七章のストーリーを読んだ人には分かるかもしれない要素があります。
ネタバレって程じゃないですけど。
あと、ペンギン急便のメンバー出せていなくてすいません。
七章を進めていたら早めに書くべきだと思って今回の話を書きました。
アンケートの結果を無視する形になって申し訳ないです。
アークナイツ知らない人向け用語解説
ジェイ:死んだ魚の目をした青年。料理人。魚を捌く。白熊。
ホシグマ:鬼の女性。背が高い。姉御肌。公私はしっかりと分けるタイプ。
スワイヤー:お嬢様。金持ち。たいがーって感じ。
チェン:龍の女性。アークナイツの中でも上位の怪物。詳しく話せば話すほどネタバレになる人物。体育会系。
赤霄:刀。とある人物が使うとヤバい威力を発揮する。ちょくちょく抜けない。
飲み干したコーヒー缶を捨てて次の一缶を冷蔵庫に取りにいく。
「積んでいた本も読み終えたし、やることねえ」
再び謹慎をくらっていた。
今回の謹慎の理由は悪いことをしたからではなく、新しくロドスに来た『オノコロ』の三人娘と一週間ほど滞在するらしいトガタがメディカルチェックを受けるため、彼女らの面倒を見てほしいとのことで。いつもの基地での仕事や戦闘訓練がなくなりメディカルチェックが終わるまで自室待機となった。
表向きは検査による彼女たちのメンタルをケアしやすいようにするための気遣い。
裏の意図は主にトガタと他三人の経歴やアーツを調査するにあたって俺に妙な動きをさせないため。
「…………。」
視界の端の部屋の隅、レッドが自然体でこちらを向いている。
監視役であり、ケルシ―先生の直轄であるレッドを持ってくるあたりかなり警戒されているのだろう。
他にいつもの護衛役という名目で誰かを付けていないあたり本気なんだろうということがうかがえる。
状況によってはレッドを使って俺を処刑することも辞さない。
そのために他のオペレーターがいると厄介であるとの判断だろうな。
「レッドもコーヒーとかいるか?」
「いらない。レッドはコーヒーが苦手」
「さよか」
用意した椅子に座ることもなく、壁に背を預けることもなく、腕組みすらしないでかれこれ一時間程度はじっと見つめてくるレッドは流石一流の暗殺者である。
飼い主に言いつけられたことは絶対遵守するよくしつけられた猟犬だと感心する。ループスは狼だが。
テキサスしかり、ラップランドしかり、ループスの連中はおっかない連中ばかりである。
プロヴァンスは除く。
オリパシーによる突然変異は性格を優しくさせる効果でもあるのかな?
エステルもいい子だしな。
……いや、元からの性格か。
感染してグレてしまった連中の方が多数派だしな。
監視が付くことに対して俺は不満はない。
問題はあの三人とトガタがロドスにどういった感情を抱くかである。
彼女ら全員が全員今までの経験からか或いは処世術なのか知らないが本心を隠すことが上手い。笑ってるようで怒り心頭だったり、楽しんでいるようで悲哀に沈んでいたりする。特にトガタは一番生きている年月が長いこともあってか表情と言動と行動と心境が一致しないことが多い。
そんなことしていたら疲れそうなものだけど。
感染者が人を信用しない、心中を顕わにしない、喋らない表情を出さない、というのはよくあることだし、ロドスはその手の感染者に対しても経験を積んでいる方なので大丈夫だとは思う。
けどなあ、トガタは落ち着いてるからいいとしてもあの三人は極端だからなあ。
性格もアーツも。
「不安だ……」
「?」
レッドが首を傾げるのを見て、俺は何でもないよと手を振って返す。
微糖の缶コーヒーを選んで部屋の椅子へと戻る。暇つぶしに読んでいた感染生物図鑑へんないきもの編を読むことを再開する。
あ、ポンペイだ。この前ジェイが捌いていたな。あのウルサスの魚捌きの青年はなぜ感染生物の捌き方も知っているのか?捌いたのか?
