「小夜、話がある。ついて来い」
「分かりました」
死穢八斎會に戻ってから暫く、帰ってきたオーバーホールに呼び出された。
あの後エリちゃんは慣れない外を歩いたせいか、ベッドで眠ってしまった。
部屋にはオーバーホールに音本と玄野。
それから小さな人形のような姿をした入中までいた。
まさか。
「さて小夜。俺が留守の間、どこに行っていた?」
恐らくバレた。
何故?
把握していない監視カメラがあった?
「オイオイ黙るな!答えろォ!!!」
「うっ…!」
入中の腕が巨大化、私を床に押し付けた。
「壊理にはGPSを埋め込んである」
迂闊だった。
少し考えれば分かった事だったが、完全に失念していた。
「ありえない挙動を示しているんだ。この際場所はどうでもいい」
調べれば場所はすぐに分かる。
だから問題なのは、
「お前、個性は何だ?」
私を見下ろして、オーバーホールは言った。
「音本」
「はい。小夜さん、あなたの個性は何ですか?」
音本真。
個性は真実吐き。いつだったか本人に教えてもらった。
やはりこの手の個性は私には効かない。
この男との会話を利用すればリカバリーはきく。
「
ただし音本は元詐欺師。
嘘には聡い人種であるから、言葉には気をつけねばならない。
真実に嘘を、嘘に真実を。
「何故個性を隠していた?」
「この個性は便利すぎです。個性じゃなくて私を見て欲しかったのです。義爛にも話してません」
声の調子をそのままに。
「何故許可なく外出した?」
「エリちゃんのためです。甘い物を食べさせてあげたかったのです」
表情は崩さず。
「ウチに来た目的は?」
「生きるためです」
大事な所だけを自然と塗り潰せ。
「義爛から裏切りの予定を聞かされたか?」
「いいえ」
「もういい音本。ご苦労だった」
上手くいったろうか。
「ひとまずお前はこのまま壊理の面倒を見てもらう」
この口振りでは完全に信用したわけではないだろうが、危機は脱したようだった。
「だが罰は必要だ。利き手は右だったな?出せ」
罰、指を落とすとかだろうか。
正直かなり怖いが、命に関わるのでないならば受け入れるより他ない。
今はエリちゃんの傍にいる事が大切だ。
私は言われた通りに右手を差し出した。
「…ッ!」
激痛が走った後、私の右の手首から先は無くなっていた。
血が滴ることはなく、最初からそうであったかのように、右手はオーバーホールの手におさまっていた。
「一年したら返してやる。それからもう一つ」
そう言ってオーバーホールが見せつけたのは、針のついた弾丸。
見覚えがある。
「完成品の失敗作だ。効果は推定一ヵ月。血清ができ次第治してやる」
実験の意味もあるのだろう。
しかし危険度が高い。逃走の最も良い手段を一つ失うことになる。
だがここで逃げては駄目だ。エリちゃんのために。
私は個性を失う事を受け入れた。
筆が進まず一話だけです。
今後連日の投稿が減るかもしれません。