冴えないアラフォーリーマンが壊滅一直線の悪の組織の女幹部に転生した   作:ゔぁいらす

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おまたせしました。第十話です。




第十話 大復活!?漆黒の覇王

「やめてくれ想!モグローグは滅んだんだ!もう俺たちが戦う理由は無いはずだ!」

 

「貴様になくとも我には有るッ!シャドーVX・・・貴様を倒す為我は地獄から這い戻ったのだ!」

 

VXの悲痛な叫びを無慈悲に一蹴する黒き騎士。

彼こそはソルダークネス。

 

シャドーにとってのかつての友であり宿敵。

 

悪の手に堕ちた友を救うためシャドーはソルダークネスが正気に戻ることを信じ幾度も戦い続けたが幾多の戦いの末ソルダークネスは敗北。

彼は超古代文明モグローグの地下神殿と共に地の底へと消えた。

 

しかし彼は死んでおらずシャドーVXと相対する新たな敵アポカリプス皇国により眠りから目覚めさせられ再び敵として彼の前に立ち塞がったのだ。

シャドーに復讐を果たす。ただそれだけのために・・・

 

「どうしてだ想ッ!!やはり倒すしか無いのか・・・?くっそぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

一度ならず二度までも友を手に掛ける事をシャドーVX・・・月影瞬は躊躇しており、振りかざした必殺剣デモンカリバーの太刀筋にもその迷いが見えていて・・・

 

「初めからそう言っているだろう?王はこの世界に二人も要らぬ。それに何だ今の攻撃は!この星を賭け我と戦い仕留めた時の事を思い出せ!その時の太刀筋に比べれば今の貴様の剣はなまくら同然だァ!!!」

 

ソルダークネスは以前よりも強化されているはずのVXのデモンカリバーを硬化した左腕で受け止めると右拳を固く握りしめそのままVXを殴りつける。

燃え盛る拳はVXの水下を捉え、彼はその場で蹲り瞬の姿へ戻ってしまった。

 

「ぐ・・・・あ・・・・想・・・どうして・・・」

意識も絶え絶えになりながら友の名を呼ぶ瞬の元にジンが大急ぎで駆け寄ってくる。

「おい瞬!しっかりしろ!!クソっ!ここは撤退だ!覚えてやがれ!!」

 

ジンは捨て台詞を吐きながらポケットからけむり玉のようなものを出してばらまくと辺りは煙に包まれ、煙が収まる頃にはそこに2人の姿は無かった。

 

「フン・・・逃げたか。まあよい!今の腑抜けた貴様など我が倒すまでもない!最後に勝つのはこの我ソルダークネスだ!」

ソルダークネスは空を仰ぎ勝ち誇った高笑いを浮かべ、そんな彼の元に手を叩きながら一人の女性が現れる。

 

「流石よソルダークネス!一回負けてるとは言えかつてのVXのライバルの名は伊達ではなかったと言うことね。逃した事は今回は特別に許してア・ゲ・ル♡でも次は裏切り者の狭霧のジン諸共血祭りに上げなさい?もし失敗すればアナタもタダでは済まないわよ?分かってるわね?」

 

彼女こそ仮死状態で眠っていたソルダークネスを目覚めさせ、その上配下としてしまったアポカリプス皇国の女幹部マルデュークだ。

 

「フン・・・我はシャドーVXと戦えればそれで良い・・・」

マルデュークに皮肉交じりにそんな言葉をかけられたソルダークネスはそう言って目を逸らす。

 

「ま、良いわ。今日はもう戻りましょ。」

そんな釣れない態度のソルダークネスに少し不満げな表情をしながら彼女がは手見持っていた制御端末のようなものを操作すると二人の体は光に包まれ一瞬のうちにその場から姿を消した。

 

こうして地獄より蘇ったソルダークネスがシャドーVXの脅威として再び牙を剥いたのだ・・・!

 

 

というのが大体の筋書きで俺の目の前で当時テレビの中で起こった出来事がほぼほぼ再現されることになった。

 

しかしテレビで見ていた時と違うことが大きく分けて2つある。

まず1つはマルデュークの中身が俺、アラフォーのオッサンになっている事。

 

そしてもう1つ、ソルダークネスこと陽黒想は本来であれば人間だった頃の記憶は失っていて悪の意志に染まっていたのだがそうではなく本人には人間としての意志と記憶が蘇っているという事だ。

 

今のソルダークネスこと陽黒想は表面上は復活した悪の戦士兼マルデュークの部下として振る舞ってくれているが、俺の秘密を知った上で協力をしてくれている。

 

想が俺に協力してくれてからというもの過去にシャドーを追い詰めた経験のあるソルダークネスをマルデュークが従えた事で戦闘員達の士気は上がり、他の幹部たちは余り良い顔をしなかったもののイビール将軍だけは以前シャドーを逃したという汚名を少しばかりでも返上したと称賛してくれた。

 

そのおかげかソルダークネスもすんなりとイビール将軍に認められ、彼には上級戦士の爵位と部屋が用意され、今日はVXへの復讐心と皇国への忠誠を他幹部や将軍に見せつける為一芝居打った訳だ。

 

しかし地球とアポカリプス皇国を救うために必要とは言え死んだはずのかつての友と再び相まみえた瞬、そして自我を取り戻したのに瞬と再び戦う事になった想の姿は痛ましくて見ていられなかった。

 

 

これもアポカリプス皇国の中でのソルダークネスの信頼を勝ち取るため、そしてVXを強化するために避けられない事とは言え正気に戻った想をソルダークネスとして振る舞わせた上瞬と戦わせるなんて本当であればすべきことではない。

 

