#1 出会いが唐突すぎて困る。
俺の名前は佐藤 遊太。高校2年生の一般決闘者だ。今日は知り合いの決闘者 渡と大会に出ている。使うデッキテーマはサイバース。安定するし色んな場面に対処できるのが強みなんだが……。
「シングル戦制限時間45分でーす。
それでは、挨拶して始めてくださーい」
(よし、先行もとれたし、あとは初手にか かっている!)
初手<幽鬼うさぎ> <浮幽さくら>
<灰流うらら> <屋敷わらし>
<儚無みずき>
(何だこの手札ァ!)
──―佐藤 遊太 1回戦目敗退。
「お前散々だったなぁ~^^」
「うるせぇ渡! お前も負けてんじゃねぇか!」
「いやいや~俺は善戦した方だと思うよ?
遊太は初ターンセットエンドで誘発でなんやらかんやら邪魔した挙句結果ワンキルされてたじゃーん^^」
「うっ……。しょ、初手が盛大に事故ったから仕方ねぇだろ! 初手誘発5枚とか聞いたことねぇよ!」
「にしてもすげぇよなぁ。お前普通のサイバースに誘発5枚ピンで入れたヤツなのに全部引いたんだろ? 誘発に愛されてんな^^」
「愛されたいときと愛されたくないときがあるんだよ……」
「というか、最近お前がいい初手に引いてんの見た事ねぇな。うさぎとかうららとかはまだしも使えるかどうかわからないさくらまで全部入れてるなんてな。いっその事全部抜いた方がいいんじゃね?」
「いやそれは……。まぁいいんじゃないかな」
「なんだよそれ。まぁ少しくらい嫁カード入れたいもんな^^」
「そ、そんなんじゃねぇよ! ただまぁ、色々と思い入れがあるからな……」
「そうか。まああんま首突っ込まないけどよ。さて、2人とも潔く負けたことだし帰るか! じゃあな~」
「そうか、じゃあ俺も帰るわ。じゃあな」
──―帰り道
(今日はあまりにも酷かったなぁ。いっその事全部抜くのもありか? いやでもなぁ……)
遊太が5枚の誘発を見つめていた時、ふっと強い風が吹いた。
バサァッ
(しまった! 誘発が!)
遊太が気づいた頃にはもう遅く、カード達はバラバラに手の届かないところに飛んでいってしまった。
(せめて一枚だけでも追いかけよう!)
遊太は一枚の飛んでいったカードを追いかけた。そして、川に浮かんでいるカードを発見し、飛び込んで回収したのだった。
(幸いスリーブのおかげでカードが濡れずに済んだ。回収出来たのはうさぎだが、あと4枚検討もつかない方向に飛んでいってしまった……。おまけに飛び込んだからずぶ濡れだしな……。すぐ家に帰って風呂に入ろう……)
──―遊太帰宅
(とりあえずカードは自室に置いて、風呂に入ってくるか)
──―遊太入浴後
(にしても参ったなぁ……。思い入れのある誘発達なのに……。とりあえず今日は寝て明日考えよう……)
遊太がそんなことを思いながら自室のドアに手をかける。しかし、部屋では全く想像できない光景が待っていたのだった。
(今日1日疲れた……。すぐ寝よう……!!)
遊太の部屋には髪が真っ白で目が宝石のように紅く、何かよくわからない霊的なオーラを放っている少女が居た。まさしく遊戯王の手札誘発<幽鬼うさぎ>である。
「は、はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
(な、なんで俺の部屋に女の子が! しかもこの格好幽鬼うさぎじゃね!?)
「気づかれちゃったか、マスター。初めまして。私の名前は幽鬼うさぎ。マスターの魂のカードです」
ポカーン
「そ、そうか、疲れすぎて幻覚が見えてんのか……」
「何言ってるの。幻覚なんかじゃないわ」
「そうでも思わねぇと理解できないだろ! じゃあなんでカードが実体化してんだよ!」
「はぁ……知らなかったのね……。最近の異変についても、私たちについても。最近遊戯王のカードが何らかの理由で実体化し始めているのよ。私もそのうちの一つ。私はまだ害がないカードだけど、色んなカードが実体化して暴走しているのよ。そのカード達を退治するために退治するために私たち5人で活動してたんだけど……」
「ごめんちょっと情報量が多すぎてさっぱりわからん」
「えぇ……。めんどくさ。決闘者特有の超速理解がマスターには無いわけ?」
「そら決闘者だとしてもいきなりこんなこと言われても訳わかんねぇよ!」
「──! 早速カードが現れたわ! 四の五の言ってないでいくわよ!」
「え、ちょっとうわぁぁぁぁ!」
──―遊太 うさぎ移動完了
「わぁ! なんだ!? いきなりワープしたんだけど!」
「<緊急テレポート>よ。それでカードが現れた位置にワープしたの」
「え、でも俺ってモンスターでもないしレベル3でもないしサイキックでもないんだけど……」
「いちいちうるさいわね! ほら、標的は目の前にいるわよ!」
そう言われて遊太が視線を上げてみると、そこにはいかにもメカメカしい具体的に言うとフィールドのモンスター1体をリリースする度に相手に400ダメージを与えそうな機械と投げつけられたであろうカエルが転がっていた。
「こ、これって……、<マスドライバー>じゃねぇか! たしか昔にカエルワンキルに使用されて禁止にぶち込まれたカードだ!」
「なるほどね……。とにかくめちゃくちゃ害悪のカードのようだわ。―! マスター避けて!」
その瞬間マスドライバーがこっちを向き、数多のカエルを打ってきた!
