ヴィランのお話   作:斗掻き星

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多分そうやってでしか生きられない。

お茶子を目の前にして、一瞬動揺した。

多分、会いたくなかったのだ。

 

今までのように、何も知られず笑い合えるならそれが良かった。

だって彼女はヒーローの卵で、私は(ヴィラン)だから。

 

こうして出会ってしまったらきっと、私たちの関係は、今までのようには在れないから。

 

 

 

「…お茶子」

 

絞り出すように彼女の名を呼んだ。

 

「どうして、ここに」

 

分かっている。

彼女はヒーローの卵なのだから、ここにいたっておかしくない。

 

お茶子は、私を真っ直ぐ見つめて言った。

 

「話を、しにきたんだよ」

 

 

 

「時雨ちゃん、どうして、(ヴィラン)になったの?」

 

どうして、か。

 

「…大した理由なんてないですよ。ただ、そうやって生きようと、決めたんです」

 

私が私であるためには、多分そうやってでしか生きられない。

 

 

 

「お母さんを、殺したって、聞いた」

 

違う。

断じて、私が殺した女は母ではなかった。

 

「あれは母じゃない。私を産み落としただけの、それだけの女です」

「なん、で」

 

お茶子の顔が歪む。

心が、少し痛くなる。

 

「なんで、そんなに簡単に人の命を奪えるの…?」

「…殺して心が痛くなるような人を殺したりしません」

 

どうしてか、今にも泣きそうで。

言葉が続かなくて、お茶子は顔を伏せた。

 

 

 

「…素敵なヒーローになれるって、言ってくれたよね」

「ええ、そう言いました」

 

あなたの闘う姿に心打たれたから。

 

「嘘には、聞こえなかった」

「本当、ですよ。本心から出た言葉です」

 

お茶子が顔を上げる。

 

「ヒーローは、(ヴィラン)を捕まえるのが、仕事なんだよ?」

「ええ。分かっています」

 

いつかこうして、お茶子が私の前に立つかもしれないと。

本当は、分かっていた。

 

「大切な人に、って花束を持った時雨ちゃんは、(ヴィラン)には見えなかった」

「人殺しの(ヴィラン)でも、愛する心は持っていますから」

「…うん」

 

 

 

「私ね、今でも時雨ちゃんのこと友達だって思ってるよ」

 

あぁ、

 

「私もですよ。お茶子のこと、友達だと思っています」

 

 

 

「でもね、私はウラビティだから。仮であっても、ヒーローだから」

 

お茶子は、決意に満ちた顔で。

 

「あなたと、戦う。ヒーローとして」

 

 

 

不思議と、嫌な気持ちはしなかった。

私は(ヴィラン)で、彼女はヒーローなのに。

 

いや、相容れない存在であっても、私たちは友達なのだ。

 

「あなたの、仕事に対する誠意に敬意を払いましょう」

 

なればこそ、私は(ヴィラン)として。

 

「邪魔をしないでください、ヒーロー」

 

 

 

お茶子は少しだけ獰猛に、笑って言った。

 

「後でいっぱい、お話しようね」




ガールズトークはガラスを隔てて。
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