ヴィランのお話   作:斗掻き星

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無辜の市民には感動的に見えただろう。

日本中に激震の走るニュースが流れた。

神野壊滅。

雄英生誘拐事件に始まり(ヴィラン)連合のアジト制圧成功。

それらに立て続けて流れてきたのが、神野壊滅のニュースだった。

 

たった一人の(ヴィラン)が街を壊し、平和の象徴(オールマイト)と互角以上に渡り合っていた。

あれが(ヴィラン)連合のトップだろうか。だとしたら義爛の勘は大当たりだ。

 

ふと横にいるベルさんを見ると、真剣な表情でテレビを見つめていた。

今までに見たことのないような顔で、少し不安を感じた。

 

「ベルさん?大丈夫ですか?」

「…ありがとう。大丈夫よ」

 

私を見て安心させるように微笑んだ後、テレビに意識を戻した。

 

「あそこで戦ってるの、旧い知り合いでね」

 

声から察するに、多分オールマイトの方ではない。

 

「手助けに行きますか?送ります」

「ふふ、そんなに仲が良い訳でもないから。ありがとうね」

 

 

 

勝利の、スタンディング。

壮絶な戦いを制したのはオールマイトだった。

ボロボロになりながらも腕を突き上げる勇ましい姿は、無辜の市民には感動的に見えただろう。

でも、

 

「負けちゃったか」

 

私の横でベルさんは、そう小さく呟いた。

少しだけ悲しそうな顔をしていた。

 

「ベルさん」

 

私は思わずベルさんの手に触れていた。

あなたの、力になりたい。

 

「時雨。やっぱりお話だけ、してきたいな」

 

あなたの願いならば、否はない。

 

「もちろんです」

 

 

 

 

 

巨悪、AFO(オールフォーワン)が倒れ、警察やヒーローが彼を拘束せんと近づこうとした時。

突如として現れた美しい女に、空気が強張った。

女はゆっくり歩いて、AFOに近づいて行った。

 

「増援だ!」

「皆さん離れて!新手の(ヴィラン)です!」

「逃がすな!囲め!」

 

オールマイトはもう動けない。

それでもヒーロー達は素早く対応し、女を倒そうと取り囲んだ。

急に現れたのを見れば、ワープ系の個性を持っていても不思議ではない。

ようやく倒れた凶悪な(ヴィラン)をみすみす取り逃がすわけにはいかなかった。

 

囲まれようとも動じず、余裕のある表情を崩さない女に、ヒーロー達は一層警戒を強めた。

 

「おい!カメラ回せ早く!」

「やってます!やってますけど…映りません!」

 

メディアは必死でカメラを向けるが、映るのはヒーローばかりだった。

生中継されているそれは、見えない何かを警戒して取り囲むという、不可思議で不安を煽るものだった。

 

 

 

女が口を開いた。

 

「少し話すだけよ。邪魔しないで」

 

不気味さを感じるほどに透き通って綺麗な声は、魔性と言って差し支えなく。

ヒーロー達はその言葉に従ったかのように、動かなくなった。




勝利を、安心を示すために腕を突き上げるヒーローの姿が大好きです。
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