはとっくに川を渡りきっており。

 その彼らの眼前で珍事は発生したのである。

 ルークから足を解放されたスィンが身なりを正すも、紅潮した頬の赤みはなかなか引かない。

 

「スィンに無茶を言ってると思ったら仕返しのように辱めて……!」

「待って、待ってティア。僕ルーク様が下着見たさにあんなことしたなんて思いたくない」

「お前の下着になんか興味持つか! あんなにすいすい川渡るから変だと思って──!」

 

 思い出したように狼狽するルークの疑問に答えたのは、非常に意外な方向からだった。

 

第二音素(セカンドフォニム)の特性を使ってご主人様の体を軽くしたですの。そのあとは第四音素(フォースフォニム)に作用して、水に濡れないようにしてたですの」

「……え?」

「スィンさん、とっても器用ですの。すごいですの~」

 

 ミュウによる呑気なネタばらしで、つりあがっていたティアの眦すら下がりつつある。この場合毒気を抜かれたと称するべきか。

 ルークは珍しく彼に怒鳴りつけもせず、ふ~ん、と頷いていた。

 ──以前のこともあったが、この聖獣は少々音素(フォニム)に敏感すぎる。

 ジェイドが聞いてなくてよかったと、スィンは胸をなでおろした。

 

「ですがルーク。好奇心で女性にあのようなことをしてはいけませんよ」

「あのようなことって、なんだ?」

「何でもありません。さあ参りましょう」

 

 川を渡りきり靴を逆さにして水を追い出すガイが、不思議そうに尋ねるのをごまかしにかかる。

 ルークは言わずもがな、イオンもティアもジェイドに聞かれてもスィンの胸の内を考慮してか、詳細を語ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 一行が先を進もうとしたその時。

 突如、巨大な猫に似た魔物が現れ、一行の行く手を塞いだ。

 

「……ライガ!」

 

 このあたりに出現するような魔物でないことは、これまで重ねた戦闘でわかりきっている。

 

「後ろからも誰か来ます」

 

 ジェイドの警告に導かれ見やれば、そこには変わったぬいぐるみを抱いた桃色の髪の少女が立っていた。

 

「妖獣のアリエッタだ。見つかったか……」

 

 ガイがこっそり呟いたのを聞いてか聞かずか、少女はぎゅ、とぬいぐるみを抱きしめて言った。

 

「逃がしません……っ」

「アリエッタ!」

 

 すかさずイオンが前に出る。

 

「見逃してください。あなたならわかってくれますよね? 戦争を起こしてはいけないって」

 

 一瞬の沈黙の後、アリエッタは対話に応じた。

 

「イオン様の言うこと……アリエッタは聞いてあげたい……です」

 

 しかし、今にも泣きだしそうな目で、ルークたちを指す。

 

「でもその人たち、アリエッタの敵!」

「アリエッタ」

 

 どうにか説得せんと、イオンは更に一歩踏み出した。

 

「彼らは悪い人ではないんです」

 

 その言葉も通じる様子はなく、少女はぬいぐるみに顔を埋める。

 あふれ出る悲しみを抑えようとするかのように。

 

「ううん……悪い人です。だってアリエッタのママを……殺したもん!」

 

 その言葉に、ルークは不思議そうに聞き返していたが、スィンが口を開いた。

 

「ライガを連れているから、まさかとは思ったんだけど……ライガ・クイーンのことだったりする? チーグルの森で卵を守っていた」

 

 その言葉に、当時の顔ぶれは正気を疑うかのような眼でスィンを見る。

 ところが、アリエッタは大きく頷いた。

 

「ママは仔供たちを、アリエッタの弟と妹を守ろうとしただけなのに……」

 

 イオンが後ろで彼女の生い立ちを皆に説明している。が、スィンはそれを聞いて確かめるどころではなかった。

 

「アリエッタはあなたたちを許さないから! 地の果てまで追いかけて──殺しますっ!」

「──はん」

 

 動揺するルークたちを差し置いて、スィンは鼻で笑い飛ばした。

 そのまま、しんがりの位置から移動してアリエッタと対峙する。

 突出したスィンに対し少女はおかんむりだった。

 

「何がおかしいの!」

「何もおかしくないよ。弟妹を守ろうとした、ね。こっちは食い殺されるところだったよ。どっちが悪いもこっちが悪いもない」

「……!」

「一応聞いとくよ。あなたはなんのために仇を討つの?」

 

 異様に平坦な声で、ある問いを投げかける。

 間髪入れず、彼女はママのため、と呟いたが、そんな答えで満足するスィンではなかった。

 

「母親に報いるため? ──そんなの無理だよ。死者は喜ばない、死者は悲しまない、死者は……何も思わない」

 

 明らかに何かを意識して、スィンは口上を続けた。

 

「母親の仇ね。いいよ、許されなくたって」

 