ただでさえ洗脳と脳改造をされていて自我を持っていなかったとはいえソルダークネスとして過去に犯してしまった罪を悔いている彼にソルダークネスで居ることを強いてしまったのだ。

 

「ソルダークネスの力・・・まさかこれほどとは。今回は逃したがVXも相当動揺しておる。まさか忌々しい過去に再度襲われるとはヤツも考えていなかったのであろう。その弱みを突けばヤツ勝てる可能性もあるかもしれぬ。これを利用しない手はなかろう。マルデュークよ。ソルダークネスを引き続き籠絡し、VXを倒して見せるのだ!」

 

要塞に帰還し、会議室のモニターに映し出されたソルダークネスがVXを下す瞬間の映像を見た将軍は今回の勝利に相当喜んでいたが俺はそんな状況を喜べる訳もなかった。

 

 

幹部会議を終えた俺は居ても立ってもいられず想の部屋へと向かった。

彼のメンタルも心配だし、何より今日の事を謝らないと・・・

 

「想くん、入るね?」

部屋のドアを開けると当の本人も瞬の事を相当気にしているようで彼は部屋の隅で顔を手で覆いうなだれていた。

 

瞬の姿もいたたまれないが今の彼も相当だ。

せっかく人としての意志が戻って自由になれたはずなのにこんな俺の突飛な理想にこうして付き合ってくれているのだから。

もはやそんな彼を俺は老婆心のようなもので見ていて・・・

って誰が老婆だ!?

 

やっぱりいくら協力してくれると言ってくれたとは言え瞬と戦うのは辛いよなぁ・・・

瞬にも想にも辛い思いをさせてしまっていて、これも地球を救うために必要なことではあるのだが想が正気に戻った以上2人が戦う理由なんて無い。

 

ただ、ここでのソルダークネスとの戦いがなければ彼がイビール将軍から信頼を勝ち取ることもVXの戦闘能力向上も見込めないので現状はそういう訳にもいかないのが辛いところだ。

 

「ね、ねえ・・・想君、大丈夫・・・な訳ないよね?」

「はぁ・・・僕ちょっとやりすぎちゃいましたかね・・・?ただでさえあいつに合わせる顔もないのに・・・マルデュークさん、僕、ちゃんとソルダークネスをやれてましたか?」

俺が恐る恐る声をかけると彼は自分の手を見つめて大きなため息をつく。

 

「う、うん。大体テレビで見た通りだった・・・はず。それにVXにはもう少し強くなってもらわなきゃ最悪の場合地球を守れなくなっちゃうし・・・それにしてもこんな辛い役回りさせちゃってごめん。想くんだってまだ若いしせっかく正気に戻れたんだしやりたいこともいっぱいあるだろうに・・・とりあえずお茶でも飲む?この前箱で買っといたんやつなんだけど・・・」

缶に入ったお茶を彼に差し出すと彼はそれを受け取り喉に流し込んだ。

 

「ふぅ・・・ありがとうございます。久々に戦って感じました。あいつは以前よりもずっと強くなってる。僕もあのお医者さんの治療が良かったのか調子は以前よりも良いように感じるんです。でもきっと瞬に本気を出されたら僕なんかひとたまりもないと思います。でも以前戦った時とは比べ物にならないほど手を抜いているようにも思ったんです。きっと相当僕の事を引きずってるんだろうなって・・・」

「そりゃそうだよ!瞬は最後まで君を助けるために戦ってたわけだし最後の最後であんな事言われちゃ・・・ねぇ・・・」

 

ソルダークネスはシャドーに倒されたその時

「親友を殺して得たまやかしの平和の世界で貴様はたった一人の人ならざるもの!その力に人間はいずれ恐怖し貴様を恐れるようになる!永遠に孤独のままその力に怯えて生き続けるがいい・・・!我の勝ちだシャドー!」

 

と最後の最後で呪詛めいた言葉を吐いて倒れたのだ。

 

その言葉が今も瞬、心には深く突き刺さったままなのだろう。

想も自分の意志は無かったそうだが当時の記憶は脳裏にこびりついているように覚えているらしく相当気にしているようだった。

 

「うう・・・いくら自分の意志ではないとは言えどうしてあんな事言っちゃったんだよ・・・!!ソルダークネスの馬鹿野郎!! 最低だよ僕は・・・」

「もう起こっちゃった事は仕方ないよ!それにいまの君はソルダークネスじゃなくて陽黒想でしょ?過去は変えられなくてもでもこれからは変えられる・・・はず。そのために俺に協力してくれたんじゃないのかな・・・?」

「はい・・・そうですね。なら次はどうすれば良いんですか?僕は瞬が幸せになれるなら・・・なんだってやってやりますよ」

彼の目には確かな覚悟が宿っていた。

 

人間死ぬ気になれば何でもできるなんて言うけど一回死んだという自覚の有る俺ですらそんな気にはなれない。

それどころかもう一度死ぬと考えるだけでも恐ろしいというのに想は恐らく本気だ。

きっと俺や瞬の為ならなんだってやるだろうという気概すら感じられる。

 

ただそれが過去の自分ではない自分のやらかした悪事やその他諸々を一人で背負い込んで追い詰められているようにも見えて尚に彼のことが心配になってしまうし暇さえあればそんな過去のことを思い出して暗い顔をしている所を見ていると彼に協力を持ちかけた俺まで罪悪感で押しつぶされてしまいそうになってしまう。

 

少なくともこのままだと経緯は違えど想が原作通り本当に死んでしまうかもしれないという危うさすらも感じてしまい。それはなんとしてでも回避したい。

テレビ本編では知ることができなかった本当の想を垣間見てしまったから尚更だ。

 

「ね、ねえ想くん・・・?」

「・・・なんですか?今度はソルダークネスとして何をすれば?」

うなだれる想に恐る恐る話しかけると彼は縋るようにこちらを見据える。

 

その言葉には覚悟や苦しみが滲み出していて自分の一番忌避している部分となっているソルダークネスとして振る舞う事が相当精神的に来ている事を感じさせた。

 

ここまで自分を追い詰めてまで俺に協力してくれている彼の苦しみを少しでもなんとかしてあげたい。

それに何よりこんな地球人の一般的な感性からはかけ離れた奇抜なデザインとオブジェクトまみれの要塞の部屋に閉じこもってたら嫌なことばかり考えてしまうのも仕方のないことかもしれない。

 

そうだ!

