『愛ゆえに……!?』

銀河系内戦を引き起こし、〝神〟の如き皇帝種族まで滅ぼした、
〝天使〟のような側近種族の真意は!? よろしくお願いします!


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(表紙)
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次の作品を見て感動し、書き直しました。
イラスト(〝剣の王〟を連想) https://www.pixiv.net/artworks/75210907
(〝炎の王〟を連想) https://www.pixiv.net/artworks/44855667
(〝慈愛の王〟を連想) https://www.pixiv.net/artworks/79886747
(〝啓示の王〟を連想) https://www.pixiv.net/artworks/73981752
(新皇帝種族を連想) https://www.pixiv.net/artworks/105119343
動画「世紀末歌姫 高垣楓 こいかぜ」 https://www.youtube.com/watch?v=Dneu2llsSHM
「届かない恋 - 上原れな」 https://www.youtube.com/watch?v=b2Axp_qApu8
「たった一つの想い」 https://www.youtube.com/watch?v=7frGxddXy7c
素敵な刺激を与えてくれる、文化的作品に感謝します。

『Lucifer(ルシファー)』シリーズは当初、
私的な事情から世をすねた、バチ当たり小説(笑)から始まりました。

しかし、生来のヘタレとお人好しのせいか、
刺激をくれた動画作品の素晴らしさゆえか、
ヒロイン達へのオタク愛ゆえか、
まるで言い訳か罪滅ぼしのように、どんどん話が生産的になりました。
そしてついには世のため人のためになる(と思いたい)文明論ができ、
最後は悪役までも救われて……って、これでいいのか(笑)?

〝天使の堕落〟という物語は、どんなに優れた組織にも
劣化の危険はあるという教訓を含むと思いますが、
この物語ではさらに、公表と真実は違うこともありうるという、
別のひねりも少し加えた形になったかと思います。

ご興味がおありの方は、他の小説や、
『文明の星』理論などエッセイもご覧いただけましたら幸いです。


愛慕

1 経緯

 

 

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人類が星間帝国に参加して以来、

その政治には関心を持っている。

政府から重大発表があるというので、

報道映像を見た。

 

束ねた髪を向かって右側に垂らした、

体格が良く、元気そうな少女が、

視聴者に向かって微笑んでいる。 

……ヴォラクだ。

 

 

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正確には〝新帝国〟の理事種族、

ヴォラクの代表人格だ。

帝国の最先進種族達は

量子頭脳への人格転移(マインドアップローディング)によって、

大量高速演算と共有人格形成を可能とし、

神魔の如き力を備えた高度な文明活動を営んでいる。

 

加えてヴォラクは、

そうした量子人格化種族の複製計画から生まれた

双子種族の一方だ。

人類向けの放送などで人間型の分離個体(ヒューマノイド・アバター)を使う時は、

姉妹種族のアミーと区別するため、

髪型や装身具(アクセサリー)の左右を変えている。

 

『皆様、お早うございます。

本日私、新帝国の理事種族ヴォラクは、

現在進行中の軍事裁判で判明した重大事実について、

帝国内の全星域に対し、次のとおり報告します』

 

最先進種族は個々の人格を保ちつつ、

種族の総意を体現する共有人格も持てるので、

代表者が種族として喋る形式をとったり、

種族の代名詞が単数形だったりして、ややこしい(笑)。

 

『ご存知のように、銀河系中央部に近い

〝旧皇帝領〟にある惑星メギドでは、

〝大戦〟すなわち旧帝国を滅ぼした内戦における、

戦争犯罪についての裁判が行われています』

 

 

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『〝先帝〟種族が率いる旧帝国は、

銀河系統一の偉業を成し遂げましたが、

後に側近軍事種族の腐敗と抗争から、

悲惨な内戦が生じてしまいました。

これにより〝先帝〟を初め多くの種族が滅亡し、

あるいは甚大な被害を受けました』

 

『〝剣の王〟〝炎の王〟〝慈愛の王〟

そして〝啓示の王〟の四大種族は、

〝先帝〟の側近団をなす〝中枢種族〟の中でも

特に絶大な権力を持つ、量子人格化種族でした。

〝先帝〟種族と同様に、

彼女達もまた銀河帝国の権威を示すため、

その真名(まな)を用いることなく、

別名によって呼ばれたのです』

 

