ONE FOR ALL9代目はボンゴレX世 作:鉄血のブリュンヒルデ
「起きろデク。朝だぞ」
朝?って、まだ5時じゃないか………。
「まだ起きるには早いよ……」
「仕方ない。ボンゴレファミリー伝統のお目覚め方をやるか」
何か聞こえるけど、眠くてよく聞こえない……。
「3、2、1」
ビリリリリリリリリッ!
「うわあぁぁぁっ!な、何すの?!」
急激な痺れで目を覚ました。
リボーンを見ると白衣に着替えてよくドラマとかで見る人間に電気ショックを与える奴が……。
「お目覚めか」
「普通、起こすのに一々心臓に電気ショック与える?!」
「良かったな、無事に目が覚めて。
たまにそれっきり目覚めない奴もいるからな」
「それはショック死してるんだよ……」
稀に出てくるこのとてつもない内容の言葉が怖くてたまらないよ……。
「ていうか、こんな朝早くに………って、そうか。今日からトレーニングするんだ」
「やっと思い出したか、ダメデク」
「何その呼び方酷くない?!」
事の始まりは昨日の夜。
死ぬ気弾の事を教えて貰った時だ。
…………………………
「それで、死ぬ気弾ってなんなの?」
無個性のはずの僕が、あれだけの力を使えたんだ。
それに、ボンゴレファミリーに伝わる物らしいし……。
「死ぬ気弾っていうのは、学校でも言った通りボンゴレファミリーに伝わる特殊弾だ。
コイツを脳天に撃ち込み一度殺す事で、そいつの後悔を原動力に死ぬ気になって蘇らせる」
「あの時僕、本当に一度死んだんだ……」
あの時の死ねって言葉は本当だったんだ……。
「ただ、もしコイツを後悔のない奴に撃ち込んじまうと、その時はただそいつの頭に風穴が開くだけだ」
「つまり、後悔していないと使えないって事か」
「そうだ。だからこの力に頼らなくてもいいくらいに、お前は強くならなきゃいけねぇ。マフィアのボスになるとしても、ヒーローになるとしてもだ」
そうだ。僕はもっと頑張らなくちゃいけないんだ。
この力があるからってヒーローになれる訳じゃ無いんだ。
「という訳で早速明日の早朝からトレーニングだ」
「え?トレーニング?」
「当然だろ。
お前は勉強面に関しちゃ俺が教える事は僅かだが、体はまだまだただの中学生だからな」
そうか、なるほど。
確かに死ぬ気の力が切れた後にどっと疲労感が来た。
もしもしこの力を使って戦闘を行った場合、切れた後のインターバルを狙われる可能性もある。
それを軽減する為には体作りが重要だって事だよな……。
「分かったよリボーン。僕やるよ!」
…………………………
これが事の始まりだったんだけど……。
「なんで僕、海浜公園でゴミ拾いしてるの?」
「何言ってんだ。ヒーローの基本は奉仕活動だろ?
それに、ボンゴレの起源は街を守る自警団だ。
そういう意味じゃ、ヒーローとしてもマフィアとしても、このトレーニングがお前にとってちょうどいいんだ」
街を守る自警団…………。
確かにそこを切り取ればヒーローの起源と似てる。
「とにかく拾え。
重い物や大きい物を運ぶ時には、どの部位をどういう風に使うのかをしっかりと考えろ。
そうじゃなきゃトレーニングの意味がねぇ」
なるほど。
全身を鍛えるだけでなく、体の使い方も考えるのか。
「分かったよ。やってみる!」
そこから一時間、まずは軽そうな物からやってみることにした。
形や大きさで使う筋肉が全然違う!
なるほど、これは!
そしてトレーニングを終えて、僕は家に戻った。すると母さんが驚いた顔でこっちを見ていた。
「あれ、出久?!外いたの?!いつから?!」
「あ、えっと、リボーンと一緒に、体作りのトレーニングに……」
「リボーンちゃんと、トレーニング?」
これ、ちゃんと伝わるかな……。
「もう、それならそうと言ってよ。ビックリしたじゃない」
「え?」
心配性の母さんが、こんなにあっさり?