彼だって数奇な運命を辿ってしまったとは言え本来であればまだ遊び盛りの若者だ。

しかもやっとのことで自由を手に入れたのだから少しの間でもゆっくり羽を伸ばしてもらうなんてどうだろうか・・・?

 

今日は瞬も大怪我で流石にあの居酒屋には来れないだろうから鉢合わせの心配もなさそうだし!

「ちょっとお茶でも飲んで待っててくれる?」

「はい?」

 

そうと決まれば善は急げだ。

ぽかんとする彼を背にして俺は自室へ戻り、地球へ出歩く為に服を着替える事にした。

 

羽織ったマントと妙に露出度の高い衣装をベッドに投げ捨て、クローゼットの奥にしまい込んでいる地球へ降りる時用の女性もののスーツと下着を取り出しショーツを履きブラジャーを慣れた手付きで身に付けていく。

 

「よしっ!」

 

鏡の向こうで得意気に微笑むマルデュークを見た俺はなんのためらいもなく自分が女性者の下着を付けていることを自覚し、女としての生活がここまで板についてしまっていることをひしひしと感じた。

 

マルデュークになってからというものボロが出ないようにずっと彼女のフリをしながら女としての生活をそこそこ続けているうちにそんな事もいつしか当たり前になっていたのだ。

 

慣れとは本当に恐ろしいもので(マルデューク)として振る舞わずに接することのできる相手が居なければこんな事を思い返すこともなくなっていたかもしれないと考えると内心怖くてたまらなくなった。

 

「そっか・・・俺・・いつの間にか女物の下着つけることにもほぼ抵抗もなくなっちゃってたんだな・・・」

そう言いながらまじまじと鏡を見つめると下着姿のマルデュークがこちらをなんとも言えない表情で見つめ返してくる。

 

「このままだとやっぱりいつかまた中身まで女に・・・いや元のマルデュークに戻っちゃうんじゃないだろうか・・・」

 

中年男性としての自分の存在が今は自分の頭の中にしか居ない吹けば飛ぶような希薄な存在に感じてしまう。

 

もしかすると俺なんていうのは本当は実在しないマルデュークが生み出した多重人格だったり・・・とか

そんな考えがふと脳裏によぎる。

 

「ああもう!いかんいかん!想を元気付けようとしてる俺がそんな辛気臭い事考え込んでどうすんだよ!俺は誰がなんて言ったって男!マルデュークとして振る舞ってるのもここでの立場を危うくさせない為!・・・ふう・・・さっさと着替えて戻らないと・・・」

俺は脳裏によぎった一抹の不安をかき消し鏡に向かってそう言い聞かせて両頬をパンと叩いてそそくさと女性もののスーツとスカートを身に着けた。

 

そう言えばスカート履いて股が落ち着かないのも慣れちゃったな・・・

ま、まあそれはいつもほぼ裸同然の格好にマント羽織ってるだけみたいな格好だからそれよりはマシってほうがでかいんだろうけど・・・

俺はそんなことを思いながら自分の腰を撫でてみる。

 

それから化粧を少し薄いものにし直し部屋を出ようとすると

「マルデューク様・・・お帰りになっていらしたのですね。仰っていただければお召し物のご用意くらいさせて頂きますのに・・・」

アビガストがひょっこりとドアから顔をのぞかせていた。

 

「うわぁぁっ!?あ、アビガスト・・・!?いつから居たの!?」

「・・・?たった今ですが? そのお召し物を身に着けていらっしゃるということはこれからまた地球へお出かけなさるでしょうか?」

驚く俺を見て少し不思議そうに首を傾げた後彼女はそう尋ねてきた。

 

「え、ええそうよ!次の侵略作戦の下見に行こうと思ってね!今日は多分帰りも遅くなりそうだから夕食の用意もしなくていいわよ!いつも頑張ってくれてるんだから今日はゆっくり休んで頂戴。お土産も買ってきてあげるからね!」

流石に遊びに行くとは言えないので適当に嘘をついた。

 

「左様でございますか。流石はマルデューク様です・・・行ってらっしゃいませ」

アビガストはいつものように抑揚のない声でそう言って自分の部屋に戻っていったのだがその時の彼女の顔はどこか寂し気に思えた。

 

「ふぅ・・・俺がさっき言ってたこと聞かれてないと良いんだけど・・・」

俺はそんなことをつぶやきながら鏡をもう一度見直し髪を軽く整えてからメガネを掛けて部屋を飛び出し想を待たせている部屋へと向かった。

 

「おまたせ」

「あっ、マルデュークさ・・・ってなんですかその格好!?」

俺の格好を見た想は目を丸くしてこちらを(主に胸元の方を)見つめてくる。

やっぱ目線って結構分かるもんなんだな・・・

 

そう男心に思う反面彼の気持ちも分からないでもないので

「じゃーん!レディーススーツなんだけどどうかな・・・?」

そう言いつつ少々胸元を強調したポーズを取ってみせると

「あの・・・えーっと・・・すごい似合ってる・・・とは思うんですけどなんで急に着替えてきたんですか?」

想はそんな俺から露骨に目を逸らしながら言った。

 

