ONE FOR ALL9代目はボンゴレX世 作:鉄血のブリュンヒルデ
「緑谷ー。こっちこっちー」
「あ、風間さん。こんばんわ」
夏休みのある日の夜。
僕は折寺神社で行われる夏祭りに来ていた。
集合の10分前だけど、もう何人かは集まっていたみたいだ。
脇の方にかっちゃんがいるのも見える。
ちゃんと来てくれてよかった。
「なんか緑谷の私服って初めて見るけど、結構いかしてるのな」
「そうかな?」
ちなみに僕の私服の大半は文字Tシャツだったんだけど、リボーンから「なんだそのダセェ服は」と言われて2年前にだいたい買い換えた。
個人的には気に入ってたんだけど、どうやらこっちの方が大衆受けはいいみたいだ。
この流れで思い出したけど、リボーンは今家でレオンの様子を見ている。
なんか最近調子が悪いみたいで、色々な形に勝手に変身しちゃうみたいだ。
「悪ぃ緑谷。遅れたか」
その時、僕の後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「ううん、大丈夫だよ轟君」
どうして轟君がいるのかって言うと、前にクラスメイトに写真を見せた時に「緑谷!この人絶対に夏祭りに連れて来て!」と迫られて、轟君に確認をとったら「別にいいぞ」と返事が来たので、こうやって一緒に集まることになった。
轟君とこうして直接会うのも、ディーノさんと初めてあったあの日以来かな。
あの日はディーノさんが部下の目の前じゃないと力が発揮出来ない体質(個性なのかな?)が発覚したり色々あった。
それに、活川さんがヒットマンだったって事も知った。
あの人がヒットマンだったなんて、今でも信じられないけど。
「それより緑谷。ほれ、夏樹の浴衣姿に何か言う事は無い?」
僕が少し考えていると、風間さんが話しかけてきた。
振り返ると、浴衣を着て顔を赤くしている炎さんがいた。
「ど、どうかな?///」
「うん!凄く似合ってるよ!」
「ありがとう………///」
正直に思った事を言った。すると炎さんは更に顔を赤くして俯いた。
「顔赤いけど、大丈夫?」
「えぇ?!だ、大丈夫だよ?!///」
凄く慌てて後ずさりする炎さん。
って、段差に躓いて転けそう。
「きゃっ?!」
「っ!」
一瞬だけONE FOR ALLを発動して炎さんを受け止める。
良かった。怪我は無いみたいだ。
「大丈夫?」
「う、うん…………///」
まだ顔は赤いみたいだけど、大丈夫みたいだ。
「フゥゥ、緑谷やるぅ」
「え?」
「天然人たらしって奴だな」
「えぇ?」
なんでか分からないけど物凄い言われようだ……。
「とりあえず早く回ろー。
花火まで3時間あるって言っても、出店も色々あるし人も多いし」
風間さんの提案で、僕達は動き出した。
けどクラスのほとんどが集まって動くと他の人の迷惑になるって事で、何個かのグループに別れる事になった。
僕が一緒に行くのは炎さんと轟君と風間さんだ。
「いやぁ、それにしても人多くない?」
「祭りなんだから仕方ないだろ」
風間さんのボヤキに、轟君が答える。
この2人何となく雰囲気が似てるから、見てて面白いな。
なんか、兄弟みたい。
「あ、射的だ。
轟って射的出来るん?」
「やった事ねぇな。
この機会にやってみるか」
轟君は財布からお金を取り出して出店の人に渡す。
「おう兄ちゃん。5発分な。
そっちのもじゃもじゃ頭の兄ちゃんもやるかい?」
「あ、いや、僕はいいです」
「それじゃあ緑谷達は花火見る場所確認して来てよ。
夏樹が場所知ってるからさ」
風間さんがそう言うと、炎さんは頷いた。
「うん。分かった」
そこで僕達は風間さんと轟君と別れて花火がよく見えるらしい場所に向かった。
行き道はまるで獣道みたいで、クネクネと森の中を曲がったりしながら進んで行った。
そして開けた場所に出ると、そこは祭り会場が見渡せる小高い丘だった。
「うわぁ。凄い場所だね」
「でしょ?私と涼香で毎年ここに来て見てたの。
ここら辺の人でもあまり知らない穴場なんだ」
僕、祭り自体あまり来てなかったから、こういう場所があるなんて知らなかったな。
「そう言えばそこそこ時間たってるけど、2人とも遅いね?」
「そそ、そうだね!2人とも何してるんだろーね!///」
僕が疑問を口にすると、炎さんは慌てた様に言った。
手もバタバタ動かしてる。
それから少し間が空いて、次に声を出したのは炎さんだった。
「………ね、ねぇ緑谷」
「ん?どうかした?」
炎さんが体ごとこっちを向いて、浴衣の袖をギュッと握り締めていた。
「2年前、窓から落ちた私を助けてくれてありがとう」
「お礼なんていいよ。僕がやりたくてやったんだし」
僕がそう言うと、炎さんは少し顔を膨らませてこっちを見た。
「私が言いたいの!」
「ご、ごめん…」
怒らせちゃった……。
けど少しすると、またさっきみたいに戻った。
「あのね?私、その時からずっと、緑谷の事…」
「僕の事?」
なんだろ?
