the abyss of despair   作:佐谷莢

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第百三十六唱——決戦前朝

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間がかかる、と言っていただけあって。アッシュが姿を見せたのは、深夜を過ぎてからのことだった。

 月明かりを受けて輝く銀世界から浮かび上がるような漆黒の装束。その姿は離脱したに等しい組織──神託の盾(オラクル)騎士団に所属していた頃と変わりなく、身を切るように冷たい風は、ルビーを溶かし込んだような色の髪をさらさらと梳る。

 引き締まった、どこまでも怜悧な視線を受けて、それまで公園のベンチに深く腰かけていたスィンは緩慢に立ちあがった。

 

「アブソーブゲートへ行くんだな」

 

 一方的に呼びつけられたにも関わらず、アッシュの声音はいつもの通りだった。

 感情を意図的に抑えているのか、あるいは怒るだけ馬鹿らしいと思っているのか。

 

「アルビオールの調整が済み次第。あなたは……」

「ラジエイトゲートへ行く。ヴァンがやらかして、いつ外殻が落ちてもおかしくないんだろう。あそこはもう導師の手によって封印が解除されている。操作も、超振動で何とかなるはずだ」

 

 思いもよらないアッシュの言葉に、思わずきょとんと目をしばたかせる。

 意表を突かれた。その感情は、そのまま顔にも出ていたようで。

 

「……なんだ。その顔は」

「ここにいるということは、アブソーブゲートに先行するつもりかと思っていたのですが。そこまで御存知ならば話は早い」

 

 七割方スィンのせいで、少なくとも今晩は動けない一同を尻目に、突撃する気だとばかり思っていた。

 説得するべきか、力づくで止めるべきか──大切な臓器を傷つけないよう刺せば、いくらなんでも断念するだろうと。まさかナタリアに泣きつきはしないだろうと考えていたのは、時間の無駄だったようである。

 あまりに情報通なのは、おそらくチャネリングでこっそりルークの五感を借りて、本日の出来事を把握していたから、だと思われた。

 今更確かめるようなことはしなかったが。

 

「ヴァンを排除した後は、速やかに残る大地の降下作業に入るでしょう。ラジエイトゲートに向かって、ルークの補佐をしてください」

「ふん。言われるまでもねえ」

 

 用件はそれだけかと言いたげに、アッシュはぷいと背中を向けた。

 この背中も、見納め。必要な事柄は話した。

 あとは野となれ山となれ、彼が立ち去るのを見送ればいいだけなのに。

 

「ええ……これで、最後ですから」

「最後? 何がだ」

「あなたに拒否権のない協力要請をするのが、です。事態が収拾したならもう、お会いすることもないでしょう」

 

 蛇足が、溢れる。

 黙っていればそのまま思い出に──彼にとってはさっさと忘れるべき事項となるはずなのに。

 かける必要もない言葉は、留まることを知らなかった。

 最後だから。

 この事実がスィンの理性を落とし穴にでも突き落として、穴を塞いでしまったのだろう。

 意味深な言葉を耳にして、当然アッシュは反応した。

 

「どういう意味だ」

「意味? そのままです。勘繰るようなことなんて、何も」

「とぼけんな! あんた今日はおかしいぞ。心ここにあらずっていうか……」

「私が意味不明なのは今に始まったことじゃないです。あなたに理解してほしいわけでもなし」

「はぐらかすんじゃねえ!」

 

 追及するアッシュ、逃れにかかるスィン。

 時刻は深夜を過ぎて明け方にさしかかる。

 それゆえに人の目を気にせずにすむのは、大変ありがたいことだった。

 時間帯が時間帯なら、公園で見慣れぬ男女が激しく口論していると通報されている頃だろう。

 

「隠し事しないんじゃなかったのかよ!」

「……嘘はつかない、となら言いました」

「何か隠してるってことか。語るに落ちたな」

 