「なんでってそりゃ変装だよ変装!」

「へっ?それで変装になるんですか?顔も出てますし」

想はきょとんとして当たり前のことを口にする。

 

たしかに彼の言う通りで変装と言うにはバレバレなのだが本編では顔を隠さずとも服を着替えるだけで変装として成立しているどころかこの状態で瞬と会ってもバレない程には変装として機能している。

 

このメガネが凄いのかこの世界の住民が番組の性質上ご都合主義的に変装に鈍いだけなのかは分からないがこれで別人だと言い張れるんだから凄いものである。

 

「そうなんだよ。俺も正直心配だったんだけど正体が知られない限りはこのメガネをかけるだけでなんとかなるっぽいんだよ。こんなバレバレの変装なのに誰にもバレないんだから不思議なもんだよね」

「そ、そうなんですか・・・でも何故女物のスーツを?どこぞの会社にでも潜入してなにか裏取引とか工作でも?それを僕に手伝え。と・・・」

想は全く理解できていないような顔をしてそう尋ねてきた。

 

一応一年くらい前まで悪の帝国の次期首領をしていただけあってそういう方に思考が向くらしい。女幹部が変装してやることと言えばその辺が関の山だろうし・・・

 

「しないよそんな事!もし想くんが良ければなんだけどこんなとこに引きこもってたら嫌なことばっかり考えちゃうかもしれないし・・・たまには外出でもどうかなーって。せっかく洗脳も解けたんだしパーッと気晴らしでもさ」

「外出・・・ですか?周り何もないどころかここって宇宙要塞なんですよね?」

「うん。だから地球に降りようかなって。こんなのがあって俺も暇な時はこっそり降りてるんだけど」

俺はそう言って操作端末を取り出すと彼は不思議そうにそれを見つめた。

現在で言うところのタブレット端末のようなものだが30余年前の世界を生きている彼にとっては訳の分からない代物だろう。

 

「何です?その光ってる板みたいなの。さっきも弄ってましたよね?」

「これ地球に一瞬でワープできる優れものなんだよ!他にも書類作ったりその他もろもろこれ一台で出来ちゃうんだ!それにホントは地球行くのに作戦許可書とか要るんだけど秘密裏に俺の部屋に小型の転送装置が用意してあるやつでさ。俺の部屋から地球までひっそり行けちゃうって訳!」

「い、良いんですかそんなの・・・表面上は悪の帝国の幹部なのに街をほっつき歩いたりして・・・それに僕こんなですしお金も何も持ってないので・・・」

俺の説明を聞き、わずかに彼の瞳に光が戻ったのもつかの間、遠慮したようにそう言って彼は俯いてしまった。

 

「良いの良いの!一応変装もしてるから大丈夫!もし想くんが良ければだけど服もボロボロだしなんか新しいの買ったり美味いもの食ったりしてパーッとやろうよ。それぐらいしたってバチは当たんないと思うよ?もちろん俺の奢りだからお金のことは気にしないで!それに何かあったときは俺だって一応女幹部やれてるくらいには戦えるし何より想くんが守ってくれるでしょ?ま、時期作戦まで時間もあるしそんな事無いだろうけど!だから今日くらいはそんな事忘れてさ」

「悪いですよ僕なんかの為に・・・それに散々人々の平和を脅かしていた僕に今更そんな資格・・・」

「僕なんかなんて言わない!計画の為とはいえ無理してソルダークネスを演じてもらってるんだし少しくらいは俺にもいい顔させといてよ!それに想くんはただモグローグに利用されてただけなんだからそれはそれ!今の君はソルダークネスじゃなくて正真正銘の陽黒想でしょ?」

「そ、そうですけど・・・」

「悪いのはあの時のソルダークネスであって今の想くんじゃ無いんだからそんな必要以上に気負いしちゃダメだよ!せっかく自分の意思を取り戻したんだしやりたいことをやる資格だってあるはずだよ?ホントはもっと自由にさせてあげられれば良いんだろうけど俺に協力してもらってる手前そういう訳にはいかないからさ・・・せめて作戦の時以外はソルダークネスじゃなく想くんとして過ごしてほしいし俺も極力そうできるように頑張るから!これも俺の押し付けかもしれないけど今日は付き合ってよ!もし嫌だったら今度からは断ってくれたら良いからさ」

「は、はぁ・・・それじゃあ・・・お供します」

俺の気迫に負けたのか立場上俺の頼みを断れなかったのか彼はゆっくり頷いた。

 

「そうと決まれば早速行こっか!」

「えっ、行くって?ここからどうやって地球へ?」

「まずは装置のある俺の部屋!」

その言葉を聞いた途端先程まで暗い顔をしていた想の顔が真っ赤に染まる。

 

「マママママルデュークさんの部屋!?そそそそそんな女の人の部屋なんて・・・」

ああそっか。久々に女として振る舞う必要もない相手だから気を抜いてたけど今は俺、女の体なんだよな・・・

そりゃ想だって年頃の男子なんだしいくら中身がオッサンとは言え女の人に今から部屋に来いなんて言われたらそんな顔にもなるか・・・

 

「ご、ごめん・・・!俺一応男なんだけどそうだよね・・・確かに部屋は紛れもなく女性 (マルデューク)の部屋だし・・・でもこっそり地球に降りるには俺の部屋の転送装置を使わなきゃいけなくて・・・」

「いくら中身が男だって言われても異性の部屋なんて入ったこと無いんですよ!?」

想は顔を真赤にして言った。

 

そんなの俺だって無いよ!

