誘発娘に愛されすぎて困る。   作:メアレP

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大変お待たせしましたぁぁぁぁぁぁ!!!!
色々とリアルが忙しかったのと、1話完結にしようとしたら凄く長くなってしまったのが原因です⋯⋯。
出来るだけ早く書けるよう精進致します⋯⋯。


#8 不味すぎて困る。

――さくらが帰ってきた夜の食卓

 

「はい!という訳でね!今日からまたこの家の一員が増えました!さくらちゃん自己紹介よろしくー!」

 

「⋯⋯はい!今日からこの家でお世話になります、冬 咲良(ふゆ さくら)と申します。えっと⋯確か私の父親と母親が単身赴任をした⋯⋯でしたっけ?なので、幼なじみのうさぎちゃんが泊まらせてもらってるこの家に私も住まわせて頂くことになりました。よろしくお願いいたします。」

さくらの自己紹介はたどたどしく、途中チラチラとこちらに目で確認を求めてきたが肝心の母親がなんの疑う気もせずずっと満面の笑みを浮かべていたから多分大丈夫だろう。

⋯⋯何故このような状況になったかは数分前に遡る。

 

――階段裏

 

学校が終わって遊太は途中で幽鬼うさぎと浮幽さくらと再び合流し、周りに見られないように一緒に帰った。

家に着くと一旦さくらを外に待たせておいて二人だけで家に入る。

家にはパートから帰ってきた遊太の母親が既に帰ってきていてキッチンに居たが、バレないように2人は階段裏に移動した。

どうやらこの二人の間では、相談場所が階段裏というふうに定着してしまったらしい。

 

「なぁうさぎ。さくらが増えたけどやっぱりまたあの『ブローニング・パワー』って奴で母さんの脳内を書き換えるのか?」

 

「まぁ⋯⋯そうするしかないでしょうね。ゴリ押しでこの娘は俺のカードなんです!って言っても信じてくれなさそうだし。」

 

「でもなぁ⋯⋯流石に頭が破裂するぐらいの負荷はかからないよな?」

 

「まぁそうね。やろうと思えば出来るけど。」

 

「絶対にやろうと思わないでくれ⋯⋯。」

そういう流れで渋々母親の認識妨害の範囲を広げることを受け入れ、今は食卓で新しい家族を祝っているのだった。

 

しばらくして小さな祝賀会は終わり、遊太とうさぎはリビングにあるソファに座り、二人でテレビを見始めた。

浮幽さくらはというと、せっかく住まわせて下さっているのだからと食卓の食器を持っていき、キッチンで皿洗いをし始める。

 

「あらさくらちゃん。ありがとうね、家に来たばっかりで慣れないだろうから今日はゆっくりしておけば良いのに~。」

 

「いえいえ、私は住まわせて頂いている身なので。その分家事のお手伝いを致しますよ。」

さくらの凛とした真剣な表情が光る。

 

「そんなに気遣わなくていいのに~。さくらちゃんはいい子ね~。」

そう言って母親はさくらの頭を優しく撫でる。

 

「なんか私もおばさんに申し訳なくなってきたわ⋯⋯。手伝い行ってくるわね。」

リビングでテレビを見つつ、キッチンでの様子を伺っていたうさぎはいたたまれなくなり、自分もとキッチンに向かう。

 

「あ、うさぎちゃんも一緒にお皿洗いする?二人でやった方がすぐに終わるよ!」

 

「えぇそうね。私も手伝わせてもらうわ。」

やはり同年代の女子(誘発娘)が中睦まじそうにしているのはなんかこう⋯⋯見てると健康に良い気がする。自分の今日地面にぶつけた背中も速く良くなりそうだと遊太がリビングからその様子を覗く。

 

「あんたも見てないで少しは手伝いなさいよ。」

近づいてきた母親に頭を軽くチョップされる。

 

「あぁごめんごめん。でもまぁ今日は2人に任せていいんじゃない?2人とも楽しそうだし。」

 

