――ミソスープ!
それは紅魔族に伝わるとされる伝説の食べ物!
ひとたび口にすれば二度と他の食べ物は口にできないとも、紅魔族の魔力の源はそれにあるとも言われている!
ミソスープを求め紅魔の里を訪れた者は数知れず!
けれど誰もミソスープを口にできた者はいないという!
ミソスープ、いったいどんな秘密があるというのか……!
◇ ◇ ◇
「――ック、ハハッ! 待っていた! 待っていたぞ貴様と相まみえるこの時を!!」
男が高らかに笑う。
「……俺も、貴様とケリをつけることのできる、今日という日をずっと待ちわびていた」
対する男は、静かに剣を構える。
「これで、終わらせる」
「決着の時だ!」
「「お前を、倒す!!」」
二人は同時に吐き捨て――
「じゃ、今日の訓練を始めまーす」
「うぃーっす」
先ほどまでの空気が霧散し、一気に気の抜けた雰囲気になる。
……紅魔族の里で、よく見られる光景だった。
◇ ◇ ◇
「あー、ちくしょー、負けだ負け!」
「やっぱりスキル取らないで剣使うのはキツいんじゃない?」
苦笑しながら幼馴染がそう言う。
俺はうーん、と唸ったあと首を横に振った。
「でもスキル使わずに技術だけで戦うの、凄くカッコよくない?」
「絶対カッコいい」
「だよな、絶対カッコいい……」
二人揃って頷き合う。紅魔族にとってカッコよさの追求は命題だから仕方ない。
「あれ、でもお前召喚魔法のスキル取ってなかったっけ?」
「お、よく知ってるな。実はやりたいことがあってな……」
幼馴染は俺に向けて興味津々と言わんばかりの視線を向ける。
こいつは俺が持つカッコよさに関するセンスを信頼してくれていた。
「召喚魔法で剣を連続召喚して、使い捨てで戦うのカッコよくない……?」
「お前……センスの化け物か……!?」
紅魔族にとってカッコよさは強さである。
「おかげさまで完全にもう剣のスキル取れないんですけどねー」
「お、そうだな。頑張ってくれ」
「悪いけどお前は逃がさないからな」
「愛が重いぜ」
はぁ、と揃って溜息。
「とりあえず飯だ飯!」
「ああ、じゃあうち来いよ。親に久々に呼べって言われてんだよな」
「いいねぇ」
俺と幼馴染、揃って移動する。向かう先は魔法使いの家だ。
「ただいまー」
「そしてお邪魔しまーす」
挨拶をし、家の中へ。
そもそも最初から俺を呼ぶのは当然だったようでご飯は用意されている。
これ、俺が来なかったらどうするつもりだったのだろう。
「お、ミソスープあんじゃん。おばさんの味付け好きなんだよなぁ」
「俺はお前の家のも美味いと思うけどなぁ」
「いや、俺の家も無論美味い。いや、ミソスープ美味いよね」
「わかる、美味い」
伝説のミソスープ、紅魔の里では家庭の味です。
伝説となっているのは紅魔族特有の悪乗り故だった。