いや・・・今はそこに住んでるようなもんなんだけど・・・

「良いから良いから!別になんてこと無いし想くんが想像してるような女の子の部屋じゃないからさ!俺だってて未だに落ち着かないもん」

「で、でも・・・」

「ほら行くよ!こんなとこでくすぶってても何も良いこと無いんだしさ!」

俺はたじろぐ想を半ば強引に部屋へと連れて行く。

 

「ここが一応俺の部屋なんだけど・・・別に見られて困るものは無いはずだから気にしないでね」

「そ、ここがマルデュークさんの・・・うわぁ・・・」

想は部屋をキョロキョロと見回し毒々しいショッキングな色を基調とした内装や奇抜なデザインの家具を見て面食らったのか若干引いているのがわかった。

 

そんな彼を尻目に転送装置が隠してある場所を開け準備をしていると

「ま、マルデュークさん・・・これ・・・」

想は顔を赤くして指をさす

「あっ・・・!」

その先にはさっき脱ぎ捨てた衣装がベッドにそのまま置いてあり、さっきまで着ていて見られてもなんともなかったはずなのに脱ぎ捨てられたそれを見られた俺は何故か急に恥ずかしくなってしまい大急ぎでそれをクローゼットに仕舞った。

 

「ごっ、ごめんっ!!大急ぎで着替えてきたもんだからさ・・・」

「こ・・・こちらこそなんかすみませんっ!」

お互いぎこちなくぺこぺこと頭を下げ、気まずい空気が部屋に流れる中俺は端末を操作し転送装置を作動させる。

 

座標はもちろん東京の繁華街で端末の起動ボタンを押すと装置が作動して光に包まれた。

 

眩しい光が収まると俺たちは目立たない路地裏に立っていてそこから外へ出るとギラギラと街明りの輝く東京の繁華街が広がっていて・・・

 

「うわぁ!ほんとに街まで移動してきたのか・・・!?なんかこの景色ももう懐かしいような・・・あっ、ごめんなさい・・・流石にはしゃぎすぎですよね・・・」

先程までの重苦しい表情はどこへやら想は久々の娑婆にテンションが上ったのか目を輝かせてあたりを見渡していた。

 

彼にとっては戦いや破壊を目的にせず人の集まる街に繰り出すなんてソルダークネスになる前以来だろうからそんな気分になるのも当たり前なのかもしれない。

それならば久々のそんな街の空気を今日は彼に存分に堪能して欲しいと俺は思った。

 

「いいよそんなの気にしなくても。それじゃ色々買いたいものもあるし行こっか」

「は、はい・・・!お供します」

「それじゃあまずはそうだな・・・あそこで!」

俺はアビガストに何かプレゼントしようとひとまず女性物の服屋に入ることにした。

 

「えっ、ここですか?」

「うん。アビガストに服でもお土産に買って帰ってあげようかなって。あっ、あのメイドの子ね?いつもお世話になってるから」

「あの無表情な子ですか。たまに見かけますけどあの子とはどういう関係なんですか?」

「あの子はマルデュークの唯一人のメイドでね、めちゃくちゃ健気な良い子なんだけど俺の知ってる限りだとマルデュークは何か気に食わないことが有ったら暴力を振るったりしてて最終的には見限られちゃうんだよね。だからそうならないように今頑張ってるってとこなんだけど・・・」

「前にちょっと話してくれてた子だったんですね。」

「散々酷いことをしておいて今更優しくしたって許されるなんて思ってないけどあんな良い子をいじめるなんて我ながら許せないしあの子にも幸せになって欲しいからさ・・・」

「そうだったんですか・・・」

想は俺の話を黙って聞いてくれたが、今更優しくしても許されるとは思っていないという言葉に自分を重ねたのかその表情は再び暗くなっていた。

 

「ごめんごめん暗い話しちゃって・・・・あっ!この服可愛くない!?どうかな?」

俺は必死に話題を変えようと服を何着か彼に見せる。

「えっ、それですか?良い・・・んじゃないですかね?」

「そっか!想くんもそう思う?それじゃあこれは?あーこっちも可愛いー!!ねえねえこれはどうかな!?」

 

しばらくそんな事を続けていると想も徐々に乗り気になってきてくれたのか

「僕はそれよりこっちの方があの子なら似合うと思いますけどね」

と言いながら遠慮がちにチェック柄のワンピースを指差す。

 

「ほうほう想くんはこういうのが好みなんだ」

「ち、違いますよ!あくまであの子に似合うかなって思っただけで・・・」

「ふぅ〜ん。俺も似合うと思う!あっ、そうだ!ついでに俺の服も選んでくれないかな・・・?」

「えっ!?マルデュークさんのですか?」

「一応これでも今は地球に潜入してる悪の女幹部ですから。人を隠すなら人の中っていうでしょ? それならおじさんより感性が若い想君が気に入ったファッションのが自然に見えるかなーって・・・」

「そ、そういうものですかね・・・それじゃあこれとかはどうでしょう?」

「へぇ〜・・・想君は俺にこういう服着てほしいんだ?」

「ち、違います!い、いや違くはないですけど・・・」

「嘘嘘冗談だよ。でもせっかくだし試着してみようかな・・・覗いちゃダメだからね?」

「覗きませんってば!」

俺達はそんな事を言いながら暫くの間服選びを続けた。

 

そして気に入ったものを購入し、大量の紙袋を両手に店を出る。

「ふぅ〜いっぱい買っちゃった!ごめんね時間かけちゃって!ついでに俺の服まで見てもらっちゃってさ!」

「い、いえ・・・ところで言っていいかわからないし失礼かもしれないんですけど・・・」

「ん?どうしたの?」

「マルデュークさんってなんか思ったよりその・・・女性としての生活満喫してるんですね」

「えっ・・・?そう・・・かな・・・?」

想に言われて思い返して見ると男の頃なんて会社に着ていくスーツ以外で服に気を使う気力も金も無かったし着れればそれで良いくらいにしか思っていなかったがいつの間にかそんな服選びすら楽しく感じているのは女性的な感性なんだろうか・・・?