「⋯⋯そうね。あの二人は幼なじみらしいし、これから一緒に生活出来るようになって嬉しいのかしらね。」

⋯⋯母さん、ごめんな。それさっき植え付けた都合のいい設定なんだ⋯⋯。

母さんに心の中で懺悔をしてから、今日はもう風呂入って課題やってすぐ寝ようと思った俺は、流れるようにそれらをこなして寝た。おやすみ( ˘ω˘ ) スヤァ…。

 

――書庫

二人の誘発娘達は食器を全て洗い終わってからそれぞれお風呂に入り、都合よく魔力をやりくりしてパジャマにフォームチェンジする。

そして階段を上り、うさぎとさくらの寝室である書庫に着く。

書庫はうさぎ一人が寝てもまだまだスペースがあるくらい広く、また備え付けのベットが余っていたため、うさぎ自身から書庫を2人で使うことを申し込んでいた。

 

「失礼します⋯⋯凄い!本がいっぱいあります!」

書庫なのだからそれは当たり前ではあるが、さくらは今まで見たことがない光景に興奮しているようだった。

一方うさぎはもう本棚を見慣れていて、今まで一人では物寂しいと感じていたので、そこにさくらが話し相手として来てくれたのを嬉しく思っていた。

 

「さくら、あんたってすぐ寝る系?じゃなかったらちょっと寝る前に話がしたいんだけど⋯⋯。久しぶりに再開出来たわけだし。」

 

「はい、いいですよ!」

さくらの明るい返答にうさぎは顔を緩める。

そして2人は枕を1箇所に集めて寝転びながら話すというお泊まり会スタイルで話をするのだった。

 

「そう言えばマスターは私たちが効果発動をした後驚いてましたよね?『あれ?お前たち1回消滅してからまたリスポーンするんじゃないの?』って。別に私たちリスポーンする必要はないんだけどな。うさぎちゃんそんなことしたの?」

「あぁ⋯⋯前『マスドライバー』を解決した時に遊太が思ったより心配してくれたから、その雰囲気に任せて消滅の演出を自分でしたのよね⋯⋯。」

 

「えぇ⋯⋯何やってるの⋯⋯。」

そんな他愛もないような会話が続くもうさぎが寝落ちしたことで会話は途中で途切れ、夜は開けていった。

 

 

――朝

 

「⋯⋯んっ!ふわぁ⋯⋯。朝ね⋯⋯。」

うさぎは目が覚めたようで、体を起こして伸びをする。自分が枕に突っ伏すように寝ていたことから、昨日は寝落ちしたのだなと悟る。

そんなことはさておき、うさぎはまず階段を下りて洗面所に向った。そして、顔を洗ってから歯を磨き、心構えを作る。

何の心構えかと言うと、遊太を起こしに行く為のものである。以前起こしに行った時、遊太の寝顔を見れただけではすまず自分から添い寝をし、その上遊太から自分に覆いかぶさってきてくれた。

しかもその事を遊太の責任に擦り付けることができる。うさぎにとって遊太を起こしに行くという行為は大層アドであるのだ。

具体的にどれくらいアドかと言うと、『調律』で『レベル・スティーラー』が落ちるくらいアドである。

そんなクソどうでもいい情報は置いといて、うさぎは階段を再び上り、遊太の部屋に直行した。

 

廊下の周りの様子を伺い、できるだけ音を立てないように部屋のドアを開け中に侵入する。

そして忍び足で遊太のベットにうさぎは近づいた――のだが、ベットには遊太の姿はなかった。

 

「⋯⋯あれ? 遊太がいない⋯⋯?」

まだ起きてから支度をして登校するのには時間的に早く、こんな時間に遊太が起きるのだろうかという疑問と、今日はチャンスを逃したという悲しみを感じながらうさぎはリビングへと向かった。

 

 

――リビング

 

リビングに向かうと、遊太がとても眠そうにしながら食卓の席に着いているのが見えた。

 

「おはよう、遊太。今日は朝早いのね?」

うさぎもリビングに入り、遊太の前の席に着きながら挨拶を交わす。

 