「あ、トレーニングって事は疲れてるわよね。
少し早いけど、朝ごはん食べる?」
「あ、うん!食べる!」
なんか、さっきまでの疲れが一気に飛ぶ様だよ。
「ママン。俺の分も頼む」
「えぇ、分かってるわ。リボーンちゃんの分もちゃんとあるから」
そういえば、食事と寝床があればいいんだっけ。
けど、母さんの適応早いなぁ。
「いただきます」
うん。今日も母さんのご飯は美味しいや。
「出久。学校が終わればまたトレーニングだ。
今度は2時間だ。学校で無駄に体力使うんじゃねぇぞ」
「学校でそんなに疲れる事はないと思うけどな…」
昨日みたいな事はそうそう起こらないだろうし。
「油断は禁物だぞ。
常に危機意識を持つ事がヒーローへの第一歩だ」
「まぁ、そうだろうけどさ……」
ちなみに、母さんの前ではなるべくマフィアの話はしない様にリボーンに頼んだんだ。
母さんも知ったら混乱するだろうし。
「ごちそうさま」
「今日も美味かったぞ、ママン」
「あら、ありがとうリボーンちゃん」
よし。ご飯も食べたし、着替えて準備をしよう。
それから準備を済ませて、部屋で少しだけ今日の予習をしてから家を出た。
「リボーンは今日も着いてくるの?」
「当たり前だろ?俺はお前の家庭教師なんだから」
理由になってない気がする………。
「お、緑谷じゃん。昨日は凄かったな」
「え?」
リボーンと話してたら、急に後ろから声をかけられた。
「えっと、同じクラスの」
「そうそう。
ていうか昨日のお前本当に凄かったぞ。見直した」
っ?!こんな風に話しかけて貰えるなんて……。
「もうお前を無個性だからって馬鹿に出来ないな。
それに聞いた話じゃ、お前炎系の個性使えるらしいじゃん」
「えぇ?!誰が言ってたのそんな事!」
僕、昨日炎なんて使った?!
「なんかクラスで噂になってるぞ。
俺は投目で見てたからよく見えなかったけど、なんか額に炎が灯ってたらしいな」
額に炎?
もしかして、それって死ぬ気の状態に出る物なんじゃ?
「とりあえず、俺部活の朝練あるから、また後でな」
「う、うん。また」
けど、まさか虐められてた僕が、あんな風にクラスメイトと話せるなんて………。これも、ある意味リボーンのおかげかな。
「良かったじゃねぇかデク。
念願の友達だぞ」
「うん。そうだね!」
僕はその後も、色々な人から声をかけられながら教室まで歩いた。
リボーンはいつの間にか姿を消していた。
昨日みたいに何処から見てるんだと思うけど。
「ふぅ。こんなに大勢の人と話したのなんて初めてだな」
話してみると皆いい人ばかりで、ただ雰囲気で僕を虐めてたり馬鹿にしてただけみたいだ。
その事もちゃんと謝ってくれたし、なんだか今日はいい事ばかりだよ。
「あ、緑谷!」
「はい?」
あれ、彼女は昨日の?
「昨日は本当にありがとう。
今まで、馬鹿にしてきたのに、助けてくれて……」
「あ、気にしないでよ!体が勝手に動いただけだから!」
実際、死ぬ気になって無我夢中だったからあながち間違いでもないんだよなぁ……。
「それでも!」
「いいんだ。
それより、怪我が無くて本当に良かったよ」
うん。やっぱりその事が素直に嬉しいや。
怪我が無くて、ちゃんと助けられたんだ。
僕にしては凄い上出来だよ。
「…………緑谷、あんた。
確かヒーローになりたいんだよね?」
「え?あ、あぁ、うん。
身の丈に合わない夢だって事は分かってるんだけどね」
死ぬ気の力があっても、僕自身はまだ全然弱いし。
それにリボーンがいなきゃ死ぬ気の力だって使えないんだ。
「そんな事無い!
その、緑谷なら………」
「僕なら?」
僕ならって、なんだろう?
「……緑谷なら絶対に!いいヒーローになれるよ!」
「っ!」
こんな事、言って貰えるなんて。
今まで皆から無理だって言われ続けて、実は自分でももう半分は諦めてたのに………。
こうやってちゃんと人に認めて貰えるって、こんなにも嬉しかったんだ。
「うんっ!ありがとう!」
少し、泣いちゃったな。かっこ悪いや。
リボーンにまた、締まらない奴って言われちゃうかな。
…………………………
それから学校にいる間、今までからは信じられないくらいに僕の周りに人がいた。
昨日の事を褒めてくれたり、今までの事を謝ってくれたり。
けど、こんなに幸せな事だけが続く訳じゃ無かったんだ。
「おいデク」
不意に、昨日から聞いていなかった幼馴染の声が聞こえた。
「な、何?かっちゃん」
「お前、俺を騙してたのか」
騙す?一体なんの事だ?
