ONE FOR ALL9代目はボンゴレX世   作:鉄血のブリュンヒルデ

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標的(ターゲット)No.8 FULL COWLと轟く感情

「これが僕の、ONE FOR ALLだ!」

 

 

全身にONE FOR ALLを使う時の独特な熱さが駆け巡る。

 

落ち着け。ONE FOR ALLは僕の力だ。

 

そして、僕自身なんだ。

 

 

「リボーン、どう、かな?!」

 

「あぁ。正解だ」

 

 

必要な部分だけじゃなくて、全身でONE FOR ALLを使う事で、僕の身体能力を引き上げる。

 

名ずけるなら、

 

ONE FOR ALL FULL COWL

 

 

「その状態で動けるか?」

 

「待って、まだ、調整が難しくて…」

 

 

答えに辿り着いても、まだ上手く扱えない。

 

一先ず、さっき使えた5%より下の、3%で!

 

 

「う、上手く、いった!」

 

 

何とか体が動かせる程度の力になった。

 

 

「よし。その状態で慣らせ。

 

んで、ある程度慣れたら5%だ」

 

 

とりあえず、走ってみよう。

 

僕の50m走の最高タイムは、6秒03。

 

それと比べて、どのくらいで移動出来るか!

 

 

「行くぞ!」

 

 

足を踏み込み、前へと体を押し出す。

 

 

 

ズオォォォォォンッ!

 

 

 

「っ?!」

 

 

なんだ?!

 

一瞬で、もう壁際?!

 

このままじゃ、ぶつかる!

 

 

「くっそ!」

 

 

 

ドゴンッ!

 

 

 

何とか、壁に着地?出来たけど、まだ力の加減が出来てないな…。

 

とりあえず僕は地面に降りて、今踏み抜いてた壁の破片を払った。

 

 

「ったく。なんだ今のザマは」

 

 

リボーンがこっちに来てる。

 

まぁ、今のはなぁ…。

 

 

「うん。分かってる。

 

もう少し反応が遅れてたら、壁にぶつかってた」

 

「そういう問題じゃねぇ。

 

お前今、本当に3%のつもりか?

 

制御がブレブレだ。

 

まだお前は無意識下で使える程ONE FOR ALLが体に馴染んでねぇんだ。

 

今は意識して抑えろ」

 

 

意識して、抑える……。

 

 

「……………よしっ。3%に戻した」

 

「さっきは走るっていうのが先に出て、無意識にスピードを意識しちまった結果の制御のブレだ。

 

今回は3%の力で50mを移動するって考えろ。

 

あと、50mピッタリで止まれる様にしろよ」

 

 

また微妙にきつい事を……。

 

けど、50mピッタリで止まれる様にってどういう事?

 

まぁ、とにかくやってみよう。

 

 

ONE FOR ALL FULL COWL

 

 

体をスパークが駆け巡る。

 

よし。力を維持して、そして駆け出す!

 

 

「っ!」

 

 

そして、50mで止まる!

 

 

ザザアァァァァァッ!

 

 

「5mもオーバーしてんじゃねぇか。

 

そんなんじゃ戦闘じゃ使えねぇな」

 

「リボーン師匠、それはどう言う事でしょうか」

 

 

オールマイトも近寄ってきた。

 

というか、なんでピッタリで止まらなきゃならないんだ?

 

 

「まず、俊典は基本的に動きが一直線だ。

 

コイツはONE FOR ALLの100%を反動無しで使える分、パワー押しになるんだ。

 

何度も言ったが全然直りやしねぇ」

 

「面目ない…」

 

 

確かに、オールマイトは(ヴィラン)と戦う時は常に正面から立ち向かう姿が印象的だ。

 

………そうか。なるほど。

 

 

「つまり僕は、小さな力を全身で使う事で、機動力を活かした戦法を編みだせって事?」

 

「そういう事だ」

 

 

僕はONE FOR ALLを受け継ぐならオールマイトの様にならなければならないと思い込んでたけど、そうじゃないんだ。

 

僕は僕なりの戦い方を探せばいいんだ。

 

そしてその後、僕達は特訓を始めて一時間もした頃、一時切り上げて食堂で昼ご飯を食べていた。

 

 

「ごめんな緑谷少年。私は最初から力を100%で使えていたから、あまり役に立てそうにない」

 