「あぁ、おはよう、うさぎ。特に別段用事はないんだけどさくらが起こしに来てくれたからな⋯⋯。お前も起こそうとしたらしいんだけど熟睡してたからやめといたらしいぞ。」

 

「へ、へぇ⋯⋯さくらが? 」

遊太の何気ない事情報告を聞いて、うさぎは自分の役割が取られたと少し妬けた表情を見せる。

 

「お待たせ致しましたマスター、ご朝食をお運び申し上げます⋯⋯あ、うさぎちゃん起きたんですね、おはようございます。今うさぎちゃんの分も持ってきますね。」

うさぎが遊太と会話をしていると、キッチンから朝食が乗ったお盆を割烹着姿のさくらが運んできて遊太の前の食卓に置いた。そういえば1階に降りてきた時からいい匂いがしてきていたことに今更気づく。

 

「さくら、おはよう⋯⋯ってこの朝食さくらが作ったの!?」

うさぎの前にも差し出された朝食はご飯、味噌汁、鮭、だし巻き玉子などいかにも和の朝食という献立で、これが家で作れて食べられるのかと2人はさくらに驚きの視線を送る。

 

「はい、料理は得意なので⋯⋯どうぞ私のことは気にせず召し上がってください。」

さくらに勧められて1口食べてみるが、味も見た目にそぐわず絶品である。

 

「なんだこれ⋯⋯すげぇ上手い⋯⋯!これ作るの仕込みとかで結構時間いったんじゃないのか?」

さくらのことは気にせず~と言われたがこの味に否が応でも興味が湧き、遊太は思わずさくらに質問をする。

 

「あまり時間はかかってないですよ? 昨晩、うさぎちゃんが寝ちゃってから数分ほど仕込みをしていたので。」

 

「私が寝たあとって⋯⋯結構私たち話してたから時間遅かったと思うんだけどよく仕込みする元気があったわね⋯⋯。」

 

「まぁ私普通の浮遊霊がカードになったものですし⋯⋯本当はあまり睡眠が必要ないっちゃないんですよね。」

さくらが照れくさそうに笑う。

 

「あれ?そういえば母さんは?今日仕事だったっけ?」

 

「はい、おば様は私が朝起きて料理をし始めたときに起きて来られて、朝食を私に任せ、急いで支度をなさって仕事に行かれました。」

 

「そうなのか、母さんも朝忙しいんだな⋯⋯。ありがとな、さくら。母さんの仕事を楽にしてくれて。」

 

「いえいえ、私が出来ることをしているまでですよ。あと朝食の余りなのですが、お弁当もございますがいかが致しましょうか?」

そう言ってさくらは綺麗に整えられた、とても余り物の詰め合わせとは思えないようなお弁当を差し出す。

 

「マジで!? 助かるよさくら、今日は学食で済ませようと思ってたから嬉しいよ。」

遊太はなんの迷いとなく差し出されたお弁当を受け取り、再び朝食を嬉しそうな顔をしながら食べ始める。

さくらがこれまた嬉しそうにその様子を見ている横で、うさぎはなんとも言えない感情を抱えていた。

 

(⋯⋯私、この家に来てから何もしてなくないかしら⋯⋯? 昨日の片付けもほぼさくらが手際よくやってくれたし、というか家事全般はさくらがやってくれそうだし⋯⋯。あ、強いて言えばおばさんの洗脳⋯⋯ってやってる事侵略者とかエイリアンと変わんないじゃない!!)

自分のこの家での存在意義を考え、ため息を着きながら朝食を完食するうさぎと、その様子をドギマギしながら伺うさくらなのであった。

 

 

「うさぎちゃん、今日どうする? みんなの手がかりとか探してみようか?」

遊太が朝食を食べ終えて学校の支度をするとちょうど登校する時間になり、そのまま余裕を持って遊太は家を出ていった。

そのため、今うさぎとさくらは家に2人きりの状況である。

 

「あぁ⋯⋯ちょっといい、さくら? ちょっと今日は用事があるんだけど⋯⋯。」

 

「そうなの? うさぎちゃん。じゃあ私は1人で行ってくるね。この街がどんな感じなのかまだあまり知らないから冒険してみたいし。」

そう言ってさくらは手を振りながら玄関を開けて外に出ていった。

 

「⋯⋯よし。私もやってみようかしら。」

うさぎはその後自分の部屋である書斎に向かい、何かを探し始める。

 

「えっと確かここらへんに⋯⋯あった!」

どうやらお目当ての本を探したようで、そのタイトルには『オベリスクでもわかる!