 ずいずいと迫るアッシュを視界から追い出して、どうしようかなあと内心でひとりごちる。

 がなる青年をぼんやり見つめていると、ふと彼は言葉を切った。

 聞いている様子もないスィンを前に空しさを覚えたのかもしれないし、単なる息継ぎかもしれない。

 言葉が途切れたところで、これ幸いと尋ねる。

 

「ねえ、アッシュ」

「なんだ?」

「僕のことキライ?」

「……はあ?」

 

 返事というよりは気の抜けた、呆けた吐息に近かった。

 

「な、何を言ってんだよ」

「ただいま絶賛意味不明中ですからね~」

 

 怒らせて、呆れさせて、帰す。

 要らない口を叩いて引きとめるようなことをしてしまった以上、逃げるのは最終手段だ。

 アッシュの背中がこれで見納めだと思うと、自ら立ち去る気にもならなかった。

 

「なんなんだよ、ったく……」

 

 これより責任重大の大仕事を行う彼をあまり刺激したくなかったが、そろそろ無理にでも帰さなければ明日に響くだろう。

 いや、今日か。

 

「ところで、どうやってここケテルブルクに? ラジエイトゲートに行くとわかっていながら、定期船で来たわけではありませんよね」

「あ? ああ、シェリダンでアルビオール三号機を借り受けた。ギンジ……操縦士もな」

 

 彼が公園へやってきた方角は港から正反対。

 郊外にアルビオール三号機を停泊させているのだろうか。

 

「じゃあ、この辺で。事は一刻を争いますが、何事もなく事が成されることを祈っています」

「何事もなかったようにお別れの挨拶に入ってんじゃねえ。人の質問に……」

「さて。私は今何回「こと」を言ったでしょーか?」

 

 そろそろキレて立ち去ってくれるとありがたいのだが。彼は額に青筋を刻みながらも、怒声を放つことはなかった。

 内心の怒りを押し殺すように、低い声で問いかけにくる。

 

「……そんなに俺に帰ってほしいのか」

「すごい! わかったんですね」

 

 思わず言葉にしてしまい。あ、と今更口に手を当てた。

 その所作で素の反応だと悟ったのだろう。

 青筋を追加させて、アッシュの手が伸びる。

 胸倉ではなくコートの襟を掴み、ひたすら握りしめ始めた。

 もう少し煽ったら、この手はスィンの首を握り始めるだろうか。

 それでもいいかな、と。ほんの少しだけ、思う。

 

「……なんで、帰ってほしいんだ」

「そりゃ勿論。明日の……今日の作業に支障をきたさないため、ですよ。随分冷えてますし」

 

 怒りをこらえてヒクヒクと表情筋が震える。その頬に触れて、その冷たさを改めて知った。

 防寒着をこれでもかと着込んだスィンは問題ないが、彼にこれといって防寒の装備は見当たらない。

 外した手袋をつけ直していると、不意に襟を掴む手がほどけた。

 暖簾に腕押す感覚が空しくて、今度こそ背を向けるかと思えば。

 

「……最後、なんだろ。だったら、俺の質問にくらい答えたって、かまやしねえだろうが」

「え? なんですか? 俯きながらボソボソ言われても聞こえないですよ」

「だから……!」

 

 どうしても引き上げようとしないアッシュに、これでもかとだめ押しをする。

 声を荒げかけた青年は、ぐっと続く言葉を飲みこんだ。

 大きく息をつき、傍のベンチにどかっと座る。

 薄く敷かれた雪のクッションがあるものの、軽く身じろぎをした辺り座り心地はよくなさそうだ。

 

「腰が冷えますよ」

「……何があったんだよ」

 

 堂々巡りの予感がした。最終手段にはしたが……立ち去った方がよさそうだ。

 そんなスィンの内心を察知したのか、不意に腕を伸ばしたアッシュに捕まった。

 その挙動で意図は察したものの、切羽詰まらない限り、機敏に動く気のないスィンには避けられない。

 

「無駄だからな。答えるまで離さねえ。俺も動かないからな」

 

 アッシュが帰らないとなるとこれは問題だ。

 問題は、彼が知りたがっていることを語ってどんな影響があるか、だが。

 

「……アッシュ」

「なんだ。話す気になったのか」

「信頼しています」

 

 アッシュならきっと、大丈夫。これを知っても、必ず成し遂げてくれる! 