「元々大して役に立ってねぇだろ」

 

 

僕が食べてるのはカツ丼。

 

オールマイトはゼリー飲料。

 

リボーンはサンドイッチとエスプレッソだ。

 

 

「そんな事無いですよ」

 

 

僕達が訓練の合間の休憩で寛いでいたその時だった。

 

 

「ん?おぉ、君は昨日のヘドロ事件の」

 

「え?」

 

 

僕の背後から、低く迫力のある声が聞こえた。

 

僕が振り返ると、そこにはシンプル目なヒーロースーツを着て、体の至る所から炎を放出している男の人が立っていた。

 

 

「エンデヴァー?!」

 

 

なななな、なんでエンデヴァーがここに?!

 

って、そうか。ヒーローが使う施設なんだから、いてもおかしくはないか…。

 

 

「君は確か中3だったな。

 

ここにいるという事は、君も雄英を志望しているのか?」

 

 

君も?

 

そう言えばエンデヴァーには子供がいるんだったっけ。

 

 

「エンデヴァーの息子さんも、今年雄英を受けるんですか?」

 

「あぁ。今は反抗期で言う事を聞かんが、アイツにはいずれはオールマイトをも超えるヒーローとなる義務がある」

 

 

オールマイトをも超えるヒーロー?義務?

 

……………そうか。

 

 

「よかったら、一度合わせてくれませんか?」

 

「ん?あぁ、いいだろう。

 

同年代の者との接触はいい刺激になるだろうからな。

 

連れてくるから待っててくれ」

 

 

そう言ってエンデヴァーは食堂を後にした。

 

 

「緑谷少年。何をするつもりだい?」

 

 

オールマイトが少し驚いた様にこっちを見ていた。

 

 

「いえ、具体的には考えてないんですけど…。

 

ただ、もしエンデヴァーが息子さんをオールマイトを超える為の道具にしか見ていないなら、その考えを、正さなきゃと思って…」

 

 

でもやっぱり、家庭の事情に首を突っ込むべきじゃ無かったかな…。

 

 

「まぁ、いいじゃねぇか。

 

ちょうど対人戦の経験も積ませようと思ってたんだ」

 

 

対人戦、か。

 

エンデヴァーの息子ってくらいだから、炎系の個性なのかな?

 

 

「まぁ、今回は軽いスパーリング程度に考えておけ」

 

 

スパーリングか。

 

ボクシングとかの試合形式の練習だったかな。

 

 

「待たせたな」

 

 

エンデヴァーが戻ってくると、その後ろに左右で髪の色が違う男子が苛立ちを隠さずに立っていた。

 

 

「…何をしている。挨拶をしろ焦凍」

 

「……チッ」

 

 

エンデヴァーの言葉に、彼は舌打ちで応える。

 

エンデヴァーもそれには慣れている様で、軽いため息だけ吐いた。

 

 

「無愛想な奴ですまんな」

 

「い、いえ…」

 

 

それより、あの左目の辺りの火傷は一体?

 

 

「そんじゃ、二人でスパーリングでもして来い。

 

その方が互いに利益があんだろ」

 

 

リボーンがそう言うと、エンデヴァーは驚いた様にリボーンを見た。

 

 

「驚いたな。

 

まさか赤ん坊からそんな提案を聞くとは。

 

しかしいい案だ」

 

 

そう言うとエンデヴァーは、焦凍と呼ばれていた彼に低い声で命令を出した。

 

 

「焦凍。やって来い」

 

 

その言葉に、彼はエンデヴァーを鋭く睨みつける。

 

エンデヴァーはそれに何を言うでもなく、ただ見下ろしている。

 

 

「おいエンデヴァー。

 

俺達は上で観戦するぞ」

 

「何故俺に指図する。

 

まぁ、その気ではいたがな」

 

 

そう言ってエンデヴァーとリボーン、オールマイトは2回の観覧席に移動した。

 

 

「悪ぃな。クソ親父に付き合わせちまって」

 

 

その時、彼の声を初めて聞いた。

 

 

「いや、どっちかって言うと僕がお願いしたんだよ。

 

僕は緑谷出久。君は?」

 

「轟焦凍だ」

 

 

さっきとは少し違う雰囲気で、多少は話しやすい雰囲気になっている。

 

 

「ところでお前が俺を呼んだってのはどういう事なんだ?」

 

 

…これ本人に聞いていいのかな?