 

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『〝剣の王〟は、

鷲に似た猛禽(もうきん)類から進化した種族で、

巨大な宇宙艦隊を建造し、

親衛軍の総司令官を務めていました』

 

『〝炎の王〟は、

獅子に似た肉食動物から進化した種族で、

惑星攻撃兵器、後には恒星破壊兵器も生産する、

軍需省長官でした』

 

『〝慈愛の王〟は、

猿に似た雑食動物から進化した種族で、

資源・環境負荷が少ない生物化学戦を担当し、

民需省長官に任命されました』

 

『〝啓示の王〟は、

牛に似た草食動物から進化した種族で、

量子頭脳技術による情報戦を得意とし、

情報省長官の地位に()きました』

 

『多くの種族が覇権を巡って争う中、

四大種族はそれぞれの分野において

帝国の拡大と銀河系の統一に貢献し、

他の種族から恐れ(うやま)われました』

 

 

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『旧帝国では文明開発長官であった

現皇帝種族サタンが、〝先帝〟種族の命により、

発展途上種族を支援するために用いた神話にも、

四大種族が登場したほどです』

 

『将来の帝国との関係を良好にできるよう、

現皇帝の分離個体が自ら悪役を演じる一方で、

四大種族の基本形態は、〝先帝〟を()する善神の

守護天使達の姿として紹介されたのです』

 

 

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そう、私達は知っている。 遥か(いにしえ)の時代から……。

空想科学小説(サイエンス・フィクション)の巨匠A.C.クラークが書いた

「幼年期の終わり」という傑作は、

完全一致ではなくても、予言的作品となったわけだ。

 

『しかし〝大戦〟により、状況は一変しました。

〝剣の王〟と〝炎の王〟は、最終決戦となる

〝アンドロメダ戦役〟において滅亡し、

大部分の戦略兵器とその運搬手段を失った

〝啓示の王〟と〝慈愛の王〟は、

新帝国に降伏しました』

 

『裁判に向けた取調べにおいて、

四大種族の中でも特に〝啓示の王〟は、

量子人格化種族の判断にも干渉できる

不正演算指示(ウイルスプログラム)を開発し、

他種族の重要な決定に対して強い影響力を

及ぼしていたことが判明しました』

 

『そのため彼女は現在、特別法廷において

集中的な審理を受けつつあります。

〝大戦〟は中枢種族による〝先帝〟種族の傀儡(かいらい)化と

相互の抗争から生じたものだったので、

彼女がその黒幕として、最も責任を

負うべき種族と推認されたのです』

 

ここまでは、公表済みの情報だ。 

それならいったい、重大発表とは何だろう?

 

 

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2 真相

 

『しかし、最近における公判の進展に伴い、

最大の戦犯とされた〝啓示の王〟にも

酌量(しゃくりょう)すべき事情のあることが

明らかとなってきました。

それは、彼女が帝国の存続に対する使命感、

さらには〝先帝〟種族への深い情愛のゆえにこそ、

避けられぬ内戦の発生を、あえて早めたのだ

という可能性です』

 

実はこれまで、各種の陰謀論的な〝内戦誘発仮説〟も

なかったわけではないのだが、これは……。

 

『〝啓示の王〟の記憶組織と

高位の人格群に対する取調べによれば、

旧帝国における軍事種族の腐敗や権力闘争は、

極めて深刻な、憂慮(ゆうりょ)すべき事態と認識されていました』

 

 

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『また後に、そうした種族達の暴走は、

〝先帝〟の権威や彼女自身の影響力を(もっ)てしても

いずれは制御不能になるという悲観的予測が、

大勢(たいせい)を占めるに至ります』

 

『そして何より〝啓示の王〟は、

旧帝国の草創期から共に国家を築いて来た、

最も古い同盟種族のひとつとして、

〝先帝〟に対し、深い情愛を抱いていたのです』

 

 

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『そのため彼女は、同様に帝国の変質を危ぶむ

〝先帝〟種族の良識的な人格群と協力し、

勢力均衡や軍備制限などの手段によって

状況の改善を図ろうと、接触を試みました』

 

『しかしこの時、すでにそうした人格群は

秘密裡(ひみつり)に、最も善良かつ忠実にして情深(なさけぶか)