 

 ひとつ息をつき、意識している限り発動させていた術を解く。

 借姿形成。己を形成する音素(フォニム)を組み換え、肉体を変異させる秘術。

 スィンの下腹に浮かび上がったひとつの譜陣が宙へ溶けるように消え、本来のかたちとなる。

 

「うっ」

 

 ずしり、と。大切で厄介な重みがかかり、思わず呻きが洩れる。

 その様子にいぶかしむアッシュの腕を引き、下腹に触れさせた。

 

「?」

「あ。動いた」

「!!!!????」

 

 鋭く息をのむ気配、下腹に押し付けた手がびくりと震えた。

 しぃん、と。本来の静寂が、公園を、二人を包む。

 

「ウソです。それは絶対に気のせい。でもこれが、挙動不審の理由です。多分相当情緒不安定になっていると……アッシュ?」

 

 反応がない。

 ちらりとその顔を見やれば、瞳は驚きに見開かれたまま。

 口元がもごもごと何か言いたそうにしているが、言葉らしき音が発せられる気配がない。

 そっと手を離して見守るも、アッシュは石化でもしたかのように固まってしまった。

 

「……早く帰ってこないと、風邪ひくよ」

 

 やはり反応がない。刺激が強すぎたのだろうか。

 しかし場所が場所だ。以前のように放置するわけにはいかない。万が一風邪でも引かれて支障が出たら、目にも当てられない結果が待っている。

 かといえ、今のスィンに彼を運ぶという選択肢はない。

 沈黙し、宙を見つめてまんじりとも動かないアッシュに、羽織っていたショールをかぶせて。

 

「……この戦いが終わったら。私は、ガイ様の前から消えます。最早従者は不要と、お言葉を頂きましたから」

 

 わざと音を立てて、アッシュの隣に座りこむ。

 呆然自失の彼に、反応はない。

 

「私が傍にいたら、ジェイドとのことでガイ様は、ガルディオス家は陛下から不興を買います。すでに首都では根も葉もある噂が蔓延しているようですし、確執は根元から断ち切らなければ」

 

 聞いているのかいないのかもわからないアッシュを横に、つらつらと語る。

 どちらでもよかった。彼が我に返ってくれれば。

 秘してきた胸の内を外へ出すのは、文字通り胸が軽くなったから。

 

「セントビナーが崩落したことで、持病の進行を抑えていた薬も造れなくなりました。セントビナーにそびえていたソイルの木、あの周辺でしか育たない薬草が採れなくなったそうで。あとはもう、病に侵されていくだけ」

 

 びくっ、とアッシュの肩が震えた気がした。

 彼を取り巻く寒気に対抗すべく、その肩にショールを巻きつけるようにして独白を続ける。

 

「座して緩慢な死を迎えるよりは、私は──達と、共に過ごそうと思っています。最期の、そのときまで」

 

 それが批難されるべき最低なことだとは、自覚していた。

 良識ある者はスィンの正気を疑い、行いを責めるだろう。それでも、改める意志はない。

 否、スィン自身。今更それが可能だとは思っていなかった。

 スィンが口を閉ざしたことで、沈黙は再び降り積もる。

 アッシュが、帰ってくる気配はない。

 応援を呼ぶべく、スィンは彼がやってきた方角を見やった。

 

 

 

 

 重畳なことに、三号機は思いのほかケテルブルクに近い場所にあった。

 待機していたギンジに、再会の挨拶もそこそこ、アッシュを回収してくれるように依頼して再び公園に舞い戻る。

 

「アッシュさん!? 一体何が……」

「彼が我に返ったら是非伺ってみてください」

 

