the abyss of despair   作:佐谷莢

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第二唱——who are you?

 

 

 

 そよそよ、と爽やかな風が吹き抜けた。

 湿った土の匂い、瑞々しい草花の匂い、新鮮な水の匂い──

 目を開けると、漆黒の空には白い月が浮かび、月光がそばに咲いていた花を青白く照らしている。

 ……

 

「え、ええっ!」

 

 がばっ、と起き上がって目をこする。見回せば、全く知らない場所で寝転んでいた。

 かたわらには木刀が転がっている。ちかちかする視界を無理やり振り払って辺りを見回すと、ルークと少女が倒れていた。

 駆け寄って二人の脈を調べてみる。特に異常はない。

 とりあえず、少女のほうから起こすことにした。

 

「ティアー。メシュティアリカさーん。起きてー」

 

 細い肩を掴んでゆさゆさ揺すぶると、ほどなくしてティアは目を開けた。

 

「ここは……?」

「おはよう。悪いんだけど、ルーク様起こしといてくれないかな? ちょっと偵察してくるからさ」

 

 目をぱちくりさせている彼女をおいて、木刀を携える。しかしすぐに止められた。

 

「ま、待って! あなたどうして、私の名前……!」

「……その様子からして、人違いじゃないみたいだね」

「ごまかさないで頂戴。どうして私の名──本名まで知っているの?」

 

 杖を握りしめ、切っ先をスィンに向ける。取り付けられた小さな刃が、月光にきらりと反射した。

 

「んーまあ、わからなくて当然か」

「何の話?」

「ヴァンと──ヴァンデスデルカと、親しくしてる。それじゃわからないかな」

 

 かの人の名を、本名を出すと。彼女は息を呑んで沈黙した。

 

「じゃ、ルーク様よろしく」

 

 二人を残して川へ丘を降りると、さらさらと水の流れる音がした。

 あちらの草むらからは幾多の生命の息吹が感じられ、こちらの草むらにはがさがさと、何かが潜んでいる。

 いきなり住処を荒らされて飛びかかってくる魔物を排除しながら進んでいくと、この渓谷の終わりが見えた。

 しかしここがどこなのかは宵闇も手伝ってさっぱりわからず、二人を置いてこれ以上先に行くわけにもいかないため、引き返す。

 このあたりは第三音素(サードフォニム)の影響が強いのか、風がひっきりなしに吹いていた。

 傍仕えの制服──通常のメイド服よりちょっぴり動きやすいよう加工されているメイド服は、そよ風でも少し肌寒い。

 木刀以外の装備を確認しながら丘に登ると、男女が言い争う声が聞こえてきた。

 

「……うかつだったわ。だから王家によって匿われていたのね」

「……るせーっつの! ちっと黙れ! こっちはお前が何を言ってるのかさっぱりだ!」

 

 しーん。ざくざくとスィンの歩く足音だけが響いた。

 

「ルーク様。女の子に向かって黙れなんて、紳士の言うことじゃないですよー」

「スィン……?」

 

 おはようございます、と頭を下げたところで、スィンはティアに向き直った。

 

「現位置の詳細はちょっとわからないけど、街道へ繋がってそうなところは見つけた。行く?」

「……もちろん。まずはここを出ましょう」

 

 すたすたと歩き出すティアに続き、丘を降りかけると、ルークが追いついてきた。

 

「スィンも、あれに巻き込まれたのか?」

「そうですよ。着地地点が海のど真ん中とかじゃなくて幸いでした」

「海って、さっき見たあれだよな……って、そうじゃなくて、なんでそんなにノホホンとしてられんだよ!」

 

 記憶喪失の彼にとって、初めて屋敷の中と言う閉鎖された世界から外へ出たのである。

 それだけでも混乱して、ティアの丁寧でもなんでもない態度にも困惑しているはずだ。

 同じ状況に置かれているスィンに同じような感情を抱き、ティアに対して文句を言ってほしい、と無意識に願ってしまっているフシがある。

 