 

 

「えっと、その……。

 

さっき、エンデヴァーと話した時に、君にはオールマイトを超える義務があるって、聞いてさ」

 

 

僕がそう言った瞬間、彼の………轟くんの表情が一気に固くなった。

 

 

「それで、クソ親父に金握らされて、相手するってか?」

 

「違うよ。

 

僕は、負けられないって、思ったんだ」

 

 

次の言葉で、轟くんは驚いた様に固まった。

 

 

「僕は、ずっとオールマイトに憧れてて、ずっと彼みたいなヒーローになりたいって、思ってた。

 

僕は、誰よりも最高のヒーローになりたいんだ。

 

だから君がオールマイトを超えなきゃいけないなら、僕は更にそれを超えるヒーローになりたい」

 

 

そうだ。誰よりも最高のヒーロー。

 

僕が憧れたオールマイトは、いつもそうだった。

 

 

「…………うるさい」

 

「轟くん?」

 

「うるせぇんだよ!」

 

 

 

ズアァァァァァァァッ!

 

 

 

「っ?!」

 

 

僕は咄嗟に横に回避した。

 

後ろじゃなくて正解だった。

 

轟くんの右足の足元から次々に氷壁が展開される。

 

もし後ろに逃げていたなら、あれに巻き込まれて動けなくなっていた。

 

 

「黙って聞いてりゃベラベラと…。

 

余計なお世話なんだよ」

 

「ごめん。

 

けど、余計なお世話がヒーローの仕事だから」

 

 

行くぞ、ONE FOR ALL。

 

 

「今度はこっちから行くよ!」

 

 

 

FULL COWL

 

 

 

3%を維持したまま、さっきの攻撃で出来た氷山を足場に、懐へ!

 

 

「なんだ、その動き!」

 

 

轟くんは再び氷壁を僕に向かって作り出す。

 

この一瞬だけフルカウルを解除して、拳に5%を力を!

 

 

 

「SMAAAAAASH!!」

 

 

 

ゴオォォォォォッ!

 

 

 

僕の放ったスマッシュが氷壁を砕き、更にそれにより生まれた氷の礫が轟くんを襲う。

 

 

「くっ!」

 

 

轟くんはそれを地面を滑って回避して、続けて氷壁を放つ。

 

けど、僕は違和感を感じていた。

 

 

 

彼の父親のエンデヴァーは炎系の個性を持っている。

 

それに対して轟くんは氷系。

 

母親がそうなら違和感は無いけど、もしそうだとして、それだけで「オールマイトをも超えるヒーローとなる義務がある」なんて言うかな?

 

 

 

今の轟くんの右半身には、氷壁を出した反動なのか、霜がおりてる。

 

そんな風に、多分エンデヴァーにも炎を使い続けると熱が篭もるっていう弱点があるはず。

 

けどもし、その両方を相殺とまでは行かずとも、軽減出来るとしたら?

 

母の氷と、父の炎。

 

その両方を受け継いでいたとしたら、それはエンデヴァーの言う「オールマイトをも超えるヒーロー」になれる可能性があるんじゃないのか?

 

 

「………轟くん。

 

そろそろ本気出してよ」

 

 

僕の言葉に、轟くんは驚愕とも、怒りともとれる表情になった。

 

 

「僕の推測だけど、君の個性は右半身で氷を、左半身で炎を操る個性じゃないのかい?」

 

 

今度は驚愕であると分かる表情になる。

 

正解だったみたいだ。

 

 

「右半身の氷の反動であるその霜は、左の炎で溶かす事ができる。

 

違うかい?」

 

 

今度は怒り。

 

きっとこれも正解だ。

 

 

「それなのに、君は右の力だけで僕に勝とうとしてる。

 

僕を、舐めてるのか?」

 

 

自然と零れた言葉に、僕が驚いた。

 

あまり出した事の無い低く唸る様な声が出て、僕はハッとした。

 

けど、目の前の轟くんは完全に頭にきているみたいだ。

 

 

「人の事情も知らない癖に、ズケズケと踏み込んで来るな!

 

俺は、左は絶対に使わねぇ!

