ニュースは先日の事件を絶えず報道していた。
神野の悪夢、と呼ばれるようになったその事件は様々な議論を呼んでいた。
更地となった一帯に家を失った人、瓦礫に埋もれ救出を待つ人。
そんな様子を報道していたが、一番の話題はその元凶となった
オールマイトを引退に追い込んだその男の正体について、様々な憶測が飛び交っていた。
そして、謎の五分間と呼ばれ始めた、生中継最後のシーン。
何かを警戒するかのように、倒れた
その後の聞き込みで、彼らは皆口を揃えて、何も覚えていないと言った。
私はリビングで、そんなニュースを見ていた。
「ベルさんって、テレビに映らないんですね」
謎の五分間、その映像にベルさんの姿は一切映っていなかった。
「そりゃあ、吸血鬼だからね」
「私も映らなかったりしますか?」
私はベルさんの眷属で、吸血鬼。
同じように映らないのでは、と思った。
「映るわね。時雨はまだ吸血鬼の力が弱いから」
以前聞いたことがある。
吸血鬼の力が強まれば、不思議な事も出来るようになるらしい。
蝙蝠に変身できるとか。
「どうすれば強くなるんですか?」
「んー、血は飲んだことある?」
そういえば、私は吸血鬼になったというのに、まだ一度も血を吸っていなかった。
首を振って答えると、ベルさんはそれじゃあ、と言って。
「飲んでみよっか!」
用意されたのは小さなグラスに入れられた真っ赤な血だった。
量にしておよそ大匙一杯分くらいだと思う。
「最初だしこんなものね。さ、飲んでみて」
私は言われるままにグラスを呷った。
あつい。
血を通した喉が焼けるように熱かった。
頭を金槌でガンガンと叩かれているような、強い酩酊感があった。
「うぁ、んん。べるさんこれ、すごいですね…」
「熟成したやつしかなくてねぇ。生血はもうちょっと飲みやすいと思うわ」
そういえば私の血を飲む時のベルさんはこうはなっていない。
私は飲んでもらう時もポーっとしてしまうが。
「ベルさんの血は…?」
喉から熱がとれると、すぐに次が欲しくなった。
「私のは濃すぎるからダメね。中毒になって死んじゃうわ」
じゃあこの、何とも言えない渇きはどうすれば良いのだろう。
「ほらお水。慣れないうちは薄めのワインで割って飲みましょうか」
そうすれば量も飲めるし気持ちよく酔えるしで良いのだそう。
何よりベルさんにとって水割りは邪道極まるらしかった。
「ああそれと。外で人から吸っても良いけど、男と老人は止めた方がいいわ」
「なんでですか?」
ベルさんはひどく真剣な表情をして言った。
「美味しくないからよ」
吸血鬼にとって血は、度数の強いお酒みたいなものです。
また何日か時間をおきます。少々お待ちください。