「別にのほほんとはしてません。いきなり知らない場所に放り出されて、混乱はしました」

「だよなあ。なんでこんなことに……」

「ですが、起こってしまったことをあれこれ言っても時間は帰ってきません。文句は、とりあえず状況が落ち着いたらにしませんか?」

 

 幼子をなだめるように微笑んでみせる。

 その笑顔に押されたようにルークが黙ると、参りましょう、とスィンはルークを牽いてティアに追いついた。

 

「呼び捨て失礼。ティア、この先魔物が沸いてたから、交戦準備よろしく」

「わかったわ。ところであなた──」

「スィンだよ。スィン・セシル」

「スィンは、戦うことができる?」

「戦力に数えてくれて結構だよ。ただ、ルーク様を護らなきゃならないから……」

「お、おい。ちょっと待て!」

 

 なんですか? と振り返れば、ルークがつかみかからんばかりに迫ってきた。

 

「お前、剣なんて使えるのかよ!?」

「──それなりに波乱万丈の人生を送ってきていますので」

「理由になってねーし。ってか、女に護られるなんて、かっこわりぃことできるか!」

「カッコつけてんじゃねぇよガキ」

 

 思わず本音が漏れて、文字通り口走ったに値する呟きが風にさらわれた。

 幸いにもルークの耳には届いていない。

 

「な、なんだって?」

「あなたがお命を落とされたら、第三王位継承者誘拐殺害犯として僕もティアも物理的に首を落とされます。ここはご自愛なさってください」

 

 自分の身だけを護ってくださればいい、と説得するスィンに、ルークはますます不満を募らせた。

 

「お前は知らねーかもしれねえけど、俺はだな! ヴァン師匠(せんせい)に鍛えられてんだから、護られなくたって平気なんだよ!」

「それでほいほい戦闘に参加されて命を落とされたら大変です。主に我々が」

「うるせぇ! とにかく俺は戦うからな、護るなんて余計なことはすんじゃねえぞ!」

 

 肩を怒らせずんずん進んでいくルークを見送り、スィンは小さく息をはいた。

 

「あなたも苦労してるのね」

「……まあ、ね。今僕が自分のメイドじゃないって、忘れてるんじゃないかな……」

 

 ふー、と肩を落とし、ティアと並んでルークを追う。靴に泥でもついたのか、嫌そうに地面を見ている彼に追いついたところで、すぐそばの草むらが鳴った。

 風もないのに、一部分だけ、不自然に。

 

「……魔物っ」

 

 ティアはすぐ気配に気づいたのか、油断なくナイフを構える。

 魔物という単語を聞いてうろたえるルークの前に走りこみ、彼をガードするようにスィンは立った。

 

「おい、余計なこと……!」

「来た!」

 

 草むらを掻き分けるように三体の魔物が飛び出してくる。

 小さな植物の魔物、大型の犀に似た魔物、巨大な花の蕾に似た魔物。

 

「うわぁっ!」

「んじゃ、下がってください!」

 

 初めて見る魔物に心底驚いているルークを軽く押しやり、蕾の魔物に木刀をつきだした。

 これが真剣なら簡単に引き裂くほど、重さも早さも十分な一撃ではあったが──

 鈍い音を立てて、蕾の魔物は背後にいた犀の魔物にぶつかりつき飛ばされた。

 

「血桜があれば……」

「「血桜?」」

「僕の愛刀の銘ですよ」

 

 よく切れるんだこれが、と軽口を叩きながら、木刀を足元に転がした。

 たん、と地を蹴り、懐から漆黒の短刀を抜き、すれ違い様に腕を一閃する。

 次の瞬間。

 二体の魔物は、同時に輝きを伴った粒子となり、消えた。

 

「な……!」

「音素に還っただけですよ」

 

 呟くように告げ、ティアに威嚇していた小さな植物に擬態している魔物を斬りつける。

 鎌鼬でも発生したかのように細切れとなったそれは、やはり光の粒子となり、消えた。

 ひゅっ、と懐刀を振って魔物の体液を払い、鞘に収める。呆然と戦闘を眺めていたルークに、スィンは頭を下げた。

 