 すっ、と剣を抜く。切っ先がアリエッタを差し、少女の従えた雷獣は牙を剥いて威嚇した。

 

「死ねば許すも憎むもないから。それじゃね、さよなら」

 

 アリエッタに切っ先を突きつけたまま、スィンの足元に巨大な譜陣が展開する。

 急速に収束した音素が、術者の髪をなびかせた。

 輝く譜陣の中心にいるせいか、その髪が金の色をなくしているように見える。

 

「スィン、落ち着け! そいつは──!」

 

 瞬間。

 

「うわっ……!?」

 

 突き上げるような衝撃が大地を揺るがし、ルークたちはたたらを踏んだ。

 バランスを崩しかけたスィンは譜陣を消すものの、大地の震えは収まらない。

 

「地震か……!」

 

 ジェイドが言い、そこかしこで地割れが起こり、裂け目から毒々しい色の蒸気らしきものが噴出した。

 

「おい、この蒸気みたいなのは……」

 

 何とか平衡感覚を保つガイが言えば、その問いにティアが答える。

 

「瘴気だわ……!」

 

 口を押さえながら彼女が言うと、イオンは警告するように叫んだ。

 

「いけません! 瘴気は猛毒です!」

 

 不運なことに、地割れのすぐそばにいたアリエッタが悲鳴を上げてその場に倒れこんだ。

 一行の行く手を阻んでいたライガが少女に駆け寄り、瘴気の直撃を受けて失神する。

 その様を見ていたルークが戦々恐々と叫んだ。

 

「吸い込んだら死んじまうのか!?」

「長時間、大量に吸い込まなければ大丈夫。とにかく、ここを逃げ……」

 

 ふとティアが視線を向ければ、アリエッタが倒れているすぐそばの地面が大幅に割れ、断層を作っていた。

 そこから更に大量の瘴気が吹き出してくる。

 

「どうすんだ! 逃げらんねえぞ!」

 

 イオンを支えながら逃げ場はないかと周りを見回すルークのそばをすり抜け、スィンはティアに囁いた。

 

「ユリアの……第二」

 

 心底驚き、切れ長の瞳を木の実型にさせているティアに、早く、と実行を促す。

 一瞬の逡巡を経て、彼女は杖を構えた。

 

「譜歌を詠ってどうするつもりですか」

 

 その問いに答えることなく、清らかな旋律が紡がれる。

 それを聞き、イオンが声を上げた。

 

「待って下さい、ジェイド。この譜歌は──ユリアの譜歌です!」

 

 ティアの足元に譜陣が出現する。更にその上から違う型の譜陣が描かれ、ドーム型の結界が発生した。

 発動後の空に、あの毒々しい空気はない。

 

「瘴気が消えた……!?」

「瘴気の持つ固定振動と同じ振動を与えたの。一時的な防御壁よ。長くは持たないわ」

 

 我が目を疑うように空を仰ぐガイに、ティアが本当に簡単な説明をする。

 

「噂には聞いたことがあります。ユリアが残したと伝えられる七つの譜歌……しかしあれは、暗号が複雑で詠みとれた者がいなかったと……」

 

 興味深そうに、同時に疑わしそうな眼をティアに向けるジェイドに、ガイがここからの離脱を促した。

 

「詮索は後だ。ここから逃げないと」

「──そうですね」

 

 ひとまずその言葉に頷き、ちらりとスィンを──アリエッタに一番近い位置にいる彼女を見やる。

 彼女はすでに、それを用意していた。

 

「……スィン、お願いできますか?」

「わかりました」

 

 その場を去ろうとし、ルークはスィンが倒れ伏した少女に歩み寄るのを見た。

 アリエッタの側にしゃがむと、持っていた片刃剣を振り上げ、細い首へ一思いに──

 

「や、やめろ!」

 

 スィンはぴたりと動きを止め、不思議そうにルークへ振り返った。

 

「何故です?」

「なんで殺そうとするんだよ! 気を失ってる奴を……」

「彼女が僕たちに対し殺意を抱いていたことくらいおわかりになられたでしょう? 生かしておけば必ずまた狙われます。想定される危険は未然に防ぎたい」

 

 どこか厳しい目で、スィンはルークを見た。

 ジェイドがそれに頷き、ティアやガイは苦しそうに目を伏せてはいるものの、反対ではないらしい。

 ルークの意見に賛成したのはイオンのみだった。

 

「スィン、見逃してください。アリエッタはもともと僕付きの導師守護役(フォンマスターガーディアン)なんです」

「……ここで彼女を見逃すことによって、いつか失われる命は必ずある。それがわかっていて仰られているのですか?」

 

 油断なくアリエッタを見下ろしたまま、問う。

 返事はないが、ここで手をかけたら彼らの信用を綺麗に失ってしまうだろう。それは避けたい。

 ちら、とジェイドを見れば、彼は嘆息しつつも了承していた。

 