『rock’n roll!時刻、ヒトヨンマルマルになったことをお知らせします!!』
購買部の福引で当たった某暑苦しいレイジアン工業のロボットの見た目をした目覚まし時計が時間を告げる。
アラームが爆発音というやかましいことこの上ない目覚まし時計だが、ほぼ確実に目覚めさせてくれる優れものでもある。
何気に赤外線センサーで熱源感知し、人がいるときにのみ音を発する仕組みになっている高性能な目覚まし時計だ。
あの購買部の主はこういうことには本気出すよな。
声がうるさいので(いい声だが暑苦しい)レッドが耳をピクリと動かしている。
作りはいいがうるさい。
目覚ましとしては適しているが鳩時計としては他のロボットの声の方が適しているなと、購買部の皆様からの声をお聞かせくださいの紙に評価を書くことを決めながら図鑑を閉じて、部屋を出る用意をする。
14時にはメディカルチェックが終わると言われているので、医務室の方へ向かうことにする。
部屋を出ると無言でレッドが後ろからついてくる。
宿舎の廊下は今が仕事真っ最中の時間帯であることもあってか人気は少ない。
……ロドスの廊下は監獄を彷彿とさせるような閉塞感があるよな。人気がないとちょっとしたホラースポット感が出る。社畜の幽霊が出そうだな。
そんなCEOに怒られそうなことを考えながら(いやロドスのCEOはそこまで狭量ではないが。……ホントダヨ)、廊下を歩いていると目の前から人影が複数近づいてくるのが分かる。
「薄暗くて人っ気のねぇ場所ですね……牢屋みてえだ」
「ここは宿舎だ。ロドスのオペレーターは主にここに寝泊まりしている。今は外客用の施設を使っているがジェイもここに移ることになるだろう」
「……本当にここに皆が寝泊まりしているの?龍門近衛局の独房よりはマシだけどあまりにも殺風景が過ぎるわ。後で観葉植物でも買ってこようかしら?」
「無駄なものがなくていいと思うがな。陰気くさいとも言えなくはないが」
……お、おおう。
龍門の皆様のお通りだ。
灰色の外套にダメージの入ったズボン。白い丸耳に死んだ魚のような目をした青年はジェイ。この龍門面子の中では唯一知り合いで、何度か食事をごちそうしてもらったこともある料理人。ロドスに加入したのは最近でホシグマの紹介とは言ってたな。
そのホシグマはジェイに宿舎のことを説明している大柄の女性。緑色のストレートヘアーに額から伸びる一本角が印象的。俺と同じ極東出身の鬼の女性であり、龍門近衛局と呼ばれる龍門の治安維持組織に所属する役人さん。元マフィアの出身で荒くれ物の一面もあるが仕事には真面目。龍門近衛局に入る前からの顔見知りだが別に交流はなかった。ジェイの姉貴分的存在だが紹介される前にホシグマは近衛局に行き俺は傭兵としてあちらこちらに行くことになりすれ違った感じだ。ロドスと近衛局の協力体制は知っていたが気まずくて顔は合わせなかったからなあ。
そして、残りの二人はスワイヤーとチェン。
スワイヤーは高そうな黒に裏地が橙の外套を羽織り、おしゃれな帽子と三角虎耳、お嬢様っぽい金髪縦ロールが特徴的な女性。実家は龍門の豪商で本当にお嬢様。だが、何故か近衛局に所属している。近衛局の地位もかなり高いと聞く。面識は一度見たかどうか。俺は思い出せたが向かうは覚えているかどうか怪しい程度の面識である。
最後にチェン。龍の女。青髪に東洋の龍を思わせる二本の角。ロドスのジャケットに短パンブーツの服装。近衛局のトップ。俺が龍門で大立ち回りをした時に最終的に殺し合うことになった人間。達人レベルの剣術と一撃必殺のアーツを放つ怪物。龍だしな。お互い死んでもおかしくない程度には殺し合ったのでいざこうやってロドスのオペレーターとして顔を合わせると気まずい。龍門近衛局で一番合いたくない人物。龍門で嫌いな人物第四位でもある。嫌いというよりもトラウマなだけなのは秘密。鉄筋コンクリートを剣でぶった切る女。
「む。」
「あら?」
「おや」
「……どうも」
向こうもこちらに気が付いたようで四者がそれぞれの反応を返す。
チェンはまゆを顰め、スワイヤーは何処かで見たことあるか思い出しているような感じ、ホシグマは珍しいものでも見るかのような反応で、ジェイは会釈をしてきた。
「……お久しぶり、ですかね?」
何て声をかけるかわからなくて疑問形になる。ジェイはともかく他の面子はほぼ初対面みたいなものだ。それに気まずい龍門では問題を起こしてしまったので役人――とくに龍門近衛局とは顔を合わせづらい。龍門にいたころはまさか仲間として再会するなどとは思っていなかったので、啖呵きって挑発して殺し合って逃げた。死人は出てないが恨まれていそうだ。
「ロドスにいるとは聞いていたが、こんな形で出くわすとはな」
チェンが一番最初に反応する。
「もしかして、彼があの疫病神さん? チェンのアーツを真正面から受けても生きてたって言う」
スワイヤーは確証はなかったようだが俺の疫病神という昔の呼ばれ方は知っていたみたいだ。
「昔よりも幾分か柔和な顔つきになってるな。疫病神も変わったということか」
そう言ったのはホシグマで何故か感心しているかのような表情だ。
「皆さん、疫病神は好んでいる名前じゃねぇですから、ここではマガツって呼んだ方がいいと思いますぜ。……お久しぶりですね、ジェイです。覚えていやすか?」
最後にジェイがそう補足してから俺に話しかける。
「ああ、覚えているとも。顔こそ合わせてなかったがロドスに加入していたことは話で聞いてたよ。何でもポンペイとかいう巨大な感染生物の相手を初陣でやらされたとかなんとかって聞かされたが、本当か?」
「ああー、事実っすね。あんな巨大な生物を捌くのは初体験やしたけど」
「全く、ドクターも新人に無茶させるなあ。各々の特性を最大限生かしているともいえるけれど、もっと楽な任務からでもよかっただろうに」
「信頼してもらえる、新人でも仕事を回してもらえると思えば悪かねぇですけどね」
ジェイからはあまり気負っている様子や不安な様子は見受けられない。オドオドするような奴でもないがロドス雰囲気に馴染めないということもなさそうで知り合いとしては安心する。
「…………。」
そんな俺とジェイのやり取りをじっと見つめている奴がいる。
「チェン、どうかしたの? そこの彼と何かあったの?」
スワイヤーが視線を行き来しながら言うくらいには彼女は凝視している。
その眼差しに敵意や憎悪はなさそうだが、なんとも居心地が悪くなる。
ヘびにらみかな?
