エリちゃんが目を覚ました。
「おはようございます」
「ん…おはよう、小夜さん」
時間は昼を少し過ぎたくらいだった。
エリちゃんは帰ってきてから小一時間ほど眠っていた。
「あ…小夜さん、手、が」
無くなった私の右手をみてエリちゃんは驚いた。
隠すのも無理があると思ったのでそのままにしておいたが、ショックだったろうか。
「私が、外に出たから」
「違いますよ」
やはりそのままにしておいたのは失敗だったかもしれない。
エリちゃんは自分を責めてしまう性質がある。
「これはエリちゃんのせいじゃないです。大丈夫だから、気にしないで」
目一杯の優しい声で、安心させるように言った。
まだある左手で角のあるエリちゃんの頭を撫でた。
「遅めですけど、お昼にしましょうか」
「なぁ壊理。外は楽しかったか?」
お昼を食べたらすぐに研究だった。
私はいつものベッドに横になる。
「まさか二度目があるとは思ってなかった」
私を冷たい目で見降ろして、機嫌が悪いようだった。
「小夜の右手、無くなったのはどうしてだと思う?」
どうしてって、
「痛かっただろうな。今も痛みが続いている筈だ」
小夜さんは、痛がっていたの?あんなに優しい顔をしていたのに。
「個性も無くなった。お前の力で」
個性が、小夜さんの?私の、力が。
「可哀そうだな。お前が外に出たばかりに」
私が、外に出たせいで。
「お前のせいで、小夜は苦しんでいるんだ」
私が、小夜さんを傷つけた。
私が我儘を言ったばかりに。
私の、せいだ。
小夜さんは私に優しくしてくれるのに。
私は傷つけることしかできない。
ごめんなさい。ごめんなさい。
ごめんなさい。
「ごめんなさい、小夜さん。ごめんなさい…」
地獄のような研究を終えたエリちゃんは私を見ると、幽鬼のような顔で謝ってきた。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
オーバーホールに何か言われたのだろう。
こうなってしまってはエリちゃんの罪悪感を取り除く事はできない。
オーバーホールの言葉こそが真実だと植え付けられてしまった。
右手を晒していた私も軽率だった。
「違います、エリちゃん。あなたのせいじゃない」
私はただエリちゃんを抱きしめてあげることしかできず。
「こんなの、痛くも痒くもないですから」
「でも、私のせいで、手も、個性も」
個性のことまで聞いたようだ。
なおの事エリちゃんをは自分を責めるだろう。
自分の身体が元になっているから。
「いりませんよ個性なんて。それに一月もすれば治ります」
「でも、でも」
泣き腫らして私の言葉が届かないエリちゃんを、私は少し強く抱きしめて。
「エリちゃん。私は楽しかったですよ。エリちゃんと外に出たの」
あなたの笑顔はとっても素敵だったから。
「エリちゃんは、楽しくなかったですか?」
私の問いかけに、エリちゃんは泣きじゃくりながら。
「たのし、かった…!」
そう言った。
私の服を掴む手が、少し強くなった。
「そうでしょう。ならいいんです、それで」
抱きしめながら、頭を撫でる。
エリちゃんは泣き疲れて眠るまで、私の胸を濡らし続けた。