ヴィランのお話   作:斗掻き星

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また少し涙を浮かべて。

(ヴィラン)に襲撃されたのに、よくやるわねぇ」

 

雄英体育祭。

私は日本最大のイベントの一つを、ベルさんとテレビで見ることにしていた。

 

「面白いんですか?私初めて見ます」

「んー、まぁ結構面白いわよ」

 

(ヴィラン)たる私が雄英体育祭を見るのも変な感じがしたが、そもそもヒーローに不満がある訳でもない。私の顔を見て捕まえようとしたヒーローは何人かいたが、彼らはそれが仕事なのだ。文句はない。殺してしまえばそれで良いわけだし。

そんな訳で雄英体育祭を見るのに抵抗はなかった。

 

 

 

雄英体育祭が始まった。

今年の注目株は一年A組らしい。(ヴィラン)の襲撃を受けたのがこのクラスだった。

正直一人くらい駄目になっててもおかしくないとニュースを見た時思ったが、流石にヒーローを志すだけあって心身ともに強いのだろう。

選手宣誓をした男子は、俺が一位になるとまで言っていた。

これは相当なメンタルがなければできないことだと思う。

 

競技が始まった。

 

「ん…?」

「どうかした?」

「いえ…」

 

人が多い上に画面が目まぐるしく切り替わるので定かではないが、知った顔が見えた気がした。

 

 

 

第一種目が終了し、順位が表示された。

先ほどのはやはり気のせいではなく、知った名前が表示されていた。

 

十六位、麗日お茶子。

 

「十六位の女の子、花を一緒に選んでくれた友達です」

「そうなんだ!じゃあ私もその子を応援しようかしら」

 

画面越しではあるけれど、精一杯応援しよう。

頑張って、お茶子。

 

 

 

お茶子はなんとか第二種目を突破。

途中危ない所もあったけど、無事最終種目に駒を進めた。

 

最終種目は一対一での戦闘。

場外、行動不能、降参のいずれかで敗北になるようだ。

 

お茶子の対戦相手は爆豪勝己という子だった。

確か不遜な宣誓をしていた子だったと思う。相当な悪人面をしていた。

 

 

 

試合が始まった。

お茶子は低姿勢の突進で距離を詰めるが、爆豪勝己は身体能力が優れているようで、簡単に迎撃されてしまった。お茶子は物に触れて浮かせる個性であるようで、触ってしまえば試合を決めることができるらしい。何度も距離を詰めようとするも、すべて失敗に終わっていた。

 

お茶子は戦闘能力じゃ敵わないと理解していたようで、策を練っていた。

大量の瓦礫を宙に浮かせ、一斉に落とす作戦。落下を制御できないなら自分も危険な捨て身の策だった。

 

その策も、大規模の爆発によって無に帰した。

 

お茶子は必死に戦っていた。

格上に臆することなく挑み、何度吹き飛ばされようと立ち上がり。

倒れて動けなくなるその時まで、目に闘志を絶やさなかった。

 

お茶子は負けた。

負けはしたが、私はどうしようもなくお茶子を称えたくて、立ち上がった。

 

「行くの?」

「はい。行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

 

 

体育祭会場の人が少ない所に出て、周りを見回していると、丁度お茶子が選手控室から出てきた。

忍び込んだはいいものの、肝心のお茶子がどこにいるか分からなかったので、運が良かった。

 

「時雨ちゃん!?」

「お茶子。試合見ました。凄かったです。」

「あはは…恥ずかしいとこ見られちゃったな」

 

お茶子は恥ずかしそうに頭をかいて言った。

 

「恥ずかしくなんてないです。かっこよかったですよ」

「ホンマに?」

 

本当に、お茶子の勇姿は私を感動させた。

 

「ええ。お茶子はきっと、素敵なヒーローになります」

 

既に悔しさで濡らしたであろう目に、また少し涙を浮かべて。

 

「うん。私、立派なヒーローになるからね!見ててね、時雨ちゃん」

 

そう言ったお茶子の顔は、露に濡れる朝日のように輝いていた。

 

 

 

お茶子が私を知った時、どう思うのだろう。

ふとそんな事を考えてしまった。




誰しも秘密を抱えて生きているのです。

また暫しの時間を頂戴します。
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