炎さんは何を言いたいんだろう?
「私、ずっと!「あれ?先客がいたかー」…えっ?」
炎さんの言葉を遮って、若い男の人の声が聞こえた。
「あ、ごめんね?なんかお邪魔だったみたいで」
振り返るとそこには、僕達より少し年上くらいの男の人が立っていた。
「大丈夫ですよ。貴方も花火を見に来たんですか?」
「まーね。去年引っ越して来て、その年もここから花火を見たんだけど、最高だったよ」
爽やかな人だな。
それより、轟君達まだかな?
「………ねぇ、緑谷」
「ん?どうしたの?」
「去年、ここで花火を見てたのは、私と涼香だけだった」
それがどうかしたの?
そう聞こうとした。
けど、何かが引っかかった。
さっきあの人は、去年も"ここ"で見たって言っていた。
見た所この近くに同じ様な開けた場所は無さそうだし、去年引っ越して来たってことは、その前と間違える事がありえない。
けどだとしたら、何でこの人は、そんな嘘を?
「あらら。バレちゃったか」
そう言うと、男の人が纏っていた雰囲気が一瞬で変わった。
「まぁ、別に大して隠す意味は無かったんだけどね?
まぁ、ゆっくり話でもしようじゃないか。
ボンゴレ10代目」
今、この人ボンゴレって?
それに手には、拳銃?!
この人、ヤバい!
「炎さん、僕の後ろに「緑谷君!下がれ!」えっ?!」
僕が炎さんを庇おうとしたその時、何処からか活川さんの声が響いた。
「おっと、危ない危ない」
男の人が急に飛び退く。
するとその地面に深深とメスが刺さっていた。
「医者としてどうなんだい?
モールテ・アッティーヴァ、活川 命子」
「お前こそ、そういうブツは日本じゃ違法だと言う事を知らないのか?」
活川さんの手には、さっき地面に刺さったのと同じメスが数本握られていた。
「しかし驚いたぞ。
まさかジャックファミリーが代替わりしていたとはな」
ジャックファミリー?
って事は、この人はマフィアの、それも代替わりって言葉から考えると、ボスなのか?
「そういう訳。
まぁ先代がボンゴレのボスを殺したがってたのは知ってるけど、別に僕はボンゴレとか興味無いしね」
「なら何故ここに来た。
ボンゴレに興味が無いなら、緑谷君を狙う理由は無いだろ」
活川さんが、普段からは想像もつかない様な低い声で会話を続ける。
「それがそうでも無いんだよねぇ。
僕は彼自身に興味があるんだ。
ボンゴレとか関係なく、緑谷出久君本人にね」
僕に、興味が?
この人は一体、何を言っているんだ?
「君が大切な者を奪われた時、どんな顔をするのかなってさ」
大切な者を、奪われた時?
っ?!まずい!
「炎さん!逃げて!」
「えっ?」
未だに状況を飲み込めていないであろう炎さんを急いで抱えて僕はその場を離脱しようとした。
その時だった。
「おっと、行かせませんよ」
僕達の目の前に、スーツを来た男の人が立ちはだかった。
「くっ?!」
「緑谷君!」
炎さんを抱えているから、逃げながらじゃ戦えない。
けど、この人が簡単に抜ける程容易い相手じゃないのは、僕でもわかる。
どうすれば、この状況を抜けられる?!