神の手の料理(ゴッド・ハンド・クッキング)』とあった。

そう、うさぎの用事とは、料理のチャレンジであった。

自分もある程度は料理が出来ないと家での立つ瀬がないという危機感がうさぎに本のページを捲らせる。

 

「私でも出来そうな料理は⋯⋯あ、これとかいいかしら⋯⋯?」

素材を切ってコネてあとは時間通りに焼くだけなら出来るだろう、という安易な考えからうさぎが選んだのは『ハンバーグ』であった。

とりあえず材料が無ければ何も始まらないと思い、普段着フォームにチェンジしてスーパーに向かうのだった。

 

 

――うさぎ帰宅

 

「よし、材料は買って来られたわね。晩御飯に合わせたいから⋯⋯それまでネットで『yu☆tu☆bh』とかでも見とこうかしら。」

うさぎは懐から精霊界製のスマートフォンを取り出し、アプリを起動させる。

 

「何か更新されてないかしら⋯⋯あっ、『Evil★twins』の2人が生放送してるわ!

やっぱ2人とも表情豊かで可愛いわね⋯⋯。いつか誘発娘達でデビューとかしてみようかしら?」

うさぎは冗談気味にそう言った後、自分しかいない家に寂しさを感じたりもしたが、そのまま時間を潰した。

 

ちょうど『Evil★twins』の配信が14時くらいに終わったので、うさぎは少し早いが晩御飯の準備を始めることにして、エプロンフォームに着替える。

まず玉ねぎを洗って皮をむく。そして包丁を引き出しから取り出し、みじん切りにしていく⋯⋯のだが、上手く切れない上に目に染みるのでだんだんと涙が溢れてくる。

 

「さくらはこういうのも乗り越えて料理を作っているのね⋯⋯!」

一層さくらに対しての尊敬の念が料理が進んでいくにつれうさぎの中で高まっていった。

やっとの事で切った玉ねぎと他の材料をボウルに入れて手全体を使ってコネて出来たタネを手のひらサイズに取り出し、両方の手に交互に打ち付けて形を整えていく。

 

「よし⋯⋯1回で焼くのにはこれくらいでいいかしらね。さっき温めておいたフライパンに油を敷いて⋯⋯そぉい!」

うさぎは豪快にタネをフライパンに敷き詰めていく。いくつかのタネの形が崩れた事に焦りながらも、箸でいい感じに修復をして事なきを得た。

 

「あ、そうだわ。ソースを作るのに調味料を持ってこないと。」

うさぎはフライパンの前から離れ、冷蔵庫に向かった。

 

「確かこの辺に⋯⋯。あったあった。これで全部かしらね――!?」

うさぎが求めていたものを冷蔵庫から探し出し、再びフライパンに目を向けると、そこには信じられない光景が広がっていた――。

 

 

――遊太、下校中

 

時刻は15時半ごろ、遊太は授業が終わり特に放課後に用事も無く、帰路に着いていた。

1回だけ渡とすれ違ったせいでいつものダル絡み+デュエルを申し込まれたが、ガン無視して直ぐに学校を出ていた。

 

「あれ? マスターじゃないですか。学校お疲れ様でした。」

次の角を曲がれば家というところで、後ろから声をかけられる。振り向くと、さくらが買い物袋を抱えて立っていた。

 

「あぁ、さくらか。買い物に言ってたのか? 結構買ってるみたいだけど。」

 

「はい。他の娘たちの情報を探っていたのですが、結局めぼしい情報は得られなかったので、夜ご飯と何日か分の食料を買ってきました。」

 