 

半分の力で、ヒーローになるんだよ!」

 

 

また氷壁が来る。

 

けど、さっきより速度も威力も落ちてる。これなら余裕で避けられる。

 

僕はもう一度FULL COWLを発動させて氷の足場をパルクールの様に跳んで轟くんに迫る。

 

 

「半分の力で、ヒーローになる?

 

ふざけるな!」

 

 

そのまま勢いを乗せて轟くんを殴り飛ばす。

 

けど、氷壁を薄く幾つも張ることで減速して、壁に激突するのを回避した。

 

 

「皆、全力でやってんだ!

 

それなのに、半分の力で、勝てると思ってるのか?!」

 

 

僕は気付かない内に、口調がどんどん荒くなっていた。

 

轟くんもそれは気にせず、僕に向かってくる。

 

けど、動きが鈍い。

 

僕は再び彼を殴り飛ばして、そして彼に語りかける。

 

 

「ねぇ轟くん。

 

実は僕、少し前まで無個性だったんだ」

 

 

その言葉に轟くんと、観覧席のエンデヴァーが目を見開く。

 

 

「つい最近、個性が使える様になったけど、その個性は両親のどちらとも違う個性だった。

 

何が言いたいのかって言うとね」

 

 

一息ついて、僕はもう一度語りかける。

 

 

「例え親と似ていても、性質が同じでも、それは親の個性なんかじゃない。

 

君自身の力なんだ」

 

 

少し嘘交じりだけど、これが僕が彼に伝えたい事だ。

 

 

「例えエンデヴァーが君に何を望んでいても、例え周囲が君とエンデヴァーを同視しても、その個性は、君自身の力だ!

 

君にしかない力なんだ!

 

他の誰でもない、君だけの!」

 

 

もしも伝わらなくても、その時は何度でも言うまでだ。

 

 

「俺の、力?」

 

 

揺らいだ。

 

今なら伝えられる。

 

 

「そうだよ!

 

皆、自分の力で、頑張ってるんだ!」

 

 

轟くんの攻撃はいつの間にか止んでいて、僕は彼の正面に立ってその目を見た。

 

 

「もし仮に半分の力で雄英に入れたとしても、きっとその先は辛いだけだと、僕は思う。

 

だって、皆が全力でやってる事を、君はそんなシラケた目でこなすだけなんて、つまらないじゃないか。

 

それに見なよ。

 

僕はまだ、君に傷一つつけられちゃいない」

 

 

その言葉で、轟くんの目はさっきとは違うものに変わった。

 

 

「もし僕に勝ちたいなら!」

 

 

 

「全力でかかって来い!」

 

 

 

(いつから、忘れてたんだろうな)

 

 

その瞬間、轟くんの左半身から、炎が吹き出した。

 

 

「舐めてるのはどっちだって話だ。

 

全力で来いだと?

 

敵に塩送る様な真似しやがって」

 

 

笑っている。

 

轟くんが笑っている。

 

 

「お前何笑ってんだよ。

 

状況わかってんのか?」

 

 

どうやら僕も笑ってたみたいだ。

 

 

「嬉しいんだ。

 

全力の君と戦えるのが」

 

「変な奴だよ、お前」

 

 

次の一撃で、きっと決着がつく。

 

僕が焚き付けたんだ。

 

僕だって全力だ!

 

 

 

ONE FOR ALL!100%!

 

 

「いいぞ焦凍!そうだ、俺を超えろ!

 

俺の力を超えて、お前はNo.1ヒーローを超える男となるのだ!」

 

「まさか緑谷少年は、100%を使うつもりか?!」

 

「まぁ、相手の力を考えりゃ妥当な判断だ。

 

力を体に慣らした今なら、100%の反動も多少は抑えられるだろうしな」

 

 

この時観覧席ではこんな会話があったらしいけど、その時の僕達には全く聞こえてはいなかった。

 

 

 

「「行くぞ!」」

 

 

 

僕が地面を蹴り走り出すと同時に、轟くんも氷壁を放つ。

 

炎で反動を相殺しているのか、さっきよりも速度も範囲も段違いだ。

 

 

僕はそれを薙ぎ払う様に拳を横に振り、その力で生じた衝撃波で氷壁を破壊する。

 

しかしそれも長くは続かずに次の氷壁が。

 

それを次は拳を前に突き出して一直線に衝撃を飛ばす。

 

そしてその攻撃で壊れた氷壁の間を一直線に突き進む。

 

