ヴィランのお話   作:斗掻き星

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何の中身もない、ただ言葉を交わすだけの会話。

「は、初めまして。エリです。よろしくお願いします!」

 

エリちゃんを連れて家へと帰った。

それすなわち、ベルさんにエリちゃんを紹介することであった。

 

「あら、あなたが。初めまして、ベルハントです。ベル、でいいわよ」

「よ、よろしくお願いします、ベルさん」

 

そしていざベルさんを前にしたエリちゃんは、緊張していた。

 

「これからはエリちゃんも一緒に暮らしたいんですけど、いいですか?」

「もちろん!時雨の大切な人なら、私にとっても家族みたいなものよ」

 

ベルさんはとっても上機嫌そうに言った。

 

「今日はご馳走ね!」

 

 

 

 

 

「エリちゃん、ちょっといい?」

 

ベルさんが手招きして私を呼んだ。

とっても綺麗な人で、話す時は少し緊張してしまう。

 

「どうかしました?」

「いえ、お礼を言っておこうと思って」

 

ベルさんは、慈愛に満ちた表情で微笑んで言った。

 

「ありがとう、時雨の傍にいる事を選んでくれて」

「いえ…私が一緒にいたかっただけですよ」

 

それでも、とベルさんは続けた。

 

「あの子ね、貴女を連れてくるまで笑顔なんて見せなかったの」

「そう、なんですか」

「ええ。だから、ありがとう。これからも支えてあげてね」

 

小夜さんには私がいないとダメなんだと思うと、嬉しくなった。

 

「もちろんです。任せてください!」

 

 

 

 

 

エリちゃんは私の部屋で寝ることになった。

部屋は空いているので個部屋も用意できたが、他ならぬエリちゃんの希望だった。

 

ベッドに、向き合って寝転がる。

 

「そういえば小夜さんって、本当の名前は時雨、なんだよね?」

「ええ。そうですよ」

 

ベルさんにもらった、本当の名前だ。

 

「私も時雨さん、って呼んだ方がいいかな」

 

ふとエリちゃんがそんなことを聞いてきた。

 

「んー、そのままでいいですよ」

 

小夜という名は、初めこそ適当に付けた偽名だったが、今ではもう一つの名として大事に感じている。

 

「エリちゃんが沢山呼んでくれた名前だから、結構愛着あるんですよ」

「そっか。えへへ、小夜さん」

「何ですか?」

 

エリちゃんは、悪戯っぽく笑って言った。

 

「ふふ、呼んだだけ」

「そうですか」

 

何の中身もない、ただ言葉を交わすだけの会話。

これこそが私たちの求めていた幸せだ。

 

ごそごそと、エリちゃんが身体を寄せてきた。

 

「どうかしました?」

「くっつきたい。だめ?」

「いいですよ」

 

腰に手が回って、足が絡んで密着した。

おでこ同士がピト、とくっつく。

 

エリちゃんの息を、何より近く感じた。

 

「ふふ、小夜さん好き」

「私も好きですよ」

「えへへ」

 

お互いの温もりを感じながら、私達は眠りについた。




貴女がいること。
返事があること。
幸せの確認作業。
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