暇を持て余した時計塔のマリア様(n周目)が暇をつぶそうとする話。

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時計塔でマリア様にボッコボコにされている(現在進行形)ので初投稿です。


マリア様と人形

 

 

 

「・・・・・暇だ」

 

 

 いつも変わらない天井を見上げながら呟いた私の声は、無駄に広い時計塔に小さく響く。蝋燭台と簡素な椅子だけの殺風景なここが、私の最後の地・・・・私が囚われている悪夢だ。

 私はここで『秘密』を守り続けている。秘密に魅せられた狩人たちを狩り、秘密と罪を重ね続ける。

 

 ・・・・とは言ってみたものの、こんな辺境も辺境な場所を訪れる物好きなどそうおらず、現れたとしても満身創痍であることがほとんどだった。おそらくあの失敗作たちが張り切り過ぎているのだろう。よしんばここに来れたとしても、結局私が狩るだけなのだが。

 待つか、狩るか、それだけの毎日だ。

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 チラリと部屋の隅に目を向ける。先程この部屋には蝋燭台と椅子しかないと言ったが実はもうひとつ、そこそこの大きさの箱がある。

 向かってきた狩人たちを仕留めた際、稀に何かを落としていくことがある。多くは輸血液だったり水銀弾だったりするのだが、その中でもごくごく稀に変わったものを落としていくことがあるのだ。かつては獣を狩る狩人であった頃の性か、捨てるに捨てられず集めてしまっている。

 

 

「・・・・・整理でもするか」

 

 

 別に片付けたからといった何かあるわけではないが、他にやることもないのも事実だ。これを機に、余計なものは処分してしまおう。

 箱には鍵などない。蓋を開けると自分でもひどいと思うくらいにゴチャゴチャしていた。底の方は綺麗に並んでいるところを見るに、途中から面倒になったのだろう。それを上から順番に取り出しては並べていく。

 輸血液、水銀弾、石ころ、ナイフ、血晶石・・・・・取り出してみると意外と多いものだ。水銀弾と輸血液はありがたく貰っておくが、それ以外は使い道もないだろう。

 

 

「ん? これは・・・・・・」

 

 

そんな中、箱の中で見つけたのは小ぶりな袋。両掌より少し大きいそれは意外と軽く、中に何か入っているようだ。おそらく狩人の一人が落としていったものなのだろうが、戦った後だというのに傷一つ見当たらない。

 袋を閉じるリボンを解き、手を入れ中のものを取り出す。

 

 

「・・・・・・人形、か?」

 

 

 それは、三等身くらいにデフォルメされた可愛らしい人形だった。銀の髪に少し眠そうな目、簡素な作りの人形本体に対し驚くほど細部まで拘った服から、それなりの手間をかけたものであることがわかる。狩人が持つには不似合いなことに変わりはないが、人形収集の趣味でもあったのだろうか?

 しかし、見れば見るほど不思議な人形だ。生憎と私に人形を愛でる趣味はないが、なぜかこの人形が気になって仕方がない。

 

 

(私に似ている? いや、偶然か)

 

 

 この人形がどことなく私に似ている気がするせいだろう。同じ色の髪と瞳だから、そう見えるのかもしれない。だがあの狩人との面識は当然無く、なにより私の顔を知るものも今はほとんどいない。

 かつて師と仰いだゲールマンならできるのかもしれないが、まさか私に似せた人形を作るほど暇でもあるまい。というかもしそんなことをしていれば、細切れにして魚人どもの餌にでもしてやろう。

 

 不意に、時計塔の鐘が鳴る。どうやら()()のようだ。急いで人形を懐に隠し、椅子に座ると同時に大扉が開き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ふぅ」

 

 

 今回は少してこずった。決して強敵というわけではなかったが、やはり『獣狩りの斧』のリーチはバカにできん。私の狩武器の間合いとは相性が悪いのだ。

 椅子に腰掛け深く息を吐き、ふと私は大切なことを思い出す。

 

 

「っ! そうだ人形・・・・・よかった、なんともない」

 

 

 懐に入れっぱなしになっていた人形を取り出す。幸い傷一つ付いておらず、ホッとしながら椅子に背を預ける。

 

 

「・・・・・らしくないな」

 

 

 そう、私らしくない。たかが人形の一つに翻弄されるなど、狩人として相応しくないだろう。

 ・・・・・それほどまでに、私は()()()()()のだろうか。

 

 

「・・・・・・・」ギュッ

 

 

 思いつきで人形を軽く抱きしめてみると、不思議と安らぎを感じた。師の元を離れ、一人の狩人として身を投じ、この悪夢に囚われて錆び付いた心が、少しだけ軽くなる気がした。

 目を閉じ、ほんのひと時の安らぎに身を任せる。時計塔を吹き抜ける風が心地よく、そのまま眠ってしまいそうになる。この時ばかりは、夢を見ることのできない我が身を呪うばかりだ。

 

 どのくらい経ったか、名残惜しく感じつつも目を開く。まぁこれの持ち主が現れない限りは手元に置いておけるのだ。いずれまた、この人形の世話になるとしよう。

 

 

「ふふっ・・・その時はまた頼むぞ」

 

 

 応えなど返ってくるはずもないのに、そう呟いて人形を撫でる。こんな姿、ゲールマンにでも見られたらなんと言われるだろうか。

 さて、いつまでも感傷に浸っていられない。いつまた狩人が現れるかわからないのだから。

 

 

「・・・・・ん? っ!?」

 

「・・・・・・・」ジー

 

 

 顔をあげると、いつの間にいたのか一人の狩人が立っていた。扉はすでに開かれ、星輪樹の庭が見えている。失敗作たちを相手にしていたはずのその狩人は傷を負っている様子もなく、かなりの手練れであることが窺える。

 そしてそれ以上に私にとって衝撃だったのは、ソイツが()()()()()()()()()()()からだ。

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・・・見たな?」

 

「・・・・・・」つ(狩人の確かな徴)

 

「なっ、待てっ!!」

 

 

 かつてないほど全力で踏み込んだ一閃は、しかし後一歩というところで間に合わず虚空を切る。

 見られた・・・・・よりによって、狩るべき狩人に。武器を収め、重い足取りで椅子に戻り、座ると同時に頭を抱えた。まさかこんな醜態を晒してしまうとは・・・・っ!

 

 結局、この後やってきた狩人(さっきのとは別人だ)を八つ当たり気味に叩き切ってしまった。ついでに人形も細切れにしておいた。

 

 

 

 




小さな人形

狩人の夢にある人形、それに魅せられたとある狩人が自作した小さな人形。
それは、狩りにおいてなんら役に立つことはない。しかし狩人にとって、それは些細なことにすぎないのだ。

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