ヴィランのお話   作:斗掻き星

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私は好きだよ、その顔。

『出水洸汰、場外ィー!!!』

 

プレゼント・マイクの声が会場に響き渡る。

 

『今年の優勝は!微笑みを絶やさぬ不死身の女!A組エリ!!!』

 

大きな拍手が沸き上がる。

私は作り笑いを浮かべて観客に手を振った。

 

 

 

「それではこれより表彰式に移ります。今年のメダル授与には、あの人が来てくれています!」

 

会場の期待が高まっているのが分かる。

あの人、まさか。

 

「我らがナンバーワンヒーロー!ルミリオン!!!」

「ハハハ!パワー!っつってね!どうもー」

 

軽薄な顔をしたナンバーワンの登場に、会場は大きく沸いた。

 

久しぶりだね、ヒーロー。

 

 

 

私はヒーローが嫌いだ。

ヒーローが私から全てを奪った。

たった一人の、大切な人を私から奪った。

 

私の大切な人を傷つけて、恩着せがましく私のためとか宣うヒーローが嫌いだ。

 

 

 

何故私がヒーローの卵としてここに立っているのか。

 

お茶子さんが私に示した道だった。

ヒーローのくせに、(ヴィラン)と友達だと、本気で言う変な人。

唯一、信頼できる人でもあった。

 

お茶子さんが言ったのだ。

ヒーローを目指してはどうかと。

 

勿論だが私が小夜さんの元へ戻ることは許されていない。

私の個性は強力だから。

 

そんな私が合法的に接触を図れる道だった。

もし小夜さんに会ったら、私ヒーローやめて(ヴィラン)になるよ、と言ったら、

 

「ええよ、それで。その時はウチが二人まとめて捕まえたるわ」

 

と、そう言ってくれた。

 

 

 

そうして雄英に入ったわけだが、これが意外にも心地良かった。

 

何せ誰も私に勝てないのだ。

私の個性がある以上、負けは有り得なかった。

戦闘向きの個性を持った奴でさえ私を倒せないし、身体のリミッターを外して、所謂火事場の馬鹿力をいつでも出せる私は、殆どの授業でトップだった。

 

真面目に、困っている人を助けたい!とか幼稚なことを言ってる連中が、私に勝てないのだ。

心からヒーローを軽蔑してる私に。

 

歪んでいる自覚はあるが、これが私には心地良かった。

 

 

 

「島乃君、三位おめでとう!この順位はひとえに君の努力あってこそだ!よく頑張ったね!」

「あ、ありがとうございます!」

 

「出水君、二位おめでとう!強力な個性にかまけず自力もある。素晴らしかったよ!」

「っス。ありがとうございます」

 

「さて」

 

三位と二位の表彰を終え、ルミリオンが私を見る。

笑顔は絶やさず、だけど私には分かる。

 

少しだけ、笑顔が歪んでいるよ、ルミリオン。

罪悪感かな?

 

 

 

私は好きだよ、その顔。

 

 

 

「一位、おめでとうエリちゃん。いやぁ、強いな君は!将来が楽しみだ!おめでとう!」

 

ねぇ、今どんな気持ちで私の前に立ってるの?

あなたが救えなかった、百万から零れた人間を目の前にしてさ。

 

「ありがとうございます」

 

私はそう、微笑を張り付けて言った。

 

心からの(にく)しみを込めて。




終わりも近づいてまいりました。
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