ヴィランのお話   作:斗掻き星

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ネジの外れた狂人の類だろう。

「時雨、お前この動画見たか」

 

そう言って義爛が見せてきた動画は、今巷を騒がせている動画だった。

 

俺を殺していいのは、本物の英雄(オールマイト)だけだ!!

 

曰く、ヒーローとは見返りを求めてはならない。

自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない。

それがヒーロー殺しの主張だった。

 

これに感化される人間もいるようだが、私は正直理想論にすぎると思った。

自分を殺して名も顔も知らぬ大衆を助けるなんぞ、ネジの外れた狂人の類だろう。

現代社会にそれを求めれば、みるみる秩序が崩壊するに違いない。

 

「見ました。それで?」

「ヒーロー殺しステインの所属した組織、(ヴィラン)連合が今急速に力を伸ばしてる」

 

(ヴィラン)連合。確か雄英を襲って返り討ちにされていた連中だ。

仮にも高名な(ヴィラン)たるヒーロー殺しがそんなしょうもない所に属していたとは。

 

「それで?」

「お前、(ヴィラン)連合に入らねぇか?」

 

義爛の問いかけ。

普段は絶対こんなことは言わない。客だ仕事だ、と投げつけるばかりだった。

 

つまりこれは仕事ではなく、義爛のお願い。

ならば。

 

「お断りします」

 

聞いてやる理由はない。

 

 

 

「は、そうかよ。有能な人材紹介して顔でも売ろうと思ったんだがなぁ」

 

あいにく私はどこかの組織に属するつもりはない。

義爛に従っているのもその方が楽だからだった。

 

「私は別に現状に不満はありません。社会のために戦う、なんてそっちの方が面倒です」

 

組織に属せば義務と責任が生じる。表社会で生きるのと大差はない。

私を縛っていいのはベルさんだけだ。

 

「そうかい。じゃあ別の奴を探すとするかね」

「そうしてください」

 

しかし義爛がそうまで躍起になるのは、少し興味をそそられた。

 

「そんなに有望な組織なんですか?」

「まぁあくまで勘だが、あそこは多分後ろにやべぇのがいる」

「やばいの、ですか」

 

もし、依頼があるなら受けてみてもいいかもしれない。

私の(ヴィラン)連合への認識は少なくとも、しょうもない連中からは格上げされた。

 

 

 

 

 

俺は結局(ヴィラン)連合にはトガヒミコと荼毘を紹介した。

どちらも戦闘能力は高い。加えてトガヒミコは隠密に長け、荼毘は頭が回る。

イカれてはいるが、ここなら役に立つ。イカれてるのは皆同じだしな。

 

肝心のリーダー、死柄木弔は少々不安になる仕上がりだった。

言葉を選ばずに言うなら、ガキ。黒霧が彼を諫めて組織を回してきたのだろう。

是非ともご立派に成長して貰いたいものだと、彼の後ろ姿を見てそう思った。




純粋な善意で人に手を差し伸べられる人間は、どれだけいるのでしょうか。
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