ヴィランのお話   作:斗掻き星

14 / 40
喉が焼けるように熱かった。

ニュースは先日の事件を絶えず報道していた。

神野の悪夢、と呼ばれるようになったその事件は様々な議論を呼んでいた。

更地となった一帯に家を失った人、瓦礫に埋もれ救出を待つ人。

そんな様子を報道していたが、一番の話題はその元凶となった(ヴィラン)の事だった。

オールマイトを引退に追い込んだその男の正体について、様々な憶測が飛び交っていた。

 

そして、謎の五分間と呼ばれ始めた、生中継最後のシーン。

何かを警戒するかのように、倒れた(ヴィラン)を取り囲み動かなくなったヒーロー達。

その後の聞き込みで、彼らは皆口を揃えて、何も覚えていないと言った。

 

私はリビングで、そんなニュースを見ていた。

 

「ベルさんって、テレビに映らないんですね」

 

謎の五分間、その映像にベルさんの姿は一切映っていなかった。

 

「そりゃあ、吸血鬼だからね」

「私も映らなかったりしますか?」

 

私はベルさんの眷属で、吸血鬼。

同じように映らないのでは、と思った。

 

「映るわね。時雨はまだ吸血鬼の力が弱いから」

 

以前聞いたことがある。

吸血鬼の力が強まれば、不思議な事も出来るようになるらしい。

蝙蝠に変身できるとか。

 

「どうすれば強くなるんですか?」

「んー、血は飲んだことある?」

 

そういえば、私は吸血鬼になったというのに、まだ一度も血を吸っていなかった。

首を振って答えると、ベルさんはそれじゃあ、と言って。

 

「飲んでみよっか!」

 

 

 

用意されたのは小さなグラスに入れられた真っ赤な血だった。

量にしておよそ大匙一杯分くらいだと思う。

 

「最初だしこんなものね。さ、飲んでみて」

 

私は言われるままにグラスを呷った。

 

 

 

あつい。

血を通した喉が焼けるように熱かった。

頭を金槌でガンガンと叩かれているような、強い酩酊感があった。

 

「うぁ、んん。べるさんこれ、すごいですね…」

「熟成したやつしかなくてねぇ。生血はもうちょっと飲みやすいと思うわ」

 

そういえば私の血を飲む時のベルさんはこうはなっていない。

私は飲んでもらう時もポーっとしてしまうが。

 

「ベルさんの血は…?」

 

喉から熱がとれると、すぐに次が欲しくなった。

 

「私のは濃すぎるからダメね。中毒になって死んじゃうわ」

 

じゃあこの、何とも言えない渇きはどうすれば良いのだろう。

 

「ほらお水。慣れないうちは薄めのワインで割って飲みましょうか」

 

そうすれば量も飲めるし気持ちよく酔えるしで良いのだそう。

何よりベルさんにとって水割りは邪道極まるらしかった。

 

「ああそれと。外で人から吸っても良いけど、男と老人は止めた方がいいわ」

「なんでですか?」

 

 

 

ベルさんはひどく真剣な表情をして言った。

 

「美味しくないからよ」




吸血鬼にとって血は、度数の強いお酒みたいなものです。

また何日か時間をおきます。少々お待ちください。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。