轟くんは僕の道を阻もうと真正面から氷柱の様に氷を放つ。

 

それを予想していた僕は、あえて飛び込み、再び拳を放つ。

 

 

 

「SMAAAAAASH!!」

 

 

 

そして、それを突き破った先に、炎を全力で解き放つ轟くんがいた。

 

 

「緑谷、ありがとな」

 

 

短くそう呟き、彼は炎を完全に解き放つ。

 

そして氷の影響で冷やされた空気が、急激に加熱されて膨張し、爆風と化した。

 

僕の意識は、そこで途切れてしまった。

 

 

 

…………………………

 

 

 

「さっきの戦いは良かったぞ焦凍」

 

 

戦いを終え、炎で焼けてしまった服を着替えた焦凍に、エンデヴァーが声をかける。

 

その声に反応した焦凍は、振り返る。

 

その目は依然として憎みや恨みを孕んだものであるが、それが少しだけ和らいでいた。

 

 

「それでいい。

 

俺の力を持って、俺を超えろ」

 

 

焦凍はそれを聞くと、エンデヴァーの目を睨み、告げた。

 

 

「この個性は、アンタの力じゃない。

 

右は母さんから受け継いで、左はアンタから受け継いだかもしれねぇ。

 

けど、それだけだ」

 

 

その言葉に、エンデヴァーは目を見開いた。

 

 

「これは、俺の力だ」

 

 

そう言うと焦凍は右から冷気を、左から熱気を放出した。

 

 

「…………そうか。

 

そうだったな」

 

 

エンデヴァーはそれだけを呟くと、何処かへと歩いていく。

 

 

「帰りの金はお前の荷物の所に置いていく。

 

後はお前が気が済むまでやればいい」

 

 

そう言い、エンデヴァーはロッカールームへと消えた。

 

 

「余計なお世話なんだよ」

 

 

焦凍はそれとは逆にある、医務室へと足を向けた。

 

 

 

…………………………

 

 

 

「んんっ…………あれ、ここは?」

 

 

僕が目覚めると、そこはベッドの上だった。

 

 

「ようやく起きたか」

 

「リボーン?」

 

 

ここは、休憩室?

 

僕は、なんで寝てたんだ?

 

 

「お前、轟に負けたんだ」

 

 

…………そっか。僕負けたんだ。

 

でも、伝えたい事は伝えたんだし、僕は満足してる。

 

 

「まぁ、個性使い慣れた相手にあそこまでやれれば、マシな方だろう」

 

 

リボーンが褒めてくれるなんて、珍しいな。

 

さて、そろそろ起きて……って?!

 

 

「痛たたたたたたっ?!」

 

 

な、なんだ?!体中が痛い?!

 

 

「ONE FOR ALLで全力戦闘すりゃ、そうなるに決まってんだろ。

 

お前の体はまだ未完成なんだ」

 

 

いや、確かにそうかもしれないけど……。

 

流石にここまでは予想してなかったよ………っ!

 

 

コンコンッ

 

 

その時、部屋の扉から軽く叩くような音が聞こえた。

 

 

「入っていいぞ」

 

 

それにリボーンが応えると、扉が開く。

 

そこには、轟くんが立っていた。

 

 

「緑谷、大丈夫か?」

 

 

どうやら、心配して来てくれたみたいだ。

 

前まで友達がいなかったから、こういうのが未だに新鮮だ。

 

 

「僕は大丈夫だよ。

 

それより轟くんこそ大丈夫?

 

結構派手に殴っちゃったけど」

 

「あぁ。今はもう痛みは引いてる。

 

お前が殴る瞬間だけ手を抜いてくれたおかげだな」

 

 

え?僕、そんな事した覚えは無いんだけど……。

 

 

「無意識に力を抑えちまったんだ。

 

そういう甘え所はいずれ命取りになるぞ」

 

 

相手が轟くんだったから、手を抜いちゃったのかな?