「差し出がましいことをしました。申し訳ありません」

「……わ、わかってんならやるなよな!」

 

 予想外のルークの言葉に、スィンは首を傾げて見せた。

 

「俺を護れ、とは言わないんですね」

「当たり前だろ! そりゃ……ちっとビビッたけど、もう遅れはとらねえ。だから俺の前に立つな。邪魔だからな!」

 

 かかってきやがれ! と言わんばかりに木刀を抜き、びゅんびゅん振り回している元主人を、なんとも複雑な表情で見ているスィンに、ティアはぽん、と肩を叩いた。

 

「ああ言っているのだし、好きにさせてみましょう? それで思い知るか、調子に乗るかを見極めて彼の今後を決めればいいわ」

「……そだね。そうしよっか」

 

 調子に乗られちゃ困るけど、と冗談めいて呟き、スィンは道案内をするべく先頭に立った。

 途中、ルークの初陣を飾る闘いを含め五回ほど戦闘を重ねたが、結局のところ彼は思い知りも、調子に乗りもしなかった。

 

「思ったよりも楽じゃねーな、実戦ってやつは」

「相手は生き物ですからね。でも人間よりはましですよ」

 

 人間、と聞いて不快そうに顔を歪めるルークに気づかないふりをしながら、スィンは見つけた出口へ歩んでいた。

 

「あーあ。にしても、初めて外歩けるってのに、こんなところってのがついてねーぜ。魔物はいるし、暗くて周りはよく見えねーし。やなとこだぜ、ここは」

「街から出れば魔物はどこにでも現れるわ。ここが特別多いというわけではないと思う。暗いのは夜だから、仕方ないわね」

「そりゃそうだけどよー……」

「魔物もいて、今は暗くて不気味な感じだけど、それでもここは美しいところなんじゃないかしら。これほどの自然は見たことがないもの」

「ふーん……そんなもんかね」

 

 ──これほどの自然。

 間違いではないが、どこか世間知らずの響きがあった。バチカルの屋敷に軟禁されていたルークではあるまいし、普通に生きていれば自然を目にする機会などそれこそいくらでもある。そして自然は景観が美しくあると同時に、人の手の及ばぬ領域にして、脅威でもあった。

 それを美しい、と言い切ってしまうあたり、彼女もまた特殊な生まれである。

 ──彼と彼女の事情を知るスィンが、今ここで何を思おうが意味のないことだったが。

 

「おいスィン。そうなのか?」

「……今ちょうど考えていたのですが、ここひょっとしたらタタル渓谷あたりかもしれませんね」

「「タタル渓谷?」」

 

 口をそろえて聞くその様から、ルークはもちろんのことティアも知らないと見た。

 

「群生していたセレニアの花、第三音素(サードフォニム)の気配が強く感じられるあたり、そのあたりと考えてよろしいかと」

「ふーん。じゃあそうだったとして、やっぱり海岸線を目指すのか?」

「そんなことしなくても、近くに街道が……」

 

 言いかけて、スィンは無言で足を止めた。二人に目配せして、木刀と懐刀を両の手に構える。

 虫の音が──完全に消えていた。

 がさ──

 

「鋭!」

 

 木陰から飛び出してきた小さな影を木刀で叩き伏せ、懐刀でまっぷたつに裂く。

 姿を確認する前にそれは消滅したが、正体がわからないということはなかった。

 

「うわっ、なんじゃこりゃ!?」

「囲まれたわ……」

 

 大きさとしては植物に擬態していた魔物より少し大きい程度。それが空中をふよふよと踊り、数え切れないほどの集団で三人を囲んでいたからだ。

 

「まずい……!」

「何がだよ、つーかなんだこれ?」

「狂った風精です! こいつら、タービュランスの連打を──!」

 

 詠唱を始めたらしく、狂った風精はいっせいに譜陣を展開し始めた。斬りつけて詠唱を中断させるも、何体かの術は完成する。

 

「っ、ええい!」

 

