ヴィランのお話   作:斗掻き星

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ああ、泣かないで。

エリちゃんが駆け寄ってくる。

お茶子がそれを、優しく止めた。

 

「小夜さん…」

 

不安そうな目で私を見つめる。

 

笑顔を浮かべようとするけれど、上手く笑えているか分からない。

全身に力が入らないし、意識はすぐにでもなくなってしまいそうだった。

 

「エリちゃん、ごめんね…」

 

謝罪が口をついて出た。

 

「なんで、小夜さんが謝るの…?」

「…助けることが、できませんでした」

 

もう戦う力は残っていないし、あったとしてもこの数のヒーローが相手では勝つことなど出来ない。

 

私の負けだった。

 

「…やだよ。私、小夜さんとずっと一緒にいたい!」

 

ああ、エリちゃん。

自分の気持ちもちゃんと言葉にできるようになった。

 

でも。

 

「ごめん、なさい…」

 

 

 

「なんで、なんでなんでなんで!?」

 

エリちゃんが泣き叫ぶ。

その顔を見て、心が刺すように痛くなった。

 

「いやだよ、私小夜さんと一緒じゃないと、いやだ、いやなの…」

 

ああズキズキと、痛い。

 

「私を、一人にしないで…」

 

 

 

一瞬、エリちゃんの角が光る。

パチパチと輝きを増していく。

 

お茶子が自分の身体の異変を感じて、エリちゃんを離す。

 

「助けるから!今度は私が!!!」

 

角がエリちゃんの叫びに呼応し、大きく光り輝く。

 

 

 

されどその輝きは、風に吹かれたように消え去った。

 

「え、なん、で…」

 

少し顔を動かしてみれば、イレイザーヘッドが目を光らせていた。

個性を消す個性を持ったヒーローだった。

 

 

 

「エリちゃん、ここでお別れです」

 

ああ、泣かないで。

 

「やだ、やだやだ…!いやだよ、一緒に、いてよ…」

 

私に近寄ろうとするも、警察に止められてしまった。

 

「そうだ、約束、約束したよね、ね…?」

「…ごめんなさい」

 

 

 

「私の行きたいところ、どこでも連れて行ってくれるって」

 

「綺麗な景色を見せてくれるって」

 

「助けて、くれるって…!」

 

「たくさん愛してくれるって!!!」

 

 

 

ああ、そうだ。

でもその約束は。

 

「ごめん、なさい…」

 

その約束は、守れそうにありません。

 

「…私、小夜さんがいないと、どうしたらいいか分からないよ」

 

大粒の涙を流しながら。

 

「一人は、いやだよ…」

 

 

 

「一人じゃ、ないですよ」

 

あなたはひとりじゃない。

 

「だってほら、あなたを助けるためにこれだけの人が来てくれたんですから」

「小夜さん一人がいればいいの」

 

ああ、そんな顔をしないで、エリちゃん。

 

「あなたは私がいなくても、きっと大丈夫です」

「ダメだよ、私は小夜さんがいないと、ダメなの」

 

きっと、大丈夫です。

 

「あなたは優しくて強い子ですから、なんにだってなれますよ」

「そばにいて、見守っていてよ…」

 

私は、あなたを。

 

「エリちゃん、忘れないで」

 

 

 

「私は、あなたを、ずっとずっと愛しています」

 

 

 

私の身体が霧へと変わる。

 

何も掴むことができない身体で、空へと浮かぶ。

 

私を何度も呼ぶ声に、貫かれながら。

 

私は空へと消えていった。

 

大切な人を置き去りにして。

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