「ダメだよモールテ・アッティーヴァ。
君が仕掛けてきたんだから、余所見なんかしちゃあさ」
活川さんも今は動けない。
なら、やるしかない。
「ごめん炎さん。僕の後ろにいて」
僕は炎さんを降ろして背後に回す。
「私と戦うおつもりですか?」
「えぇ、あなたが通してくれるなら、そんな必要無いんですけど」
「ご冗談を」
「そう言うと思ってましたよ」
3%で様子を見よう。
この人の個性が何なのか、まだ分からない。
それに炎さんが後ろにいるんだから下手に前に出られない。
「来ないのですか?」
「くっ」
かと言って、この状況も良くない。
何か、状況変える一手が欲しい!
「避けろ緑谷!」
「っ?!」
この声は、轟君?!
って事は!
ガキガキガキガキガキガキッ!
やっぱり、氷結!
「むっ?」
よし!足を止めた!
今なら「この程度なら、どうということはありませんな」、何?!
氷が、どんどん複数の球体に変えられている?!
「私の個性は、触れた物を任意の形に変形させる個性です。
生物には通用しませんのでご安心を」
安心なんかできるわけが無い。なんて個性なんだ。
その気になれば、この地球その物が武器になるって事じゃないのか?!
「また変形した物を意のままに操る事も出来ます。
この様にね」
そう言って奴は、球体になっていた氷を鋭利な刃物に変え、僕に放った。
「くっ?!」
何とか躱したけど、まだストックはあるみたいだ。
奴に効く攻撃は、純粋な打撃か個体でないもの。
それに当てはまるのは、僕のONE FOR ALL、轟君の炎。
手数が、圧倒的に足りていない。
「ふむ。この氷は10秒と言った所か」
10秒?今10秒と言ったのか?
一体何の秒数だ?
氷が10秒だと言ったからには、氷に関する「緑谷!ぼさっとするな!」っ!そうだ、そんな場合じゃなかった!
「中々良い友をお持ちですな」
「えぇ。とても!」
話しかける余裕があるって、見せつけてるのか。
それにさり気なく僕を轟君との間に誘導した。
これじゃあ、轟君の炎が使えない!
…………炎?そうだ!炎さんの個性も炎だ!
けど待て。冷静になれ!
炎さんを戦闘に巻き込んじゃダメだろ!
もう既に巻き込んでるけど、実際に戦うのは訳が違う!
「緑谷、ねぇ、緑谷!」
「っ?!炎さん、どうかした?
まさか、怪我でもしたの?!」
くっそ、いつだ?!
あの氷の刃か?!
「違う!
その、さっきはよく分かって無かったけど、あの人達、
炎さんの理解が追い付いて来たみたいだ。
まぁ、流石にあそこまで攻撃を受ければ、どんなに鈍い人でも分かる。
「そうだよ。
けど大丈夫。絶対に、僕が守るから」
出来るだけ冷静に、笑顔でそう答えた。
ヒーローは、笑顔で誰かを助けるんだから。
「でも、緑谷も私と同じ中学生なんだよ?!
轟君だってそうだし、まだヒーローじゃないんだよ?!」
そうだ。
僕達はヒーローじゃない。
「分かってるよ。
でもね、今はそんな事気にしていられない。
じゃなきゃ、君を守れないんだ」
今は炎さんを守る。それだけを考えろ。
頭を回せ。体を動かせ!
その為にまずは!
「轟君!炎さんをお願い!」
抱えたままじゃ戦えない。
それに、轟君の氷はいざって時に防御壁になる。
アイツに触れられなければ、それでいい!
「おい緑谷、どうするつもりだ!」
「出来るだけ時間を稼ぐ!その間に逃げて!」
「ふざけんな!お前一人で敵う相手じゃねぇだろ!」
「そうだよ!大怪我するかもしれないんだよ?!」
心配してくれるのは、凄く嬉しい。
けど、ダメなんだ。
このまま3人で居ても、最悪全滅だ。
だったら、なるべく生存者を増やすべきだ。
「それに、逃げるならお前の個性の方が向いてるだろ!