それに気がつけばなんのためらいもなく女物の服を選んでたし、そんな所を見てたらそうも思うのかな・・・?

 

「だ、だってせっかくこんな美人になったんだし多少はさ・・・」

「そんなもんなんですかね?」

「俺も良くわかってないんだ・・・まだ女の体で慣れないこともあるけど当分は多分このまんまなんだし二度目の人生!少しは楽しまなきゃ損でしょ?」

「・・・僕も少しくらいははそう思えるよいになれれば良いんですけどね・・・この身体のこと」

俺がそう返すと想は少し表情を暗くしてエンペラージェムが埋め込まれている自分の右腕を見つめる。

 

俺も想も突然望みもしない形で今までとは違う身体に変えられてしまった事は広義的には似たようなものなのかもしれないけれどその言葉からは彼にはもう二度と普通の人間には戻れない上一度地球を支配し悪事を働いていたという過去が重くのしかかっていることが感じられた。

 

「ご、ごめん・・・!そういうつもりで言った訳じゃなくて・・・」

「いえ僕もそんなつもりじゃなく・・・!ちょっとマルデュークさんの前向きな事が羨ましくって・・・せっかくこうして自我も取り戻せた訳ですしこの身体になってよかったなーって思えることが一つぐらい僕も見つけられたら良いなって思って・・・」

想はそう言って右手をぎゅっと握りしめる。

気づけば俺はそんな彼の拳に手を重ねていた。

「うーん・・・前向きなんかじゃなくて単に脳天気なだけかもしれないけど想くんにもきっとあるよ!あんまり当事者じゃない俺が言うのも無責任だけど・・・一人で見つけられなさそうなら俺も一緒に探すから!ね?」

「へっ!?そそそそうですね!!!よーし僕も頑張っちゃおっかなーなんちゃって・・・ははは・・・」

手を重ねられた想は顔が火を吹くほど真っ赤になり俺から目をそらして何かをごまかすように笑った。

 

「それじゃあ次は想くんの着替えの服でも見に行っこっか」

「そ、そうですね・・・お願いします」

 

それから俺は想と共に街を歩きながら彼の着替えやらを何着か見繕い、その後要塞には置いていないような生活用品なんかを買いながら繁華街を歩き、その間今まで見れなかった想の年相応な若者としての横顔を俺はいつしか微笑ましく見つめていた。

 

そして要塞で自由時間の娯楽の少ない戦闘員達に遊んでもらえるようなお土産なんかを買いにおもちゃ売り場へ向かうと・・・

 

「あーっ!ドラゴンダンジョン!! 3!?もう3作目なんて出てたのか・・・」

想は店に入るなりゲームのポスターを指さして声を上げた。

そのゲームは当時社会現象にもなり俺も店におばあちゃんと並んで買いに行った懐かしのゲームだった。

 

「ほんとだ懐かしいなぁ・・・想くん、ドラダン好きなの?」

「好きも何もずっと遊んでました!2作目が出るって聞いて楽しみにしてたんですがモグローグに拉致されて改造されちゃったもんで遊べなくて・・・」

彼のその言葉には悔しさがにじみ出ていた。

 

「そうだったんだ・・・じゃ、本体ごと買っちゃおっか!」

「えっ、良いんですか?こんな高いものを・・・?というかさっきから結構色々買ってますけどそのお金はどこから?まさかどっかから奪って・・・それか偽造・・・ですか?一応悪の帝国・・・ですもんね」

「違う違う! 俺としての記憶が目覚める前のマルデュークが集めてた宝石とか売ったら地球では希少な鉱石だとかなんとかでめちゃくちゃ高値で売れただけだから!!」

彼は突然表情を暗くして猜疑心の眼差しを向けてきたので俺は必死に弁明する。

 

「そ、そうなんですか・・・?それにしたって色々生活用品や服なんかも揃えて頂いて流石に趣味のものまで買ってもらうのは・・・第一僕はゲームなんてやって良い身分じゃないですし・・・」

よかった。なんとか信じてくれたみたいだが、彼は遠慮がちに言った。

やはり自分の過去の所業や今の境遇からゲームなんてものにうつつを抜かせるような身分じゃないとでも思ってるんだろうか・・・?

そんなことないよ!

君はまだまだ若い遊び盛りなんだしもう好きに遊べるんだから遊べるうちに遊んどかないと!!

 

「大丈夫大丈夫!せっかく遊べるようになったんだから遊ぼうよ!内容に関しても俺が保証するから!あっ、そうなるとテレビも要るか・・・一応モニターはあるけどAV端子には対応してないだろうし・・・いや科学者担当に話し通してみようかな・・・・とにかく買おう!俺も久々にやりたいし!!」

 

そう説得するとその言葉に彼は食いつき少し表情が明るくなる。

「えっ?マルデュークさんもドラダン好きなんですか?」

こういう時は共通の話題があったほうが話も弾むよね。

 

会社で新入社員の後輩に指導するように言われてその子がゲーム好きって言ったもんだからゲームの話を切り出したもののモンパズやらRGO?やら訳の分からないスマホゲーやFPSの話をされた上

 