かっちゃんは何を言ってるんだ?
「ごめん、よく分からないんだけど……」
「ふざけてんのか?てめぇの個性の話だよ!」
かっちゃんに突き飛ばされて、僕は椅子から落ちた。
「いたっ?!」
「ちょっと爆豪!酷くない?!」
「そうだぞ爆豪。やり過ぎだろ」
皆が一斉にかっちゃんに文句を言う。
かっちゃんは更にイライラし始めた。
「うるせぇ外野は黙ってろ。
ていうかお前ら恥ずかしくねぇのか?
今まで散々馬鹿にして来た奴がちょっといい所見せりゃ皆で掌返してヘラヘラと仲良しごっこか?」
「そ、それは……」
「確かに、緑谷の事馬鹿にしてたけど……」
不味い。このままじゃ揉め事になっちゃうよ!
「待ってよかっちゃん!
その、昨日は無我夢中で、自分でもよく分からない内に力を使ってたんだ!
だから、別にかっちゃんを騙してた訳じゃないよ!
それに、僕は馬鹿にされてた事なんて気にしないし、その事で皆を責めないでよ!」
無我夢中で言えば今もなんだけど。
それより、こんなにまともにかっちゃんと会話をするのは、久しぶりな気がする。
「あぁ?なんだデク。
ちょっと個性が使える様になったらすぐ俺に反抗か?
そんなぽっと出の個性で、ヒーローになれると思ってんのかこのクソナードが!」
確かにそうだ。
まだまともに使えない力じゃヒーローになんか、なれやしない。
けど、僕はどうしてもかっちゃんに言わなきゃいけない。
「じゃあ、かっちゃんはヒーローになれるの?」
「なんだと?
てめぇ俺を舐めてんのか?!ぶっ飛ばすぞ!」
ダメだ。ここで折れるな!
ここで折れたらいつもの僕だ!
変われ!緑谷 出久!
「ヒーローは困ってる人を助ける為にいるんだ。
そんなヒーローになりたいって言ってる人が、人を虐めて傷付けてどうすんだよ!」
「っ?!」
その瞬間、クラス中が凍り付いた様な気がした。
「なんだと?」
今までまともに反論してこなかったせいか、かっちゃんが少し動揺している。今なら、言える!
「僕はずっと、君に憧れてたんだ!
凄い個性を持ってて、それを活かす才能もある!
けど、君はヒーローとは程遠い行動をしている!
それでも、僕は君が凄いって思ったから!
だから超えたいんじゃないか!馬鹿野郎!」
言葉はめちゃくちゃで、言ってる事もめちゃくちゃだ。
けど、これで僕の言いたい事は伝えたつもりだ。
「………なぁ、勝己。もういいんじゃね?
結局何言いたいか分からねぇけど、緑谷お前の事嫌ってねぇし、お前だってただ緑谷が憎いだけでやってる訳じゃねぇんだろ?」
え?どういう事?
「なぁ緑谷。コイツよ、前に言ってたんだ。
身の丈に合わねぇ夢ばかり見てると、いずれ痛い目見るだけだって。
実はコイツ、お前の事心配してたんだぜ?」
「してねぇわ!」
「ほらちょっと黙ってろって」
ダメだ。考えが追いつかない。
かっちゃんが僕を心配?そんな訳……。
「だから緑谷。怒ってはねぇみたいだけど、改めて勝己の友達として頼む。
勝己を許してやってくれねぇか?」
「そ、そんな、僕は別に!」
僕が別に怒ってもないし、許すとかそんな必要無いって言うか、とにかくそういう事を伝えようとした時だった。
「うっせぇ!黙れ!ぶっ殺すぞ!」
「うわっ?!」
かっちゃんが僕の目の前で爆発を起こした。
爆風で体が浮く。
そしてたまたま開いてた窓から、僕の体が外に出てしまった。
「っ?!デク!」
「緑谷!」
驚いた様な顔で、かっちゃんやクラスメイトがこっちを見てる。
って、冷静に考えてる場合じゃない!ここは3階で、落ちたら怪我じゃ済まないぞ!