 思い切り地を蹴り、確認もせず後方へ跳ぶ。結果木刀を振り回していたルークの背に激突したが、それによってルークは強烈な風の渦に巻き込まれるのを避けた。発動した譜術を始めて目の当たりにしたルークが言葉を失っている。

 その間に、スィンは戦っていたティアの腕を掴み引き寄せた。ティアの死角で術が発動し、間一髪で彼女は難を逃れる。

 

「あ……ありがとう」

「どういたしまして。それより──」

「おい、どーすんだよ! あんなもんに巻き込まれたら死んじまう!」

 

 ルークに軽く頷いて、逃げられないかと辺りを睥睨する。しかし。

 

「逃げたら逃げたで狙い撃ちされそうですね……」

「その前に逃げ場がないわ!」

 

 ティアの言葉は正しい。囲まれていることもあるし、囲みを強引に突破したところで、こんな狭い渓谷のどこに逃げろというのか。

 術を完成させるものかと手当たり次第魔物に殴りかかっているルークを見つつ、スィンはぽつりと呟いた。

 

「一掃させる術は一応あるけど、でも……」

「奥の手があるならさっさと使え、アホ!」

「でも問題が……」

「つべこべ言うな、早くしろ!」

「……わかりました」

 

 責任は取ってください、と一声入れてから、木刀を逆手に持ち切っ先を地に向ける。

 ぼんやりと、その足元に譜陣が展開した。

 

「……招くは楽園を彩りし栄光、我が敵を葬り去れ……」

 

 発動の瞬間。スィンは木刀を自分の足元へ突き刺した。

 

「アースガルズ・レイ!」

 

 超振動発生時の再現がごとく。

 世界は輝きに満ち溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かが咳き込む音を聞いて、ルークはようやく両目を開けた。

 目を閉ざしても刺すようにまぶしい光が、まだ網膜に焼きついている。

 周囲を見れば、狂風精の姿は一匹としてなく、ティアもまた驚いたように辺りを見回している。

 

「お前、こういうもんが使えるなら出し惜しみす──!?」

 

 元使用人に文句を言ってやろうと振り返って。ルークは目を見開いた。

 突き立った木刀はそのまま、地べたに膝をつき咳き込んでいるその姿は、スィン。

 

「お、おい。どうしたんだよ!?」

 

 駆け寄って抱き起こす。触れてみて初めてわかる細い体、ひどく青白くなっている顔色に動揺するものの、ティアのかけた治癒術で咳は止まり、瞳がうっすらと開かれた。

 緋と藍という、珍しい色違いの瞳がルークとティアを映す。

 

「……やっぱり治ってないか」

 

 その口調に、驚きはない。

 

「どういうことなんだよ。いきなりぶっ倒れるなんて……」

「先天的な身体の欠陥です。僕、譜術を使うと体力が空っぽになるんですよ」

 

 ティアに向けてあとお願い、と言い残し、スィンは再び目を閉ざした。

 ほどなくして小さな寝息が聞こえてくる。

 

「って、おいこら! 悠長に寝てんじゃ……」

「やめなさい。おそらく、体力を回復させるために睡眠が必要なのよ」

 

 死んだように眠っているスィンを見て、ティアは腕を差し出した。

 

「なんだよ」

「私が運んであげるわ。あなた、彼女を背負って戦うなんてできないでしょう?」

「ば、馬鹿にすんな。こんなヤツ背負うことくらいどーってことねえよ!」

 

 ルークの言葉に嘘はなかった。抱えていたスィンの体を持ち上げて背負うが、予想していたような重みはない。いざとなれば落として戦えばいい。そうなれば、スィンも痛みで目覚めるかもしれない。

 ……というルークの目論見はむなしく、以降は魔物も出現しなかった。

 

「どうやら、ここが渓谷の出口みたいね」

「やっとかよ。もう土臭え場所はうんざりだ」

 

 スィンの推測が正しければ近くに街道があるらしい。それを辿っていけば帰れる。

 嬉々として足を踏み出したルークを、ティアが腕を出して牽制した。

 

「なん──」

「しっ。誰か来るわ」

 