「ドラダン・・・?ああ有名っすよね。でも僕はやった事ないっす。世代じゃないですしRPGってダルいじゃないっすか」

なんて言われたのがめちゃくちゃショックだったんだよなぁ。

 

それから結局会話が続かずなんか気まずくなっちゃったんだけど・・・

しかし彼はそんなスマホネイティブ世代とは違う!一応ゲームに関しては黎明期も黎明期でほぼ同世代だろうし自慢じゃないが生まれて初めて買ってもらったゲームがドラダン3だったくらいだ。

 

それならここは一気にその話に引き込んでしまおうじゃあないか。

ソルダークネスにされてしまったせいでできなかった事が目の前にあるというならそれを再び我慢させる訳にはいかない。

 

「そりゃもう世代どストライクだからね!個人的にはVが名作でさぁ・・・ちょっと前に映画化されたんだけどあれにはがっかりしたんだよなぁ・・・それとⅧも旧来ファンには叩かれてるけど個人的には好きで・・・」

「ちょっと前・・・?5・・・?8・・・!?ドラダンって僕がソルダークネスになってる間にそんな出てたんですか?」

俺の言葉に想は混乱したように首を傾げる。

しまった!熱がこもり過ぎて普通に俺が死ぬ直前 (202X年くらい)の雰囲気で喋ってしまった!!

今のこの世界は大体1988年なんだし知らなくて当然だよな・・・

 

「あっ、ごめん・・・これから30年くらい後の話だから忘れて・・・今は3が最新だから・・・」

「そ、そうですか・・・というかドラダンってそんな続いてるんですか!?ほんとにマルデュークさんって未来から来てたんですね。」

「信じてなかったの?」

「い、いやそういう訳じゃなく今のでちょっと実感したというか・・・」

「どこで実感してるのさ・・・ま、特に証拠も出せなかったしね。これで俺の中身が今より少し先の未来の中年男性だって分かってくれた?」

「え、ええまあ少しは説得力が出たかなって・・・それで・・・ほんとに良いんですか?ゲームなんか買ってもらって」

「良いって良いって!あの要塞には娯楽が足りてないからね。それじゃあ買ってくる!」

俺はドラダン3とゲーム機を手に取りレジへ向かう最中、ドラダン以外にも昔懐かしのゲームソフト達がそれも箱がピカピカの状態で並んでいて目移りしてしまう。

 

いやぁ・・・当たり前なんだけど昨今ではレトロゲームなんて呼ばれてるゲーム機やらソフトがこんな綺麗な状態でズラッと並んでるのは壮観だなぁ・・・

そんなことを思いながらレジまで歩いているうちに気がつくともう数本の名作ゲームソフトを手にとっていた。

 

それから無事ゲームやその他ボードゲームをいくつかを買い、二人で大荷物を抱えて店を出ると想は今まで見たこともないほど満面の笑みを浮かべていて、俺たちは完全に意気投合してしばらくゲームの話に花を咲かせしながら街を歩いた。

 

このゲームも良く遊んだとか瞬と一緒にやって楽しかったが彼が負けたらへそを曲げたりもしたなんて他愛のない思い出話をしているうちにマルデュークは知らないはずの俺自身が好きなものについて胸を張って語れるという事が今の俺を俺たらしめる確かなものなんじゃないかと思えて少し安堵することもできた。

 

想を元気づけるためのはずだったけど結果的に俺も楽しかったし少しは気が楽になったな・・・

 

そして買い物も一通り終わり俺達はベンチに腰掛けて一息ついていた。

 

「ふぅ・・・結構買い込んじゃったな・・・色々付き合ってもらってごめんね。荷物も持たせちゃって」

「いえいえ!僕も楽しかったですし!こんな体ですしこれくらい軽々持てますからそこはしっかり使ってやってください!それに何よりもう遊べないかと諦めてたドラダン3をゲーム機ごと買って頂けるなんてなんとお礼を言えばいいか・・・」

「良いの良いの。俺も見てたらついでに当時遊べなかったヤツとか名作タイトルとかも買っちゃったしそれも帰っていっしょにやろうよ!作戦の担当が回ってくるまで時間あって結構暇だからさ!」

「そうなんですか。良いですね!」

その瞬間、俺の腹がぐぅと音を立てた。

「・・・っとその前に良い時間だし夕飯でも食べていく?何か食べたいものある?」

俺が尋ねると彼は少し考え込んだ後・・・

 

「食べたいものですか・・・そうですね・・・ラーメンはこの間頂きましたし・・強いて言えば焼き鳥・・・いや、ワガママを言わせてもらうならステーキ・・・とか」

「良いね!でもその前にこの荷物だけ先に要塞へ送っちゃおうか。これだけの大荷物持って入られたら店も迷惑だろうし」

「はい!」

 

夕飯の前にひとまず買った大荷物をなんとかしようとはじめに訪れた路地裏に戻って転送装置を作動させ荷物を自室へと転送する。

路地裏に積まれた大荷物が一瞬で綺麗さっぱりなくなったので想もその光景を見て驚いていた。

「本当に便利ですねそれ・・・」

「いやぁアポカリプス皇国のテクノロジー様々だよ。これでスッキリしたしステーキ食べに行こっか!」

「はいっ!ってあれ?これ送り忘れてないですか?」

そこにはブティックのロゴの入った紙袋が一つぽつんと置かれていて中にはサイズの小さめなレディースの服が何着か入っている。

 

「これ、アビガストのお土産に買ったやつだ。大量に転送したからあぶれちゃったのかな・・・ま、これくらいなら手で持てるしそろそろご飯にしようか。」

 

紙袋を手に持って路地裏を出た瞬間・・・

 

「おーい!マリ子さーん!!!」

そんな聞き覚えのある声が遠くから聞こえてきた。

 

その方向に目をやると遠くで体中包帯やらガーゼをグルグル巻きにした瞬がこちらに向かって走ってきている

 

「げぇっ!瞬!?」

 

どうしよう・・・!俺一人だったらこのまま話聞いたりしてあげるんだけど今は隣に想も居るし・・・

 

まずい・・・!

