書けば出るって聞いたから書いた。
場合によってはアークナイツ無課金のタグを外す羽目になるかも。
お願い、出てくれー!!
アークナイツ知らない人向け用語解説
サルカズ:悪魔と呼ばれるような頭に角を持つ特徴がある種族。傭兵をしているものが多く、いろんなところに忌み嫌われている。
ケオべ:かわいい。前回マガツをふっとばした。
ラヴァ:苦労人。姉よりは闇医者のほうがマシということで
支給品のコーヒーは泥と大差ない味がした。
それでも、口の中のどうしようもない血の味と胃液の酸味を忘れるには丁度良かった。
「……うぷっ!!」
急にせり上がってくる吐き気を何とかこらえる。
内臓をやられていた。早目に治療を受けた方がいいのだが、衛生兵は先程の戦闘で再起不能となっている。息はあるが復活は無理だ。恐らく、明日の朝には亡くなってるだろう。
別段ベースキャンプでもないこの野営地で吐いても支障はないのだが、ただでさえズタボロにやられて傷を負い呻いてる同僚が転がってるここで吐くのは、衛生的にも気分的にも憚られた。
俺の傷はまだマシな方で、四肢欠損や失明、意識不明、酷いやつだと下半身失ってるやつもいる。ここにいる三割は明日は目覚めないだろう。
傭兵部隊は半壊、正規兵たちもほぼ壊滅という負け戦。生き残るだけ生き延びて、何とか降参しなければならない。そんな悲惨な局面。
「なんでこんなことやってんだろうなあ……」
死ねば良かった。
ここまでくるなど全く考えていない。
今まで出会った皆と同じように、さっさとくたばってしまえば良かった。
死に場所を探していた。
正確にいえば看取ってくれる誰かを求めていた。
多くの死に出会ってきた。
大抵は感染者でどうにもならない死にかたをする奴ばかりだった。
そいつらの最後の希望は生への渇望とかあるいは過去へ戻りたいといった願望ではなく、自分の亡骸を託しここで誰かに看取ってもらうという死に際の切望であった。
死の恐怖に誰もが打ち勝てるわけではなく、打ち勝てたとしても恐怖がなくなるわけではない。
生きていれば死ぬという当たり前で単純なことが誰にも耐え難いものだ。
いろんなものを託された。遺書も遺品も抱えきれないほど渡された。遺言なんて覚えきれないほど。それでも、死に顔だけは忘れられない。
死ぬのが遅すぎたと思うようになったのはいつだったか。
俺を庇った仲間が目の前で死んだときか。
助けようとした少女の感染者が既に手遅れの侵食状況だったときか。
次の日死んだ女性を抱いたときか。
気がついたときにはもう、生きる理由を見失っていた。
自分で看取った亡骸が優しく俺を誘ってくる。
死は怖いものだけど受け入れられないものではない。
あとはせめて、自分が死ぬときに自分の亡骸を――
――パララッ
「……銃声」
意識を戻す。コーヒーの残りを地面にくれてやり、立て掛けていた小銃を引き寄せる。
周りを見渡し、動けそうなものに状況を伝え臨戦態勢へと移行する。
撤退戦はこれで五度目。
味方の本丸が襲撃を受けているようで、いつまで逃げればいいのか、何処まで逃げればいいのかわからない。
もう、さっさと降参してしまった方がいいのかもしれない。
どうせ自分達の責任じゃない。死ぬよりは裏切り者と罵られた方がマシなはず。
そう思いながら、いや、誰もが思いながら銃を構えて銃声の方へと歩き出す。
誰もが死にたくないし、逃げ帰りたいし、生き延びられるならば降参して無様な生をつかみたいものだ。
なのに、こいつらはどうしてここに残っているのか?何故銃を手に取るのか?
