パトロール。
ヒーローの主な業務であり、治安維持にかかせない活動だ。
インターンで戦力として雇われた私の業務はほとんどがこれだった。
私は地方の中堅程度のヒーローの下へやってきていた。
元々は職場体験もインターンもお茶子さんの所へ行こうと思っていたけど、もし小夜さんを見つけて雲隠れなんてしたらそれなりの迷惑がかかるのでやめた。
お茶子さんには小夜さんの目撃情報の多い場所を教えてもらって、それを参考にして世話になるヒーローを決めた。
結果、毎年五十位あたりをうろついている、地元じゃそこそこの知名度があるくらいの中途半端なヒーローの下で、パトロールをしているのだった。
そしてインターンを始めておよそ二週間。
私はようやく、ずっと前から追い求めていた愛しの人を。
見つけた。
「小夜さん」
転移をしようと裏路地に入ったその時、後ろから声をかけられた。
小夜、と私を呼ぶ人を、私は一人しか知らない。
だからこそ、振り返ることができなかった。
「…小夜さん」
顔を合わせるのが怖くて、逃げ出すように門を開いて飛び込んだ。
「逃がさないよ?」
転移に、失敗した?
私の個性は発動したはずだったが、事実私は、こうしてエリちゃんと向かい合っていた。
「久しぶりだね、小夜さん」
「…エリちゃん」
エリちゃんは、私よりも背が高くなっていて、すっかり大人っぽくなっていた。
微笑まれて、見つめられるのが耐えられなくて、思わず目を逸らした。
「…小夜さんは、もう私のこと、何とも思ってない?」
エリちゃんが、悲しそうにそう言った。
「ッ違う!私は、今でもエリちゃんの事、愛しています。でも」
「貴女に合わせる顔なんて、私にはない。貴女を、助けられなかったから、私は…」
「大丈夫だよ」
ふわ、とエリちゃんに抱きしめられた。
優しくて、甘い香りに包まれる。
「そうやって、今まで自分を責めてきたんでしょ?小夜さん優しいから」
ねぇ小夜さん、とエリちゃんは囁いて、
「私も、小夜さんのこと大好きだよ。愛してる」
だから、
「これからずっと、一緒にいよう?」
「…許して、くれるの」
「もぅ、最初から怒ってないよ」
今まで押さえ付けてきた気持ちが、涙と一緒に溢れてくる。
「私、エリちゃんを守れなくて、会いたいなんて言う資格なんてなくて、でも辛くて」
「会いたかった…!ずっと、会いたかったよエリちゃん…!」
「うん、うん。私も。やっと会えたね、小夜さん」
嬉しくて、嗚咽が止まなくて、エリちゃんの胸に顔を埋めた。
エリちゃんは私の背中を優しくさすってくれた。
「ふふ、昔とは反対になったね。ねぇ、覚えてる?小夜さん、私が泣いてたらこうして抱きしめてくれたでしょ」
「…うん。大きく、なりましたね」
エリちゃんは、包容力のある素敵な女性に成長していた。
「ふふ、小夜さんは変わってないね。綺麗で可愛いまんまだ」
いきなりそんなことを言われたものだから、顔が赤くなってしまった。
恥ずかしくて、顔を隠すようにエリちゃんに密着した。
「もう絶対に、離れないからね」
「うん。これからはずっと、一緒です」
これにてハッピーエンド。
この後は後日談をいくつか投稿して、完結としたいと思います。