ヴィランのお話   作:斗掻き星

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私に手をのばしていた。

「俺がこの子のヒーローになる!」

 

身体が地面に沈み込み、私の視界から消えた。

同時に背後から強烈な気配。

 

「い゛ッ…!」

 

振り返った瞬間に顔に蹴りを叩き込まれた。

私が抱えていたエリちゃんには当たらないようにしていた。

 

あまりに強力な蹴りに吹き飛ばされ、私は一瞬意識を手放してしまった。

エリちゃんは、私の手を離れてヒーローの腕の中にいた。

 

 

 

ああクソ、いたい。

割れた眼鏡が私の顔のあちこちを切り裂いて、口の中は血の味がした。

 

「小夜さん!」

 

エリちゃんの心配する声が聞こえた。

見ればエリちゃんがヒーローの腕を掴んでいた。

 

「やめて!小夜さんを傷つけないで!」

「え!?」

 

ヒーローは大層驚いた顔をしている。

そりゃそうだろう。助けに来た女の子に、まさか非難されるとは思わない。

 

「聞いての通りだヒーロー。壊理はお前の助けは望んでいない」

 

オーバーホールが言葉を突き付ける。

 

「お前達のやっていることは、自分が満足したいだけの英雄ゴッコだ」

 

ヒーローが俯く。

エリちゃんはヒーローを飛び降りて、私の方へ駆けてくる。

 

その肩を、ヒーローが掴んだ。

 

 

 

「俺はルミリオン。百万(ミリオン)を救うルミリオンだ」

 

ヒーロー、ルミリオンは再びエリちゃんを抱き寄せて言った。

 

「たとえ望まれなくても、絶対にこの子を救い出す!」

 

ルミリオンは、揺れない。

 

「偽善者が」

 

エリちゃんは、私に手をのばしていた。

 

 

 

戦闘が激化する。

オーバーホールの地形攻撃の隙間を縫って、真っ先に狙われたのは私だった。

 

「貴女が時雨だろう!?この子には悪いけど、貴女は眠っててくれ!」

 

個性どころか右手すら無い私では防御すら覚束なく、身体に痛みを増やす一方だった。

 

「やめて!やめてよ!小夜さんを殴らないで!」

「っごめんね!目を瞑っていて!」

 

強すぎる。

暴れるエリちゃんを抱えながらも、オーバーホールの地形攻撃と、玄野の援護射撃を物ともせず、緻密に私だけを狙っている。

そのくせエリちゃんには傷一つ付けていない。

 

「これで終わりだ!」

 

ルミリオンが私に詰め寄り、拳を構えた。

 

「やめてぇ!!!」

 

エリちゃんの声と、もう一つ。

不気味に低い声が響いた。

 

「よくやった、小夜」

 

 

 

お腹が燃えそうなほど熱くなる。

 

「ぐぁっ…!」

 

私の正面で、ルミリオンが血を吐いた。

私の顔に少しかかる。

 

 

「っ小夜さん!!!」

 

ルミリオンの手を離れたエリちゃんが駆け寄ってくる。

 

私は、背後からルミリオンと共に地から生えた槍に串刺しにされていた。

 

「ぅあ゛…」

 

槍が抜け、私は崩れ落ちた。

ルミリオンはよろけながらも、膝をついていなかった。

 

「ぐ、どうして、仲間じゃないのか!?」

「どうだろうな」

 

エリちゃんはどうしていいのか分からずに泣きじゃくっている。

 

「治崎!!!」

 

ルミリオンが激昂するのを、霞んだ視界で見た。




男性キャラで一番好きかもしれませんルミリオン。
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