瞬に他の男と・・・それもよりによってソルダークネスと一緒に居る所をタダでさえ身体もメンタルもボコボコな今の彼に見られるのは非常にまずい。

 

「えっ、瞬!?瞬がなんでこっちに向かって来てるんですか!?ちょっと流石にまだ僕には合わせる顔が・・・」

俺の言葉で想も瞬に気づいた様で想も路地裏からひょっこりと顔を出して瞬の姿を確認すると路地裏に身を引っ込めた。

 

「どどどどどうしよう瞬にこんなところを見られると色々まずいぞ!!」

「ぼ、僕だってまだ心の準備が・・・!!この展開マルデュークさんならどうなるか知ってるんでしょ!?どうなるか教えて下さいよ!!」

俺も想もパニックになり路地裏であたふたとしているがその間にも彼はこちらに近づいてくる。

 

「そ、そんなの知るわけ無いよ!だって俺がテレビで見てたマルデュークは想と買い物なんてしてなかったし・・・!!」

「じゃ、じゃあ逃げますか!?この状態ならマルデュークさん一人担いで逃げるくらい・・・いや転送装置を起動させて要塞へ帰っちゃいましょうよ!!」

「これから転送装置を起動させてもあのスピードじゃ間に合わないどころか俺がマルデュークだってバレちゃうかもしれないし・・・何か・・・何か無いか!?」

二人でその場であたふたとして鞄の中をゴソゴソと探ったりしてみる。

 

そこでカバンに何やら四角いものが入っている事に気づき取り出すとそれはいつぞやの生物置換装置だった。

 

「そうだ!」

「えっ、マルデュークさんなんか思いついたんですか!?アイツも一応改造人間ですから逃げても余裕で追っかけてくると思いますけど・・・」

「逃げないよ。でもこの状況を切り抜けるためにちょっと我慢して・・・ごめんっ!!」

「えっ、ちょっ・・・何を!?うわーっ!!!」

俺が装置を操作すると想の悲鳴がこだまし、彼を光が包んだ。

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・マリ子さん!やっぱりマリ子さんだ!こんな所で会うなんて奇遇ですね!

 

瞬はそこら中怪我だらけの姿で息を上げながら俺たちの居る路地裏にやってきて俺を見るなり目を輝かせていた。

 

なんでこんなところで瞬と出くわしちゃうんだよ・・・

「そ、そうね・・・」

「所でそちらの女の子は?」

俺の後ろに想の姿はなくその代わりに黒髪の少女が顔を真っ赤にしてひょっこりと顔を出している。

 

「え?ああ・・・この子は私の姪っ子で・・・ほら挨拶して?」

「こ・・・こんばんは・・・」

少女は恥ずかしそうにペコリと頭を下げた。

 

「マリ子さんの姪っ子さんかぁ・・・こんばんは!俺はマリ子さんのその・・・お友達の月影瞬って言うんだ。よろしくね!」

瞬は流石子供の相手をし慣れていると言うべきか少女の前でしゃがんで視線を合わせるとニッコリ笑みを浮かべて見せた。

 

そんな彼の顔を見た途端少女は俺の裾を引っ張ってくる

 

「瞬さんごめんなさい。ちょっとこの子ちょっと人見知りが激しくて・・・なんか私と話したいことがあるらしいから少し待っててくれるかしら?」

俺は適当な理由をつけて少女に引っ張られ瞬と距離を取った。

すると・・・

 

「マリ子さんってどういうことなんですか!?それになんか瞬といい感じっぽいですけど・・・一応敵同士なんですよね!?」

彼女は耳元で小さな声でそう言った。

まさかこんなところで出くわすとも思ってなかったし瞬と俺との複雑な関係についてはもう少し時間を置いて話そうと思っていただけに完全に計算外だ。

一体どこから話せば・・・いや、瞬の前で話すわけにはいかないし・・・

 

「これには色々理由があって・・・詳しいことは後で落ち着いてから話すから今は俺の姪っ子って事で話を合わせて・・・!」

「は、はい・・・でもなんでこんな姿に変えたんですか!?よりによって女の子の姿なんかに・・・!!」

少女はそう言いながら落ち着かないように自分の胸と股間に手を当て、内股でもじもじとしている。

 

「他の生き物とかよりマシでしょ!?しかもちょうどアビガスト用に買った服のサイズも合ってるみたいだし・・・」

「うう・・・久しぶりに目が覚めたと思ったら急に女の子にされた上女物の服まで着させられるなんて・・・」

「と、とにかく説明は後!後でしっかり元に戻すから今は話を合わせて・・・!」

「わかりましたよぉ・・・」

少女は目に涙を浮かべながらも渋々そう言った。

 

何を隠そう彼女・・・いや彼は想その人なのだ。

 

彼と瞬を今対面させる訳にもいかないのでもあの時の瞬同様に生物置換装置女の子になってもらった。

これで彼の正体に瞬が気づくことはないだろうし幸い転送し忘れていたアビガストのお土産に買った着替えが手元にあったので大急ぎで着替えさせてなんとか瞬と出くわすまでには間に合ったと言う訳だ。

 

こうして俺と想とのマルデュークとソルダークネスであることがバレてはいけない瞬との夕食が幕を開けるのだが・・・

俺は・・・そして想は無事乗り切ることができるのだろうか?

 

つづく

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