龍だった。
「――変わった、か。確かに、変わったな――比べ物にならない程に」
チェンはやがて俺に向けてそう言った。
そんなに変わったか?
精々三、四年前程度のことだけど。
背は伸びたし、身なりもよくはなったが。
「……どうやら上官には因縁があるようですね」
ホシグマが肩を竦めて言う。
「えっと、マガツさん。なんかやらかしたんですか?」
ジェイがチェンを窺いながら俺に聞く。
周りの奴らは知らないのか。
龍門で流血沙汰になった事件だから事件自体は有名だと思うが、個人的な事情までは知らないのかもしれない。
「やらかしたのは俺だけど、恨み言言いたいのも俺なんだけどなあ」
一方的にやられたし。
今更、同じロドスに所属することになって言うことでもないけど。
未だに恨んでいるわけでもないからなあ。
「……唯一だ。唯一、抜刀した赤霄の一振りを受け止めた。後にも先にも真っ向から受け止めたのはお前ぐらいなものだ」
「ああ、ね。ほら、鉈ってコンクリよりもしなやかだし、あれもあれで曰くつきだしね?」
チェンの言葉にそんなこともあったなあと思いながら返す。
コンクリの柱を気にせずに抜刀し柱は真っ二つ、俺はどうにか鉈を差し込んで受け止めた。
完全に受けきれなくて吹っ飛んだけど。
あの剣、赤霄とか言う銘がついているのか。
アーツ兵器っぽいし、何やら特殊な刀なのだろうとは思ってたけど。
俺の普段使いしている鉈にも何かしらの銘をつけてやろうかな。
『
……止めておこう。ただでさえ呪われているとの噂なのだから。
「それは、それは……また、とんでもないことする方だ。疫病神という名前も不吉さよりも底知れなさを表してつけられたのかもしれませんね」
ホシグマが感心したように言う。
スワイヤーもありえないと思っているかのような驚愕した表情を見せる。
「不吉か……。当時のお前に疫病神などという通り名があったとは知らなかったが、あのときのお前は不吉というよりは禍々しかった。赤霄を抜くのに躊躇わなかったほどには異常な奴で、異形だった。……腑抜けたな、随分と」
チェンは少し騒めく周りを気にせず俺のことを評した。
「腑抜けたねえ。ロドスじゃあ張り詰める必要もなくなったからなあ。飯は上手いし、雨風は吹き込まないし、何よりも医者にかかれるからなあ」
俺は努めて気楽にそう言った。
周りが少し静かになった。
チェンと俺は数秒目が合う。
どっかで見たことあるような鋭いまなざしが喉をひりつかせる。
おっかないお役人さんだ、と思いつつ俺は目を逸らし歩くのを再開する。
「用事があるんで」と、言って龍門の皆様方をすれ違う。
チェン以外は困ったような顔をして俺を見送り、チェンはすれ違いざまにこう言った。
「――任務にあたるときは、よろしく頼む」
…………。
育ちがいいね。
どっかの誰かにも見習ってほしいほどには。
七章をゆっくり攻略しているのですが、これは書くしかないと思うほどにはいろんな情報が満載です。
四、五章から一切休む暇なく話が続いているのでどこにどの情報があったのかわからなくなりそうです。
ただでさえストーリ把握が困難だというのに。
龍門近衛局のメンバーを先に出すことになってしまって済みません。旬を逃したくなかったというのと、後回しにするにはマガツとの関係性が深すぎると思ったからここいらで登場することになりました。
この二次創作の設定とかプロットが色々滅茶苦茶になりつつあります。
これも全部設定が多すぎる女性オペレーター『C』とレユニオンの『T』っていう女性のせいなんだ。
ペンギン急便の面子もちょくちょく出そうとは思います。
ウルサスの学生たちとかライン生命オペレーターとかの話も書きたいんですけどね。
イベントとかキャラ追加とかがあるとついそっちに流れてしまう。
意味のない用語解説
某暑苦しいレイジアン工業のロボット型目覚まし時計:CV緑川光。自爆できる。
ロドスのCEO:かわいい。やさしい。くろうさぎ。
ポンペイ:まさか一人の料理人の手によって解体されるとは……
へびにらみ:おなかの もようで おびえさせて あいてを まひの じょうたいに する。
『神絶』:かんだちは神立、雷のこと。上達部ではない。四話(しち)でマガツが使っていた鉈型の武器。棄てても戻ってくる。
コンクリ:素手でコンクリぶち抜くジャンプの主人公がいますね(現在形)。
ヤンデレタグ付けるべき?
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いる
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いるほどではない
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特に気にしない