「うわ、危ねぇ!」
遊太とうさぎは咄嗟の判断で近くの草むらに隠れた。
「あんなんどうやって倒すんだよ! 俺アニメみたいにカード実体化させてバトルしたりとかできないぞ!」
「確かに、マスターがいてもとくに使えることがないわね。連れてきたのが間違いだったわ」
「なんだと! じゃあどうやってあいつを退治するつもりなんだよ!」
「そりゃあ私の効果をつかえば1件落着よ」
(うさぎの効果……。そうか、マスドライバーは永続魔法だから発動した時につかえば破壊できるな……。ん? うさぎは手札誘発だから墓地に送らないといけないんだよな……。ということは……!)
「なぁ、お前が墓地に送られたら、どうなるんだ?」
「え? そりゃあ消滅しちゃうわよ」
(なんだと……! こいつはさっきから主人に対して生意気な口を叩いているが、俺の魂のカードであることには変わりはない……。それを消滅させるなんて……)
「わかった、俺があいつを倒す。だからお前はそこで座ってろ」
「え? 何言ってんの。あんたがどうやってあれを倒すのよ」
「カードっていっても実体化してるんだからいつかは倒せるはずだろ? だからそれまで殴り続けるんだよ!」
「え、ちょ、ちょっと待っ……」
うさぎの言葉も聞かず、遊太はガムシャラにヤツに向かって走り、いい間合いになった瞬間一撃をかまそうと飛びかかった。しかし、それと同時にマスドライバーから大量のカエルが遊太目掛けて勢いよく放たれた。
「あ、やば……っ!」
遊太が死を覚悟したその瞬間だった。マスドライバーが急に音を立てて崩れ始め、大量のカエルもそれに伴い消えていった。
「助かった……のか?」
遊太は安堵して胸を撫で下ろした。しかし、すぐに何が起こったのかを察し振り向いた。すると、そこには、体がどんどん薄くなっている幽鬼うさぎの姿があった。遊太は直ぐに幽鬼うさぎの側へと駆け寄った。
「まったく……結果こうなるんだから……。手間取らさせないでよね……」
「うさぎ……うさぎ! 悪い……俺が……あいつを倒せなくて……!」
「いいのよ……。手札誘発は結果こうなるのが役割なんだから……。短い間だったけど……ありがとね……」
幽鬼うさぎがその言葉を言い終えると、光の粒となって消えてしまった。
「うさぎ……! すまない……!」
遊太はその場に少しの間座り込み、やがて自分の家へと歩を進めだした。
──―遊太帰宅
(うさぎを消しちまったなんて……。今日は本当に落ち込むことばかりだ……。カードの墓って言うのも変だが、明日作ってやろう……)
遊太がそんなことを思いながらいつもより重い自室のドアに手をかける。しかし、部屋では全く想像できない光景が待っていたのだった。
「何下向きながら歩いてんの? マスター」
そこには小さな体で、口が悪いが主人を一生懸命に守ろうとする勇敢な少女の姿があった。<幽鬼うさぎ>である。
「お前は……うさぎ! なんでここにいるんだよ!」
「言ってなかったっけ? 私達無害なカードは消えちゃってもまた元に戻ることができるのよ。心配して損したでしょ?」
「し、心配なんかしてねぇよ! そういうことは先に言ってからやれよな!」
「照れてんの? 可愛いわね~」
「うるせぇ!」
(くそぉ、心配して損したわ……。こいつには主人に対する敬意ってもんがないのかよ……)
「あの……。さっきの話なんだけど……」
「今度はなんだよ!」
「さっき俺が倒すって言って戦おうとしてくれたじゃん? あれって私を消滅させないようにしようとしてくれたんでしょ……?」
「そうだよ。それに何か文句があるのか?」
(どうせまた何か言ってからかってくるんだろうな。言い返してやる)
「あの……私が消えることを心配してくれた人なんていなかったから……ちょっと嬉しかった……ありがとう……」
「!? お、おう」
「ま、まぁあれがなかったらもっとはやくに解決出来てたんだけどね!」
「なんだよ! いきなり感謝したと思ったらまた喧嘩売ってくんのかよ!」
「何か悪い? 後今まで私達をいらないとかも確か言ってたけどそれも最低だとおもうわ!」
「あのなぁ! いる時といらない時が……」
このようにして遊太の誘発娘との日常が始まった。あと4枚の誘発はどこにいったのか? なぜカードが実体化するのか? その疑問にも目を向けず、2人は言い争いを続けるのだった。
友達とデュエルしてたらこういうのありそうだよねって話になったので書きました。