ヴィランのお話   作:斗掻き星

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私を呼ぶ声が、何度も響いた。

「貴様はエリちゃんを保護しルミリオンを連れて後続と合流しろ」

 

眼鏡のヒーロー、ナイトアイがデクに指示を出す。

 

「はい!」

 

ヒーロー達が動き出す。

 

 

 

風切り音を立てて飛んでくる押印。

それを躱し、飛び込んできたナイトアイに爪を振るう。

ナイトアイには造作もないように回避された。

 

戦闘の開始と共にエリちゃんに向け駆け出したデクが目に映る。

 

「ッさせない!」

 

ナイトアイとの戦闘を強引に切り上げ、デクへ向かう。

 

「させないよ」

 

足に包帯のような何かが絡みついた。

イレイザーヘッドの仕業だった。

 

「邪魔!!」

 

強引に引き千切ろうとするも、相当に頑丈なそれは破れなかった。

 

 

 

「行こうエリちゃん!」

 

デクがエリちゃんを抱え上げた。

 

「いや!!!」

「え!?」

 

エリちゃんがデクに訴える。

 

「小夜さんと一緒じゃないといや!小夜さんは悪い人じゃない!」

「え、えぇ!?」

 

デクは困惑し、指示を請うようにイレイザーヘッドを見る。

イレイザーヘッドは迷いなく、強く答えた。

 

「行け!」

「エリちゃん、ゴメン!!!」

 

デクはエリちゃんを強く抱えなおし、駆け出した。

 

「待って、やだ、小夜さん!小夜さん!!!」

 

私を呼ぶ声が、何度も響いた。

 

 

 

どうして、邪魔をするんだ。

 

「離してよ」

 

私の身体が変容する。

 

身体が一回り小さくなり、骨格は獣のように変わる。

 

変身能力。

吸血鬼の異能の一つ。

 

私は黒い体毛に爪と牙を備えた、狼へと変貌した。

 

 

 

身体が小さくなったことで拘束から抜け出し、今一度二人のヒーローと相対する。

新たな能力を見せたことで、二人は明らかに警戒を強めていた。

 

今すぐにエリちゃんを追いかけたいが、再び拘束されてしまうのが目に見えている。

目の前の二人を打倒しないことには、状況は好転しない。

 

 

 

ナイトアイに飛び掛かる。

狼の身体は、人間ほど器用な動きが出来ない代わりに、相応に身体能力が高い。

機動力を活かし、ナイトアイの肩に噛みついた。

 

「ぐッ!」

 

力に任せて噛み千切る。

傷口からは当然、血が溢れ出した。

さらに傷口に噛みつくことで、口の中に血を流し込む。

 

口いっぱいに不快な匂いが広がった。

しかし不味いが血には違いなく、少しの酩酊感と力の湧き出る感覚がした。

 

立てなくなる程度に一気に血を吸い取り、首を振ってナイトアイを投げ飛ばす。

 

 

 

人の身体に戻り、息を吐く。

狼の姿は燃費が悪い。自喰(オートファジー)の制限時間を削ってしまう。

 

そろそろ、限界。

正面に立つイレイザーヘッドを睨みつけ、足に力を入れる。

 

後はこいつを倒せば、そう考えた所で、背後から轟音が鳴り響いた。

 

「ドンピシャ!」

 

天井が崩落し、巨大な竜と、八斎會の巨人が降ってきた。

開いた穴からはヒーローが何人か降りてきて。

 

そこには、友達の顔もあった。

 

「時雨ちゃん!!!」

 

お茶子が、私の名を呼んだ。

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