東郷さんのナニは柔らかかったんじゃあ!

※この作文は限りなくノンフィクションに近いものだ。

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東郷さんのナニは柔らかかったんじゃあ!

※この作文は限りなくノンフィクションに近いものだ。


うたかたの

 ふと気づくと屋内にいた。和室だ。

 ただ、自宅ではない。覚えのない間取りだ。

 

 特に深く疑問には思わず、家具が一切無いその和室を出ると短い廊下が伸びており、右手に階段があった。

 どうやらここは二階のようだ。階段は下っている。

 階段は半分ほど降りると踊り場で百八十度向きを変える造りだった。とは言え普通の民家である。完全に平面の踊り場というわけではなく、三角形の段を構成していた。

 

 階段を降りていく。踊り場で向きを変えさらに二段ほど降りた時、声がした。

 

「友奈さーん。早くしないと置いてっちゃいますよー」

 

 あれ? この声は…………犬吠埼樹ちゃん? 

 可愛らしい声にそう反射的に連想したのには、「ゆゆゆ」に毒されすぎでは? との疑念が生じた。

 

「はーい。ちょっと待ってー!」

 

 すぐにその声が上がると、僕の目の前、階段を降りきった場所にある廊下を右から左へ赤毛の少女が横切っていった。

 アニメなどで見慣れた髪型ではなく、服装も見たことのない紺色の制服だ。そもそも中学生と言うよりは高校生っぽい。

 でも、結城友奈ちゃんだと確信できた。

 

 慌てて階段を降り、左手に目を向ける。

 玄関に二人の少女が立っていた。

 一人は先ほど目の前を横切っていった友奈ちゃん。ローファーっぽい靴を履いているところだった。

 そしてもう一人は、やはり見慣れた髪型ではなく、服装も友奈ちゃんとお揃いの制服っぽいものを着ているが、麦穂色の髪色と柔和な顔立ちですぐに誰か判った。乃木園子ちゃんだ。

 

「もう! ゆーゆ、遅いんよ~。ほんとに置いていっちゃうところだったんよ~」

 

「ごめんごめん、園ちゃん。ほんと、許してね」

 

 笑顔で言葉を交わしている二人に、僕の胸は高鳴った。大ファンである二人の笑顔であり、可憐な立ち姿なのだ。顔も熱くなる。

 そして連想する。二人が玄関にいる。樹ちゃんの声もした。ならば二人の右横、既に開いている扉の先には彼女たちがいるのでは? と。

 

 二人が玄関から出ようとしていた。

 慌てて声を掛ける。

 

「ちょっと待ったぁぁあああ!!」

 

 驚いて立ち止まり、こちらを見てくる二人に構わず、走って行って開いている扉越しに外を見た。

 四人の少女が立っていた。間違いない。犬吠埼風ちゃん、犬吠埼樹ちゃん、三好夏凛ちゃん、東郷美森ちゃんだ。全員、お揃いの制服を着ていた。

 

 僕は玄関の廊下の端で正座をし、頭を下げ両手を拝むように合わせて頭上高く掲げると、恥も外聞も無くお願いをした。

 

「東郷さん! 友奈ちゃんと園子ちゃんのツーショット写真をこの場で撮影して、僕にください!」

 

 なんとも浅ましい欲望全開のお願いだった。

 だが、二人の可愛らしい姿にそうお願いせずにはいられなかったのだ。

 

「東郷にそんなお願いをするんだったら、正座をして頭を下げないとねー、って……既にやってる!?」

 

 風ちゃんが笑い混じりにそう言ってきたのだが、最後は驚きと呆れが綯い交ぜになった叫びを上げた。

 

「う~ん……そんな風に必死にお願いをされると弱いわ。友奈ちゃん、そのっち、いいかな?」

 

「私はいいよ。写真ぐらいなら」

 

「私もいいんよ」

 

「じゃあ、二人とも並んで。……こっちを向いて。笑顔でね。はい、撮るわよ」

 

 パシャッ…………パシャッ。

 

 頭を下げたままだったので詳しい状況は判らないが、快諾してもらえ、その上写真は二枚も撮ってもらえたようだ。

 

「じゃあ、今度は私も入るわ。夏凛ちゃん、シャッターお願いするわね」

 

「ええ、いいわよ」

 

 僕はまだ頭を上げられない。

 

 

 どうして、こんな状況に至ったのだろう? 

 

 

 すると左耳から東郷さんの吐息混じりの涼やかな声が聞こえてきた。

 そして、顎をくいっと上げられる。

 

「そんな姿勢のままじゃ、一緒に写真に入らないでしょ? さあ、顔を上げて」

 

 左横を見ると、東郷さんが腰をかがめて僕の顔の位置と自分の顔の位置を合わせて微笑んでいた。

 その彼女越しに、友奈ちゃんと園子ちゃんも腰をかがめて高さを揃えてくれているのが分かった。

 

「じゃあ、貴方も一緒に撮ってもらうわよ。……夏凛ちゃん、お願い」

 

「う~ん、ちょっと見切れてるかしら? もうちょっと、寄って寄って」

 

 夏凛ちゃんが右手でカメラを構えながら、東郷さんたちに僕の方へ寄るように左手を振るジェスチャーをしてくる。

 

 ピタッ……

 

 東郷さんの右頬が僕の左頬に密着した。

 なんとも言えない柔らかな感触。僕よりも気持ち体温が低いのだろうか? ほんの少し冷たく感じた。

 

「これは大きな貸しになるわね、フフッ……」

 

 妖しい声色でそう呟く東郷さん。

 しかし、僕は失礼なことに

 

『せっかく密着するなら、園子ちゃんが良かった……』

 

と恐れ多いことを考えていたのだった。

 

 そして、夏凛ちゃんの声が響く。

 

「じゃあ、撮るわよ。イチ足すイチは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めた。

 枕元のスマホで時刻を確かめると午前五時を回ったところだった。

 

「やっぱりな! そうだと思ったんだよ、ちくしょー!!」

 

 タオルケットをもう一度引っ被って、ふて寝をする。

 

 いや、今日は休日出勤だった。

 やりきれない気持ちを引きずりつつもう一度起きると、スマホのアラームを確認してから二度寝した。

 

 



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