「またさくらが作ってくれるのか、楽しみだな。重そうだから俺が持つよ。」

そう言ってさくらの買い物袋を持とうとする。

 

「いや、マスターに持っていただく訳には⋯⋯。」

さくらは遊太に持たせるのは申し訳ないようで、買い物袋を自分の後ろ側に隠す。

 

「いいよいいよ。さくらにはご飯も作ってもらって、俺を守ってくれてるんだし、これくらいさせてくれよ。」

いやでも、という顔をしているさくらから買い物袋を受け取る。

⋯⋯思ったより重いな。やはり見た目は女の子でもモンスターだからパワーはあるんだな。

 

「あの、やっぱり私が持ちます! マスターにこんなことをさせるなんて、罪悪感が⋯⋯!」

 

「いや、大丈夫。言ってもすぐ家だしね。」

そう言ってまた前を振り向き、角を曲がる。さくらはその後ろをしょんぼりしながら着いていく。

家に着き、鍵をポケットから取り出して鍵を開ける。

ドアに手をかけた時、中から何やら声が聞こえてきた。

 

「⋯⋯ぁ! な⋯⋯こ⋯⋯!」

⋯⋯うさぎの悲鳴だ。何かあったのか? 俺は恐る恐るドアを開ける。

 

 

ガチャ

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

「う、うわ!?」

ドアを開けた瞬間、中からうさぎが飛び出してきて、俺にぶつかり、うさぎが覆い被さる。

持っていた買い物袋が手から離れる。

 

「あれ、遊太!?」

 

「いてて⋯⋯どうしたんだうさぎ、いきなり飛び出してきて⋯⋯」

俺は体を起こして状況を確認しようとする。

 

「――! まずい遊太! 家の中からアイツが来る!」

目の前のうさぎの慌てた様子から、自然と家の中に視線が移る。

すると、家の中から、1つの大きな影が、こちらに来ているのが見えた。

 

「――!? なんだあれ!?」

そしてその影は急速に近づいてきて、俺たちの目の前に現れた。

それは――ハンバーガーであった。

大きなバンズの口を開け、俺たちを噛み砕こうとしている。

 

「マスター危ない! 『タスケルトン』!!」

さくらはどこからか1枚のカードを取り出して投げると、カードは1匹の豚に変わり、ハンバーガーの口に放り込まれた。

そしてハンバーガーは投げられた豚を噛み砕き、残った骨だけをペッと吐き捨てた。

 

「危なかったです⋯⋯。もし買い物袋を私が持っていたら反応が遅れてました⋯⋯。」

さくらは胸を撫で下ろす。が、『タスケルトン』で不意打ちは防いだものの、依然として謎のハンバーガーは家の前に鎮座している。

 

「助かった⋯⋯。さくらありがとう⋯⋯。」

 

「あぁ、助かったよ。とりあえずうさぎは上からどいてくれ⋯⋯。」

 

「へ? あ、きゃあ!」

先程の悲鳴と負けず劣らずの声量とともにうさぎは俺の上から退ける。

⋯⋯なんか辛いな。

 

「ごめんなさい遊太、それより! あのデカブツは一体何なのよ!」

 

「なんですか、あの初期のイラストかつコアなファンに人気であれを主軸にしてヤバいデッキが作られてそうなモンスターは!?」

 

「あぁ、今さくらが言った通りだ。アイツの名前は『ハングリーバーガー』。レベル6でハンバーガーのレシピで降臨する、攻撃力2000の儀式モンスターだ。」

 

「なるほど⋯⋯見た目はハンバーガーでも打点はしっかりあるんですね⋯⋯。」

もっと言えばあのナリで戦士族という衝撃の情報もあるのだが、それを言うと更に混乱しそうなので言わないことにしておく。

ハングリーバーガーは口をガチガチとならし、舌なめずりならぬトマト舐めずりをしている。何食ってもトマトの味しかしないんじゃないかなあれ。

 

