お腹があつい。
ぽっかりとお腹に空いた穴は、燃えるようにあつくて、いたかった。
いたい。
いたいけど、死にはしない。
個性を失っても私の身体は、ベルさんに貰ったこの身体は、吸血鬼のままだった。
「小夜さん、小夜さん!」
「そんなに、心配しなくても、大丈夫ですよ」
もっと血を飲んでおけばよかった。
格の低い私では、止血で精一杯で、回復まで力が回らなかった。
首を動かして周りを見ると、ルミリオンとオーバーホールが更に激化した戦闘を繰り広げていた。
エリちゃんを手離し、私を狙う必要がなくなったルミリオンは、腹に風穴を空けているのにも関わらずオーバーホールを追い詰めていた。
如何なる攻撃も通じず、如何なる防御も貫通するルミリオンは正しく無敵だった。
「お前は強いよ治崎。でもね!」
ルミリオンはそのマントを翻し。
「俺の方が、強い!!!」
その拳で、オーバーホールを地に叩き伏せた。
「お前の負けだ!治崎!!!」
「若…!」
執念深い声がした。
皆がその声を追って顔を動かした。
音本が、地を這いずっていた。
「私は、特別なんだ…。私は、私だけが…」
音本は狂信に満ちた声で叫ぶ。
「共に!歩まねば!」
「音本ォ!」
オーバーホールが銃弾を投げる。
正真正銘の完成品。
そのうち一発だけが、音本の手に転がり込んだ。
「撃て!」
装填、そして銃を構え、躊躇。
獲物はたった一発、目標は透過する個性。
オーバーホールが銃弾を放った時点でルミリオンはそれに気づいている。
馬鹿正直に撃ったところで当たるはずもない。
一計を案じねばならない。
そう考えた音本の目に、
これしかない。
あの子が笑えないままなんて、許せない。
本音だ。間違いなく、あの男の原動力。
音本は銃口を壊理に向けた。
そして引き金に指をかけ、気づく。
壊理が音本の方を見ていることに。
いや、正確には音本の背後にいる人間を見ていることに。
「お疲れ様です」
私は地に伏す音本から銃を取り上げた。
正直立ち上がるのもやっとで、今にも倒れそうだったが上手くいった。
「おい、待て何を…」
「手が震えてるじゃないですか。私が撃ちますよ」
飛びそうな意識を抑えながら、少し歩いて音本から離れる。
そして私は、警戒した顔でこちらを睨むルミリオンに銃口を向ける。
引き金を引く。
放たれた銃弾を当然、ルミリオンは透過で回避し。
阻まれることなく突き進んだ銃弾は、後ろにいたオーバーホールの身体に命中した。
「ッ小夜ォ!!!」
激昂するオーバーホール。
「駄目ですよオーバーホール。病気だ何だと言うくせに個性に頼りすぎです」
今までエリちゃんを虐げ続けてきた男を前にして、憎しみが溢れて止まらない。
「お前はここで殺してやる。二度とエリちゃんには触れさせない」
個性消してやるって人間がさァ
個性に頼ってちゃいけねェよな