「それじゃあ、あなたを私の眷属にするわね」
一緒に暮らすと決めた私にベルハントはそう言った。
「眷属?」
「そう。血の繋がりを作るの。これから一緒に暮らすんだから、家族みたいなものよ」
いまいちよくわからない、という顔をする私に、ベルハントは思い出したかのように言った。
「私の個性ね、『吸血鬼』なの。全然、騙すつもりとかはなかったんだけど…」
「気にしてませんよ」
「良かった。それでね、要するにあなたを吸血鬼にしようと思うんだけど」
ベルハントは色々教えてくれた。
吸血鬼になって起こる体の変化、できるようになること、できなくなること。
でもそれは私にとって問題ではなかった。
「私をあなたの眷属にしてください。あなたとの繋がりができるなら、私は嬉しいです」
「そっか、ありがとう。それじゃあ、ちょっと我慢してね」
そう言ってベルハントは私の首筋に噛みついた。
血を吸われて、少しボーっとした。
身体から力が抜けて、頬が赤くなるのが分かる。
少し気持ちよくて、血を舐める音が艶かしく聞こえてしまった。
「ん…」
「ごめんね。もう少し貰うからね」
今までに経験したことがない感じで、声が漏れた。
ベルハントの声が近くに聞こえて、幸福感に包まれた。
「ごちそうさま」
ベルハントが口を離した。唇に付いた血を艶かしく舐める。
血を吸われた首筋はまだジンジンとしていた。
「変な感じがしたでしょ?ごめんね。我慢出来てえらいわ」
「ううん、その、気持ちよかった。またしてほしい…」
「あはは…一日一回までね」
私の頭はボーっとしていて、頬もまだ紅潮していた。
「よし、それじゃあ、これからよろしくね。えっと…」
ベルハントは途中で言葉を切って、困ったような顔をした。
「あなた、名前言いたくないのよね?何て呼べばいい?」
この人に、この嫌いな名前は言いたくなかった。
私はこれからこの人と生きていくのだ。それなら。
「名前、付けてください。あなたに名付けてほしい」
名付けは祝福。この人に祝ってほしい。
「時雨」
真っ赤な唇から言葉が紡がれた。
「あなたは、時雨。よろしくね」
時雨。しぐれ。私は時雨。
「よろしくお願いします、ベルハント、さん」
「ベルでいいわよ」
「ベルさん」
帰る場所、血の繋がり、名前。
今日一日で、たくさん貰った。
「ベルさん、ありがとうございます」
「いいのよ。あなたはわたしの
私がベルさんにゆっくり近づくと、ベルさんは優しく抱きしめてくれた。
血を吸われた時とは似ているようで違う、穏やかな幸せに包まれた。
初めて感じた、人の愛だった。
これで一区切りとします。
書き貯めるので暫しのお待ちを。
どうして今日出会ったばかりの人間の一生を背負うのか。
彼女には彼女なりの思いがあります。