「俺を殺す?個性の消えたお前に何ができる」
そう言いながらオーバーホールは膝に手をつき立ち上がった。
実際あの男の言うとおりだ。
個性もそうだが、強い人間というのはまず身体が強い。
奴も例外でなく、個性を失った非力な私ではまず勝てない。
「オーバーホール。私の力は
私はおもむろに、手首から先を失った右腕に噛みついた。
流れ出た鮮血を啜り、飲み干す。
身体が火照る。
噛み付いた傷はみるみる塞がり、丸くなった右腕の先から骨が突き出て、筋肉を纏い、皮膚が張った。
穴の空いたお腹も塞がり、打撲傷も引いた。
爪が伸び、犬歯が伸び、瞳が紅く染まる。
自らの血を糧として一時的に吸血鬼としての格を上げる。
ベルさんをして初めて見たと言わしめた、私の切り札。
時間制限こそあれど。
この男を殺すのには十分足りる。
「っ、お前を引き入れたのは失敗だった…!」
私の攻撃を躱しながらオーバーホールが吐き捨てた。
流石に経験の差があり攻撃を躱されてはいるが、私の身体能力はそれを圧倒していた。
「ッぐぁ…」
オーバーホールの顔面を蹴り飛ばす。
吹き飛ばされたオーバーホールは壁に叩きつけられた。
追撃を与えるべく近寄っていく。
「殺しはさせない」
「どいてください」
私の前に立ち塞がるルミリオン。
一息で距離を詰め、貫手を顔面に向け放つ。
躱した流れでカウンター気味に振るわれた拳が私の顔を捉えた。
「なっ!」
だがダメージはない。
意識の間隙を突いてルミリオンを殴り飛ばした。
流石にダメージは蓄積しているようで、立ち上がれないでいた。
腹に穴を開けながら動き回っている方がおかしいのだが。
「エリちゃん、暫く目を瞑って耳を塞いでいてください」
この男の汚い血も声も、エリちゃんは見たくないだろうから。
「さてオーバーホール。出来るだけ苦しむように殺してあげます」
髪を掴んで頭を持ち上げる。
濁った眼が私を睨みつけた。
「まずはその汚い目玉から処分しましょうか」
尖った爪をゆっくりと突き立てる。
聞くに堪えない醜い悲鳴が響き渡る。
「うるさいですよ」
喉を潰す。
悲鳴が掠れ、息の漏れ出るような音に変わる。
「痛いですか?痛いですよね。でもまだ足りません」
お前がエリちゃんに与えた苦しみはこんなものじゃない。
後悔しろ。
あの子から笑顔を奪ったお前を許さない。
「地獄の苦しみの中で殺してやる」
呪いの言葉が溢れ出る。
「死ね」