 彼女の言葉に、ルークは目を凝らして闇を睨んだ。片手は木刀の柄のあたりをさまよわせている。耳をすませば、川音にまぎれてかすかな足音──

 と、闇の中から人の姿が現れて、ルークたちに気づくとうわっ、と声を上げた。

 

「あ、あんたら、漆黒の翼か!」

「漆黒の翼?」

 

 桶を持って怯えている男を胡散臭そうに見つめつつ、ルークは首をひねった。

 スィンならなにか知っているかもしれないが、あいにく彼女は夢の中だ。

 同じことを考えたのか、一瞬スィンをちらりと見たティアは杖を持つ手を引いて男に話しかけた。

 

「誰と間違えているのかわからないけど、違うわ」

「違う?」

 

 そういえば、と男は手を打った。

 

「そういや、漆黒の翼は男女三人組の盗賊団だったな」

「盗賊!?」

 

 カチンときた様子で、ルークは冗談じゃねえとばかりに噛み付いた。

 

「俺をケチな盗賊風情と間違えんじゃねえ! 見りゃわかんだろうが」

「そうね。その漆黒の翼って人たちが怒るかも」

「あのなっ!」

 

 文句を言おうにも、ティアは完全に無視して男に向き直っている。

 

「私たちは道に迷ってここへ来ました。あなたは?」

「あ、ああ。俺は辻馬車の御者だよ」

 

 まだ疑っているのか、ルークが背負っているスィンにちらちら視線を向けながら、男は抱えていた桶を下ろした。

 

「この近くで馬車の車輪がいかれちまってね。修理は済んだんだが、水瓶が倒れちまって。飲み水を汲みにきたんだ」

「馬車か!」

 

 ルークはぱちん、と指を鳴らした。

 

「助かった!」

「馬車は首都へも行きますか?」

 

 ティアの問いに、男は頷いた。

 

「ああ、終点が首都だよ」

 

 なんという偶然! スィンは街道があると言っていたし、街道に出れば辻馬車があるとも言っていた。

 きっと彼女はこれに乗れと言いたかったに違いない。

 

「乗せてもらおうぜ! もう歩くのはうんざりだ」

「そうね。私たち土地勘がないし……お願いできますか?」

「首都までとなると一人12000ガルドだが、持ち合わせはあるかい?」

 

 12000ガルド。法外ではないが誰が聞いても高いと思わせる値段に、ティアは思わず呟いた。

 

「高い……」

 

 しかし、王族に連なる貴族であるルークにとってそれははした金である。

 

「そうかぁ? 安いじゃん。首都についたら親父が払うよ」

「そうはいかないよ。前払いじゃないとね」

 

 このご時世、道中で何が起こるかわからない中馬車を走らせるには相当の度胸がいる。

 だから例外なく前払いなのだろう。

 御者から話を聞き、しばらく考えていたティアは大きく息をつくと、首からペンダントを外して男に手渡した。

 

「……これを」

 

 手渡されたペンダントを見、御者は軽く頷いた。

 

「こいつは大した宝石みたいだな。よし、水を汲んだらすぐ出発するから、少し待っててくれ」

 

 男はそう言うとペンダントをポケットにしまい、桶を持って川べりまで歩いていった。

 なんにせよ、助かった。

 

「お前、いいもん持ってんなー。これでもう、靴を汚さなくてすむわ」

 

 一瞬、ルークはティアに冷たく睨まれたような気がした。しかしそれは気のせいで終わってしまうほど短く、彼女は背を向けて馬車が停まっているであろう場所へさっさと歩み去る。

 

「……んだよ、変な奴」

 

 かすかな寝息を感じながら、ルークは小さく舌を打った。

 

 

 

 

 

 

 




まさかのボク娘。
 早くも謎発生。なんでティアの本名を? 実は猫かぶってる?? 
 波乱万丈の人生ってなんだよ!? (某公爵家子息)
 兄さんとどんな関係なの!? (兄貴暗殺未遂音律士)
 そしてオリジナル大炸裂。あんな術はきっとない(爆
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