「全く。世話の焼ける生徒だな」
え?この声って……。
「リボーン!」
ふと気がつくと、僕の体は宙に浮いていた。
厳密に言うと、ロープみたいな物が僕の腰に絡まっていて、それで吊るされた状態だった。
「ご、ごめん。ありがとう」
「体幹がなってねぇからこういう事になるんだ。
帰ったら体幹も鍛えるぞ」
うぅ。トレーニングがまたきつくなった予感……。
そんな事を考えていると、リボーンが僕の体を教室に戻してくれた。
「緑谷、大丈夫?!」
「う、うん。大丈夫だよ」
「けどさっきのは何だったんだ?
なんか緑谷の腰に巻き付いてたよな?」
あっ、そうだ!誤魔化さないと!
「な、なんか、上の階の人が助けてくれて…」
「そうか!じゃあ後でお礼言いに行かないとな!」
こ、これはこれで墓穴を掘った様な……。
「ほら、勝己!緑谷に謝れよ」
そして、かっちゃんの友達がかっちゃんを前に出す。
「い、いいよ!僕がバランス崩したのも悪いんだし!」
「緑谷。そうやっていつも自分のせいにするからこういう事になるんだぞ。
ちゃんと怒っていい時は怒った方がいいんだぞ?」
そう言われてもなぁ……。
「デク」
「っ、かっちゃん、何?」
「俺は」
なんだろう。かっちゃんが、何か言おうとしてる。
その時だった。
「なんださっきの音は!」
「っ?!」
まずい!社会の先生だ!
この先生真面目だから、このままじゃかっちゃんが!
「緑谷!その焦げた制服なんだ?!まさかいじめか?!
爆豪!お前がやったのか?!」
まずいまずいまずい!
このままじゃかっちゃんが!
「あ、すみません先生。
実は急に部屋に蜂が入ってきて、爆豪がそれを追い払おうとしてくれたんすけど、ちょうど緑谷も同じだったみたいで。
それで爆豪が軽めに使おうとした個性が緑谷が出てきた事に驚いてちょっと制御誤っちゃったみたいで」
え、なんか凄い設定出来上がった?!
「何?しかし、校内での個性の使用は禁止されている。
どの道校則違反だ」
「いや、でも先生。
先生だってふとした瞬間に個性使っちゃう事あるでしょ?」
「いや、まぁ、そうだが……」
凄い。先生を押してる!
「それに爆豪も緑谷も他の皆の為にやろうとしてくれた結果こうなっちゃったんですよ?
これはもう不慮の事故って奴ですよ」
な、なんか、凄いな皆。
「……じゃあ、今回は不問にしてやる。
次からは気をつけるように!」
凄い!許して貰えた!
「………行った?
はあぁぁっ、疲れた」
クラスの何人かが椅子や机、床に座り込んだ。
「ほら、爆豪。一応緑谷に謝っとけ」
「…………」
「かっちゃん、別にいいよ?僕は気にしないから」
これ以上はかっちゃんの立場が悪くなっちゃうし、僕はそういう事を望んでる訳じゃない。
だからとにかく、ここはかっちゃんと穏便に済むように…
「悪かった」
「…………え?」
かっちゃんが、謝った?
「えぇ?!い、いいよ全然!」
ビックリし過ぎて大きな声を出しちゃった。
けど、かっちゃんが、あのかっちゃんが謝るなんて…。
「これは俺のケジメだ」
「ケジメ?」
どういう事だろう。
「もうお前を見下さねぇ。
個性がある以上はおめぇももう雄英受験する最低条件は揃ってんだ。
お前が俺を超えるってんなら、俺は更にその上に行ってやる。
いいか。俺が一番強えんだって事を、雄英で証明してやる」
……………これって、え?もしかして!
「雄英で、俺の方が強えだって事を証明してやる」
マジかよ、かっちゃん!
「すげぇ!あの爆豪が緑谷をライバル認定しやがった!」
「やったじゃん緑谷!」
「うっせぇ!お前ら全員黙ってろ!」
凄いな。こんな日が来るなんて思いもしなかった。
かっちゃんが僕を認めてくれた。
「良かったなデク。
爆豪の強さはファミリーに必要だ。
しっかりとライバルとして高め合えよ」
リボーンの呟きは、この時の僕には聞こえていなかった。
けど、とにかく僕はこの日を絶対に忘れない
次回予告!
出久「まさかかっちゃんが僕の事を認めてくれるなんて」
勝己「まだ認めちゃいねぇ。
雄英に受かって、それからが本当の勝負だ」
出久「そうだね。僕も君を超えられる様に頑張るよ!
次回!『
爆豪「更に向こうへぇ!」
出久「Plus ultra!!」