 

 

「けど、思ってたよりひでぇな。

 

本当に大丈夫か?」

 

「うん。これはほとんど個性の反動だよ」

 

 

もっと鍛えないと。

 

いくらFULL COWLで制御出来るって言っても、いずれは100%反動無しで使える様にならないと、最高のヒーローになんかなれない。

 

 

「…………緑谷。

 

聞いて欲しい話がある」

 

「聞いて欲しい話?」

 

 

なんだろう。

 

轟くんの顔は至って真剣で、これから僕にする話がどれだけ大事な物なのかが伝わってくる。

 

 

「入るぞ、緑谷少年」

 

 

その時、トゥルーフォームのオールマイトが部屋に入ってきた。

 

それと同時に、リボーンは腰掛けていた椅子から降りて、オールマイトの方に歩いていった。

 

 

「俊典。飲み物買いに行くぞ」

 

「コーヒーなら今買ってきましたが?」

 

「今は茶が飲みてぇ気分なんだ。

 

とにかく行くぞ」

 

 

どうやら気を利かせてくれたみたいだ。

 

 

「……いいか?」

 

「うん。いいよ」

 

 

僕は少し痛みの和らいできた体を起こして、話を聞く姿勢をとる。

 

 

「まず、俺の母親はお前が言った通り氷系の個性だ」

 

 

やっぱりそうだったんだ。

 

けど、何で今その話が出てきたんだ?

 

 

「親父はプロになって早くにNo.2の座に上り詰めた。

 

けど、どれだけやっても埋まらねぇオールマイトとの差を感じていたんだ。

 

そこで目を付けたのが母さんだった。

 

氷系の個性を持つ母さんの親族を金で丸め込んで結婚し、自分の子をオールマイト以上のヒーローに育てようとしたんだ」

 

 

個性に目をつけた………。

 

 

「それって、個性婚ってこと?」

 

「あぁ。そうだ」

 

 

僕も話には聞いた事がある。

 

超常黎明期に問題になった、自身の個性をより強く受け継がせる為だけに、個性で配偶者を決めて結婚する事を指す言葉だ。

 

けど、それをエンデヴァーがしていたなんて…。

 

 

「続けるぞ。

 

その後親父は俺の上に3人の子供を母さんに産ませた。

 

けど、3人共が望んだ様に個性を受け継がず、そんな時に産まれたのが俺だっだんだ。

 

炎と氷。その2つともを持って産まれた俺は、小さい頃から鍛錬という名の虐待に近い行為を俺に向けた。

 

兄弟達とも隔絶され、俺にとって母さんだけが救いだった」

 

 

轟くんにそんな過去があったなんて………。

 

僕は何も知らずにあんな事を言っていたのか…。

 

 

「けど、それもある日、崩れ去ったんだ」

 

 

そう言って轟くんは、左目の火傷の痕をなぞった。

 

 

「俺を庇ってくれていた母さんに、親父は手をあげた。

 

それを何度か繰り返す内、母さんは心を病んでいった」

 

 

正直、信じられなかった。

 

確かにファンやマスコミに対する対応が悪いと言われるエンデヴァーだけど、そのヒーローとしての仁義だけは通していると思っていた。

 

それが、こんな……。

 

 

「そして母さんは、お前の左が憎いと、俺に煮え湯を浴びせた」

 

 

それが、火傷の原因………。

 

 

「記憶の中の母さんは常に泣いていた。

 

けど、今日お前と戦ってて思い出したんだ。

 

心を病む前に、母さんが俺に言ってくれた言葉を」

 

 

そうか、それで……。

 

 

「それで、僕に話してくれたんだね」

 

「あぁ。散々言われっぱなしだったからな」

 

「ははっ…ごめん…」

 

 

僕が謝ると、轟くんは首を横に振った。

 

 

「いや、いいんだ。

 

おかげで吹っ切れた」

 

「そっか。それならいいんだ」

 

 

それから僕達は、色々な話をした。

 

 

お互いに雄英を目指していること。

 

轟くんは推薦で受けるということ。

 

後は僕のノートを使った轟くんの分析や、様々なヒーローの情報から纏めた轟くんの個性の使い方についてとか。

 

 

リボーン達が帰ってくる頃には、僕達はすっかり打ち解けていた。

 

 

そして、また会おうと言って僕達はそれぞれの帰路についた。




次回予告!

出久「轟くんの個性は戦闘は勿論、災害救助でも使えそうだね」

焦凍「今まで戦闘の訓練しかしてこなかったから、そこら辺も今後は考えて鍛えねぇとな」

出久「そうだね!って、えぇ?!

かっちゃんが俺も連れて行けって?!

次回!『標的(ターゲット)No.9 ライバル』」


焦凍「更に向こうへ」

出久「Plus ultra!!」
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