 間違いなく全面的にスィンのせいだが、それを話すつもりはない。

 魂が抜けたままギンジの背中に揺られて去りゆくアッシュの背中を、改めて見送る。

 

「……お達者で」

 

 小さな小さな別離の言葉は、誰の耳にも届くことなく、風の音にかき消されて、静かに消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アッシュ達と別れて、しばらくして。

 朝日が完全に上りきった頃、ノエルはやってきた。

 

「おはよ。どうだった?」

「すごかったです……! お部屋は広いし、ベッドはふかふかだし、お風呂が綺麗で、朝食もとても豪華で」

 

 高級ホテル自体は堪能したようで、何よりである。

 ルークにモーションはかけなかったのかと遠回しに尋ねるも、彼女は頬を染めつつ否定した。

 

「私はルークさんを、皆さんを信じています。きっと帰ってきてくれると。だから……焦って何かする必要なんか、ないんです」

「そっか。ノエルがいいなら、それでいいや」

 

 アルビオールを朝日の元に出し、予定通り試験飛行を行う。

 何も問題ないことを確認し、港で出立準備を行うと言うノエルと別れて、スィンは知事邸へと赴いていた。

 

「お早うございますー。倉庫貸与、ありがとうございましたー」

 

 応対に出たネフリーの秘書に預かっていた倉庫の鍵を渡し、導師イオンの所在を訊ねる。そこへ。

 

「おはようございます、スィン」

 

 身支度を整えたらしいイオンが現れ、二人は連れ立って知事邸を後にした。

 道すがら、今朝方ようやく書き終えた封書を投函し、アルビオールの修理が済んだことを報告しておく。すると彼は、何故か得心がいったように頷いた。

 

「なるほど。昨晩はノエルを手伝っていたんですね」

「そうですが、それが何か」

「あなたの姿が見えないと、探していたようだったので」

 

 誰が、と言わないのが彼なりの気遣いだろうか。それに甘えて、軽く流す。

 

「して、体調の方は如何ですか?」

「もう大丈夫です……とはいえど、今日は」

「そですね。大事をとって養生なさってください。ちゃちゃっと用事を済ませて、すぐにお迎えにあがりますよ」

 

 彼には聞こえないように、アニスがね、と付け加える。

 敗れたならば、もう後はない。互いにその条件だけは同じはずの決戦が待ち受けていることは、二人のみならず誰もが承知している。

 その上でスィンは、極めてあっけらかんと言ってのけた。

 どんなに重々しく扱おうと軽々しく扱おうと、行うべき事柄は変わらない。勝利のち、成すべきことを成し、帰還する。これだけだ。

 しかし年若い導師は、その冗長な物言いに笑顔を浮かべることはなかった。

 スィンの顔を思わしげに見つめて、何かを言いかける。

 

「あの、スィ「イオン様ー! スィンー!」

 

 こっちこっち、と街の入り口で大きく手を振るアニスを見つけた。

 そこへ、ホテルから直接やってきたであろうルークも合流する。

 イオンがルークに話しかけたところで、スィンはガイの元へと歩み寄っていた。

 

「お早うございます」

「ああ、おは「昨晩は、どちらに?」

「ノエルのお手伝いをしていました」

 

 ガイの言葉に割り込んで、ジェイドは訝しがっている。

 やはり昨夜は故意にエンカウントを避けて正解だったと、内心で頷いた。

 

「そのノエルは昨夜、あなたに割り当てた部屋に宿泊していたようですが」

「手伝ったから作業も早く終わって、ノエルも休むことができたわけです。無理させてアブソーブゲート手前で墜落なんてされたら、笑い話にもなりゃしないじゃないですか」

 

 この調子でねちねちこられたら、とても気は休まらない。

 目の下にうっすらクマが浮かぶガイを心配し、人のことが言えるのか、と半眼で返される。

 昨晩スィンはアッシュを待つ間仮眠を取り、アッシュ達に別れを告げてからアルビオールの傍でうとうとした程度で、確かに睡眠は足りていない。どのみち熟睡など、できるわけもなかったが。

