デュエル・マスターズ Call of Creature -神話の喚び声- 作:モノクロらいおん
「が……ッ!?」
澪の背に、化物の舌が深く突き刺さる。
痛みより先に、不快感が全身を走る。
次に感じたのは、虚脱感。なにかが抜けていく。いや、吸われている。
血や、体液ではない。なにかもっと、曖昧で、形のない、魂のようなものが、奪われる。喰われている。
その不快感と衝撃で、澪は勢いそのままに、前へと倒れ込む。
それと同時に、バタン! と扉を閉める音が響く。
「澪君! 澪君しっかりして! 大丈夫!?」
「…………」
ゆっくりと身体を起こす。痛みは、倒れ込んで床に全身を叩き付けた痛みだけ。
背中は……まだ奇妙な不快感が残るが、痛みはない。
ただ、妙な気怠さがあった。貧血とも違う。身体に活力が漲らない。気力が失われたかのように、身体が重い。
「……俺の背中、どうなってる?」
「え? えっと……あ、穴みたいな、傷があるわ……?」
「よくわからんが……今のところは、大丈夫、っぽい、な……」
「本当に? ふらふらしてるけど……」
「身体が妙に怠い。が、それだけだ。動けるし、生きてる。それより、そこの餓鬼の方こそ大丈夫か」
青崎少年へと目を向ける澪。少年は蹲り、震えています。まだ恐怖症に苛まれていました。
「あ、あ、あぁぁ……」
「記君。落ち着いて、大丈夫、大丈夫だから」
「別にまったく大丈夫でもないが……」
しかし、あの化物が追いかけてくる気配はない。扉をぶち破って突入してくる様子もない。
とりあえず、一時は凌げた、のだろうか。
澪はよろめきながら立ち上がり、室内を見回す。
薄汚れている、質素な部屋……というより、廊下、通路だ。
左右に2つずつ、そして奥に1つの扉。合わせて5つ。
恐らくは、それぞれ倉庫や事務室に繋がっているのだろう。
「……俺は部屋を見てくる。お前はその餓鬼を頼む」
「え? でも1人は危ないんじゃ……?」
「だろうな。だが、その様子の餓鬼を連れ回してても邪魔だし、一旦落ち着かせないといけないだろ。俺はそういうのは無理だ」
青崎少年は、明らかに精神に異常をきたしている状態です。発狂している、と言ってもいいでしょう。
彼の精神状態を分析して、宥めるには、それなりの時間が必要です。しかしその間、ジッとしているのも勿体ない。
なので澪は、少年を木葉に任せて、自分は脱出口を探そう、というのです。
「単独行動は危険だが、奴は今フロアの方にいる。どういうわけかこっちには来ないようだが……まあ幸か不幸か、ここは狭い。すぐ合流できる」
「それなら、私たちも一緒に部屋に入るわ。同じ部屋にいた方が、安心できるでしょ?」
「ん……まあ、そうだな。お前にしては理性的な判断だ」
「えへへ、澪君に褒められちゃった」
「いつも理性的であって欲しいものだがな」
とりあえず、澪も軽口が叩ける程度には心の余裕が戻ってきたようです。
あまりにも不条理極まりない状況ですが、それを嘆いていても現実は変わらないのですから。
現状を打破するためにも、澪は動き出し、探索を開始しました。
ひとまず最も手近な、向かって右側手前の扉に手を掛ける。
舌とは言うけど、わりとエグい攻撃です。
次回から本格的に探索開始。CoCらしくなってきた。