ヴィランのお話   作:斗掻き星

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今もその子は泣いているかもしれないと。

サー・ナイトアイ事務所二階、大会議室にて。

地方のマイナ―ヒーローからNo9ヒーローのリューキュウまで、大勢のヒーローが一堂に会していた。

その場には名門雄英高校の生徒が複数人、教鞭を取っているイレイザーヘッドもいた。

 

「えー、それでは始めてまいります」

 

ナイトアイのサイドキック、バブルガールの音頭で会議が始まった。

 

 

 

「個性を壊すクスリ、そン中に人の血ィや細胞が入っとった」

 

 

 

「つまり、娘の身体を銃弾にして捌いてんじゃね?ってことだ」

 

 

 

「今度こそ必ずエリちゃんを…!保護する!!!」

「それが私たちの目的になります」

 

 

 

サー・ナイトアイは死穢八斎會の拠点候補となる土地のヒーローを集めていた。

土地勘がなければヤクザの拠点調査は難しいからだろう。

 

「随分慎重やな!回りくどいわ!」

 

ファットガムが吼えた。

今もその子は泣いているかもしれないと。

 

「回りくどくする必要があるのです」

 

冷静な返答をするサー・ナイトアイ。

しかし続く言葉は重々しかった。

 

「事態は最悪へと流れています」

 

 

 

「運び屋時雨が死穢八斎會と手を組んでいる可能性があります」

 

驚くヒーローが複数人。いずれも地方のヒーローだった。

 

「誰だソイツ」

「それについては警察の方に詳しい説明をしていただきます」

 

ナイトアイに促され、警官がスクリーン前に立った。

 

「どうも特定(ヴィラン)対策班の平井です」

 

死んだ魚のような目をした平井は、早口に話し出した。

 

「運び屋時雨、本名 界門空(かいもんそら)は一年程前から活動している未成年の (ヴィラン)です。こちらが顔写真です」

 

スクリーンに時雨の顔が映し出された。

話を聞いていた雄英生のひとり、麗日お茶子はその顔を見て声を上げて驚いた。

 

「彼女の個性は〈 転移(テレポート)〉。一度で最大1000km移動できますが回数に制限が確認できていないので実質世界中が行動範囲です」

「めちゃくちゃやな」

「ええめちゃくちゃです。途方もない捜査網を組まねばいけませんから。捜査をお願いしてるヒーローもここにはいますね。いつもありがとうございます」

 

対象の保護にあたり頭を悩ませる要素が増えたと、空気が張った。

そこにお茶子が声を上げた。

 

「本当に、(ヴィラン)なんですか?」

 

あまりにも予想外の言葉に場は静まり返った。

 

「どういうことですか?」

「彼女は、その、友達なんです。私の」

 

口にしてよいものかと、インターン先であるリューキュウをチラチラと見ながら言った。

 

「後で詳しく話を聞かせてもらいます。で彼女は本当に(ヴィラン)です」

「そんな…」

 

信じられない、といった顔をするお茶子に平井は続ける。

 

「中学校在学時に同校の男子生徒五人を殺害、同日実の母親も殺害して逃亡。その後全国で強盗を繰り返し、その他彼女の犯行と思しき死体が全国で発見されています。」

 

まくしたてるように並べられた時雨の経歴に、お茶子は黙ってしまった。

 

「そいつここにいていいのか?情報漏らすかもしんねぇぞ」

「ッそんなことしません!」

 

浅黒のヒーロー、ロックロックとお茶子の間に剣呑な空気が流れた。

 

「やめてロックロック。ウラビティも落ち着いて」

 

リューキュウが仲裁に入ったが場の空気は重いままだった。

 

 

 

「我々の目的は娘の居場所の特定、保護」

 

可能な限り、確度を高めなければならない。

 

「そのためにご協力、よろしくお願いします」

 

そう言ってナイトアイは会議を締め括った。




そんなことするような子じゃなかった。
まるで今までの全てが偽りだったかのような言い方です。
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