 そんな雑談が、彼の一言でぴたりとやんだ。

 悪名高き死霊使い(ネクロマンサー)、マルクト皇帝の懐刀によって。

 

「では、いよいよですね。ルーク、準備はいいですか?」

「ああ。みんなもいいか?」

 

 翠玉の瞳がぐるりと一同を改めて見やる。

 己を鼓舞するように、見守る導師を元気づけるかのように。

 導師守護役(フォンマスターガーディアン)の少女は元気いっぱいに拳を振り上げた。

 

「ばっちりv イオン様の代わりに、総長の計画を食い止めちゃうモンね」

「……そうね。たとえ命を奪うことになっても」

 

 頷いたのは、これより実の兄と対峙することを決意した彼の妹。

 思わしげに訊ねたのは、自国キムラスカのため、ひいては世界のため。

 血筋こそ偽りのものでありながら一同と同道を共にしてきた王女だった。

 

「ティア、スィン。それで本当によろしいんですの」

「……ええ」

 

 ちらりと視線を向けられて、スィンもまた頷いた。

 その辺りに、迷いはない。

 

「二人がそこまで決心したなら、俺たちも覚悟を決めるしかないよな」

 

 キムラスカ、マルクト。対立する二国間に挟まれるような形でとばっちりをくい、それでも前を見て歩むことを決意した彼が思いを新たに柄を握る。

 彼とて、生まれたその時から傍にいた兄貴分との対決を余儀なくされる。

 しかし、彼の瞳に悲壮はない。

 道を違え凶行に走り、今なお世界の滅亡を企む彼を止めるがために。

 

「アブソーブゲートからの逆流を止めて、外殻大地を降下させる。……師匠(せんせい)と戦うことになっても!」

「ミュウも頑張るですの!」

「ははっ。頼むぜミュウ。……みんなも、頼む。行こう! アブソーブゲートへ!」

 

 短くなった夕日色の髪を揺らし、翠の瞳に決意を宿し。

 他ならぬ黒幕の手によって生み出されたレプリカの少年が、つき従う愛らしい聖獣と共に誓いを新たとする。

 誰ともなく頷き合い、ノエルが待つ港へと移動を始めた。

 一同の背中を見送り、意図的に動かないスィンが振り返る。

 緋色と、藍色。いつになく穏やかな色の違う瞳に見つめられて、イオンは先程言いかけた言葉を唇に乗せていた。

 彼は気づいていただろうか。

 そのことを一同に聞かせないがため、スィンがわざと彼らに続かなかったことに。

 

「あなたに確認しておかなくてはならないことがあります。あなたは──」

 

 続く言葉は寒風にさらわれて、二人の耳にしか届かない。

 問われて、スィンは。

 

「それは、戻ってきてからのお楽しみということで」

「えっ!?」

「さようなら、導師イオン。お体お大事に」

 

 引きとめるように伸ばされたその手を顧みることもなく、一同の背中を追いかける。

 ──気付かれてしまった以上、彼に再会する予定もなくなってしまった。

 決戦を終えて、帰還することができたなら。アッシュに懺悔した通り、スィンは失踪するつもりでいたから。

 祖父であるペールには、その旨を綴った手紙、そしてあの分厚いカルテを送りつけてある。

 許されることではない。しかし、誰からも許してもらう必要はない。

 まずは、勝たなければ。

 世界の存続を、慕う主のために世界を確かなものとして。

 アブソーブゲートから帰還してからが、スィンにとって本当の勝負となるだろう。

 一同の目をかいくぐって行方をくらまし、最優先事項としてまずは意識集合体たちとの契約を果たす。

 それからは、それから先は──

 先こそ見えている。しかし間違いなく将来の展望を描きながら、彼女もまた道を進む。

 ──先が途絶えたその道を、ただひたすらに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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