「というかあれはどっから湧いて出たんだ? 相当のことが無ければ家の中には出ないと思うんだけど⋯⋯。」

そう言うと、うさぎは俺から目を逸らす。

 

「あの⋯⋯。⋯⋯を作ってました。」

うさぎが聞き取れないほどの声でボソボソと喋る。

 

「は? 今なんて言った?」

 

「⋯⋯だから!! 『ハンバーグ』を作ってたのよ!!!」

 

「⋯⋯⋯⋯は?」

⋯⋯聞き取れても意味が分からないことは初めてだ。

なんでハンバーグからハングリーバーガーができる。いや、ハンバーガーを作ってたからといってハングリーバーガーができる訳ではないが、まだそっちの方が筋が通る。

 

「何よ悪い!? 私も料理する事くらいあるもん! 普通に作ってたのに目を離した隙にこいつがいきなり現れたんだから!」

 

「うさぎちゃんの料理かぁ⋯⋯。こんなデッカイの食べられるかな⋯⋯?」

 

「待てさくら、これは料理じゃない。そもそも料理は俺たちを襲ってこないしハンバーグを作ろうとしたらハンバーガーが出来ることは無い。あるとしたら錬金術だ。いやハンバーグをハンバーガーに変える錬金術ってなんだよ誰が使うんだよ。」

 

「うるさいうるさーい!! とにかく! 今はアイツを倒すことだけに集中するの!」

うさぎは顔を赤らめ地団駄を踏む。

 

「でもあのハンバーガーは儀式モンスターですし、私はマスターへの流れ弾を処理するぐらいしか⋯⋯。」

 

「だから今回は私一人で何とかするわ。ちょうど遊太も来たことだしね。」

 

「へ? 俺?」

俺に何か出来ることがあるのかと考える傍ら、うさぎは懐から奇妙な物体を取り出す。

 

「ん? うさぎ、なんだそれ。」

 

「ちょっと痛いわよ遊太! 歯を食いしばりなさい!」

そう言ってうさぎはこちらにその物体を向ける。

 

「――! いってぇ! なんだこれ!!」

その瞬間、全身に衝撃が走るのを感じ、膝をつく。歯を食いしばってどうこうなる問題じゃない。

そして、さっきまでうさぎが持っていた物体には光の刃が出来ていた。

 

「おいうさぎ! なんだよそれ! ⋯⋯まさか。」

 

「悪いわね遊太。『サイコ・ブレイド』のコストにさせてもらったわ。2000LP分よ!」

 

「やっぱりそうかよ!! お前それマスドライバー換算でカエル5匹分じゃねぇか! そっちくらった方がまだいいぞこれ!」

 

「マスター⋯⋯。ごめんなさい、今はこうするぐらいしか突破方法がないんです⋯⋯。」

 

「いや普通に『最古式念導』とかあるだろ! そっちの方がコストまだ安いじゃねぇか! しかもまだ打点足りてねぇし!」

 

「こんな近距離であんなのぶっぱなしたら家とこっちにまでダメージが来るでしょうが! 足りない分はこっちで補うの!」

そう言ってうさぎはもうひとつ謎の物体を懐から取り出し、今度は何もせずとも光の刃がついた。

 

「それは『サイコ・ソード』の方ですね。互いのライフの差分最大2000まで攻撃力を上げる装備魔法です。」

 

「じゃあなおさらサイコ・ブレイドで払うコスト1100で良かったじゃんかよ⋯⋯。」

 

「コストを制御するの私苦手なのよ!」

 

「お前それで母さんの認識妨害してたのかよ⋯⋯。」

今更心配を覚える俺の事は気にもせず、うさぎはハングリーバーガーの方を向く。

そして体の前で2つの剣をクロスさせ、そのまま相手の口目掛けて飛び込んだ。

 

「ハングリーバーガーありがとね! 私たちが喋っている間何もしないでくれて!」

そのままうさぎはハングリーバーガーを2つの刃で切り裂き、通過する。

 

「グァァァァァァァ」

何の抵抗もせず、お前そんな声してたのかよと言う暇もなくそのままハンバーガーのパーツ毎に分けられ、動かなくなった。

 