文官種族であったサタンのもとに亡命し、

健全な中間層となるべき途上種族の育成を初めとした、

帝国全体の改革を図っていました。

彼女の計画は挫折(ざせつ)してしまったのです』

 

 

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『その結果として〝啓示の王〟は、

戦略の転換を余儀(よぎ)なくされました。

今では彼女が、好戦的な種族間の衝突を

むしろ意図的に誘導することで、

粗暴、短慮あるいは利己的な軍事種族の

〝共食い〟による選択的自滅を図ったのだ、

という仮説が急速に有力となりつつあります』

 

『こうした見解を受けて、新帝国の特別調査班が、

彼女の行為の〝大戦〟への影響を検証したところ、

恐るべき事実が判明しました。

すなわち、彼女による軍事種族の〝淘汰〟なくしては、

現実の歴史のように新帝国側の被害が少ない

平和回復は、客観的に見て極めて困難、

あるいは不可能であったという事実です』

 

……すでにそこまで調査が進み、しかも結果が

これほど早く、包み隠さず公表されるとは驚きだ。

 

『また、彼女の主観的な意図や心情に

関する調査も正しいとすれば、

〝先帝〟種族の滅亡や罪なき種族の膨大な犠牲、

ラグエルやラジエルのように忠良な

軍事・技術種族の離反と壊滅など、

内戦の予期せぬ惨禍(さんか)を最も嘆き悲しんだ者もまた、

彼女自身だったのではないかと考えられるのです』

 

 

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『さらに、こうした見方を裏づける事実として、

彼女が〝大戦〟の際に、

現皇帝サタンと〝先帝〟との関係を推察し、

あえて決定的な攻撃を控えたと思われる事例も、

少なからず発見されつつあります』

 

『そこには、サタンによる支援の最大の成功例であり、

またそれに乗じて〝慈愛の王〟が、

〝先帝〟種族の生存人格群、通称〝聖霊〟が宿る

量子頭脳を秘匿(ひとく)していた、

太陽系第三惑星〝地球〟に対する

戦略攻撃の阻止も含まれています』

 

 

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『もちろん、このような事情は彼女の責任を、

全て消滅させるといったものではありません。

しかし、これにより特別法廷及び新帝国政府は、

彼女の処遇及び新国家の人的資源政策について、

大幅な見直しを求められつつあります。

今後は、かかる悲劇的選択を迫られた種族への報復よりも、

我等が将来二度と同様の悲劇を繰り返さないための、

現実的かつ人道的な技術と政策を考案することこそが、

最重要の課題となるでしょう』

 

私は、風刺を込めた過激な諧謔(ユーモア)で知られるヴォラクが

神妙(しんみょう)な表情で発表を終えるのを見て、少し驚いた。

……だが、安心するのはまだ早かった。

 

『ただし一言(ひとこと)、私見を述べさせていただくならば、

以上の事実は、戦中あるいは戦前から、

新旧帝国の一部人格群の間において、

〝淘汰の許容〟を巡る何らかの合意や取引があった

可能性を、必ずしも否定するものではありません』

 

 

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『これについては現在、

さらなる民主化や自由化を進めつつある

新国家の健全な発展のためにも、

我等の政府が報道媒体や監察機関の

公正な取材や調査を禁圧することは

ないものと確信します』

 

画面の外で、記者達の驚きの声や歓声、

他の理事種族達のものと思われる

(なげ)きの声や溜息が、一斉に響き渡った。

 

ヴォラクはそのざわめきを背に、

謎めいた、だが一種凄みのある

微笑を浮かべながら退場した。

 

 

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3 考察

 

しかし……これは想定の範囲内だろう、

と私は思った。

そうでなければ、そもそもヴォラクが

発表者に選ばれることはないはずだ。

 

どんな悪事にもやむをえぬ原因がありうる、

と考えることは大事だが、

どんな美談や悲話のウラも疑ってみる、

というのも均衡(バランス)ある、健全な態度といえよう。

 

ヴォラクもその姉妹種族アミーも、

理事種族の中では秩序の破壊者(トリックスター)

帝国政治のかき回し屋として知られるが、

本物の反社会的種族ではもちろんない。

 