俺の身体能力は普通の人間なんだぞ?!」
「そうだけど、轟君の個性じゃコイツの足止め出来ないだろ?!」
つい強い言葉を使ってしまった。
けど、このくらい言わないと引いてくれない。
「でもお前、死ぬかもしれねぇんだぞ?!」
「っ?!ダメだよ緑谷!」
まだ、ダメなのか?!
だったら、もう嫌われてもいい。
絶対に逃がさなきゃいけないんだ!
「足手纏いなんだ!
早く逃げてくれないと戦えないんだよ!」
「「っ?!」」
2人とも、傷ついちゃったかな………。
けど、仕方ないんだ。
「………緑谷。死ぬんじゃねぇぞ」
「大丈夫。僕はいつだって死ぬ気だから」
それだけ言葉を交わすと、轟君は炎さんを抱えて走り出した。
その最中で激しい声のやり取りが聞こえたけど、
「行かせませんぞ」
「こっちのセリフだ!」
地面に触れようとした
「絶対に2人に手は出させない」
「良い目ですな。いいでしょう」
死ぬ気で、こいつを止める。
…………………………
「轟君!ダメだよ!緑谷を置いて行けないよ!」
私を担いだ轟君はここへ来た道を逆に走っていた。
このままじゃ、緑谷が死んじゃうよ!
「アイツの覚悟を無駄にする気か?!
アイツは今命張って俺達を逃がしてんだぞ?!」
命張ってって、それじゃあ緑谷が本当に死ぬ覚悟で残ったみたいじゃん。
そんなのダメだよ!緑谷はまだ普通の中学生なのに!
「一先ず待たせてる風間にお前を預けるから、ヒーローと警察、あと救急隊も呼んどいてくれ!」
救急隊?
それじゃあ、緑谷が怪我をするのは、前提なの?!
そんなのって…。
「っ!轟!待ってろって何だったのって、何で夏樹抱えてんの?!」
「話は後だ!とりあえずヒーローと警察を「轟君ごめん!」はっ?!」
ガツンッ!
涼香に要件を伝えようとした轟君の頭を殴って、私はさっきの道を引き返した。
「ちょ、夏樹何してんの?!」
「このままだと、緑谷が死んじゃうよ!私が助けなきゃ!」
「はぁ?!ちょ、夏樹!」
「行くな炎!ってぇ……っ!」
止めようとする轟君と涼香を何とか振り切って、私は山の中を走った。
そして視界が開けた瞬間、私の目に映ったのは2人の
「緑谷!」
私は叫びながら、突き出した手から炎を放っていた。
…………………………
「ハァ!!」
「フンッ!」
何度も攻撃を繰り出してるけど、それは
砕いても次は砕けた幹から刃を作り出して僕に放ってくる。
このパターンを何十回と繰り返している。
活川さんの方もまだもう1人の
「貴方の力にはまだまだ余力があると見えます。
全力を出せば、私を倒せるのではありませんか?」
本当はそうしたい所なんだけど、それは出来ない。
ここでONE FOR ALLを全力で使えば、確かにこの
けど、この丘を破壊せずにあの威力を振るう自信が、僕にはない。
もしこの丘が崩壊すれば、下の祭り会場にその瓦礫が降り注ぐかもしれしない。
そうなれば何人の犠牲者が出るか分からない。
「まぁ、いいでしょう。
それでは、今の内に貴方を倒してジャック様への手土産にするとしましょう」
「そう簡単にやられ無いぞ。
お前1人なら、僕でも何とか抑えられるんだから」
そうだ。
焦らなければ、そう負ける相手でもない。
リボーンからの修行や、かっちゃんと轟君との戦闘訓練で力は付けてるんだ。
僕1人で何とか
バンッ
……え?
ふと、右足に軽い痛みを感じた。
まるで、注射を刺されたような……。
「卑怯とは存じておりますが、私は1人ではありません」
その言葉を聞きながら、唐突に僕の体は痺れ、すぐに立てなくなった。
「ウヒッ!引っかかった引っかかった!」
コイツ、いつから、何処に?!
「俺の個性は気配遮断。
探知系の個性でも見つけられねぇよ!
ましてやお前みてぇなパワー馬鹿にはナァ!ウヒッ!」
くっそ!完全に油断していた!
