「小夜さんは、どうして私に優しくしてくれるの?」
お互いスイーツを食べ終えて、一息ついたところで、エリちゃんがそんな事を聞いた。
同情とか、偽善的なものもあったかもしれない。
ベルさんのようになりたいと、そう思った末での行動でもあった。
「似ていたから、でしょうか」
「…そうなの?」
多くの部分が似ている訳ではない。
私はエリちゃん程に肉体的苦痛に晒されてはいなかった。
でも私もエリちゃんも、大人に愛されなかった。
「ある日、一人ぼっちだった私に手を差し伸べてくれた人がいたんです」
ぽつぽつと、言葉が口をついて出た。
「それから私は、幸せというものを知ったのです」
エリちゃんは私の言葉を真剣な眼差しで聞いていた。
「私はエリちゃんに、幸せを知ってほしかった」
それが一番の理由だった。
「私は小夜さんと出会えて幸せ、だよ」
「…ありがとう」
エリちゃんの笑顔に、思わず泣いてしまいそうだった。
でも私は、寝る間も悪夢にうなされるあなたを知っていた。
「エリちゃん、逃げませんか」
私の言葉に、エリちゃんの笑顔は曇り、強張った。
「私の個性なら、絶対捕まりません。逃げませんか」
エリちゃんは俯いてしまった。
やっぱり心が縛られている。
あの男の意に反してはならないと、刷り込まれている。
「私、は」
絞りだした言葉は。
「呪われて、いるから。小夜さんが殺されちゃう」
優しさが業を背負わされていた。
「…分かりました。帰りましょうか」
私たちは席を立ち、会計を済ませて外へ出た。
人目につかず個性を使うため、適当な路地裏に入った。
まずは心を救ってあげなければならない。
今のままでは、エリちゃんは自分自身を愛せない。
「エリちゃん。約束します」
幸せを、知ってほしい。
心からの、何にも縛られない幸せを。
「エリちゃんの行きたい所、どこにでも連れて行ってあげます」
あなたが、人に我儘を言えるように。
「誰も行ったことがないような、綺麗な景色の場所に連れて行ってあげます」
心が震える感動を感じられるように。
「きっと、助けてあげます」
もう何にも、怯えなくていいように。
「たくさん、愛してあげます」
胸いっぱいの、幸せを感じられるように。
「だからエリちゃん。呪われているなんて言わないで」
あなたは優しくて、笑顔が似合う素敵な女の子です。
私はエリちゃんを抱きしめて言った。
「…うん。ありがとう、小夜さん」
顔は見えなかったが、エリちゃんが私に回した手には、力が入っていた。
私たちは、死穢八斎會へと帰った。
幸せを願わずにはいられません。