分かりたくないがなんとなく分かる。
半分以上感染者が占めるこの部隊に生きる理由を求めて参加したものなどいないということだ。
ようは同じ穴の狢。
足跡は三人か。
アーツを使っている様子はない。
銃声も止んでいる。
全員に待ち伏せするように指示を出す。
階級的には俺も他の奴らとたいして変わらないがこの状況では、誰もが指揮なんてする気力はないだろう。
「ふーっ、と。さてと、死ぬか」
躊躇いは一瞬。その一瞬が死への恐怖とか生への渇望じゃないことは明らかだった。でも、何かが躊躇わせる。
けれど、振りきるのは容易だった。そういったものは、何度も何度も見ないふりをしてきているのだから。
「動くな、手を上げろ。何処の所属だ?」
死角から近づき銃を突きつける。
これはただの虚仮脅しで、効力なんてないしなんなら銃弾も十発も残ってない。
ノコノコと近づいてきたこの三人組がまさか俺等に気がついていないとも思えない。
しかし、先手を取る意味はある。
こちらにもまだ戦う意思も意地もあるぞという表明にはなるからだ。
「……こちらに、交戦の意思はない。君たちを回収しに来た、雇われだ」
それなりに歳をくっている壮年のサルカズの男性が告げる。
「完全な味方ではないけれど、少なくともあなたたち感染者の部隊に手を出す気はないわ」
妙齢のサルカズの黒髪の女性が両手を挙げながら言う。
この二人はサルカズのクセに大人しい。
一先ず俺を組み伏せてから話をしてくると思ったが、理性的なようだ。
「アハハ!随分とこっ酷くやられたわね!噂の英雄がいるから足を運んでみたけど、期待違いだったかしら?」
成程。
こいつを理性的な二人で抑えているわけか。
赤い目白い髪白い肌。
濃厚な血の匂いと溢れる殺気。
ただそこにいるだけ人を殺すのではないかと錯覚させる澄んだ闘気。
生粋の傭兵なのだろう。軍隊式の儀礼などはなく、あるがままに振る舞う性格を犬歯をむき出しにしながら嗤う姿が表している。
「……そうか、俺は」
「疫病神、だろう?話は聞いている。唐突で悪いが助かりたければ私たちの旗下に入ってくれ。質問は受け付けない」
疫病神、俺についた二つ名。
感染者で厄介者でよく人の死を看取っていて、それで一部じゃあ英雄視されてるからついた。皮肉と嘲笑とほんの少しの神聖視が混ざるこの二つ名を俺は心底嫌っている。
誰だよ最初に疫病神と呼んだやつは。
「一つだけ、質問に答えろ。じゃなきゃ、引き金を引く」
「あなた、この状況で交渉できると思ってるの?」
「お前らが軍に雇われてないのはすぐに分かる。まあ、そこはどうでもいい。お前らがなんだろうと、俺らはどうせ死に体だ。お前らに殺されなくとも勝手に死ぬやつしかいないからな。ただ、死に目に会えた人の名前くらい、呼び名くらい教えてくれよ。明日には仏になってるかもしれないからさ」
「……へドリーだ」
男が他の二人に促す。
「イネスよ」
黒髪の女性が返す。
「え?あたしも名乗るの?……Wよ。ま、忘れていいわよ。どうせ死人が覚えていても仕方ないことだもの」
知らない天井だ。
「起きます」
なんつー夢を見ていたのか。うろ覚えであった当時の内容をしかりと思い出させる。それがいいことかどうかはともかく、夢見は悪かった。
「また、ぶっ倒れたのか……」
病室で目を覚ます。最後の記憶は近距離の訓練室を出禁にされたので、術師オペレーターの訓練室でケオべと術比べしていたら、ケオべのゲート・オブ・ケオべによる十七連撃をくらって地面に叩きつけられた。
痛え。
思い出すと、体のいたる所がズキズキと痛みを発する。
ヤムチャしやがっての状態にて訓練室で倒れていた俺は、ケオべがすぐにラヴァを呼び、ラヴァは姉を呼ぶか迷ったところでたまたま通りかかったアーに助けを求め、アーはいつものことかとウンに俺を運ばせて、病室まで連れてきた。らしい。
この一連の流れを俺が知るのはまた三時間後のこと。
コツリ、コツリと 病室の外から足音が聞こえてくる。
反射的に俺は近くの机の上に飾られている花瓶から花を抜いて、花瓶を右手に隠し持つ。いつでも投擲できるように。いつでも、逃げられるように。
……何やってんだろう。どうも冷静ではない。変な夢を見たからか。或いは、こんだけ疲労しているからか。どちらにせよまともじゃない。
ガララとドアが開く。
目線だけをそちらに向ける。
「――アハ。久方ぶりに顔を見に来てみれば病室って、だいぶあなたも衰えたわね。疫病神さん?」
赤い瞳、白い髪、白い肌。
しかし殺気は少し和らいだ。
サルカズのその少女は昔よりは背が伸びたか。
片手にリンゴを持っている。
「W……お前――」
「あら、予期せぬ再会に二の句が告げないのかしら?それとも頭までやられて忘れてしまったの?」
「すげぇ、可愛くなったな!!」
リンゴを投げつけられました。
はい、ぐだぐだなこの小説も今年の終わりまでやってこれました。来年はどうなるかわかりませんが、皆さんの暇つぶしになると幸いです。ここまで読んで下さった皆様に感謝。それでは良いお年を。
意味のない用語解説
ゲート・オブ・ケオべ:ケオべの必殺技。ドクター考案、マガツ命名。ゲート・オブ・バビロンのオマージュ。雑種が!!
十七連撃:死徒十七分割。コノメニウー
ヤムチャしやがって:マガツは死ぬ
アー:マガツの扱いに慣れている。
ウン:担架代わりに慣れている。