敵が1人だって思い込んで、的を絞ってた!
「お前に撃ち込んだのは俺が趣味で作ってる毒薬さ!
まぁ、今のはただ神経を一時的に麻痺させるだけだから死にやしねぇよ。
ボスに殺すなって言われてるからな。つまんねぇぜ。
殺しゃ早いのによぉ!ウヒッ!」
破綻者だ。
こんな奴がいるなんて、予想してなかった。
油断出来る状況じゃないってのに、何してんだ僕は!
「それではボス加勢に行きましょう」
「おっ、中々いい女じゃん。
毒でのたうち回るのが見てみてぇぜ!ウヒッ!」
くっ、ダメだ!
あの
「やめ、ろっ………」
何とか右腕をONE FOR ALLで無理矢理動かして気配遮断の
「オイオイこのガキ、俺の麻痺毒食らって動いてやがる。
トんた獲物だこれは!ウヒッ!」
「行けませんよ毒蛇。
彼はジャック様の標的なのですから」
「分かってらァ!」
バキッ!
「がっ?!」
腕を蹴り上げられ、僕は仰向けになった。
「とりあえず先に気絶させるか」
「そうしましょう。
下手な動きをされては困りますから」
くっそ!ここまでなのか!
諦めかけたその時、聞こえるはずのない声が耳に響いた。
「緑谷!」
なんで、彼女がここにいるのか。
どうして戻って来たのか。
色々聞こうとしたけど、それよりも早く彼女は行動していた。
「緑谷から離れて!」
突き出した手から炎を放つ炎さん。
しかしその炎をいとも容易く躱して、毒蛇と呼ばれていた
「何?お前の彼女?
だったら、これかなぁ?!ウヒッ!」
そう言って
炎さんは自身の放つ炎で視界が塞がれて、それが見えていないようだった。
「炎さん!逃げて!」
僕が叫んだ頃には、
バンッ
乾いた銃声が響き、そして次の瞬間だった。
「痛っ?!」
炎が止み、右腕を抑えている炎さんが見えた。
「彼女には何を?」
「あれはチョー強力な神経毒。
けど、簡単には死なねぇぜ。3時間くらいかけてジワジワと体に毒が回るんだ!ウヒッ!」
嘘、だろ?
そんな、炎さんが、死ぬ?
ダメだ、ダメだダメだダメだダメだダメだダメだ!
「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「「っ?!」」
ONE FOR ALL FULL COWL!
100%!
他の何も関係ない!
今はコイツらを!
殺す!
「はい、そこまで」
「ぐあっ?!」
僕が抱いた殺意は、その一言と共に放たれた蹴りで、一瞬で消えてしまった。
見上げるとそこには、ジャックファミリーのボスが立っていた。
「お前、なんで、活川さんは?!」
「あぁ彼女?彼女ならそこで寝てるよ」
ジャックファミリーのボスが指さした先には、横たわる活川さんがいた。
「安心しなよ。命はとってないから。
その方が後々楽しいからね」
「後々?楽しい?」
コイツは、何を言っているんだ?
ここで僕らを、殺さないのか?
「さっき思い付いたんだけど、僕とゲームしない?」
ゲーム?
こんな状況でコイツは何を言っているんだ。
「ルールは簡単。
この地図に書かれた場所にいる僕達を倒して解毒剤を手に入れて彼女の命を救えば君の勝ち。
代わりに君が彼女が死ぬまでに僕達を倒せず、解毒剤を手に入れられなければ僕達の勝ち。
負けた方はそうだな。相手の言う事を何でも1度だけ聞くなんてどうだい?
シンプルな賭け事さ」
そう言ってジャックファミリーのボスは僕の目の前に地図を落とした。
「ま、やるかやらないかは聞くまでも無いよね?
それじゃあ待ってるから、またねぇ」
いつの間にか奴らは消えていた。
残されたのは気絶した活川さんと、毒で身動きが取れない炎さん。
そして、自分の無力さを嘆く僕だけだった。
「チクショオオオオオオオオオオオオオッ!」
そしてその後駆け付けた救急隊に僕らは保護され、病院へと搬送された。
…………………………
僕は今、祭り会場から1番近くにある大きな病院の病室にいる。
ただ力なくベッドの上で上半身を起こしているだけだ。
「出久!」
病室に駆け込んで来たのは母さんで、全力で走ってきたのか息が途切れ途切れだった。
「何でこんな事になったの?!
