ヴィランのお話   作:斗掻き星

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あなたは私の心に安らぎを与える。

「花、花ですか。良いですね。そうします」

 

言われてみると、感謝の気持ちも愛情も、伝えるのは花が一番適任に思えた。

 

「私も選ぶの手伝ってもいい?」

「モチロンです」

 

むしろこちらからお願いしたいくらいだった。

私たちは立ち上がり、花屋へと歩みを進めた。

 

 

 

「・・・どれが良いのでしょう」

 

店には数多くの花が並べられていて、私を困らせた。

 

「私も花言葉とかよくわからんし・・・店員さんに聞く?」

「そうします」

 

店員に声をかけようと周りを見回すと、一つの花が目に入った。

自然と、その花に手が伸びた。

 

「これ…」

「白くて綺麗やね」

 

そびえ立った茎が、神楽鈴のように白い花を纏っていた。

 

 

 

「その花が気に入りましたか?」

 

暫く花を見つめていたら、店員から声をかけてきた。

 

「ルピナスっていうんです。可愛い名前ですよね」

「花言葉はどんなのですか?」

 

お茶子が尋ねた。

 

「白いルピナスの花言葉は、常に幸福、です。他には、感謝とか、あなたは私の心に安らぎを与える、なんて素敵な意味もありますよ」

 

見つけた。

贈り物にピッタリの素敵な花。

私はこの純白のドレスのような花にすっかり目を奪われていた。

 

「この花、ください」

 

プレゼント用ですか、と聞かれたので、はいと答えると、花束を作ってくれるようだった。

 

 

 

出来上がったのは白を基調に様々な色が控えめに散りばめられた、上品な花束だった。

私はお金を払って、それを受け取った。

 

「お茶子、ありがとうございました」

「いやぁ、私結局何も手伝いとか出来んかったし…」

 

お茶子は恥ずかしそうにそう言ったが。

 

「この花束が出来たのはお茶子のおかげです。だから、ありがとう」

「えへへ、そか」

 

 

 

「実はこうして、年の近い女の子と買い物をしたのはお茶子が初めてなんです。その、私、つまらなくなかったですか?」

 

お茶子には良く思ってもらいたかった。

 

「私は楽しかったよ!凄く!」

 

この強い肯定が、安心感を与えてくれた。

 

「そっかぁ。じゃあ、私が時雨ちゃんの初めてのお友達だね!」

 

お茶子も、私を友達だと思ってくれた。

 

「…はい」

 

それが嬉しくて私の声には少し、涙が混じっていた。

 

 

 

「ああー時雨ちゃん方向そっちか。私と真逆やね」

「ではここでお別れですね」

 

いつまでも一緒という訳にもいかない。

 

「機会があったら、こうしてまた一緒に買い物をしませんか?」

「もちろん!それじゃあまたね!時雨ちゃん」

 

またね。

お別れという感じがしなくて、温かかった。

 

「またね、お茶子」

 

 

 

「ベルさん、あの」

「ん、なぁに?」

 

私は花束を差し出して言った。

 

「感謝の気持ち、です」

 

あなたは私の心に安らぎを与える。

この幸せに精一杯の感謝を込めて。

 

「わ…すごい!とっても綺麗ね!時雨が選んでくれたの?」

「真ん中の白い花だけ…。他は店員さんが作ってくれて」

 

ベルさんは花束を受け取ると、目に少しの涙を浮かべ、とっても素敵に微笑んだ。

 

「ありがとう。とっても嬉しい。大切にするわね」

 

花瓶に挿され、机に置かれたルピナスは虹を従えて、まるで女王のように佇んでいた。

 

 

 

私の贈った花たちは、不思議と枯れることはなかった。




吸血鬼は不死者の王と言ったりしますね。
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