ヴィランのお話   作:斗掻き星

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真実に嘘を、嘘に真実を。

「小夜、話がある。ついて来い」

「分かりました」

 

死穢八斎會に戻ってから暫く、帰ってきたオーバーホールに呼び出された。

あの後エリちゃんは慣れない外を歩いたせいか、ベッドで眠ってしまった。

 

部屋にはオーバーホールに音本と玄野。

それから小さな人形のような姿をした入中までいた。

 

まさか。

 

「さて小夜。俺が留守の間、どこに行っていた?」

 

 

 

恐らくバレた。

何故?

把握していない監視カメラがあった?

 

「オイオイ黙るな!答えろォ!!!」

「うっ…!」

 

入中の腕が巨大化、私を床に押し付けた。

 

「壊理にはGPSを埋め込んである」

 

迂闊だった。

少し考えれば分かった事だったが、完全に失念していた。

 

「ありえない挙動を示しているんだ。この際場所はどうでもいい」

 

調べれば場所はすぐに分かる。

だから問題なのは、

 

「お前、個性は何だ?」

 

私を見下ろして、オーバーホールは言った。

 

 

 

「音本」

「はい。小夜さん、あなたの個性は何ですか?」

 

音本真。

個性は真実吐き。いつだったか本人に教えてもらった。

 

やはりこの手の個性は私には効かない。

この男との会話を利用すればリカバリーはきく。

 

転移(テレポート)です。最大距離は1000Kmです。でも回数こなせば地球の裏まで行けます」

 

ただし音本は元詐欺師。

嘘には聡い人種であるから、言葉には気をつけねばならない。

 

真実に嘘を、嘘に真実を。

 

「何故個性を隠していた?」

「この個性は便利すぎです。個性じゃなくて私を見て欲しかったのです。義爛にも話してません」

 

声の調子をそのままに。

 

「何故許可なく外出した?」

「エリちゃんのためです。甘い物を食べさせてあげたかったのです」

 

表情は崩さず。

 

「ウチに来た目的は?」

「生きるためです」

 

大事な所だけを自然と塗り潰せ。

 

「義爛から裏切りの予定を聞かされたか?」

「いいえ」

 

 

 

「もういい音本。ご苦労だった」

 

上手くいったろうか。

 

「ひとまずお前はこのまま壊理の面倒を見てもらう」

 

この口振りでは完全に信用したわけではないだろうが、危機は脱したようだった。

 

「だが罰は必要だ。利き手は右だったな?出せ」

 

罰、指を落とすとかだろうか。

正直かなり怖いが、命に関わるのでないならば受け入れるより他ない。

今はエリちゃんの傍にいる事が大切だ。

 

私は言われた通りに右手を差し出した。

 

「…ッ!」

 

激痛が走った後、私の右の手首から先は無くなっていた。

血が滴ることはなく、最初からそうであったかのように、右手はオーバーホールの手におさまっていた。

 

「一年したら返してやる。それからもう一つ」

 

そう言ってオーバーホールが見せつけたのは、針のついた弾丸。

見覚えがある。

 

「完成品の失敗作だ。効果は推定一ヵ月。血清ができ次第治してやる」

 

実験の意味もあるのだろう。

しかし危険度が高い。逃走の最も良い手段を一つ失うことになる。

 

だがここで逃げては駄目だ。エリちゃんのために。

私は個性を失う事を受け入れた。




筆が進まず一話だけです。
今後連日の投稿が減るかもしれません。
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