一体何があったの?!」
僕を心配そうに見つめる母さんの肩に、女性の手が乗った。
「緑谷君のお母様ですね。
今彼は酷く精神が脆くなっています。
あまり刺激を与えないで下さい」
それは活川さんで、気絶から回復してすぐに活性で自らと僕の傷を治してくれた。
けど、炎さんの体を蝕む毒は、活川さんの活性でも、この病院にいる医師の医療系個性でも治せなかったらしい。
「あの、あなたは?」
「申し遅れました。
私は普段緑谷君がトレーニングをしているジムの医師で、今は彼の体を知る者としてここで彼を診ています。
幸い体の傷はどうにか出来たのですが、心の傷までは、私の個性では治せませんでした」
「心の、傷?
一体、出久の身に何があったんですか?!」
活川さんに詰め寄る母さん。
それに対して活川さんは冷静に答えた。
「彼は彼の友人である炎 夏樹さんと共にいた所を
その最中に
彼はその
ですからどうか、今は別室にて待機をお願いします。
今彼にとって何がストレスになるのか分かりませんし、ストレスの蓄積された状態で何をするか分かりません」
活川さんの言葉に、母さんが徐々に冷静になっていった。
「そんな事があったなんて………。
すみません。あなたの言うとおり、別の部屋で待機しています…」
「えぇ。私が案内致します」
そう言って活川さんは、母さんと共に病室を出て行った。
それから数分が経ち、いつの間にか目の前のテーブルに、小さな影が乗っていた。
「おいデク」
この声はリボーンだ。
何か返事をしたいけど、生憎僕にはそんな力が残っていない。
「オメェいい加減にしろよ。
いつまでそうやって壊れたフリをしてやがる」
壊れたフリ?
リボーンは一体何を言ってるんだ。
僕はもう、ダメなんだ。
炎さんを守れなかった。
それに奴らは僕がボンゴレファミリーの後継者だから襲ったんだ。
つまり僕のせいで炎さんは死ぬんだ。
やっぱり僕なんかが、ONE FOR ALLを受け継ぐべきじゃなかったんだ。
「馬鹿デクが!」
ガシャーーーンッ!
そう言ってリボーンは僕をベッドから叩き落とした。
「いいかデク!
過去を悔やむ気持ちは俺にだって分かる。
けどな、オメェがいくら悔やんだ所で過去は変わらねぇんだ。
どれだけ手を伸ばそうが、どれだけ強くなろうが、過去だけは絶対に変わらねぇ。
だからオメェに出来んのは、"今"足掻いて、未来を変える事だろ!」
リボーンは僕の胸ぐらを掴みながらそう言った。
そして僕の顔を引き寄せて更に続けた。
「気に入らねぇ運命をぶち壊すのがヒーローなんじゃねぇのか?
お前はそんな
「じゃあどうしろって言うんだよ!
僕1人じゃ、あんな奴らに勝てる訳無いだろ?!」
反射的に、僕は叫んでいた。
そして、険しかったリボーンの顔が、いつもの意地悪な笑顔に戻っているのが分かった。
「そうだ。お前1人じゃどうにもならねぇ。
だからファミリーがいるんじゃねぇか」
「え?」
リボーンがそう言うと、病室の扉が開いた。
「何寝てやがる。
さっさとクソ
「緑谷。今度こそ守りに行くぞ」
そこに立っていたのはかっちゃんと轟君だった。
そしてその背後に、更に1人が重なる。
「何勝手に病人を連れ出そうとしてるんだリボーン」
活川さんが2人を押し退けて病室に入って来た。
「もし連れて行くなら、主治医である私も同行する。
道中のメンタルケアや治療も必要だろうしな」
「元から連れてくつもりだったぞ。
まぁ、これでメンツが揃ったな」
リボーンはそう言うと、僕の服を取り出した。
「さっさと着替えて、敵のアジトに乗り込むぞ」
僕は迷いなくそれを掴み、立ち上がった。
「皆、ありがとう!
僕はもう、止まらない!」
さぁ、反撃の開始だ。
待っていろ、ジャックファミリー!
次回『