とんでもない(おきて)破りをしながら、

それ以上に良い結果を出して見せ、

他の種族を悔しがらせる一方、

時には派手につまらぬ失敗もやらかして、

仲間達をさらに頑張らせてしまうのだ。

 

 

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彼女達は海豹(あざらし)に似た

両生動物から進化した種族だが、

非常に強健・知的な資質に加えて、

実は真面目な性格を持っている。

 

しかし、そのことを裏から見れば、

他種族の力量不足ゆえに

より良い政策が導入しにくいという、

不満を()える立場でもある。

 

そこで、時には危険あるいは不謹慎な冗句(ジョーク)

自身の緊張を(やわ)らげたり、

他種族の向上を求めたりしているのではないか、

といわれている。

 

実際、今回の問題発言にしても、

今の政治や民度の水準(レベル)を考えれば、

国家の信頼を(そこな)うような

醜聞(スキャンダル)に至ることはないだろう。

 

むしろ、交戦国の通謀による

淘汰などという恐ろしげな〝疑惑〟が、

腐敗、衆愚化や無責任な他責に(おちい)りがちな

多くの種族の自戒を促したり、

人々に〝啓示の王〟の苦悩を

我が事と感じさせたりすることで、

平和の維持や強化に資するだろう、

というのが私の予測だ。

 

やんちゃな双子の臣下種族に対し、

我等が〝最後の皇帝(ラスト・エンペラー)〟はというと、

(ちまた)では〝天使な魔王サタンちゃん〟(笑)

と呼ばれるほど、善良で心優しい種族だ。

 

 

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彼女は(なん)と軍事国家である〝旧帝国〟の時代から、

『あるまじき〝戦争の効用〟』などというものを

全て残らず分析・公表したうえに、

それらを不要とする人道的な政策を訴えて、

自らの手を縛っていたお人好し、

馬鹿がつくほどの正直者でもある。

 

もし通謀があるとすれば、

戦前から忠臣サタンのもとに大量亡命し、

指導も行っていた〝先帝〟からの亡命者と、

人形遣いの〝啓示の王〟あたりだろう。

ただし万一、そんなことがあったとしても、

全てが直ちに公表されるかは分からない。

 

また、当時における淘汰の容認を批判して、

今の平和的な政策との矛盾を突いたとしても、

『では君なら他にどんなことができた?』とか、

『今後もそれを繰り返すのか?』と問われると、

どこの種族であっても『いや、それは……』と

返答に(きゅう)してしまいそうなのが、恐いところだ。

 

 

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そもそも淘汰のための陰謀・通謀だろうが、

偶然・誤算だろうが、まあその間をとって

機会の利用や泳がせ後の対処だろうが、

私達一般人にとってはあまり違いがない。

 

まず戦争を起こすかどうかの決定自体は、

より大きな社会情勢に左右されるのだし、

ひとたび大戦争が起きてしまえば、

多くの種族への惨禍は避けようもない。

 

 

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私達ができること、すべきことといえばまず、

技術が進めば社会や政策はこうなり、

それを繰り返すと全体がこうなっていく、

という文明の大きな流れを知ることだ。

そのうえで、戦いを未然に防ぐべく、

普段から各種政策の提案や改善、活用に関わり、

社会全体としての生存・発展確率を

上げられるよう努力するしかない。

 

その意味で新国家が、

〝モノの生産・安全と配分・投資だけでなく、

ヒトの向上・支援と活用・参画も重要になる〟

という文明の潮流(トレンド)を理解したうえで公開し、

新技術により人々の健康や教育も高めながら、

民主化や自由化を進めているのは有難いし、

私達もぜひ、その機会を活用したいものだ。

 

……私を含む人類が量子人格化してから、

かなりの年数がたったが、

星間社会でも政治というものは奥深く、

この帝国では程良(ほどよ)く面白い。

 

 

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ところで〝啓示の王〟についていえば、

他者への愛などといっても、

しょせんは自己愛の拡張にすぎない、

という冷めた見方もできる。

 

とはいえ人は誰しも、何か自分に

関係があるから愛するのであって、

自分と全く無関係のものを愛したら、

むしろ気持ちが悪いだろう。

 

だからこそ、せめて今後は皆の愛情が、

どこかで(さえぎ)られることなくお互いを向き合い、

全ての人々のための政策に活かされて欲しい。

……私は切に、そう願っている。

 

 

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