私はさまよい歩いていた。
未成年故に公表こそされていないが、大量殺人事件の犯人としてバッチリマークされている。
とはいえ全国どこでもノータイムで移動できる私を捕まえる事はできないだろうが。
金は人がいくらでも持っていた。
殺したり、たまに殺さなかったりしながら私は生きていた。
「お嬢ちゃん、お兄さんと遊ばない?」
「いいですよ。お気持ちで千円くらい頂戴しますけど」
人気のない所で私を見るなり声をかけてきた不埒な男。
「え?まじ?大当たりじゃんやったぜ」
千円なんて安いもん、と言わんばかりに財布を取り出した。
「ばかみたい」
「え?」
次の瞬間には男の首は胴から離れていた。
私は財布を拾い上げ、中身を確認した。
「へぇ、結構当たりじゃん」
適当に街をブラついていると、一人の女が目に入った。
やけにきれいな身なりをしていて、どこかをぼーっと見つめている。
ああいう女はだいたい金を持っている。私は声をかけることを決めた。
「こんにちは。何かお困りですか?」
「ん?あぁ、特に困っているわけじゃないのよ。ありがとう」
「そうでしたか。心ここにあらずって感じで…余計なお世話でしたね」
女は掴みどころがない感じで、客としてはあまり期待できないかもしれない。
それに不思議そうに私の顔を見つめて、ちょっと不気味な感じがした。
「私の顔に、なにか?」
あまりに見られて落ち着かなくて、問いかけた。
「私に声をかけてくれたけど、あなたはどうして、そんなに泣きそうな顔をしているの?」
は?
泣きそうなんて、そんなことはないはずなのに、何故か言葉が詰まってしまった。
「どういう、こと、ですか?」
「あなた、つらそうな顔してるわ。あなたこそ何か、悩んでいるんじゃない?」
そんなこと、あるわけない。
何にも縛られずに、一人で生きる今は、充実している。
泣くような事なんて、つらい事なんて、ない。
ないはずだ。
「私で良ければ話聞くけど、どっかお店入る?家近いしそっちでもいいけど」
「…ありがとう、ございます」
「家でいい?ついてきて」
不思議とこの女の言葉に、従ってしまった。
「えっと、お名前は?私はベルハント」
小綺麗な部屋に座らされ、問いかけられた。
「…言いたくないです。嫌いな名前だから」
それはもう、捨てた繋がりだった。
「そっか。それじゃあ、今は何してるの?」
「特に何も」
「お仕事は?」
「してないです。人を殺して、奪ったりしながら」
「一緒にいる人とかは?」
「いないです。一人で、暮らしています」
私は何を言っている?言うべきでない事をペラペラと。ベルハントの個性だろうか。
「そう。一人で生きてるんだ。強いんだね」
不思議と心地よかった。
「きっとね、あなたは寂しいんだよ」
ベルハントに話していると心が軽くなった。
「さみしい?」
「そ。一人は寂しいわ誰だって。私もそう」
「あなた、家はある?」
「ホテルを転々としてます」
「じゃあ、私と暮らさない?」
突然の誘い。
あまり理解が追い付かなかった。
「どういう、ことですか?」
「文字通りよ。ここに住まない?ってこと」
「えっと…」
困惑した。
今まで何度か似たような言葉はかけられたが、そいつらは皆男だったし、下心から出た言葉だった。
ベルハントは違った。
「あなたはこれまで通り好きに生きて、でもここに帰ってくる」
ゆっくりと、子供を諭すかのように語った。
「あなたがただいまって言って、私がおかえりなさいって言うの」
とても嬉しそうに、はにかんで。
「ね、素敵でしょ?ここをあなたの帰る場所にするの」
素敵だった。それは多分、私が一番求めていたものだ。
「でも、私は
「いいわよ別に」
「多分、これからも殺します」
「誰を殺そうと気にしないわ」
ベルハントは綺麗な紅い瞳で私を見つめた。
ああ、この人は私を見てくれる。見捨てないでいてくれる。
肯定してくれる。
きっと、愛してくれる。
「ねぇ、私と暮らさない?」
もう一度言ったその言葉に、私はうん、と小さく頷き返した。
涙を流したのは、久しぶりだった。
一人は好きですが、孤独は辛いものです。