 

「⋯⋯やったっぽいな。」

 

「でもいつものように爆発とかはしませんね⋯⋯。」

 

「うーん⋯⋯。もしかしてこれ、まだ食べられるのかしら⋯⋯?」

 

「え⋯⋯絶対に食いたくないんだけど、これ。」

 

「そうですね⋯⋯。さっきタスケルトンが食べられてたのでとんこつ風味になってそうですし⋯⋯。」

 

「そういう問題じゃないわよさくら⋯⋯。」

倒したはいいものの、玄関先にこんな物を放置されたら絶対にすぐに腐ることが予想できるため、どう処理すれば良いか悩む。

 

――チャリン

 

「⋯⋯ん? なんか今音がしたな?」

 

「⋯⋯はい、しましたね。 私たちの後方からでしょうか。」

俺たちが後ろを振り向くと、家を出た前の道路に、夕日を反射して輝いている物体が見えた。

 

「誰かが小銭でも落としたのかしら。私見てくるわね。」

そう言ってうさぎは道路に向かい、俺たちの視線は自然とそちらに向けられる。

 

「これは⋯⋯『コイン』? しかもギャンブルに使われる本格的なヤツね。誰か落としたのかしら⋯⋯? ねぇ遊太、これどうすればいいかしら――って!?」

コインを拾い上げ、うさぎがこちらを見た時、うさぎの目が大きく開いた。

 

「うさぎちゃん、どうかしましたか⋯⋯?」

 

「いや、あんた達、後ろ!」

――まさか、ハングリーバーガーが倒せてなくて蘇ったのか! ⋯⋯ということよりも、衝撃的な事実がそこにはあった。

なんと、ハングリーバーガーの残骸が『消えて』いたのである。

 

「え⋯⋯? 私たちがうさぎちゃんの方へ目を向けた瞬間にどこかに消えた⋯⋯?」

 

「⋯⋯そうみたいだな。」

 

「⋯⋯どうする? 遊太。原因を探してみる? 最も、探す手がかりが一つもないみたいだけど⋯⋯。」

 

「⋯⋯いや、いい。 もしかしたらハングリーバーガーが自然消滅しただけかもしれないし、モンスターだったら先に俺たちを狙うはずだからな。」

 

「⋯⋯それもそうですね。」

どうしようも無いといっても、近くに計り知れない脅威が存在していたということが、三人の不安感を煽った。

 

 

「⋯⋯まぁ、それは置いといて! 今度こそ私が作ったハンバーグ、食べないかしら?」

 

「え? ハンバーグって、あいつの元になったんじゃないのか?」

 

「作ったタネを全部焼くわけないでしょ。何回か分けて作ろうと思ってたやつの1回目がアイツに何故かなっちゃっただけで、今度は多分どうにかなるから!」

 

「頼むからハングリーバーガーを量産しないでくれよ⋯⋯。」

 

「うさぎちゃんのハンバーグ⋯⋯! 楽しみ!」

 

「任せときなさい! あ、でも晩御飯が近いからおやつ程度にね。」

三人はうだうだ話をしながら家の中に入っていく。

30分後くらいにうさぎは食卓にハンバーグをちゃんと持ってきたが、焼き加減を間違えたようで少し焦げていた。

うさぎはその事を心配していたが、そこまで気にならなかったしむしろ美味しかった。

そもそも、愛情を込めて作ってくれた料理がまずいなんて事はあるはずが⋯⋯あることはあるし流石にモンスターは食べられないが、それでも大体美味しいはずだ。

 

何故ハングリーバーガーが生まれたのか、何故ハングリーバーガーの残骸が消えたのか。

謎は多く残ったままだが、それ以上にうさぎのハンバーグの味が俺の脳裏に焼き付いたのだった。




という訳で日常回?のようなものでした。
日常なので戦闘は非常に雑です⋯⋯。
書く期間が長かったので、ガバや誤字があるかもしれませんが、発見したら教えて欲しいです⋯⋯。
読んで頂き、ありがとうございました。
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