「……」

 

 無言のまま、スィンも片刃剣を収める。

 敵とはいえ、さすがに気を失った少女を殺めるのには罪悪感があったのか、ガイも一歩前を出た。

 

「瘴気が復活しても当たらない場所に運ぶぐらいはいいだろう?」

「ここで見逃す以上、文句を言う筋合いではないですね」

 

 ガイの視線を受け、スィンがアリエッタの体を担げば、ティアがふと空を見て告げた。

 

「そろそろ……限界だわ」

 

 行きましょう、というイオンの言葉に従い、ライガともども彼女を地割れから遠ざかった草むらへ横たえ、一行は出発した。

 川岸を離れ街道を歩いていても、ひとつの優しくない視線──ティアの視線が背中をつつく。

 理由も気持ちもわかるが、皆の前で話すわけにはいかない。

 それはあちらも同じらしくどこか重苦しい沈黙が続いている。

 ──と、ふとジェイドが足を止めた。

 

「少しよろしいですか?」

 

 その言葉を受けて全員が立ち止まるも、約一名が不平を零した。

 

「……んだよ。もうすぐカイツールだろ。こんなところで何するんだっつーの」

「ティアの譜歌の件ですね」

 

 内容を察したイオンが言う。ジェイドはええ、と頷いた。

 

「前々からおかしいとは思っていたんです。彼女の譜歌は私の知っている譜歌とは違う。しかもイオン様によれば、これはユリアの譜歌だというではありませんか」

「はあ? だから?」

 

 いまいち内容がつかめていないルークが苛ただしげに先を促せば、すかさずガイとイオンがフォローに入った。

 

「ユリアの譜歌ってのは特別なんだよ。そもそも譜歌ってのは譜術における詠唱部分だけを使って旋律と組み合わせた術だから、ぶっちゃけ譜術ほどの力はない」

「ところが、ユリアの譜歌は違います。彼女が遺した譜歌は、譜術と同等の力を持つそうです」

 

 ジェイドをごまかすのは不可と考えたか、ティアは重い口を開いた。

 

「……私の譜歌は、確かにユリアの譜歌です」

 

 その言葉に、ジェイドは首を傾げてみせる。

 

「ユリアの譜歌は、譜と旋律だけでは意味を成さないのではありませんか?」

「そうなのか? ただ詠えばいいんじゃねえのか?」

 

 ルークの問いに、スィンはそれなら誰でも使えますよ、と苦笑した。

 

「譜に込められた意味と象徴を正しく理解し、旋律に乗せるそのとき隠された英知の地図を作る。複雑ですよねー」

「……はあ? 意味わかんね」

 

 ルークでなくても出てきそうな感想に、スィンはとりあえず笑うのをやめた。

 

「……という話です。一子相伝の技術みたいなもの、と考えてよろしいのでは?」

「──詳しいのね」

 

 疑心に満ちたティアの視線をしっかりと受け止め、スィンはしれっと答えてみせた。

 

「ヴァン謡将からきいたのー」

 

 そんなやりとりの横でジェイドは考え込んでいたが、やはり好奇心は抑えられない様子で尋ねた。

 

「あなたは何故、ユリアの譜歌を詠うことができるのですか。誰から学んだのですか?」

「……それは、私の一族がユリアの血を引いているから……だという話です」

 

 本当かどうかは知りません、と締めくくる。

 

「ユリアの子孫……なるほど……」

 

 ジェイドがまたも考え込む先で、ルークはまったく違うことに興味を示していた。

 

「ってことは、師匠(せんせい)もユリアの子孫かっ!?」

「まあ、そうだな」

 

 スィンと同じく真相を知るガイがそう答えると、ルークはまるで我がことのように喜んだ。

 

「すっげぇっ! さっすが俺の師匠(せんせい)! カッコイイぜ!」

 

 ユリアが誰なのかわかっているかも怪しいが、そうなるとティアはどうなのだろうか。

 そっと彼女の様子をうかがえば、無表情で沈黙していた。その心境は他者が察せるものではない。

 ジェイドが礼をいい、暗に大譜歌のことをほのめかす。

 新たな単語に興味を抱いたルークが尋ねれば、律儀にイオンが説明役をかってでた。

 

「ユリアがローレライと契約した証であり、その力をふるうときに使ったという譜歌のことです」

「……そろそろ行きましょう。もう疑問にはお答えできたと思いますから」

 

 この話題は終わりだ、と言いたげにティアが終止符を打ち、話題は打ち切られた。

 しかしティアがスィンへ向ける視線は、この会話が終わっても、カイツールの砦が見えてきても、けして暖かくなることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 




復習。それは繰り返すこと。
福州。それは中華人民共和国福建省の省都のこと。
復讐。それはグーグル先生に尋ねると真っ先に方法を教えてくれること。
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